会社設立をする際には資本金が必要です。一般社団法人のような法人を設立する際には基金という資本金に該当する資金が必要です。
資本金は、株主や投資家から評価や節税にも大きく関わります。そのため、資本金について深く理解することは経営者にとって非常に大切です。
1.資本金とは?
資本金は会社がスタート時にどのくらいの体力を持つかを対外的に表す指標となります。会社経営を大きな海の中を航海すると例えれば、船の倉庫に食料や燃料などがたくさんある状態は資本金額が高いことを表します。
資本金には資本金準備金や資本剰余金などのように関連するワードがいくつかあります。一つ一つ解説しましょう。
2.資本金の由来
資本金の由来は、2006年日本国で会社法が他国制定されたことからスタートしました。それまでの日本ではドイツの法学者ヘルマンが草案を作成した「商法」が会社の一般規則でした。会社法は以前、資本金の最低額は株式会社で1,000万円以上、有限会社で300万円以上は必要と規定されていました。今現在は、資本金額1円以上で会社設立が可能です。
「じゃあ、資本金1円で会社つくっちゃお~!カッコイイ!」と気軽に会社設立を考え、資本金を安くする方がいらっしゃいます。しかし、資本金額はよく考えて会社設立したほうがよいでしょう。資本金が1円の会社に就職したいと思いますか?資本金が1円の会社にお金を貸したいと思いますか?正直「ヤバイ会社」と思うのではないでしょうか。
ワード | 意味 | 事業主にとってどの部分で重要か |
資本金 | 資本金とは、日本の「会社法」で定められている会社スタート時の資金。会社の財産であり、株主が会社スタート時に払い込んだ額を示す。
1円からでも会社設立は可能。 |
・融資や投資を受ける際に、会社の資本金が少ないと損することがあります。
・資本金1億円を超えるか超えないかで、「特典」を受けられるかどうかが異なります。 |
資本金については、よく「1億円の壁」があると一般的には言われています。資本金1億円以下の会社には、主に以下のような特典が与えられるからです。
- 軽減税率・・・資本金1億円以下の法人等の年800万以下の所得には18%の軽減税率(通常場30%)が適用となる。
- 交際費の定額控除限度額・・・資本金1億円以下の法人等は、年600万円までの交際費は損金として計上できる。
- 少額変化償却資産の全額損金算入・・・確定申告の際に青色申告している中小企業者等が登記に赤字を出した場合、その赤字(欠損金)を事業年度開始の日前の1年以内に開始した事業年度に繰り戻して差額を還付請求できる。
- 貸倒引当金の法定繰入率・・・貸倒引当金を計算する際、実績繰入率の代わりに法定繰入率を適用してよい。
資本金が低い会社は高い会社と比べるとやはり、社会的信用度は低くなります。また、事業融資を受ける際や株式発行で資金調達する際などにも、極端に資本金が低い会社は不利になります。
3.資本金等の額とは?
①資本金等の額は法人税を計算する際に出てくる言葉
資本金は法人税や事業税を計算する際に大きく関わってきます。「え?資本金ってリッチな会社かどうかを示すためだけじゃないの?」なんて驚く方もいらっしゃるかもしれませんね。法人税法で出てくる言葉がこの「資本金等の額」という言葉です。資本金に「等の額」という言葉が追加されていますよね。
資本金等の額っていったい何でしょうか?答えは「資本金+資本剰余金」となります。
話が少し複雑になってきましたね。会社などの法人は設立後に法人税を支払わなくてはいけないのですが、法人税は消費税や事業税などいくつか種類があります。赤字の場合は支払わなくていいものもあります。(欠損金繰越の会計手続きは必要)
その法人税を計算する際には、資本金だけでなく資本剰余金とあわせた「資本金等の税額」を元に計算するというルールがあるのです。
②資本金等の額は消費税と住民税の計算で重要
資本金等の税額が1,000万円を超える場合は、消費税を支払わなくてはいけない事業者として認定されてしまいます。
ワード | 意味 | 事業主にとってどの部分で重要か |
資本金等の額 | 法人税法で出てくる言葉で「資本金+資本剰余金」を意味する。 | ・消費税が課税されるかの部分で重要。会社設立時に資本金1,000万円以上の場合は消費税の課税対象事業者になる。
・法人住民税の均等割 →法人住民税は法人税割と均等割の合計から求めるが、均等割は資本金等の額に関わる。 ・事業税の資本割 →事業税の計算は所得割+付加価値割+資本割で求められる。 資本金1億円以下の会社は所得割のみを納めればよい。 |
また、消費税だけでなく住民税と事業税という2つの税金を計算する上でも、オトクな税制を使えるかどうかという点で関わってきます。
では、続いて「資本剰余金って何?という疑問」について次の見出しで解説します。
4.資本剰余金って何?
資本剰余金とは、事業を行う上で得た剰余金のことを言います。具体的には、株主からの出資金があります。事業で得た売上は自動的に資本剰余金にはなりません。(手続きを踏んだ上で資本剰余金にすることは可能です。)
例えば、株主から1,000万円の出資を得たとしましょう。
その際、出資された資金の全額を資本金とするかしないかで、「資本金等の額」の解説でご説明したように、消費税の対象事業者となるかならないかが決まります。上記の図の場合、株主が出資した1,000万円のうち500万円のみを資本金としましたので、その残りの500万円は資本剰余金として会計では表記されます。
ワード | 意味 | 事業主にとってどの部分で重要か |
資本剰余金 | 株主から出資された事業取引上の剰余金。株主が事業主自らの場合も同様。 | ・消費税の課税対象者となるかという部分で重要。 |
5.資本準備金とは?
最後にご紹介するのは資本準備金です。資本準備金もまた会社法で定義されている言葉となっています。所得(事業の儲け)ではなく、資本金でもないお金です。資本剰余金と似ているのですが、資本剰余金は出資金のあまりという意味なのに対し、この言葉は「資本金の1/2を超えない範囲で積み立てておくお金」という意味があります。
ワード | 意味 | 事業主にとってどの部分で重要か |
資本準備金 | 資本金の1/2を超えない範囲で積み立てておく会社の資金 | ・投資家や株主に対して、どのくらい資本準備金を準備しているかという説明をする場合がある。 |
まとめ
資本金は会社の体力を示す上で重要な指標です。株主からの出資金を全て資本金にせず1,000万円以内の中で設定すれば、消費税の対象とならないという点で節税が可能です。
また、資本金の増資として資本金1/2以内の範囲で積み立てすることは会社法で認められています。