創業をしようとしたとき、現在はネット上に様々な情報があふれていて、極端な例を言ってしまえば独学で、専門的な支援機関に一切頼ることなく創業することも難しくはありません。実際に独学で創業し、成功を収めている人々も多くいらっしゃるでしょう。
しかし人の性格が様々なように、創業に至る道のりも様々です。
「偉大な起業家が独学で創業したのだから、独学で創業した方がいい」などということは決してありません。
そこで今回はいきなり創業に踏み切るのではなく、着実に準備を進めて創業をしようとしている方向けに、創業支援セミナーについてご紹介します。
1.創業支援セミナーとはなにか
創業支援セミナーとは創業を目指す人を対象としたセミナーです。
もちろん、業種などによって必要になってくる専門知識やノウハウは変わってきますが、「事業計画の立て方」や「資金調達の方法」「法律や税金のこと」など創業に必要な基本知識といった内容はどのような事業にとっても共通して必要なものとなってきます。
創業支援セミナーでは創業を目指す人々に基本知識を中心に教えていきます。
創業支援セミナーは創業を考えている人だけではなく、すでに会社を興しているけれど改めて経営を学びなおしたいというような人も参加することが出来ます。
2.創業支援セミナーは参加すべき3つの理由
(1)創業に関する基本知識を学ぶことが出来る
創業支援セミナーを参加する最大の理由です。インターネットが十分に発達した現代では個人で情報収集することである程度の知識を得られます。
しかし、創業支援セミナーの講師は創業を目指す人々がつまづいたり、悩んだりしやすいポイントをよく理解していて、講義の中でより詳しく解説してくれます。
なにより疑問点を質問すれば的確な返答を得られます。
インターネットの情報は時に誤っていたりもしますから、創業支援セミナーに参加してきちんと正しい知識を学ぶことが大切です。
(2)専門家の話を聞ける
専門家主催のセミナーである場合、弁護士、税理士、司法書士の人たちの話を聞くことが出来ます。創業をする前であればそう言った人々との交流はなかなか生まれません。
将来的に必要になってくる専門家の話を聞くことのできる貴重な機会です。
(3)様々な起業家と出会える
創業支援セミナーでは学生起業家、主婦で起業を考えている人、すでに会社を持っているが改めて知識を学びなおす人など様々な人と出会うことが出来ます。
創業をしようと考えている彼らは情熱にあふれていて、互いのビジョンなどを話し合えば新たなアイデアが生まれたり、曖昧だった考えがまとまったりすることもあるでしょう。
また、お互いに創業に関する悩みなどを話し合い、アドバイスし合うことも出来ます。
もしかしたらセミナー後も関係が続いていく仲間に出会うことになるかもしれませんよ。
3.創業支援セミナーの種類
(1)行政が主催する創業支援セミナー
各市区町村や政府系金融機関である日本政策金融公庫、公益財団法人、公社が主催するセミナーです。
参加費は無料で行われることが多く、内容はどのような業種の会社を創業するにしても大切になってくる融資や資金調達、補助金、助成金を受ける際に知っておくべき知識が中心となっています。
また、事業のサービス向上のために意識するべきことやAI・IoTロボット(Pepper君など)をどうビジネスに活かすかを解説するセミナーも行っています。
行政主催のセミナーは広く、浅くのものが多く、得られる情報量は多いですが、基礎的なものが多いので、創業を考えていている人の中でも「初めてセミナーに参加する人」向けです。
(2)民間企業が主催する創業支援セミナー
民間企業で主催されているセミナーに参加する場合は、主催元の企業がどのような事業を行っているのかも確認しましょう。
なぜなら民間企業が主催するセミナーは、その企業の事業内容に沿ったものが多くなるからです。
例えば飲食系の会社の場合は飲食店開業に向けての話が中心になりますし、ITなどの技術系の会社なら技術をどうビジネスに活かすべきかというマーケティングやアイデア出しの話になります。
いずれにしても行政が主催するセミナーよりも実践的で、専門的な話が多くなります。
(3)個人・フリーランスが主催する創業支援セミナー
個人で事業を行っている人やフリーランスの人が主催するセミナーでは自身の成功談や失敗談を語る体験談が多いです。
実際に創業した彼らは創業する前の人々ではなかなか想像しにくい問題なども乗り越えてきています。「どういう問題に遭遇して、どう乗り越えたのか」という話を聞ける機会は貴重で、基礎知識などを教えるほかのセミナーと同じように意義のあるものです。
ただし漫然と聞いていてはいけません。会社を導いている彼らの話にはコンサルティングやコーチングの知識が多分に含まれています。彼らが実際にどうそれらの知識を活用しているのかを考え、学ぶ姿勢をもって参加することが大切です。
4.創業セミナーの選び方
業種が多様化する中で、創業支援セミナーの種類もより専門的に特化したものが出てきています。創業セミナーに参加しようと考えているのなら「自分に合った」セミナーに参加することが大事です。例えばIT会社を興そうとしているのに、飲食店のための情報専門にしている創業支援セミナーに参加してもあまり意味がありませんよね?
