創業融資の返済期間は長ければ長いほど月々の返済額は少なくなりますが、逆に利息は増加します。返済期間が短いと利息は抑えることができますが、月々の返済が困難になります。
今回の記事では、創業融資でおなじみの日本政策金融公庫で融資を受けた場合、返済に困らないベストな計画の立て方、そして、創業融資の据置期間についてご紹介していきたいと思います。
1. 日本政策金融公庫の創業融資で「設備資金」「運転資金」とは?
日本の政策金融機関である「日本政策金融公庫」。日本全国に支店があり、運営は日本国民の税金から成り立っています。開業目的などの事業融資がメイン業務ですが、個人向けの教育ローンの相談にも乗ってくれます。
※上記URLをクリックすると、日本政策金融公庫の公式ページへリンクします
事業主が事業用のお金を借りる際、まっさきに思い浮かべる金融機関ではないでしょうか。日本政策金融公庫は公的金融機関のため、災害関連の融資やハローワークなどの公的機関と連携があるのが特徴です。法人だけでなく、個人事業主でも利用できます。
日本政策金融公庫にはさまざまな融資プランがありますが、起業家やこれから事業を始める方に人気なのが「新創業融資」というプランです。通常、わたしたちが銀行からお金を借りる際は「決算書」という担保が必要ですが、日本政策金融公庫の新創業融資制度では決算経験のない事業主にも、無担保・無保証人で融資をしてくれます。(所定の審査あり)
※当サイトの上記既存記事でも新創業融資制度について解説しています
日本政策金融公庫の新創業融資制度でお金を借りる場合、①設備資金②運転資金と2種類の区分があります。
設備資金とは、事業を行うためや拡大するために必要な店舗・工場・機器・施設などのことを指します。設備資金を借りるには、物件の機器など設備に関わる実際的な見積書が必要です。不動産収入で利益を得る「不動産投資」が設備資金として認められるかは、不動産賃貸業をきちんと事業として認められるかがカギとなります。(正直、今はかなり厳しいです)
例えば、日本政策金融公庫に設備資金として500万円を借りたいのであれば、500万円分の見積書が必要と考えておきましょう。設備資金の標準的な返済期間は5~10年です。
これに対し、運転資金は事業を行うために必要な商品仕入れ、水道光熱費、通信費、人件費、家賃などのことを指します。
運転資金の場合は、通常その性質から、少額になりがちです。そのためか、運転資金の標準的な返済期間は5~7年間と短めです。
では、創業融資で設備資金と運転資金の両方を借りる場合はどうでしょうか。答えは、「設備資金の年数が上限となる」です。例えば、Aさんが創業融資の設備資金で500万円、運転資金で200万円の融資を受けた場合、あなたが設定できる返済期間は5~10年間となります。
2. 日本政策金融公庫で返済不能にならないよう返済期間を指定する方法
①回数または年月で指定する
日本政策金融公庫の新創業融資制度で融資を受ける場合、全100回で返済する、というように「回数」で指定する方法と、5年で返済する、というように「年月」で指定する方法があります。
いずれの場合も、基本的に返済期間は上記でお伝えした期間内である限り、あなたが自由に設定できます。回数と年月で特に違いはありませんが、回数の場合は計算しやすいというメリットがあります。
【参照:日本政策金融公庫|事業資金用 返済シミュレーション】
上記の画像は、日本政策金融公庫の公式ページ内にある返済シミュレーションです。こちらのツールを使えば、いくら借りたら毎月返済がいくらだ、と予想を立てることができます。
②例えば、日本政策金融公庫で700万円の融資期間を設定したとすると
では、あなたが設備資金として500万円、運転資金として200万円、計700万円の金額を2.5%の金利で借りることになったと仮定しましょう。設備資金も借りているため、返済期間を最高の10年で設定してみます。ご返済方法の部分は、一般的な「元利均等返済」として、元金と金利を合算して返済する方法にします。
さきほどの日本政策金融公庫の返済シミュレーションに、700万円という金額を入れ、1年間の返済回数を12回にして(毎月のため)、返済期間を10年にして、金利を2.5%に入力しました。
すると、利息込み1年間で791,868円の返済額となりました。この額を12で割ると、65,989円になりました。「な~んだ~!700万円借りて、毎月6万5千円ぐらいの返済でいいの?」と思う方もいらっしゃるかもしれません。
しかし、事業できちんと利益が出ないのであれば、毎月6万5千円を10年間支払い続けるのはなかなか大変です。
