個人事業主として事業を行ってれば、確定申告を行って「税金って高いなあ」って感じたことは一度はあると思います。
そして、なんとか少なくする方法はないかと「節税」について考えたことがあるのではないでしょうか。
今回は個人事業主が節税するために、おさえておきたい基礎知識を中心に解説します。
また、簡単で効果のある節税についてご紹介していきます。節税できる所はしっかり節税しましょう。
個人事業主の税金で一番節税すべきなのは?
まず、個人事業主の負担する税金は、次の通りです。
- 所得税
- 個人住民税
- 個人事業税
- 消費税
- 印紙税
この中で一番負担金額が大きく、節税の効果が出るのは「所得税」です。そのため、紹介する節税対策も、主に所得税に関する対策です。
しかし、所得税の話の前に、まずは確定申告の種類の変更による節税ポイントから解説しましょう。
確定申告を青色申告に変更しての節税ポイント5つ
確定申告の種類の変更で節税できます。白色申告の方(青色申告承認申請していない方)は、青色申告へ変更しましょう。
確定申告を青色申告に変更すると、次のような節税ができます。
節税ポイント1:最大65万円の控除が受けられる
確定申告の手続きで、税がかかる所得(収入)から差し引くことができること、またはその金額のことを「所得控除」[略:控除(こうじょ)]と呼びます。所得税は、収入が多い人ほど高い税金になる仕組み(累進課税:るいしんかぜい)であるため、控除の金額が大きいと、それだけ税金が安く済みます。
まず、白色申告から青色申告に変更するだけで、課税所得から最大10万円の控除が受けられます。
さらに、複式簿記での記帳、確定申告時に貸借対照表と損益計算書を税務署に提出すれば、最大65万円の控除が受けられます。
つまりは、最大65万円分を損金(会計上の経費)にできるのです。
現在、白色申告も、単式帳簿をつける義務があるため、青色申告承認申請をしていないと損しています。
また、複式簿記の帳簿付は会計ソフトウェアやクラウドサービスで簡単にできるので、ぜひ控除額が大きい複式簿記にしましょう。
節税ポイント2:家族を雇ったときの節税効果が高い
事業の従業員(専従者:正式名称・青色事業専従者)を雇うと、その給料を経費にでき、税金がかかる金額(課税所得)を低くできる仕組みがあります。
青色事業専従者とは、事業主(青色申告する人)と生計を一にしている配偶者や年齢が15歳以上の親族で、その専業で従業員をしている人のことです(*)。その人に支払った給与は、事前に提出した届出書にある金額の範囲内で対価として適正な金額であれば、必要経費に含められます。
なお、青色事業専従者として給与の支払を受ける場合は、控除対象配偶者や扶養親族にはなれません。届け出は、事業専従者を雇った日から2か月以内にしなければなりません。
*青色事業専従者については、「No.2075 専従者給与と専従者控除|国税庁ウェブサイト」をご参照下さい。
節税ポイント3:3赤字を年間、繰り越せる
個人事業主で青色申告している場合、「純損失」(利益が赤字)を確定申告することにより、翌年以後3年間に出る黒字金額から差し引くことができます(純損失の繰越控除と繰戻控除を適用)。そのため、翌年の利益から前年のマイナス分を差し引くことができ、節税になります。よくある「開業時に赤字で、その後黒字になった」ケースで節税できるのです。
また、今年赤字で、前年も青色申告をしているケースでは、今年の赤字を前年に繰り戻して、前年分の所得税の還付(納めた税金が戻る)を受けることもできます。
節税ポイント4:予測される支出や損失分を費用にできる
従業員の賞与(ボーナス)や未回収の売掛金での貸倒れなど、予測される支出や負債として扱うことができます(引当金)。当期の決算でその将来の費用として扱えるため、引当金を設定した最初の年度は、事業所得の金額を少なく申告でき、節税になるのです。
節税ポイント5:パソコンや事業用車など30万円未満の資産を経費にできる
パソコンや事業用車など、事業で必要なものを購入したときに、その年度で費用扱いにできるのは通常、10万円以下のものだけです。10万円を超えたものを購入したら、資産として耐用年数に応じた年ごとに少しずつ経費にしていきます(減価償却)。パソコンなどの形のある有形資産も、ソフトウェアなどの形のない無形資産も同様です。
なお、青色申告では減価償却の特例があります。一定の要件(*)を満たすことで、購入価額が30万円未満の減価償却資産について、購入した年度に全額、経費として扱えるのです。
- 特例の条件:2006年4月1日から2022年3月31日までに購入した減価償却資産であること
- 限度額:年間の減価償却資産合計額300万円
*一定の要件は、「No.5408 中小企業者等の少額減価償却資産の取得価額の損金算入の特例|国税庁ウェブサイト」をご参照下さい。
ぜひこの機会に青色申告へ変更しましょう!
