起業時の資金調達方法として最もお勧めしたいのが「日本政策金融公庫」の融資です。
日本政策金融公庫は、株式の100%を国が常時保有することを「日本政策金融公庫法」によって定められている、特殊な株式会社です。
一般の金融機関が行う金融業務を補完し、国民・中小企業者・農林水産業者の資金調達のサポートや、大規模災害等の危険発生時に指定金融機関に対して一定の信用供与を行う(自己の資金や商品などを一時的に利用させること)など、国民生活の向上を目的に事業を展開しています。
特に起業前または起業間もない企業に対する「創業融資」は、金融業などの一部の業種を除いたほぼすべての業種に対応しており、毎年約2万社が利用しています。
国の政策にのっとった固定金利(約1.5〜4.0%)で借りられること、最長20年という長期間の融資を受けられることが特徴です。
また信用保証協会などを介さないため、信用保証料もかかりません。
代表的な2つのプラン
日本政策金融公庫の創業融資で代表的なプラン2つと、申し込みから融資実行までのフローをご紹介します。
【新創業融資制度】
この制度の最大のメリットは「無担保・無保証」で利用できることです。
ただし融資限度額は最大で3,000万円(うち運転資金1,500万円)で、金利は比較的高めに設定されています。
新創業融資制度を申請するためには、次の3つの要件をすべて満たさなければなりません。
- 新たに事業を始める人、または事業開始後税務申告を2期終えていない方。
- 事業開始前、または事業開始後で税務申告を終えていない場合、創業時に融資希望額の2分の1程度の自己資金があること。
- 以下の 1.)〜9.)のいずれかに該当すること。
- )雇用の創出を伴う事業を始める。
- )技術やサービス等に工夫を加え多様なニーズに対応する事業を始める。
- )現在の企業に継続して6年以上勤務している、または現在の企業と同じ業種に通算で6年以上勤務しており、新たに始める事業も同じ業種の事業である。
- )大学等で修得した技能等と密接に関連した職種に継続して2年以上勤務しており、その職種と密接に関連した業種の事業を始める。
- )産業競争力強化法に規定される特定創業支援事業を受けて事業を始める。
- )地域創業促進支援事業による支援を受けて事業を始める。
- )日本政策金融公庫が参加する地域の創業支援ネットワークから支援を受けて事業を始める。
- )民間金融機関と日本政策金融公庫による協調融資を受けて事業を始める。
- )すでに事業を始めている場合、事業開始時に1.)〜8.)のいずれかに該当していた。
【新規開業資金】
担保と保証人が必要になりますが、最大で7,200万円(うち運転資金は4,800万円)までの融資を受けることができます。
金利は低めに設定されており、返済期間は設備資金15年以内(据え置き期間3年以内)、運転資金5年以内(据え置き期間6カ月以内)という長期融資です。
新規開業資金を申請するためには1〜9のいずれかに該当しなければなりません。
- 現在の企業に継続して6年以上勤務している、または現在の企業と同じ業種に通算で6年以上勤務しており、新しく始める事業も同じ業種の事業である。
- 大学等で修得した技能等と密接に関連した職種に継続して2年以上勤務しており、その職種と密接に関連した業種の事業を始める。
- 技術やサービス等に工夫を加え多様なニーズに対応する事業を始める。
- 雇用の創出を伴う事業を始める。
- 産業競争力強化法に規定される特定創業支援事業を受けて事業を始める。
- 地域創業促進支援事業による支援を受けて事業を始める。
- 日本政策金融公庫が参加する地域の創業支援ネットワークから支援を受けて事業を始める。
- 民間金融機関と日本政策金融公庫による協調融資を受けて事業を始める。
- 事業開始後おおむね7年以内で1.〜8.のいずれかを満たしている。
その他のプランもバリエーション豊富
この他にも、次のような融資制度があります。
【女性、若者/シニア起業家支援資金】
女性または30歳未満か55歳以上で起業する人、または創業後おおむね7年以内の企業に、最大7,200万円(運転資金4,800万円)の貸付を行う。
【再挑戦支援資金(再チャレンジ支援融資)】
廃業歴等があり新たに事業を始める人、または創業後おおむね7年以内の企業に、最大7,200万円(運転資金4,800万円)の貸付を行う。
【生活衛生新企業育成資金】
生活衛生関係の事業を創業しようとする人、または創業後おおむね7年以内の企業を対象に次の貸付を行う。
- 振興事業貸付:振興計画認定組合の組合員に最大7億2,000万円(運転資金5,700万円)
- 一般貸付:設備資金最大4億8,000万円
【挑戦支援資本強化特例制度(資本性ローン)】
新規開業資金、女性、若者/シニア起業家支援資金、再挑戦支援資金等の対象者に、創業・新事業展開・海外展開・事業再生等に取り組む際の財務体質強化資金として、4,000万円の貸付を行う。
日本政策金融公庫は営利を目的とせず、多くの事業主に利用されるために設けられた金融機関であり、事業計画をもとに実績がない企業への融資を積極的に検討してくれます。
ただしその分、しっかりとした返済計画を立てなければなりません。
また特別な事情がない限り「資金不足で今月の返済日に返済できなかった」ということが2回続くと、その後、新規融資を受けることが難しくなります。
返済期間のラスト半年間は特に厳しくなり、1回でも返済が遅れると新規融資を受けることができなくなるため、注意が必要です。
逆に、問題なく返済をしていけば、担当者が自ら「手元資金を厚くしておきませんか」と新たな融資を提案してきたり、「新しい融資を受けませんか」と、自社に合った融資制度を紹介してくれることもあります。