資金調達
銀行融資の面談における7つの準備項目を解説
資金調達

事業資金の融資を受ける人にとって、銀行との面談は避けて通れないステップです。面談の前には「どの書類を準備すれば良いのか」や「当日はどんな質問をされるのか」など、さまざまな不安を抱えている人もいるのではないでしょうか。
当記事では、銀行融資の面談を控える事業者に向けて、押さえておきたい7つの準備項目を具体的に解説します。必要書類や想定質問への対応、信用を高めるポイントなどを順に紹介するので、面談前に準備を整えておきたい人はチェックリストとしても活用してみてください。
面談に向けて準備しておくべき7項目
銀行融資の面談を成功させるためには、あらかじめ何を準備すべきか知っておくことが大切です。準備が不十分だと伝えたいことが伝わらず、せっかくの融資のチャンスを逃してしまう恐れもあるため、まずは面談前に必要な準備項目を確認しましょう。
<銀行融資の面談前に準備しておくべき7項目>
準備項目 | 内容 |
①必要書類の整理 | 決算書、試算表、借入申込書などをリスト化し、不備なく揃えておく |
②事業概要と自己紹介の準備 | 自社の特徴や代表者の経歴を簡潔に伝えられるように整理しておく |
③資金使途と返済計画の明確化 | 借入金の使い道と返済方法を具体的に説明できるようにしておく |
④想定質問と回答の用意 | 銀行担当者からの質問を洗い出し、的確にこたえられるよう準備しておく |
⑤事業の強みと今後の展望の整理 | 事業の優位性や成長戦略をわかりやすく言語化しておく |
⑥服装と持ち物による第一印象対策 | 清潔感のある服装を心がけ、派手な装飾品や高価な持ち物は避けて堅実な印象を持たれるように心がける |
⑦銀行とのやり取り履歴の確認と整理 | 事前に銀行とやり取りがある場合は、過去の相談内容や提出済み書類を振り返り、面談時に話の一貫性を保てるようにしておく |
たとえば、必要書類に記載ミスがある場合や最新のデータが提出されていない場合、準備不足と見なされ、信用に影響を及ぼす可能性があります。書類の不備は、他の説明内容の信頼性にも疑念を持たれるきっかけになるため、注意しなければなりません。
また、銀行融資の面談では、服装や持ち物を含めた第一印象も評価に影響します。華美な服装や高価な装飾品を身につけていると、資金の使い道に対する堅実さに不安を抱かれる可能性があります。
銀行融資の面談で担当者に好印象を与えて円滑に進めるためには、各準備項目のポイントを整理し、着実に備えておくことが必要です。準備項目の全体像を押さえたら、次はそれぞれの項目を詳しく確認してみましょう。
①必要書類の整理
銀行融資の面談では、提出書類に不備や不足があると信頼性を損なうだけでなく、審査にも悪影響を与える可能性があります。必要書類は事前に整理し、抜け漏れのないよう揃えておくことが基本です。
<銀行の面談までに整理しておく必要書類>
必要書類 | 概要 |
2期分の決算書 |
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月次試算表 |
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借入申込書 |
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事業計画書 |
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通帳の写し |
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納税証明書 |
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定款、登記簿謄本 |
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たとえば、最新の試算表が提出されていなかったり、決算書に税理士の確認印がなかったりすると、経営の管理体制を懸念される恐れがあります。試算表や決算書の整備状況は、業務の正確さや経営者の意識を判断するうえで重要視されます。
また、通帳に売上の入金が記帳されていなかったり、個人の私用口座と混在していたりすると、資金管理がずさんだと見なされる可能性があります。資金の流れを明確に示すことで、事業の実態や収支の透明性が伝わりやすくなります。