そのため、借入額を考える際には利益がどれぐらい出るのかを元に計画を立てるのが必須です。具体的には、既に利益が出ている場合は毎月いくらの利益が出ているのかを確認しましょう。利益から経費とあなたの生活費などを差し引いて、6万5千円を支払える状態であれば、返済期間が10年でも問題ありません。
「でも、創業融資だから、初めての起業でまだ利益がでるかわからないんだけど」というご意見もあることでしょう。ごもっともです。また、返済期間を10年にする場合は、10間事業を続けられるかも必ず考えましょう。子供や親戚に借金取りの迷惑をかけたくないですよね。
過去にこれだけの利益が出たという実績がない場合は、「この立地とこの商品(またはサービス)だから、絶対に利益は毎月6万5千円以上出る!」と日本政策金融公庫の融資担当者が首を縦に振るほどの資料(創業計画書など)を作成しなければいけません。
③スタートアップや女性の融資の場合は金利が低くなる→返済期間も短めにできる
返済期間を考える際、実際に適用される金利は事業主おひとりおひとりで変わります。まず、最近流行っているスタートアップ(IT・ネット業界でのベンチャー企業など)は資金調達が得意な場合があります。
例えば、現役東京大学の学生で、大手企業とコラボして、20億円の資金調達に成功!などのニュースもよくインターネット上では配信されています。既に他の企業や投資機関から融資を受けている場合は、日本政策金融公庫での追加融資が受けやすくなる場合があります。(創業融資は、条件を満たせば1回だけでなく、2度目、3度目の申込みも可能です)理由としては、「他社が認めた事業なので、まあ問題なさそうだろう」という見られ方をするからです。
但し、他者で既に返済が必要な融資を受けているのであれば、日本政策金融公庫での追加融資額は希望額よりも減額となる可能性があります。理由は、既に融資を受けているため、返済が大変なのではないか、という見られ方をするからです。
また、日本政策金融公庫では「女性、若者/シニア起業家支援資金」という女性や若者、シニア対象の創業融資プランもあります。このプランを使うと、通常の創業融資で融資を受けるよりも、0.4~1.0%ほど低い金利で融資を受けることができます。
※上記URLをクリックすると、日本政策金融公庫の公式ぺージへリンクします
低金利で融資を受けられるのであれば、返済期間はできれば短めに設定する方が、のちのちの苦労を減らすことができます。
3.創業融資の元据置期間とは?
融資の返済期間について決める際、元据置期間についてもあわせて考えるべきです。元据置期間とは、「金利だけ支払って、元金の支払いはあとでいいよ」という期間のことを言います。日本政策金融公庫の場合、最長2年ぐらいまで元据置期間を設定できます。
例えば、設備資金で500万円、運転資金で200万円を元据置期間2年・金利2.5%で返済するとしましょう。
これで試算をすると、以下の結果となりました。
なんと、1.2年目の支払いは月額1万4千円ほどと低く抑えられましたが、8~10年目の月額の返済は8万円超と6万5千円より高額となってしまいました。
「最初にラクをすると、あとが大変だな~」と感じる方、また、特に理由のない方は元据置期間を設定しない方が返済はラクです。
しかし、「最初の2年間はとても利益が出せない!ローンは返済できない」という事業であれば、元据置期間の設定をオススメします。また、資金繰り計画として、いまは手元に現金がなくて、2年後には現金が入るというようなビジネスモデルの場合も元据置期間の設定は有効です。
4.日本政策金融公庫で返済不能の場合はどうすればいいのか?
過去に日本政策金融公庫で融資を受け、返済を途中でやめてしまった方。または、現在他社からの借入の返済で生活に困っている方。自己破産された方。このような方は、新規で創業融資の審査を受けても、落ちる可能性が高いと言えます。
けれども、「リスケ」と言って「今は払えないけど、あとで払うから」と日本政策金融公庫と決めた支払い期限を延長してもらって、最終的に完済された方。このような方であれば、創業融資の条件に当てはまるのであれば、次の融資を受けられる可能性もゼロではありません。(ただし、厳しめにはなります)
まとめ
創業融資の返済期間は、期間が短ければ返済額が少なめになり支払う利子も少なめになります。しかし、毎月きちんと返済できる額にするための返済期間を設定しないと、あとから苦労することになります。
返済に苦労しない返済期間にするには、①返済額にみあう利益がきちんと出せる事業計画になっているのか②利益はいつの時期にどれぐらいコンスタントに出せるのか、の2点の確認が重要です。