保険販売会社と節税保険を検討している企業に大打撃となるニュースです。
国税庁が13日、通称「節税保険」の名で知られる「解約返戻率の高い法人向け保険」に対し、税務の取り扱いを見直すとの通達しました。
今回の記事では、法人向け節税保険の今後の取り扱いと対策について考えていきます。
1.法人節税保険って何? 何がトクなの?
①法人税はいくらかかるの?
ご存知の通り、会社や一般社団法人などの法人は法人税という税金を支払わなくてはいけません。あなたがある会社を経営しているとして、年に1,000万円の利益(売上から経費を引いたもの)が出ているとしたら、ざっくり計算してそのうち230万円は法人税としてもっていかれてしまいます。(税率23%計算の場合)結構高いですよね。
そこで、どうにかして節税したいと日々経営者は頭を悩ませているわけです。この世の中にはいくつかの節税対策がありますが、その中で保険を利用した節税というものがあります。これが法人節税保険です。
②節税に効果的な節税保険とは
会社などの法人には法人格という格が認められていて、会社が保険の契約者となることが可能です。会社が契約者で保険に入るパターンは労働保険や社会保険などたくさんあり、その際は会社が契約者で、被保険者(何かあった際に保険金が支払われる対象者)は従業員です。
節税保険の場合は会社が契約者で、被保険者は会社代表(社長など)に指定します。社長が亡くなった際や高度医療対象の病気にかかった際などに億単位の保険金が受け取れるのですが、会社にとってのメリットはこれだけではありません。
保険に加入するには毎月保険料という掛金を支払わなくてはいけませんが、今現在の税制では、この保険料を全額「損金」として計上して良いというルールになっているのです。
上記は保険適用前と適用後の法人税の金額の差を表わす図です。1,000万円の利益が出ても、保険未加入の場合は230万円が法人税としてもっていかれてしまいます。しかし、例えば年額500万円の節税保険に加入している場合、500万円は損金として「利益じゃないよ」と差し引くことが可能ですので、1,000万円の利益があるにも関わらず保険料500万円を差し引いたあとの売上
計算式:1,000万円-500万円=500万円
500万円×0.23(23%)=115万円
他の節税をしていない、他の特例がないと仮定して単純計算すれば、保険契約前と比較すれば確かに節税になっているように見受けられます。
2.国税庁が問題視しているのは「損金算入」と解約者が多いこと?
①ネットの普及で個人の保険加入が割安化したこと、②企業の内部留保が多く給与が増えないことなどが理由で、個人の支払う保険料は年々低下しています。そのため、保険会社にとってはこの法人節税保険は会社存続を左右するような、超・主力商品です。なぜなら、法人節税保険は受け取れる保険料も億単位ですので、毎月の保険料も50~100万円以上と非常に高額ですからね。
節税保険を契約する企業にとっても、節税保険は節税・会社代表の死亡時の保険金が受け取れる、とメリットだらけの商品に見受けられます。一体なぜ、今回の税制改正の動きにつながったのでしょうか?
まず一つ目に問題視されているのは、支払っている保険料を損金算入できるとするルールです。損金とは本来会社から出ていく費用・損失などを差し、通常では以下の3つを損金に計上します。
- 原価
- 費用
- 損失
節税保険の中には加入後すぐに解約できる商品があり、しかもその時の解約時の返戻金(戻ってくるお金)がかなり高額(最高90%など)なものも存在します。すぐに解約してすぐにお金を受け取れるのであれば、それは損失ではなく「資産」として考えられるべき、と国税庁では警鐘を鳴らしているのです。
2つ目は、すぐに解約する人の多さです。個人の場合も社会保険料は控除の対象となっていますが、それは何かあった時のために支払っているお金は費用として利益から差し引きましょう、という公助の意味から成り立っています。
節税保険は「保険」という名前にはなっていますが、解約返戻金目当てで短期間で加入し解約する人が多いのが現状です。しかし、保険の解約のタイミングを図るのは素人には難しく、解約タイミングを間違えば、単に保険会社を儲けさせるためだけのお金になってしまいます。節税目的で保険に加入するのはいいですが、結果的に損をした企業もあります。今回の税制改正は、いきすぎた節税対対策に対し「本来の保険の意味と逸脱しているのでは」とメスを入れる形になっていると見受けられます。
3.具体的にはどんな節税保険がある?販売停止はどこの会社?
節税保険という名前の保険が存在するわけではありません。保険会社により販売されている時の正式名称は、長期定期保険、長期平準保険、がん定期保険、などとなっています。今後、保険会社ではどのような販売方針をとるのでしょうか?以下をご覧ください。
・日本生命・逓増定期保険→販売休止
・東京海上日動あんしん生命→販売停止
東京海上日動あんしん生命|災害補償期間付定期保険(保険種別:経営者の皆様向け商品)
・損保ジャパン日本興亜ひまわり生命→ホームページの変更はなし
・ジブラルタ生命→新規販売停止
上記のように、販売休止や停止を行う保険会社が続出しています。なお、既に保険会社営業の方から提案を受けている場合は新規契約が可能なのではという見方もあります。気になる方は、提案を受けた営業担当の方に一度問い合わせてみましょう。
まとめ
個人年金保険も新規販売が停止となったように、保険商品と販売停止についてはきってもきれない縁があります。
時代の流れを反映して魅力的な商品が常に開発される保険業界。今回の販売停止後も、また法的な問題をクリアした新商品の開発へとつながる予感がします。