合同会社を設立する際も、株式会社と同じく定款の作成が必要です。
しかし、合同会社の定款は株式会社と比べると、株主構成や機関設計、株式の譲渡制限などに関して記載する必要がないため、比較的簡単に作成することができます。
今回は合同会社の定款の作成方法と、定款を作成するにあたって最低限知っておくべき事項を説明します。
定款の雛形も用意しておりますので、当ページを参考にして頂ければ初めての方でも2〜3時間で定款を完成させていただけるでしょう。
1.合同会社の定款の雛形をダウンロード
早速、下記のリンクより合同会社の定款の雛形をダウンロードして下さい。
> 合同会社定款の雛形をダウンロード【WORD】
それでは、早速、定款の作成を進めて行きましょう。
2.合同会社の定款の作成
(1)表紙
あなたが設立する会社の社名を記載します。
定款上では、合同会社を「LLC」と略して記入することはできませんので注意しましょう。また、作成日は定款を作成した日付を記入します。
会社設立の日付は、登記申請が終わった後に記入しますので、空欄にしておきましょう。
(2)商号
商号とは社名のことです。正式名称で記入しましょう。
商号に関して守らなければならない決まりごとは株式会社の時と同じです。
詳しくは『会社名を決める時に知っておきたい5つの決まり事』をご確認下さい。
(3)目的
会社でどのような事業を行うのかを記入します。
会社は定款に書いている事業以外を行うことはできませんので、将来行う可能性のある事業はすべて書いておきましょう。
また、最後に、「前各号に附帯または関連する一切の業務」と書いておくと、すでに行っている事業と関連性のある事業を始める場合は、定款を変更する必要がなくなりますので、必ず記入しておきましょう。
目的の記入例に関しては、『事業目的の具体的な記載例と2つの注意点』をご確認下さい。
(3)本店の所在地
会社の住所を記入します。
住所の記載は「東京都渋谷区」のように町までは記入せずに最小行政区画に留めておけば、事務所を移転する際でも、同一行政区画内であれば定款の変更を行う必要がなくなりますのでおすすめです。
詳細は、『本店の所在地の書き方2パターン』をご確認下さい。
(4)公告
公告を行う際の方法を書きます。
「官報」によって行うか「電子公告」によって行うのが一般的です。
電子公告にした際は、合同会社設立の登記を行うまでにホームページのURLを取得する必要があります。
詳細は、『2種類の公告方法と費用の違い』をご確認下さい。
(5)社員及び出資
合同会社では社員全員が資本金を出資し、業務を行うのが原則です。
合同会社でいう「業務執行社員」とは、株式会社でいう取締役に相当します。いわゆる従業員とは異なることも知っておきましょう。
ここには、出資する社員の名前と住所を記入します。
【例】
金100万円 東京都渋谷区渋谷一丁目1番1号 渋谷一郎 |
また、住所・氏名は印鑑証明書どおりに記入する必要があります。
(6)社員の責任
合同会社の定款には、社員の全員が有限責任社員であることを必ず記載することになっています。
※有限責任とは
有限責任とは、簡単に言うと、もし会社が事業に失敗して借金などの負債を返せなくなったとしても、それは会社の負債であるため、経営者個人に対して返済の義務等が生じないということです。 一方、無限責任の場合は、事業の失敗による負債も個人の資産で返さなければいけません。そのため、本格的に事業を行うのであれば、個人が有限責任となる形態を取るべきです。 |
(7)業務執行社員
合同会社では原則として、社員(出資者)の全員が業務を行います。しかし、定款で社員を以下のように分けることができます。
- お金を出して業務をする社員 = 業務執行社員
- お金を出すだけの社員 = 社員
このように、業務を行う社員を特別に限定したい時は、1行目を「当会社の業務は,社員○○○○及び、社員○○○○が執行する。」と書き換えましょう。
また、合同会社の意思決定は、原則として社員の過半数の同意によって行うことになっています。
しかし、社員の同意を得るためにいちいち時間がかかるようでは、業務がスムーズに行えない場合も出てくるでしょう。そのため、「過半数」という表現を、「多数決」や「3分の1」などにして意思決定の要件を緩くすることもできます。
(8)代表社員
合同会社では原則として、すべての業務執行社員が会社を代表する代表社員です。
しかし、対外的に、誰が代表権を持つのかを明確にしておきたい場合は、業務執行社員のうちの特定の人を代表社員とすることができます。
その際は、「当会社の代表社員は,社員の互選によって定める。」と記載しておくと柔軟に対応することができます。
または、「業務執行社員○○○は,会社を代表する。」のように、誰が代表権を持つのかを明確に記載しておくことも可能です。
(9)社員の加入
合同会社でいう社員は、通常の会社でいう従業員とは異なります。
そこで、業務を行う社員が新たに加入する場合は、定款を書き換える必要があります。
(10)任意退社
社員が退社する時の取り決めです。予告期間は短縮したり、伸ばしたりすることができます。
(11)決定退社及びその特則
会社法第607条の規定とは、以下の通りです。
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また、第2項の取り決めに関して、合同会社の社員の持ち分は、原則、相続されず、持ち分の払い戻しを受けることになっています。
しかし、社員が1名の場合では、その人物が不慮の事故などで死亡してしまうと、会社が消滅してしまいますので、これを定めておく場合が多いです。
一方、社員が複数の場合は、会社の業務執行権や代表権が急に別の者に移ることを防ぐために、これを定めない方が良い場合もあります。
(12)計算
会社の事業年度は、さまざまな観点から考えましょう。
詳しくは、『節税に効果的な事業年度の決め方』をご確認下さい。
(13)損益の分配と分配の割合
合同会社は、株式会社と違って出資の割合に関わらず、社員間で自由に損益を分配することができます。
自由に損益分配を決めたい場合は、「各社員への利益の配当に関する事項は、総社員の同意により定める。」までの記載に留めておきましょう。
また、損益分配の割合を定款で定めておく事もできます。損益の分配に関する記載がなければ、株式会社と同じように出資の割合によって損益分配の割合も決まります。それで良ければ、14条は削除しても問題ありません。
1人合同会社の場合は、「各社員への利益の配当に関する事項は、代表社員がこれを定める。」と記載するのも良いでしょう。
(14)最初の事業年度
特に記載する必要はありませんが、いつ会社が設立されて、初年度はいつまでなのかを明確にするために記載することが多いです。
(15)記名押印
電子定款の場合は、「以上、合同会社○○○○の設立のため、発起人が、電磁的記録である本定款を作成し、電子署名する。」と書き換えましょう。
日付の部分には定款の作成日を記入します。
最後に、各社員が記名押印をして完成です。
また、最後に空白部分(右下辺り)に、修正に備えて社員(=出資者)全員の個人実印で捨印を押しておきましょう。
2.定款の製本
定款を作成したらプリントアウトして、下の画像のようにホッチキスで留めましょう。
最後に、全ページの綴り部分に、社員全員の個人実印で契印を押して完成です。
3.定款の認証は不要
合同会社の場合、定款の認証は不要です。
そのため、定款を作成したら、登記の申請に必要なその他の書類を作成して、法務局で申請を行いましょう。
まとめ
合同会社を設立する際、定款の作成は必須です。
自分で作成することも可能ですが、本来事業にあてられる時間を書類作成の時間に取られたくない経営者の方や自作した定款できちんと認証が受けられるのか不安な経営者の方もいらっしゃるでしょう。その場合は、司法書士や行政書士などの専門家に相談することをおすすめします。