ビジネスでの資金調達にはいくつか方法がありますが、よく使われているのは融資です。しかし、融資は返済義務があるため、二の足を踏むことも珍しくありません。
返済義務のない資金調達方法、資本金を増やす「増資」はご存知ですか?今回の記事では、資本金を増資する方法について具体的に解説していきます。
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1.増資とは?資本金を増やすメリット・デメリット
(1)増資とは株式会社が資本金を増やすこと
増資(ぞうし)の「資」は資本金のことで、増資とは、そのまま「資本金を増やす」という言葉です。
詳しく説明すると、増資とは、資本金を増やすために、会社が新たに株を発行し、その株と引き換えに、株主や第三者から出資を受けることを言います。
そのため、基本的には株式会社特有の資金調達法で、個人事業主や持分会社(もちぶんがいしゃ)にはできない資金調達の方法です。
資本金を増やす「増資」が、なぜ資金調達の方法と言えるかというと、増資が現金の振り込みで行われるケースが多いことが背景にあります(増資では、不動産などの現物での出資も認められています)。
現金での増資の手続き後は、自由に会社が現金を使えるようになるので、会社の資金繰りの改善のために利用されることも多いのです。
資金調達としての増資は、3つの利点があります。
資金調達の方法としての増資は、会社の資産のうち、現金保有率が高くなること。融資ではないので、当然、返済義務がなく、利子を払う必要がないこと。増資を経て、会社の体力(会社の規模拡大・資金繰り改善)をつければ、融資が通りやすくなること、です。
(2)増資のやり方は「株式発行→株主募集→出資」の3ステップ
増資のやり方は、次の基本の3ステップで説明できます。
- 企業が株式の発行をする
- 株主(出資者)を募る
- 出資者に株式を購入してもらう(出資をしてもらう)
上記を見ればお分かりいただけるように、資金調達方法としての増資は、出資者を募り、出資者からお金を集められなければ成功しません。
なお、出資者が何の見返りもなく多額の出資をする訳はないので、あなたは出資者に対して魅力的な対価として相応の配当金を支払わなくてはいけません。
また、増資には法務局の手続きの手間がかかります。資本金の増資は、法務局で登記変更の手続きが必要です。手続きには最低3万円(※増資金額×7/1,000)の登録免許税の支払いが求められます。
他にも、会社の憲法にあたる「定款」(ていかん)に書かれている株式数(発行可能株数)が不足する株式発行のケースでは、定款の変更も必要です。
ちなみに、増資のやり方によっては、これらのデメリットを打ち消すことができます。
会社経営者であるあなた自身が出資するやり方です。
①対外的な信用を勝ち取るため、②融資を受ける際に有利になると思われるから、という2つの目的で増資すれば、法務局の手続きの手間や手数料がかかる以外のデメリットは、なくなります。
2.資本金を増やす3つの増資制度と手続き方法
増資には3つの種類があります。1つ1つご説明しましょう。
(その1)株主割当増資
「株主割当増資」(かぶぬしわりあてぞうし)とは、既存の株主に対し、保有する株式の率にあわせて均等に出資してもらう増資方法です。
1万株持つ株主にはたくさん出資してもらい、100株しか持っていない株主には少し出資してもらう、というイメージです。
このときに注意すべきなのは、会社の定款です。
会社の定款で記載されている以上の株式を発行したいなら、まずは会社定款の変更が必要になります。
また、新たな株式を発行するためには、株主の理解と同意を得るために株主総会を開く必要があります。
いつ・どこで株主総会を開くかを決定し、事前に株主に招集通知を通達します。
株主総会の当日までに、株主割当増資をする旨を説明した文書やスライドを作成し、用意する必要もあります。株主総会では、後日提出する議事録も忘れずに作成します。
なお、株主1,000人以上いる規模の大きな会社では、株主総会を欠席する株主が議決権を行使するための「株主議決権行使書」も、あわせて準備する必要があります。
【株主割当増資:株主から出資を受けるまでの流れ】
- 募集株式や出資の内容をまとめる
- 株主に募集株式と株主総会について通知する
- 株主より出資の申し込みを受け付ける
- 株主より出資の払込を受ける
無事に増資が達成されれば、次は法務局へ行き登記変更手続きを行います。
法務局へは以下、最低でも6種類の書類を持参することになります(ITに自信のある方はオンラインでの申請手続きも可能です)。
【株主割当増資の登記変更手続きで必要となる書類】
- 変更登記申請書 ※フォーマットはこちらをご利用ください → 株式会社変更登記申請書
- 株主総会議事録
- 取締役会議事録又は取締役の過半数の一致を証する書面
- 募集株式の引受けの申込み又は総数引受けを行う契約を証する書面
- 金銭を出資の目的とするときは払込みがあったことを証する書面
- 現物出資に関する書面
- 検査役の報告に関する裁判があったときはその謄本
- 資本金の額の計上に関する証明書
- 株主全員の期間短縮同意書
※⑥は現物出資の場合のみ
※⑦は必要な時のみ
※⑨は株主総会招集手続き短縮を希望し認められている会社のみ
なお、以前は「OCR申請用紙」という書面も必要でしたが、現在はその代わりに「登記すべき事項」という提出物が追加で必要になっています。(6+1で計7種類の提出書類です)
詳細は、以下の法務局作成の文書をご参照ください。
(その2)第三者割当増資
「第三者割当増資」(だいさんしゃわりあてぞうし)とは、株主以外に株式を与える代わりに出資してもらう増資方法です。
株主に出資を募る株主割当増資ができない場合に利用されることが多く、取引先や自社の役員などの近親者など、出資者以外の第三者に対し、出資を募ります。会社・事業の合併や買収(M&A)でもよく使われるやり方です。
創業から時間の経っていない会社では、第三者割当増資をして資本金を増やしてから、金融機関から融資を受けるという資金調達方法が、よく行われます。(例:ECサイト運営のMODALAVAが第三者割当増資をしてから、その後800万円の融資に成功しています)
第三者割当増資で必要な手続きは株主割当増資のケースと似ていますが、「第三者割当増資により新たに出資者になった者を、株主として株主名簿に記載する」という手続きが別途、発生します。
また、第三者割当で増資をするとき、株式の発行数と既存の株主との関係性には注意が必要です。これまでの発行株式を上回る数の株式を第三者割当増資で発行してしまうと、株主総会や経営陣の中のパワーバランスが大きく変わります。
既存の株主を守りながら、適切に手続きを進めるのが大切です。
(その3)公募増資
「公募増資」(こうぼぞうし)とは、全く新しい株主を広く告知することにより、出資者を集めて増資するやり方です。
株主の拡大や、株の流通を活発にするというメリットがあります。
反面、資金調達を急いでいるケースでは、株主割当増資よりは時間がかかるため、不向きです。
まとめ
主に行われる増資は、既存株主に出資を募り現金を振り込んでもらう株主割当増資です。
増資の制度によって、やり方は多少変わりますが、資本金を増やすときは必ず、法務局への各種手続き・手数料が必要ですので、注意しましょう。