銀行の融資担当者は、まずは提出された書類から返済能力や事業の健全性を評価します。書類に誤りや不足があると、信頼を損ない審査に不利となることもあるため、事前に提出を求められた書類も含めて最新の情報に目を通し、当日に備えて控えや補足資料を準備しておくことが大切です。
②事業概要と自己紹介の準備
銀行融資の面談では、事業の全体像や経営者自身の人物像を、短時間でわかりやすく伝える力が求められます。銀行の担当者は、財務状況だけでなく、事業の将来性や経営者への信頼感を総合的に判断して融資の可否を決めています。
<事業概要と自己紹介で整理しておく項目>
準備項目 | ポイント |
事業の概要 | 事業内容、主要商品、対象顧客、市場の特徴などを簡潔に説明できるようにする |
創業の経緯 | 何故この事業を始めたのかや、どのような背景や思いがあるのかを簡潔に整理する |
売上構成と主な取引先 | 主要な売上の内訳、収益源の安定性、主要取引先の継続性を伝え信頼を得る |
代表者の経歴 | 業界経験、資格、過去の実績など、事業との関連性が伝わる内容を整理しておく |
経営方針・目標 | 今後の事業方針や取り組む課題、中期的な見通しなどをわかりやすくまとめておく |
たとえば、事業内容を「食品小売業」とだけ説明しても抽象的で伝わりにくく、面談担当者の印象にも残りません。一方で「地域の高齢者向けに、配達サービス付きで無添加食品を提供している」と伝えれば、誰に、何を、どのように提供しているのかが明確になり、事業の特徴が伝わりやすくなります。
また、経営者の自己紹介においても「営業経験10年」といった表現だけでは伝わりづらいことがあります。そこで「前職では月間売上トップを2回獲得」といった具体的な数字や成果を交えることにより、経営スキルや実行力を明確に伝えることが可能です。
事業概要と自己紹介は、数字だけでは伝わらない熱意や姿勢、事業の独自性などを伝えられる項目です。メモに要点をまとめて口に出して練習しておくことで、面談当日も落ち着いて話すことができ、事前の不安や緊張の解消にもつながります。
③資金使途と返済計画の明確化
銀行融資の面談では、借りた資金を何に使い、どのように返済していくのかを明確に説明することが求められます。資金の使い道や返済の見通しがあいまいなままだと、返済能力への不安を抱かれ、融資が見送られる可能性があります。
<資金使途と返済計画で整理しておく項目>
準備項目 | ポイント |
資金使途の内訳 | 設備投資、仕入れ、広告費などの使い道を具体的に分け、金額を明示しておく |
根拠となる資料 | 設備費には見積書、仕入費には請求書などの裏付けとなる書類を添えて説明する |
返済計画 | 借入金額に対して月々の返済額や期間を事業収支に基づいて試算しておく |
資金繰りの見通し | 融資後の資金の流れを月単位で整理し、無理のない返済ができることを示す |
たとえば、飲食店の設備投資費を申請する場合「店舗改装のために300万円」と伝えるだけでは説明が不十分な印象を与える可能性があります。具体的な明細を交えて「内装工事に150万円、冷蔵ショーケースに80万円」と示すことにより、資金使途の妥当性をより明確に伝えることができます。
また「毎月売上から20万円を返済に充てる予定」といった返済シミュレーションを提示することで、計画性や返済能力の裏付けになります。資金繰り表や事業計画書と整合性を持たせることにより説明の一貫性が高まり、説得力のある内容になります。
資金使途と返済計画の説明は、銀行が面談の際に注視する項目のひとつです。面談では口頭での説明を求められることが想定されるため、数字と根拠資料をもとに、簡潔かつ自信をもって話せるように準備しておきましょう。
④事業の強みと今後の展望の整理
銀行融資の面談では、事業の将来性や収益の見通しが評価の対象となります。自社の強みと今後の展望を整理しておくことで、持続的な成長が期待される事業として銀行に伝わりやすくなります。
<事業の強みと今後の展望で整理しておく項目>
準備項目 | ポイント |
競合との差別化要素 | 商品やサービスの独自性、技術、立地、サポート体制など、他社との相違点を具体的に示す |
顧客からの評価 | リピート率や口コミ、紹介件数など、顧客との関係性や信頼につながる情報を用意する |