それにはまず創業支援セミナーに参加する際は最低限自分自身のことを理解していなければなりません。
セミナーを選ぶ際の3つのポイントは以下の通りです。
(1)創業支援セミナーの内容は自分に適しているか
例えば「将来的に創業を考えてはいるけれど、具体的なビジョンは立っていない」Aさんがいきなり事業計画や資金繰りの話が中心のセミナーに参加してもあまり意味はありません。いずれ必要になる知識ではありますが、Aさんにまず必要なのはそれぞれの業種を詳しく知ることや業界の市場動向などについてでしょう。
創業支援セミナーの内容とは業種に適したものでなければならないということもそうですが、それ以上に現在の自分のレベルに合ったものである必要があるのです。
(2)属性に特化した創業支援セミナーだけに固執しない
属性というのは性別や今の自分の社会的地位などです。
創業支援セミナーの中には女性起業家にフォーカスしたものや、学生起業家を意識して主催されるものがあります。状況や事情の近い仲間と出会え、セミナーの内容もより自身に効果的なものになっているので参加をしない理由はありません。
しかしそういったセミナーだけに出ていては得られる情報が偏ってしまう場合があります。特に女性起業家向けのセミナーは講師も女性の場合が多くなります。確かに女性目線の話は大切ですが、それだけでは視野が狭まってしまいかねません。起業後のことも長く見通そうとするのなら様々な創業支援セミナーをバランスよく受けることをおすすめします。
(3)主催者は信頼できるのか
創業支援セミナーは日々多くの数が開催されています。しかし中には創業や経営にまったく精通していない人間が講師として登壇していたり、高額な自己啓発のDVDなどの購入を促す悪質なものも存在しています。
創業支援セミナーに参加する際は主催者と講師の経歴は信じられるのか、セミナーの評判はどうなのか、前もって調べておきましょう。
5.おすすめの創業支援セミナー
創業を考えている人々の中には漠然と創業をしたいと思っている人と明確に目標が定まっている人とがいるかと思います。
特に目標や目的が明確になっていない人にとっては創業支援セミナーを選ぶことも大きな悩みになるでしょう。そのような時はまずは自治体や金融機関が主催する創業支援セミナーに参加することをおすすめします。
例えば以下の3つのようなものが例として挙げられます。
(1)日本政策金融公庫の創業支援セミナー
日本政策金融公庫は政府が100%出資している政府系金融機関です。中小企業や個人事業主のサポートを目的とした金融機関で、日本政策金融公庫では「創業支援」にも力を入れています。
創業支援は主に「創業前支援」「創業時支援」「創業後支援」と分かれており、「創業前支援」では創業支援セミナーの開催情報が公開されています。
全国各地でさまざまなジャンルの創業支援セミナーが開催されており、随時ホームページで情報が更新されていますので、自分が気になるセミナーを探して参加してみるとよいでしょう。
また、そのほかにも創業に関わる疑問や不安に対してアドバイスもしているので、利用してみてもいいでしょう。
(2)商工会議所
商工会議所は商工業の発展と改善を目的に、商工業者が集まって作られた組織です。
全国に514の商工会議所があり、地域社会への貢献として様々なイベント運営を行っています。イベントの中には経営支援をテーマに行われるものあります。
例えば、東京商工会議所の例に挙げると、「東商・創業ゼミナール」「創業塾」「創業テーマ別セミナー」「創業フォーラム」などが開催されています。セミナーには数日に亘って開催されるものと1日で終了するものがあります。
- 日をまたぐ創業支援セミナー
①東商・創業ゼミナール
近々創業を考えている人が対象のセミナーです。ビジネスプラン作成から開業資金の調達までをパッケージ化したもので、8日間の日程で開催されます。
②創業塾
具体的な創業のイメージが経っていない人向けのもので、創業に関する基礎的な知識を2日間で網羅するものです。
- 1日で終わる創業支援セミナー
①創業テーマ別セミナー
業種別に、各業界特有ノウハウや開業に際しての注意点などを解説してくれるセミナーです。
②創業フォーラム
著名起業家の講演や創業支援機関が集まり、支援策や融資に関する講演を行います。
気になる方はぜひご自身の地域の商工会議所でどのようなセミナーが行われているのか調べてみてはいかがでしょうか。
③TOKYO起業塾
TOKYO起業塾を主催するTOKYO起業ステーションは東京都内在住の人や都内で起業を考えている人々の創業を円滑に進めるための支援メニューを提供しています。
TOKYO起業塾は事業アイデアを持っている人々を対象に創業に必要な知識やビジネスプランをより具体的にしていくための知識を学ぶことが出来ます。
コースは主に2つに分かれており、「入門コース」「実践コース」があります。
「入門コース」は創業のイメージがあまり立っていない人向けで、セミナーを通じて起業のアイデアを具体化するためのポイントを知ることができます。一方「実践コース」は、1年以内の創業を見据えている人向けで、マーケティング戦略の考え方や財務知識など起業に必要な知識を身につけられます。
まとめ
創業支援セミナーは日々たくさん開催されています。セミナーに参加すれば創業に関わる必要な基本知識や専門的な情報、目標を同じにする仲間を得ることが出来ます。
創業支援セミナーに参加する際はそのセミナーが自分のレベルに合っているかを確認しましょう。起業家レベル1の人がいきなりレベル10の人のステージに挑戦してはいけません。
さらに注意点として主催者が信用のおけるセミナーに参加しましょう。中には悪質なセミナーもあるので主催者の実績や講師の経歴など細かくチェックする必要があります。
創業支援セミナーは数々ありますが、いずれにしても自身が創業をしようとする目的意識と学ぶ姿勢を持って参加することが大切だということ忘れないようにしましょう。