会計処理
ファクタリングの会計処理はどう行う?仕訳方法と勘定科目を解説
会計処理

売上や仕入など事業において経済的な取引が発生した際には、取引を帳簿に記録する会計処理を行います。ファクタリングを利用した場合においても取引によって会社の財務状況に変化が生じるため、ファクタリングの会計処理が必要になります。
当記事では、ファクタリングの会計処理について解説します。ファクタリングの取引例を挙げながら仕訳方法や使用する勘定科目についてを紹介しているので、ファクタリングの会計処理を行う際の参考にしてみてください。
ファクタリングの会計処理はサービスの種類に応じて行う
ファクタリングの会計処理はファクタリングサービスの種類に応じて行います。ファクタリングには利用目的に応じた数種類のサービスがありますが、サービスの種類によって発生する取引の内容は異なるためです。
たとえば、ファクタリングサービスの種類として買取ファクタリングが挙げられます。買取ファクタリングは資金調達を目的としたサービスで、ファクタリング会社と利用者の間において売掛債権の売買(譲渡)契約に関する取引が発生します。
また、ファクタリングサービスの種類として保証ファクタリングが挙げられます。保証ファクタリングは売掛債権の貸倒による損失を軽減することを目的としたサービスで、ファクタリング会社と利用者の間において売掛債権の保証契約に関する取引が発生します。
ファクタリング会社と利用者の間に発生する取引や内容が異なる場合、帳簿への仕訳方法や使用する勘定科目もそれぞれ異なります。ファクタリングの会計処理を知りたい人は、ファクタリングサービスの種類ごとに会計処理の方法を押さえていきましょう。
会計処理を行う前に売掛債権が発生したときの仕訳を確認しておく
ファクタリングの会計処理を行う前に、売掛債権が発生したときの仕訳を確認しておきましょう。ファクタリングの会計処理はいずれの種類においても、売掛債権が発生したときの仕訳が起点となるためです。
たとえば、ファクタリング会社に売却(債権)した売掛債権が、取引先に対して保有していた100万円の売掛金であった場合、発生時の仕訳は以下の通りです。
<売掛金が発生したときの仕訳>
借方 |
金額 |
貸方 |
金額 |
売掛金 |
1,100,000 |
売上 |
1,000,000 |
(仮受消費税) |
100,000 |
ファクタリングの会計処理を行う前は、帳簿の借方に売掛金、貸方に売上と仕訳が行われています。売掛金が発生した仕訳において仕訳方法や売掛金の金額に誤りがないかを事前に確認した上で、ファクタリングで発生した取引の内容を反映させましょう。
買取ファクタリングの会計処理
買取ファクタリングでは、ファクタリング会社との間に売掛債権の売買(譲渡)契約に関する取引が発生します。買取ファクタリングの会計処理は、以下のタイミングで発生した取引に対して行います。
<買取ファクタリングの会計処理を行うタイミング>
- ファクタリング会社と売買(譲渡)契約を交わしたとき
- ファクタリング会社から譲渡代金が入金されたとき
- 売掛債権の支払期日を迎えたとき
買取ファクタリングを利用した人は、各タイミングにおける取引の仕訳方法と使用する勘定科目を確認していきましょう。
ファクタリング会社と売買(譲渡)契約を交わしたときの仕訳
買取ファクタリングを利用した際は、まずファクタリング会社と売買(譲渡)契約を交わしたときの取引を帳簿に記録します。たとえば、買取ファクタリングを利用し、売掛金110万円の売買(譲渡)契約をファクタリング会社と交わしたときの仕訳は、以下の通りです。
<売買(譲渡)契約を交わしたときの仕訳例>
借方 |
金額 |
貸方 |
金額 |
未収入金 |
1,100,000 |
売掛金 |
1,100,000 |
ファクタリング会社と売買(譲渡)契約を交わすことによって、利用者は譲渡代金を得ます。譲渡代金の勘定科目には未収入金を使用し、借方に未収入金、貸方に売掛金と仕訳します。
未収入金とは、固定資産や有価証券、不動産などを売却したときの未回収代金に用いられる勘定科目のことです。ファクタリングの会計処理では、ファクタリング会社から譲渡代金が入金されるまでに期間がある場合に使用します。
ファクタリング会社から譲渡代金が入金されたときの仕訳
つぎに、ファクタリング会社から譲渡代金が入金されたときの取引を記録します。たとえば、ファクタリング会社から入金された譲渡代金が利用手数料の10万円が差し引かれたあとの金額であった場合、以下のように仕訳します。
<譲渡代金が入金されたときの仕訳例>
借方 |
金額 |
貸方 |
金額 |
普通預金 |
1,000,000 |
未収入金 |
1,100,000 |
売上債権売却損 |
100,000 |
