個人事業主・フリーランスの方が支払うべき税金は、「所得税」「住民税」「消費税」「個人事業税」の4種類です。
この記事では、個人事業主・フリーランスをしていく上で必要な税金の基礎知識と、税金の計算方法、そして節税について見ていきます。
1.個人事業主・フリーランスが支払うべき4つの税金とその計算方法
個人事業主・フリーランスが支払うべき税金は次の4つです。
(1)収入額に対して課税される「所得税」 (2)居住する自治体に支払う「住民税」 (3)創業2年目以降で一定条件を満たすと支払う「消費税」 (4)業種や条件によっては支払う「個人事業税」 |
それぞれ、計算方法も一緒に見ていきましょう。
(1)収入額に対して課税される「所得税」
所得税は、収入金額に応じて、国に支払う税金(国税)の一つです。
事業の収入から必要な経費を除いた金額を「所得」と呼び、その所得の金額に対して税金が課されます。なお、年間の所得金額が基礎控除額と同じ38万円以下の場合には、所得38万円-基礎控除38万円=0円となり、所得税が課されません。
① まず課税対象となる「所得」を算出する
課税所得金額 = 事業収入 – 必要経費 – 基礎控除[一律38万円]
※ 課税所得金額は「所得金額 - 所得控除額」をしたもので1,000円未満の端数を切り捨てる。
② 所得に対し、控除を引いて、条件によって適用される税率をかける
所得税の金額 = 課税所得金額 × 適用税率 – 控除額
なお、「適用税率」と「控除額」は所得金額によって7段階に分かれています。
所得税の速算表
課税される所得金額 | 税率 | 控除額 |
195万円以下 | 5% | 0円 |
195万円を超え 330万円以下 | 10% | 97,500円 |
330万円を超え 695万円以下 | 20% | 427,500円 |
695万円を超え 900万円以下 | 23% | 636,000円 |
900万円を超え 1,800万円以下 | 33% | 1,536,000円 |
1,800万円を超え4,000万円以下 | 40% | 2,796,000円 |
4,000万円超 | 45% | 4,796,000円 |
参照:No.2260 所得税の税率 (国税庁ウェブサイト)より一部抜粋
(2)居住する自治体に支払う「住民税」
住民税は、1月1日時点で居住する自治体、つまり都道府県・市町村に対して支払う税金(地方税)の一つです。
住民税の金額は、前年の所得金額に応じて課される「所得割」と、一律に定額が課される「均等割」をあわせた金額となります。
均等割は、都道府県と市区町村で、別々に課税されます。そのため、道府県民には道府県民税(都民には都民税)と、市町村に居住する場合は市町村民税(それ以外は特別区民税) を合計したものが、均等割として課税される金額となります。年度によって額が変わり、地方自治体の防災対策などの目的で上乗せされるケースもあります。
住民税は、確定申告の際の「住民税に関する事項」を記載した内容から算出され、後日、住民税の通知がされるのが一般的です。
①まず、課税対象の前年の所得に応じて「所得割」を算出する
所得割 = 課税所得金額 × 自治体が定めた税率[基本は10%] – 税額控除
※ 市町村民税と都道府県民税は別で計算する。それぞれ100円未満の端数を切り捨てる。
②1月1日時点で居住する自治体に応じて「均等割」を算出する
均等割= 道府県民税[または都民税]+ 市町村民税[または特別区民税]
③所得税と均等割から、住民税の金額を算出する
住民税の金額 = 所得割 + 均等割
税率や控除などの詳細は、あなたの居住する自治体のウェブサイトなどで確認してください。
(3)創業2年目以降で一定条件を満たすと支払う「消費税」
一般的に、物品やサービスなどの取引に対して課税される国税の一つ「消費税」は、事業取引も対象です。
原則、創業2年目以降で、前々年または前々事業年度の課税売上高が1,000万円超となった場合、消費税を支払わなくてはなりません。
消費税の計算方法には、「本則課税」と「簡易課税」の2つがあります。本則課税が標準的な計算方法で、簡易課税は売上が少ない(課税売上高が5,000万円以下)場合の計算方法です。
簡易課税では、国税庁の定めた、業種によって異なる「みなし仕入率」を使って消費税を算出します。
※前年の1月1日~6月30日に課税売上高が1,000万円を超えると、課税事業者となる。
・創業2年目以降で、課税売上高が5,000万円を超えている
[本則課税]消費税 = 売上の消費税 – 経費の消費税
・創業2年目以降で、課税売上高が1,000万円以上5,000万円以下
[簡易課税]消費税 = 売上の消費税 – (売上の消費税 × 業種のみなし仕入率)
・創業2年目以降ではない、課税売上高が1,000万円を超えていない
原則、個人事業主・フリーランスの事業取引に対して消費税を支払う必要なし。創業の年には前々年の売上が存在しないため、支払うことはない。
(4)業種や条件によっては支払う「個人事業税」
業種や条件によっては個人事業に対して課税される地方税の一つ「個人事業税」を支払う必要があります。個人事業税の税率は、地方自治体や業種ごとに異なります。
個人事業税は、事業所得または不動産所得を対象に課されるもので、業種によっては課税されません。なお、1年以上事業を続けていれば、一律で290万円の事業主控除を受けることができます。
例えば、東京都で事業を営んでいる方で対象となっている業種と税率は次のとおりです。(参照:東京都主税局 個人事業税)
区分 |
税率 |
事業の種類 |
|||
第1種事業 (37業種) |
5% | 物品販売業 | 運送取扱業 | 料理店業 | 遊覧所業 |
