会社設立をする人の共通の悩みの一つは、「資本金をいくらにすればいいのか」ではないでしょうか。
資本金は基本的に経営者の自己資金を投入するのが理想的ですが、自己資金不足により、一時的な借入を資本金にする方もいます。しかし、その行為には多くのデメリットがあります。
1.資本金とは?
社会人であれば、資本金という言葉が企業の財力や規模を表すものであることは容易にイメージできることでしょう。資本金とは、事業を円滑に行うために株主が出資するお金のことです。
資本金には会社を発足させる経営者の自己資金(発起設立)と出資してくれる出資者(株主)からのお金(募集設立)というパターンがありますが、いずれの場合も出された資本金は返済不要でなくてはいけません。
なぜ返済不要のお金でなくてはいけないかと言うと、刑法157条の「公正証書原本不実記載罪」(=ウソの資本金額を記載した罪)に当たる可能性があるからです。資本金として会社設立時に用意したお金を口座から引き出し、会社スタートのための運転資金として使うことは全く問題がありません。
2.資本金はいくらが妥当なのか
資本金は一般的に300万円~1,000万円の間で設定する方が多いようです。資本金1,000万円未満は設立後2期まで節税効果があるため、900万円前後にする方もいらっしゃいます。
ちなみに、会社設立の手続きではあなたが決めた資本金は、経営者個人の銀行口座に振り込まなくてはいけません。そして、通帳コピーと払込証明書という書類を提出する必要があります。
※資本金をいくらにすればいいのか」、というテーマについては、当サイトの以下既存記事もぜひご参照ください。資本金の決め方|いくらに設定するのが良い?
3.見せ金として見られてしまうケースとは?
資本金として振り込みできる自己資金のない経営者が、カードローンなどで300万円を借入したとしましょう。そして、借りたお金を資本金として個人口座に振り込み払込証明書を作成しました。ここまでは法的に問題はありません。問題なのは、そのあとのことです。
会社設立の手続きが終わったあと、経営者はカードローンの利息がかかるため借りたお金を全額返済しました。この行為は、見せ金に相当し刑罰に当たる可能性があります。会社運営のための軍資金が空っぽになっている状態になってしまってますし、もし資本金の額をみてあなたの会社と取引しようとする人がいたら詐欺になりますよね。
もし、お金を借りたのがカードローンではなくエンジェル投資家や両親などの場合は、投資契約書などの適切な書類を作成し提出しなければいけません。
4.会社設立は1円から可能なのに、なぜ資本金の借入をするのか
なぜこうまでして、資本金を高くみせる必要があるのかと疑問に感じる方もおられるかもしれません。なぜなら、2006年の新会社法での改正により、資本金は1円でも会社設立が可能だからです。現実的には、資本金1円で会社が設立できるからといって本当に1円で設立するのは、以下のように複数のリスクがあります。
- 他企業・個人からの評価が低くなる
- 投資家からの評価が低くなる
- 会社設立直後に債務超過になる
会社の資本金は一般家庭の預貯金のような存在ですので、資本金が1円であれば設立後に使えるお金は1円しかないため、さっそく債務超過(=借金だらけ)という事態に陥ってしまいます。
5.見せ金は融資の審査で落とされる!借金してまで会社設立は必要か?
見せ金は法律違反で刑法により罰せられる可能性があるとご説明しました。自己資金のない中、見せ金をしてまで会社設立のための資本金を借りるメリットは果たしてあるのでしょうか?
会社設立しないと先に進まない事業なのであれば別ですが、まずは個人事業で始めて売上実績を出してから法人成りをする方法をオススメします。この方法の方が無駄なお金はかかりませんし、その方が事業融資にも通りやすいからです。
※会社設立は自分一人でやっても法務局に支払う手数料が15万円ほどかかります。
まとめ
資本金として振り込みしたお金を会社設立後にただちに返済する行為は見せ金として見られる可能性があります。見せ金は刑法で罰せられるケースがあり、また同時に事業融資の審査で不利になります。
会社設立がどうしても必要な事業でない場合、自己資金がない方は会社設立を安易に行わず、まずは個人事業主として利益を上げることをおすすめします。