ファクタリング会社から手数料が差し引かれた譲渡代金100万円が普通預金口座へ入金されたため、借方に普通預金、貸方に未収入金と仕訳します。加えて、ファクタリング会社へ支払いを行った手数料を借方に仕訳します。
ファクタリングの利用手数料には「売上(売掛)債権売却損」という勘定科目を使用します。売上(売掛)債権売却損とは、売掛債権を売却(譲渡)した際に生じた損失のことを指し、会計上では費用に分類されます。
契約日と入金日が同日であった場合は集約する
ファクタリングの契約形態によっては、ファクタリング会社と売買(譲渡)契約を交わしたその日のうちに譲渡代金が入金されることがあります。即日入金と呼ばれ、おもに2社間ファクタリングの契約で行われる取引です。
即日入金が行われた場合は、売買(譲渡)契約を交わしたときと譲渡代金が入金されたときの仕訳を集約します。たとえば、ファクタリング会社と売掛金110万円の売買(譲渡)契約を2社間ファクタリングで行い、譲渡代金が即日入金された際の仕訳は以下の通りです。
<契約日と入金日が同日であったときの仕訳例>
借方 |
金額 |
貸方 |
金額 |
普通預金 |
1,000,000 |
売掛金 |
1,100,000 |
売上債権売却損 |
100,000 |
ファクタリング会社へ売却(譲渡)した売掛金110万円は当日中に現金化され普通預金口座へ入金されたため、未収入金とする必要がなくなりました。借方に普通預金と手数料の売上債権売却損、貸方に売掛金と仕訳します。
このことから、買取ファクタリングの会計処理で「未収入金」を計上するのは、譲渡代金の入金日が売買(譲渡)契約日以降となった場合であることがわかります。売買(譲渡)契約を交わしたときの仕訳は、ファクタリングを利用したときの取引状況に応じて行いましょう。
売上(売掛)債権売却損の勘定科目がない場合は代用可能
使用している会計ソフトによっては、売上債権売却損の勘定科目が用意されていないことがあります。売上債権売却損の勘定科目がないときの手数料の計上は「雑損失」や「支払手数料」、「割引料」の勘定科目で代用することが可能です。
ただし、勘定科目の代用が社内において統一されていない場合には、税務調査において指摘される可能性があるため注意が必要です。ファクタリングの手数料を売上債権売却損ではない勘定科目で代用する際は、代用の勘定科目を社内で統一して使用することを心がけましょう。
売掛債権の支払期日を迎えたときの仕訳
さいごに、売掛債権の支払期日を迎えたときの取引を記録します。売掛債権の支払期日を迎えたときの仕訳は買取ファクタリング利用時の契約形態によって異なるため、2社間ファクタリングと3社間ファクタリングのそれぞれの仕訳方法を確認しておきましょう。
2社間ファクタリングにおける支払期日を迎えたときの仕訳
2社間ファクタリングは売掛債権の支払い先が契約に関与しない契約形態です。売掛債権の支払期日を迎えたときにはファクタリング利用者に対して代金の支払いが行われるため、受け取った代金はファクタリング会社に送金する必要があります。
2社間ファクタリングで契約を行った人は、売掛債権の支払期日を迎えた日に2つの取引が発生します。取引先から売掛債権を回収したとき、回収した売掛債権に基づく代金をファクタリング会社に送金したときの取引を帳簿に記録します。
<売掛債権を回収したときの仕訳例>
借方 |
金額 |
貸方 |
金額 |
普通預金 |
1,100,000 |
預り金 |
1,100,000 |
たとえば、売掛債権の支払期日に取引先から売掛金110万円の入金が普通預金口座にあったことを確認できた場合、借方に普通預金、貸方に預り金と仕訳します。売掛金ではなく預り金とするのは、ファクタリング会社への送金までに一時的に預かっているお金であるためです。
そして、ファクタリング会社に回収した売掛債権に基づく代金を送金したときには、以下のように仕訳を行います。
<ファクタリング会社へ回収した代金を送金したときの仕訳例>
借方 |
金額 |
貸方 |
金額 |
預り金 |
1,100,000 |
普通預金 |
1,100,000 |
取引先から入金された売掛金110万円をファクタリング会社に送金したため、預り金がなくなりました。借方に預り金、貸方に普通預金と仕訳し、2社間ファクタリングにおける売掛債権の支払期日を迎えたときの会計処理が完了します。
3社間ファクタリングにおける支払期日を迎えたときの仕訳
3社間ファクタリングは、売掛債権の支払い先も契約に関与する契約形態です。3社間ファクタリングでは、売掛債権の支払先をファクタリング会社へと変更する手続きが行われることから、売掛債権に基づく代金は取引先から直接ファクタリング会社へと支払われます。
したがって、3社間ファクタリングで契約を行った人は、売掛債権の支払期日を迎えたときに会計処理が必要な取引は発生しません。買取ファクタリングの利用によって、取引先からの売掛金の支払いはなくなるということに留意しましょう。
