起業したい方や会社設立をお考えの方は事前の競合調査をおすすめします。
なぜなら、競合というライバルがなぜ成功しているのかという情報は、あなたが起業する上で宝の山だからです。
今回の記事では、起業や創業をお考えの方の方に向け、競合調査の基本的な方法と必要費用についてお伝えします。
1.マーケティングの上でとても大切な「競合調査」の定義とは
競合調査はマーケティング活動にとても有効です。現在成功している事業のほとんどは広告宣伝・市場調査といったマーケティング活動をしています。競合調査はマーケティング活動の中でも「自社が他社に勝つため」「自社が市場で芽を出すため」に行う戦略の一つです。
競合調査で行う内容は、まずライバル会社・店の商品・サービス・戦略を調べ、次に自社の商品サービスを比較します。
単に競合データを集めただけでは意味がありません。大切なのは、競合調査をしたあとに経営に生かすことです。あとで触れますが、あなたがもし経営コンサル会社に競合調査を依頼したなら、調査結果を出すだけでなく、調査結果から経営を強化するための提案も同時にしてもらえます。
競合調査をすると、あなたの事業の失敗の要因がわかり、成功する秘訣がわかる場合があります。また、競合調査をエクセルなどにまとめて提出すると、日本政策金融公庫での創業融資では提出しない方よりも高評価となります。
2.競合調査の対象選びとは
競合調査をするには競合が誰かが分かっていなくてはいけません。「競合」とはよく聞かれる言葉ですが、具体的には互いに競り合う状態になっている他社を指します。
例えば、大手ハンバーガーチェーン店のマクドナルドさんの競合はどこだと思いますか?よく言われているのは、モスバーガーです。なぜなら、ビジネスモデルと販売している商品やサービスが似ているからです。
マクドナルドの競合はモスバーガー
競合にはもう一つの条件があります。それは、あなたの事業も相手の事業もどちらも市場でまあまあ評価されていなければいけません。
例えば、Aという出版社(年商50万円)とBという出版社(年商50億円)があるとします。出版社AとBが扱うジャンルはいずれもスポーツで、商品の内容も非常に似ているとします。けれども、出版社Aは年商が低すぎて出版社Bのライバルとは現段階では言えません。
もちろん、将来的な理想としてレベルの全く違う企業を調べることは無駄ではありません。しかし、階段を少しずつ上るように、まずは今あなたがいる位置に近い競合を見つけるところから競合調査はスタートします。
競合相手に探し方ですが、自分でできる方法だと以下の方法があります。
【競合相手の探し方】
1.自分の事業に関連するキーワードでネット検索して、最初のページに表示される企業
例)ハンバーガー 東京
2.お客さんから直接「この店って〇〇に似てるよね」など接客しながらよく比較される企業
例)モスバーガー
3.従業員に聞いてみる
例)「バーガーキングや、KUA AINAも外資系ですよね!」
4.サイトの場合はSimilarSites (https://jp.similarsites.com/)で似たようなサイトを調べてみる
自分ではなくプロに競合相手を探してもらいたい場合は、マーケティングデータバンクなどのリサーチマーケティング会社に依頼するのも一つの方法です。但し、費用がかかります。
(例)
入会金(初年度のみ) | 100,000円~ |
年間情報量 | 300,000円~ |
エリアマーケティングサービス | 標準レポート(一般価格)
3、000円(世帯・年代レポートの場合) |
競合は1社だけでなく、できる限り5社以上10社以内ぐらいでセレクトする方が効果的です。なぜなら、より広い範囲のデータから検証できるからです。
3.競合調査で調べる項目とは
飲食業界やホテル業界、航空業界、出版業界などどんなジャンルの業界でもするべき調査です。しかし、実際に調査する際の項目は、調査対象の業界によって異なります。
①Webサイトの場合はSEOツールの「ライバルサイト分析」を使うといい
例えば、最近Web業界で仕事をする方も多いと思いますが、Webサイトを運営している方の場合はSEOツールを使うと、キーワードごとのGoogle検索上の順位、コンテンツスコア(点数が高いほど評価が高い)、重要なキーワード比率などを簡単に調べることができます。
上記はSEOツール上で表示される「ライバルサイト分析」で融資というキーワードを調べて際の画面です
Web業界の場合、よく競合相手を調べる際に使われる項目は「キーワード比率」です。SEOツールで順位の高い競合サイトを調べると、競合サイトの強いキーワードが表示されます。Web業界ではサイトがどれだけ閲覧されるか(PV数)が大切ですので、PV数を挙げるために自社の弱いキーワードの記事を強化していきます。
ちなみに、Webの場合は「ドメイン」の問題があります。ドメインとは、サイトのURL(www.~)の.(ドット)の前の部分を言います。「ホットペッパービューティ」や「じゃらん」のように、元のサイトがリクルートのような大手企業が持つドメインであればなかなか大きなキーワードで競合として設定してもなかなかたちうちできません。