実績や成長の兆し | 売上の推移、新規取引先の増加、反響のあった施策などを数値とともに示す |
今後の展望 | 新規出店、事業拡大、販路の多様化、ITの導入など、実施予定の取り組みを明確にしておく |
課題と対応策 | 現在直面している課題と、それに対する具体的な対応策を簡潔にまとめておく |
たとえば、小売店が競合との差別化を伝える際に「地域密着型の小規模スーパーです」とだけ話しても、銀行担当者には特徴が伝わりづらい可能性があります。「半径1km圏内に競合がなく、買物に困る高齢者層に向けて無料配送を行っている」と具体的に伝えることで、地域性と事業の役割が明確になります。
また、実現可能性のある計画を示すことで、銀行側にも前向きな印象を与えることができます。「紹介制度の強化」や「EC販路の拡大」など、時期や手段が明確な施策は現実的な展望として評価されやすくなります。
将来の方向性と自社の強みを結び付けて整理しておくことは、面談での説明に一貫性を持たせるうえでも有効です。数字や取り組み内容をあらかじめまとめておくことで、質問への対応もしやすくなり、話の流れも自然に伝えられるようになります。
⑤想定質問と回答の用意
銀行融資の面談では、担当者からさまざまな質問を受けることが想定されます。あらかじめ良く聞かれる質問と回答を整理しておくことで、面談当日に落ち着いて受け答えしやすくなります。
<銀行から良く聞かれる質問と回答のポイント>
想定される質問 | ポイント |
なぜこの資金が必要なのか? | 資金使途の具体性と背景を整理して説明できるようにしておく |
借入後の売上見通しはどうか? | 売上予測とその根拠となる見積もりや計画を事業計画書の内容と整合させておく |
競合と比較した時の強みは? | 差別化のポイントや顧客からの評価、実績などを具体的に示せるようにしておく |
返済が厳しくなった場合は? | 資金繰りの見直しや支出削減策、他の資金調達方法などを事前に想定しておく |
たとえば、なぜこの金額が必要なのかと聞かれた際に、根拠資料を持たずに金額だけを答えてしまうと、信頼性に欠ける印象を与えかねません。「設備投資に150万円、販売促進費に80万円」といった内訳を明確にし、資料を提示しながら説明することで、資金使途の妥当性が伝わりやすくなります。
また、返済が厳しくなった場合の対策を聞かれた際に備えて、資金繰りの見直し方法や支出削減策、別の資金調達手段などを準備しておくことも必要です。「販促費を一時的に抑える」「既存取引先との支払い条件を見直す」など現実的な対応策を挙げることで、リスク管理への意識が伝わります。
面談で想定外の質問をされたとしても、準備してきた内容と結び付けて答えることにより、冷静に対応できる印象を持たれやすくなります。一問一答形式での練習に加えて、想定される話の流れもイメージしておくことで、自信をもって本番に臨むことができます。
⑥服装と持ち物による第一印象対策
銀行融資の面談では、話す内容だけでなく、身だしなみや持ち物も評価に影響を与えることがあります。服装や持ち物などによる第一印象が信頼感や誠実さに直結することもあるため、外見の印象を整えておくことも重要な事前準備のひとつです。
<面談前に確認しておく服装と持ち物>
項目 | チェックポイント |
服装 |
|
靴、カバン |
|
装飾品 |
|
書類の整理 |
|
たとえば、面談の服装選びでは、誠実で約束を守れる人に見えるかどうかがポイントになります。基本的には、紺やグレーなどの落ち着いた色味の無地スーツが信頼感や冷静さを印象付ける装いとして適しています。
また、高級ブランドの時計やロゴが目立つバッグ、宝石付きのアクセサリーなどは、資金使途の感覚に不安を抱かれる要因になることがあります。見た目の派手さよりも、堅実に経営を行う人物かどうかという印象が重視されます。
銀行の面談では「この人は約束を守れるか」「期間を守って返済できるか」といった視点で評価されることを意識しておく必要があります。面談当日は、誠実さや落ち着きを感じさせる装いを心がけましょう。
なお、面談時に黒のスーツを選ぶ人もいるかもしれませんが、黒は冠婚葬祭などフォーマルな場で着用される色とされ、ビジネスシーンではやや重たい印象を与えることがあります。堅実で信頼感のある印象を与えるには、紺やグレーといった落ち着いた色味のスーツを選びましょう。
⑦銀行とのやり取り履歴の確認と整理