青色申告については、「No.2070 青色申告制度|国税庁ウェブサイト」をご参照下さい。
青色申告への変更方法は、「所得税の青色申告承認申請書」を税務署に提出します。青色申告承認申請書は,青色申告をしようとする年の3月15日までに提出する必要があります。また、その年の1月16日以後に新規開業をした人は、開業日から2ヶ月以内に申請書を提出する必要があります。
青色申告承認申請手続については、「[手続名]所得税の青色申告承認申請手続|国税庁ウェブサイト」をご参照下さい。
白色申告と青色申告の違いのまとめ
白色申告と青色申告の違いをまとめると次の通りです。
所得税での節税の基本・9つの費用
個人事業主の所得税はどう計算されるのかをおさえましょう。所得税は次の式で計算されます。
所得金額=収入-必要経費
所得税額=(所得-各種所得控除)×税率
納税額=所得税額ー税額控除
この中で、個人事業主が対応できる「必要経費」「各種所得控除」について、所得税額を減らせる部分がないかを見直しましょう。
所得税の節税の基本1:必要経費
節税で最初に行うべきことは「面倒臭がらず細かいものも必要経費としてもれなく扱う」と決意することです。必要経費がどこまで認められるのかをしっかり理解しておきましょう。
必要経費とは、事業で使う経費です。主に必要経費となるのは、次のものです。
- 事務所経費:家賃、光熱費、通信費など
- 消耗品費:文房具、コピー用紙、インク代、パソコン用品など
- 什器・備品の費用:パソコン、周辺機器、ソフト代、自動車など
- 旅費交通費:電車、バス代など
- 交際費:接待費、会議費
所得税の節税の基本2:事務所経費
個人事業主の場合は、自宅に事務所を構えるケースが多いですが、家賃は「その事務所と住居部分の面積の割合」で計算します。火災保険なども同じ割合で経費になり、また住宅ローンが有る場合、その利息のみ、同じ割合で経費となります。
税務署に必要経費として認めてもらうには、明確に住居と区別する必要があるため、仕事専用部屋を用意しましょう。
しかし「生計を一つにする」親や親族へ支払う家賃は経費にできません。「生計を一にする」とは、所得者本人の稼ぎで家族が暮らしをしてることです。
水道、光熱費や通信費については、家庭と仕事で使う比率で計算します。比率は事業主が決めて構いません。税務署で聞かれた時に、妥当と判断されれば問題ありませんが、全額を経費でまかなおうとしても妥当と判断されないので、気をつけましょう。
所得税の節税の基本3:事業用車(自動車)の費用
専用の事業用車を持てればよいですが、個人事業主ではなかなか厳しいです。自家用車を事業用車として使用するなら、自動車にかかる費用の場合も、家庭と仕事で使う比率で計算します。月または週で何日仕事で使用するかなどで計算しましょう。
- ガソリン代
- 駐車場代
- 修理費
- 車の税金、保険料
また、仕事で使用した「高速代」「駐車代」は、全額経費として扱えます。
所得税の節税の基本4:消耗品費
仕事で使用する文房具、コピー用紙、パソコン用品などは全て経費と認められています。また、10万円未満の物品は経費と認められ、10万円以上の物品は資産となります。機材や備品の修理費や保守費も経費になります。
所得税の節税の基本5:什器・備品の費用
什器(じゅうき)とは、日用品や器具、家具などを表す、会計処理上の呼び方です。備品とは、会計処理上は、椅子、机、キャビネット、電子機器などの備え付けの物品のことを指します。什器・備品ともに10万円以上だと、耐用年数によって1年分の金額が経費になります(減価償却費)。
繰り返しになりますが、青色申告の特例で、30万円未満の減価償却資産については、一定の条件で購入時に全額経費にできます。
所得税の節税の基本6:旅費交通費
交通費は、電車の切符代などです。領収書がない場合、必ずルートと金額をメモしておきましょう。事業で必要な備品などを買いに行った交通費も、経費になります。
所得税の節税の基本7:交際費
仕事の関係者の接待を兼ねた会食は経費となりますので、必ず領収書を入手しましょう。仕訳するなら勘定科目は「接待交際費」です。割り勘の場合であっても入手しましょう。
仕事の打ち合わせ・ランチミーティングも経費となります。仕訳するなら勘定科目は「打合会議費」です。
所得税の節税の基本8:その他に事業に必要なものの費用
その他に事業に必要なものの費用も、経費になります。
- 情報、資料代
- 新聞、雑誌、書籍代(業務に直接必要な専門誌など)
- セミナー受講料(業務に直接必要なテーマ)
- 通信教育費(※業務に直接必要なテーマ)
- サンプル購入費
所得税の節税の基本9:経費にならないもの
事業に関係する費用でも、経費にならないものもあります。
- 所得税、住民税(*事業税は経費になります)
- 罰金(駐車違反の罰金など)
- 借入金の返済金(*利子は経費となります。しかし同居及び生計を一つにする親族からの借入金の利子は、経費になりません。)
- 健康保険料、国民年金(*所得控除の対象となります。)
老後対策を兼ねた節税:小規模企業共済
老後対策を兼ねて、小規模企業共済に加入することで節税できます。
小規模企業共済とは、独立行政法人中小企業基盤整備機構の共済制度で、小規模企業の個人事業主が事業を廃止した場合や、会社役員が役員を退職した場合など、それまで積み立てた掛金に応じた共済金を受け取れる共済制度で、国の「経営者の退職金制度」です。年金形式でも退職金としても受け取れます。掛金は、最大月7万円で、年間で84万円で全額「小規模企業共済等掛金控除」を受けることができます。
まとめ
確定申告の種類、所得税、老後対策を兼ねた節税、という簡単で効果のある節税についてご紹介しました。
節税のために、基本的な必要経費にはどんな物があるか、どの程度認められているか、しっかりおさえましょう。
節税には、面倒くさがらず、どんな少額のものでも費用にできるなら必要経費にすることです。領収書は忘れず入手しましょう。また、領収書の出ない物については、メモしましょう。特に交通費については、必ずルートと金額をメモすることが重要です。
かんたんに始められる会計ソフトウェアやクラウドサービスを活用し、日々少しずつ経費を入力していく習慣をつけ、決算や確定申告の時にあわてず余裕をもって対応しましょう!