その場合は、別の関連キーワードを狙っていくか、同じキーワードで上位にいる大手会社のドメイン以外のサイトを研究しましょう。
②飲食店の場合の競合調査項目
(1)まずは基本・商品・施設・接客情報を調べて表に記入
Webサイトの場合は店舗がないため、比較的、競合調査がしやすいジャンルです。しかし、実際に店舗を持つ業界の場合は、Webサイトの競合比較よりも比較する項目は複雑です。実店舗の場合は、キーワードや検索順位が大切なのではなく、集客できるか=収益を上げられるか、が大切になってきます。
飲食店で収益を上げられるのかの基準は、①味・メニュー②利用しやすい価格③立地④施設と接客が大切であるとよく言われています。この他にも、利用しやすい営業時間なのか、定休日はいつなのか、という情報も競合調査では大切な項目になります。
【飲食店の調査項目(例)】
基本情報 | 営業時間、店舗面積、定休日、座席数 |
商品情報 | 品揃えメニュー数、人気メニュー、価格、品質、テイクアウトの有無 |
施設情報 | トイレはきれいか、椅子は座りやすいか、テーブルの大きさ、空調 |
接客情報 | 感じの良い接客ができているか |
但し、これらすべての項目を事業主ひとりで何社も調べるのは時間がとてもかかります。個人事業主や小規模事業者のわたしたちは、できるだけ起業前に競合調査を済ませるのがベストです。
(2)高いのに、立地が悪いのに売れている店は「商品」を調べよう
例えば、以下のように「価格と立地がうちよりデメリットがありそうなのに、なぜ競合は集客できているかな?」と考える場合は、その理由は主に「味」となります。
【焼き肉屋Aを競合にした理由】
・自社より高級な価格(ひとり単価6,000円前後)だけどコンスタントに集客できているようだ
・自社より路地裏という立地が悪い場所に出店しているにも関わらず、集客できているようだ
高いのに人気がある、立地が悪いのにずっと集客できている飲食店の場合は、圧倒的に味がおいしい場合が多いです。その場合は、基本情報や施設情報といった競合調査をしてもあまり直接的な意味はありません。
「商品」を実際に試食してその感想をメモするか、テイクアウトできるなら実際に購入して味やトッピングなどの違いをメモしましょう。
3.競合調査のフレームワークとは?
競合調査について調べていると、よく「フレームワーク」という言葉を目にします。フレームワークとは日本語に訳すと「何かの枠組み」といった意味になります。
フレームワークはプログラミングなどのIT業界や心理学でも使われる手法ですが、競合調査では以下の5つのサイクルを指します。
①現状把握→②ベンチマーク設定→③バリューチェーン分析→④SWOT分析→⑤目標設定
- ①現状把握では、現在の売上や集客数など自社(ミクロ)の立ち位置を把握する作業をおこないます。また、同時に業界全体(マクロ)の同行を調べることも大切です。
- ②ベンチマーク設定とは、前述しました「競合他社の選択」をすることです。
- ③バリューチェーン分析とは、商品を仕入れ原材料を調達してから顧客へ商品・サービスが届くまでに企業が行う活動の連鎖・商品の連鎖をバリューチェーンとして考え分析する手法です。
- ④SWOT分析とは、自社の強みと弱みを分析する手法です。
以下の記事は、整骨院でSWOT分析を取り入れた場合を仮定した当サイトの運営会社による別サイト「資金調達ノート」の過去記事です。
整骨院の起業後の廃業率は4%?SWOT分析で患者をぞくぞく集めよう
- ⑤目標設定とは、①~④の調査・分析を元に総合的じ自社が行うべき目標やToDoを設定する作業です。
競合調査でフレームワークを使うと、偏った比較ではなく、業界全体や自社の今後の展望などをあわせた相対的な分析ができます。
4.競合調査にかかる費用とは
専門の調査機関・マーケティング会社に調査を依頼した場合の費用はいくらでしょうか。調査する業界や対象のボリュームや期間によって異なるため、基本的には競合調査の料金は見積価格となります。
しかしながら、平均的なところでは数十万円という価格では一部のサービスのみとなり、100万円以上の費用が相場となっているところがほとんどです。
「高い!でも競合調査はしたい」という方は、人間を介さないアプリであれば安価な料金で利用できます。しかし、アプリの場合は基本的にWebサイトやアプリのダウンロード数などIT業界に特化しています。
飲食店や整骨院などの競合調査であれば、料金はかかってしまいますが「業界に特化した業者」に頼むのが最も効果的だと思います。
まとめ
競合調査にはフレームワークという手法があり、業界ごとに調べる項目が異なることがわかりました。
大手企業の場合は時間をかけてリサーチ会社に依頼する場合もありますが、これから起業するあなたはあまり費用をかけられません。営業時間や味など自分で調べられる部分は自分で行うことも可能です。