銀行融資の面談では、面談前のやり取りの内容と当日の発言に矛盾がないかどうかも見られています。事業者と銀行は面談前に数回のやり取りをしてから面談となる流れであり、資料の提出や事前相談が行われていることもあるため、これまでに連絡を取った履歴の整理が欠かせません。
<面談前に整理しておく銀行とのやり取り履歴>
内容 | 想定されるやり取り例 |
初回相談 | 電話や問合せフォームで融資を検討している旨を伝える |
資料提出依頼 | 銀行側からメールでの決算書や試算表などの送付を求められる |
事前ヒアリング | 銀行側から事業者の業種や借入目的、希望金額などを簡単に確認される |
日程調整 | 面談候補日のやり取りや時間の調整を行う |
たとえば、事前の相談で資金使途を「設備資金」と伝えていた事業者が、面談時に「運転資金」の借入として話を進めてしまうと、前回のやり取りとの整合性が取れず、準備不足と判断される可能性があります。あらかじめメールや電話の履歴を振り返っておくことで、説明に一貫性を持たせることができます。
また、提出した資料が手元にない状態では、面談中に内容を正確に確認できず、受け答えが滞る原因となることもあります。必要な書類や送付済みの情報は、ファイルやフォルダで整理しておき、当日にすぐ取り出せるように準備しておくと安心です。
面談前からのやり取り履歴を確認しておくことで、これまでの内容と矛盾のない一貫性が保たれた説明ができるようになり、面談時の説得力が高まります。当日に慌てないためにも、過去の相談内容や提出資料には必ず目を通しておきましょう。
再面談の案内が来た時の対応方法
銀行の面談を終えた後日に再面談の案内があった場合は、戸惑いや不安を感じる人もいるかもしれません。しかし、再面談は必ずしも融資が否定的な方向に進んでいることを意味するわけではないので、対応方法を確認してみましょう。
<再面談の目的と対応のポイント>
再面談の目的 | 対応のポイント |
数字や計画の追加確認 | 売上見込みや返済原資の根拠となる資料を補足する |
言葉の行き違いの修正 | 前回の説明と矛盾がないか、メモや資料を再確認しておく |
融資条件の調整や再検討 | 借入金額や期間、担保の希望を再確認し、柔軟な対応方針を用意する |
たとえば、前回の面談で銀行の担当者が数字の根拠をもう少し詳しく聞きたいと感じていた場合、再面談ではその点の丁寧な説明を求められることがあります。その際は、資料や簡単なシミュレーションを用意しておくことでやり取りがスムーズになり、前向きな印象を与えることができます。
再面談は、以前の面談内容の確認や追加説明を求める前向きな目的で実施される場合が多く、前回の説明をさらに深掘りする機会として捉えると良いでしょう。当日は、言葉遣いや姿勢に注意しつつ、落ち着いて丁寧に対応することが担当者からの信頼につながります。
再面談は、融資の可否を判断する最終的な場となります。融資担当者から求められる可能性のある資料や前回不足していた情報を用意し、前回の面談内容や提出資料と矛盾のない状態で対応できるように準備して臨んでください。
まとめ
銀行担当者との面談は、融資を受ける上で避けて通れない過程です。必要書類の準備や想定質問への対応だけでなく、信頼感を与える服装や態度まで含めて丁寧な準備が求められます。
銀行融資の面談では、提出書類や事業説明、返済計画といったあらゆる情報の一貫性と整合性が見られています。銀行側に安心感を与えるためには、明確なデータとわかりやすい説明を準備しておく必要があります。
また、想定問答や第一印象への配慮といった非財務的な準備も評価に影響する点は見落とせないポイントです。形式だけでなく「人となり」も含めて判断されるため、誠実な姿勢や話し方も意識しておきましょう。
面談の日から数日後に再面談の案内が来た際は、追加の確認や条件のすり合わせが目的である可能性が高く、否定的にとらえる必要はありません。融資担当者から求められる可能性のある資料や前回不足していた情報を十分に用意して臨みましょう。
この記事を書いたライター

ソラボ編集部
資金調達の可能性を無料で診断
8,000件の資金調達実績を持つSolaboの専門家が、融資や補助金など、事業課題に合わせた資金調達方法を提案します。
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