保険業 | 船舶定係場業 | 飲食店業 | 商品取引業 | ||
金銭貸付業 | 倉庫業 | 周旋業 | 不動産売買業 | ||
物品貸付業 | 駐車場業 | 代理業 | 広告業 | ||
不動産貸付業 | 請負業 | 仲立業 | 興信所業 | ||
製造業 | 印刷業 | 問屋業 | 案内業 | ||
電気供給業 | 出版業 | 両替業 | 冠婚葬祭業 | ||
土石採取業 | 写真業 | 公衆浴場業 (むし風呂等) |
- | ||
電気通信事業 | 席貸業 | 演劇興行業 | - | ||
運送業 | 旅館業 | 遊技場業 | - | ||
第2種事業 (3業種) |
4% | 畜産業 | 水産業 | 薪炭製造業 | - |
第3種事業 (30業種) |
5% | 医業 | 公証人業 | 設計監督者業 | 公衆浴場業 (銭湯) |
歯科医業 | 弁理士業 | 不動産鑑定業 | 歯科衛生士業 | ||
薬剤師業 | 税理士業 | デザイン業 | 歯科技工士業 | ||
獣医業 | 公認会計士業 | 諸芸師匠業 | 測量士業 | ||
弁護士業 | 計理士業 | 理容業 | 土地家屋調査士業 | ||
司法書士業 | 社会保険労務士業 | 美容業 | 海事代理士業 | ||
行政書士業 | コンサルタント業 | クリーニング業 | 印刷製版業 | ||
3% | あんま・マッサージ又は指圧・ はり・きゅう・柔道整復 その他の医業に類する事業 |
装蹄師業 |
①収入から経費、控除などを差し引いた上で、所定の税率をかける
個人事業税 = (事業収入 – 必要経費や専従者給与 – 事業主控除などの控除額) × 所定の税率
2.個人事業主・フリーランスの節税5つ
個人事業主・フリーランスで節税したいと思ったら、ポイントは5つです。
(1)自分で帳簿を管理して確定申告する(青色申告特別控除) (2)条件によって当てはまる控除を活用する(配偶者、扶養、専従者控除) (3)控除に利用できる保険に入る(保険関連の控除) (4)寄付やふるさと納税をする(寄付関連の控除) (5)税理士や相談窓口などの税の専門家に相談する |
(1)自分で帳簿を管理して確定申告する(青色申告特別控除)
確定申告をするときは、個人事業主自身が帳簿を作成・管理することで最大65万円の控除を受けられる「青色申告」を選びましょう。青色申告をするためには青色申告承認申請書を税務署に提出する必要があります。特に何もせずに確定申告をすると「白色申告」となります。
青色申告の控除額には65万円と10万円の2パターンがあります。65万円の控除を受けるには複式簿記での記帳が必須ですが、10万円の控除を受けるには簡単な帳簿づけでよいため、多少簿記の知識があれば対応できます。
個人事業主・フリーランスの確定申告について確認されたい方は次もあわせてご覧ください。
(2)条件によって当てはまる控除を活用する(配偶者、扶養、専従者控除)
条件によって当てはまる税金が免除される「控除」を活用しましょう。
所得税の控除で有名なのは、配偶者控除と扶養控除でしょう。
配偶者が一定の条件を満たしている場合は「配偶者控除」として38万円の控除を受けられます。配偶者が働いていない場合は無条件で、働いている場合は、年間の合計所得金額が38万円以下(つまり所得控除65万円を含めた給与103万円以下)で控除対象の条件を満たすことになります。
俗にいうパートやアルバイトにおける「103万の壁」というのは配偶者控除、所得税のかからない収入ラインのことを指します。
「扶養控除」も似たようなもので、一定の条件を満たした子どもや老親などの扶養親族がいる場合は最大58万円の控除を受けられます。
配偶者や親族に対して支払った給与分が控除される「専従者控除」は、確定申告で見られます。白色申告では給与設定や条件によって専従者控除があり、青色申告では経費として扱うことができるなど、優遇されます。
(3)控除に利用できる保険に入る(保険関連の控除)
控除に利用できる保険を選ぶことも節税につながります。
例えば、個人事業主・フリーランス向けの退職金制度である「小規模企業共済」は、掛け金を1か月あたり1000円~7万円の間で自由に設定が可能で、その全額が控除対象になります。個人事業主・フリーランスの老後の備えになる「国民年金基金」は、掛け金を社会保険料控除の対象にできます。
(4)寄付やふるさと納税をする(寄付関連の控除)
寄付をすることも、所得控除の対象となります。
例えば、自身の居住とは異なる地方自治体に対して税金を納める「ふるさと納税」は寄付金の扱いになり、所得控除の対象です。控除の限度額は住民税の約2割であるため、節税額そのものは決して多くはありませんが、納税先を自由に選び、地方の支援ができる満足感や、地域の名産品などの特典によって、節税以上のメリットを感じるケースが多いようです。
(5)税理士や相談窓口などの税の専門家に相談する
本気で節税するなら、控除以外にも見直すべき要素はあります。効率を求めるなら、税理士や相談窓口など、税に詳しい専門家に相談してみるのもいいでしょう。税理士なら、それなりに費用はかかりますが、あなたの事業のケースにフィットした提案をしてもらえるはずです。
相談窓口は、あなたの居住する地域の自治体が推薦しているところや、国が認定する認定支援機関などがおすすめです
まとめ
個人事業主・フリーランスとして年間所得38万以上なら所得税は必須、住民税は収入問わず必須、消費税と個人事業税は条件に当てはまった場合は必須、という点は押さえておきましょう。
何より、個人事業主・フリーランスで節税するためには、日々、経費かそうでないか、控除になるかならないか、といった見極めが重要になってきます。できるところから、節税をはじめましょう。