小売業のような商品点数が多い場合を除き、士業やデザイン事務所、人的サービス業などで起業される場合の経理のポイントは、「少額の経費」管理になります。
売上管理というのは、銀行の通帳をひとつに決め、請求書に対する入金はすべてその口座に振り込むようにお願いすれば、案外簡単にできてしまいます。
また仕入れ先などに対する数万円以上の大口の支払いであれば、入金同様に、「支払い専用口座」を決め、そちらから振り込み、引き落としすれば、その通帳でおおよその経費管理ができるでしょう。
しかし、少額の経費管理はそう簡単にいきません。
もしも1年間領収書・レシートをもらわなかったら……
たとえば、交通費についてはどうでしょうか。
電車に乗るときに、現金で乗るときもあれば、交通系のICカードを利用して乗るときもあるでしょう。
新幹線に乗るのであれば、現金、クレジットカード、EX-ICカードなどがありますし、その交通費をのちのちクライアントが負担してくれることもあるでしょう。
その都度領収書をもらわねばいけませんし、少額のもので領収書をもらえないときは、手書きでいいので証拠となるメモや伝票を残しておかねばなりません。
またクライアントと一緒に、打ち合わせのため喫茶店にはいった、接待のためレストランを使用したというのであれば、最低限レシートはもらっておくべきですし、できれば領収書をもらっておきたいところです。
そして打ち合わせの帰りに、コンビニで文房具を買ったら、そのレシートももらわねばなりません。
忙しく動き回る経営者であれば、1〜2週間も経つと、財布のなかは、現金よりもレシートと領収書のほうが多くなっているのではないでしょうか。
経費管理のポイントは、少額のレシート
少額だからといって、1年間レシートや領収書をもらわないでいると「ちりも積もれば山となる」の原理により、数十万円分の経費になることがあります。
たとえば、1年間の少額の経費の合計が30万円あったとします。
これを経費として計上できないとすれば、いったいいくらの税金の支払いを損しているのかといいますと、法人関連の税金が総額40 %と仮定すれば……
30万円×40%=12万円
これだけの金額を余分に支払ってしまっているわけです。
もちろん、税金を払うことは悪いことではありませんし、何ら問題はありません。
しかし、創業直後の会社にとっては、適切な節税策を実行することにより、1円でも多く会社にお金を残すことが大事です。
それを仕入れや投資に回したり、将来に備えて貯蓄したりしておくことによって、会社の体力を強化していくこと。
上記のことが起業間もない経営者にとっては、至上命題だといえます。
「ちりも積もれば山となる」
少額の経費だからとあなどらずに、きちんと領収書・レシートをもらって、計上できるようにしましょう。