保証ファクタリングの会計処理
保証ファクタリングでは、ファクタリング会社との間に売掛債権の保証契約に関する取引が発生します。保証ファクタリングの会計処理は、以下のタイミングで発生した取引に対して行います。
<保証ファクタリングの会計処理を行うタイミング>
- ファクタリング会社と保証契約を交わしたとき
- 売掛債権が回収不能となったとき
- ファクタリング会社から保証金が入金されたとき
保証ファクタリングを利用した人は、各タイミングにおける取引の仕訳方法と使用する勘定科目を確認していきましょう。
ファクタリング会社と保証契約を交わしたときの仕訳
保証ファクタリングを利用した際は、まずファクタリング会社と保証契約を交わしたときの取引を帳簿に記録します。たとえば、保証ファクタリングを利用し、売掛金110万円に対する保証契約をファクタリング会社と交わしたときの仕訳は以下の通りです。
なお、以下の仕訳は、保証契約に対する手数料(保証料)が売掛金の金額の5%にあたる5万5000円であった場合としています。
<保証契約を交わしたときの仕訳例>
借方 |
金額 |
貸方 |
金額 |
支払手数料 |
55,000 |
普通預金 |
55,000 |
ファクタリング会社と売掛金110万円の貸倒に備えた保証契約を交わし、手数料として5万5000円の保証料を支払いました。ファクタリング会社へ支払いを行った保証料は会計上の費用として計上するため、借方に仕訳します。
保証料の勘定科目には支払手数料を使用します。保証契約においてファクタリング会社に売掛金を譲渡する取引は行われることはないため、ファクタリング会社との保証契約時の仕訳は支払手数料の計上のみとなります。
売掛債権が回収不能となったときの仕訳
ファクタリング会社との保証契約後、保証対象の売掛債権が全額回収不能となったときには、売掛債権が貸倒たことを帳簿に記録します。たとえば、保証対象の売掛金110万円が全額回収不能となった際には、以下のように仕訳を行います。
<売掛金が回収不能となったときの仕訳例>
借方 |
金額 |
貸方 |
金額 |
貸倒損失 |
1,100,000 |
売掛金 |
1,100,000 |
ファクタリング会社へ保証を依頼した売掛金110万円が回収不能となった場合には、まず売掛金を会社の損失として計上します。損失額の計上には貸倒損失の勘定科目を使用し、借方に貸倒損失、借方に売掛金と仕訳します。
ファクタリング会社から保証金が入金されたときの仕訳
そして、貸倒れとなった売掛債権に対する保証金がファクタリング会社から入金されたときには、以下のように仕訳を行います。
<保証金が入金されたときの仕訳例>
借方 |
金額 |
貸方 |
金額 |
普通預金 |
1,100,000 |
雑収入 |
1,100,000 |
ファクタリング会社から入金された保証金は、主たる営業活動以外の収益に該当します。営業活動以外の収益については雑収入という勘定科目を使用し、借方に普通預金、貸方に雑収入と仕訳します。
貸倒の発生がない場合は保証契約時の仕訳を行うのみ
保証ファクタリングで保証金が支払われるのは、あくまでも保証を依頼した売掛債権が貸倒となった場合のみです。支払期日を迎え売掛債権を無事に回収できた際には、ファクタリング会社から保証金が支払われることはありません。
したがって、保証ファクタリングを利用したものの貸倒の発生がなかった場合には、保証契約時の仕訳のみでよいことがわかります。保証ファクタリングの仕訳は、貸倒の発生の有無に応じた処理を行うようにしましょう。
まとめ
ファクタリングの会計処理はサービスの種類に応じて行います。ファクタリングサービスの種類として挙げられる買取ファクタリングと保証ファクタリングでは、発生する取引や内容が異なることから、帳簿への仕訳方法や使用する勘定科目にも違いがあるためです。
買取ファクタリングの利用時には、ファクタリング会社との間に3つの取引が発生します。売掛債権の売買(譲渡)契約を交わしたとき、譲渡代金の入金がされたとき、売掛債権の支払期日を迎えたときの取引を契約形態に応じて帳簿に記録しましょう。
また、保証ファクタリングの利用時にも、ファクタリング会社との間に3つの取引が発生します。保証契約を交わしたとき、売掛債権が回収不能となったとき、ファクタリング会社から保証金が入金されたときの取引を貸倒の発生の有無に応じて帳簿に記録しましょう。
なお、ファクタリングの会計処理は、売掛債権が発生した時の仕訳を起点に行います。各取引の仕訳を行う際は、ファクタリング会社に売却(譲渡)した売掛債権の発生時の仕訳を事前に確認しておきましょう。
この記事を書いたライター

ソラボ編集部
月額20,000円からの記帳・経理代行
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