売掛による取引など信用取引(与信取引)を利用している企業にとっては、取引先企業の倒産など予定していた支払いがされなくなる貸倒は、事業継続におけるリスクの1つと言えます。
貸倒リスクへの対策の1つとして、保証ファクタリングがあります。
当記事では、保証ファクタリングについて解説します。サービスを提供している保証会社についても紹介しているので、売掛債権のリスク対策として自社に取り入れるべきかを判断する際の参考にしてみてください。
保証ファクタリングとは売掛債権の支払保証を受けることができるサービス
保証ファクタリングは、売掛先の法的倒産等による売掛債権の貸倒を防ぐことを目的とした金融サービスです。
支払期日前の売掛債権に対して保証会社と保証契約を結び、万が一に貸倒となった場合には、保証会社が売掛先に代わって売掛債権の支払いを保証してくれます。
保証ファクタリングが売掛債権のリスク対策として自社に適しているかを判断するためにも、保証ファクタリングの特徴についておさえておきましょう。
<保証ファクタリングの特徴>
・保証希望先を任意に選べる
・貸倒損失の全額保証が可能な場合がある
・与信管理の強化と債権保全を図れる
・貸倒債権の管理や回収に関わる負担を軽減できる
・利用にあたっては条件や審査基準を満たす必要がある
・保証ファクタリングの利用には保証料が発生する
保証希望先を任意に選べる
保証希望先とは特定の売掛先や売掛債権のことを言い、保証ファクタリングでは、ファクタリングを利用する利用者が、保証を希望する売掛先や売掛債権を選んで個別に契約を行うことができます。
保証ファクタリングの類似サービスに取引信用保険がありますが、取引信用保険の場合は「全売掛先」や「売上上位10社」など保証先の指定が設けられています。包括的に保証することは可能ですが、保証希望先を任意に選ぶことはできません。
たとえば、売上上位10社という指定があると、10位以内に信用状況に不安のある売掛先が入っていたとしても、保証の対象にならないため売掛金が回収できないリスクを回避することができません。
保証ファクタリングであれば、信用状況に不安のある売掛先に対して保証を依頼することができるため、売掛金が回収できないリスクの回避に繋がります。
貸倒損失の全額保証が可能な場合がある
保証ファクタリングによって受け取ることができる保証金には限度額が設けられ、限度額は利用申し込み時の審査によって決定します。審査によって決定した限度額の範囲内であり、100%保証の契約を行っている場合には、貸倒損失の全額保証が可能です。
たとえば、70万円を上限とし100%保証の保証ファクタリングを契約した場合、保証対象となる売掛先が50万円の売掛金を残して倒産した場合は、50万円の保証金を受け取ることができます。仮に、売掛金が100万円だった場合には70万円の保証金を受け取ることができるため、損失額を抑えることが可能です。
ただし、貸倒損失を全額保証とするためには、普段の取引量を考慮して保証内容を設定する必要があります。また、審査の評価によっては希望の保証上限額を設けることができない可能性もあります。
なお、保証金が支払われるのはあくまでも貸倒れとなった場合であり、支払遅延は保証の対象外であるため注意しましょう。
与信管理の強化と債権保全を図れる
保証ファクタリングを利用する際には、利用可否や保証上限金額、保証料を決定するために売掛先への与信調査が行われます。
行われた調査から保証対象となる売掛先の信用情報を得ることができるため、社内で管理している売掛先の評価に保証会社からの客観的評価を加えることができます。これにより、与信管理の強化を図ることが可能です。
また、保証期間内において売掛先の信用情報に変化が見られた際には、保証会社から通知が送られるため、売掛先の経営悪化の早期察知など債権保全も図ることが可能です。
なお、与信調査は側面調査であるため、売掛先に利用を知られることはありません。今まで通りの取引を継続しながら、貸倒れリスクへの対策を行うことができます。
貸倒債権の管理や回収に関わる負担を軽減できる
保証ファクタリングは保証会社に売掛債権の全額譲渡を行うことで、貸倒債権の管理や回収に関わる作業を委任することができます。
たとえば、回収の目途が数年先などの貸倒債権の管理や、債権を回収するための民事再生手続きなども保証会社が対応を行ってくれます。
そのため、債権回収に関わる事務負担を軽減することが可能になります。
利用にあたっては条件や審査基準を満たす必要がある
保証ファクタリングの利用にあたっては、保証会社の設けた条件や申込時の審査基準を満たす必要があります。
たとえば、「売掛先1社につき数百万円以上の保証を依頼しなければならない」という場合には、保証申込金額に条件が設けられていることがあります。保証金額に条件が設けられている場合は、少額の売掛債権などの取引に対する依頼は対応してもらえない可能性があります。
なお、保証ファクタリングは申込時に行われる審査によって利用の可否を判断されます。審査は対象となる売掛先の支払能力や信用力などによって判断されます。売掛先企業が赤字や債務過多などの場合には、利用を断られることがあります。
したがって、保証ファクタリングが利用できるのは、保証会社の条件や審査基準を満たした場合のみです。取引のある売掛先があり、売掛債権を保有していれば必ず利用できるサービスではないという点に注意しましょう。
保証ファクタリングの利用には保証料が発生する
保証ファクタリングを契約する際には保証サービスの手数料となる保証料が発生します。保証料は売掛先の信用力や売掛債権の金額、保証対象期間などから考慮された保証料率の高低によって変動します。
保証料が高すぎる場合には経営を圧迫しかねないため、利益とのバランスを考慮して検討するようにしましょう。
なお、支払った保証料は保証の履行なく契約満了となっても返還されることはありません。
保証ファクタリングを提供している保証会社を紹介
保証ファクタリングは、メガバンク傘下のファクタリング会社、クレジット会社やリース会社などがサービスを提供しています。
<保証ファクタリングを提供している会社(一例)>
・メガバンク傘下のファクタリング会社
サービス提供先名 |
サービス名 |
サービス内容 |
---|---|---|
みずほファクター |
以下の3つのサービスを提供している 「包括保証」 「個別保証」 「下請債権保全事業」 |
|
SMBC |
取引先8社以上から個別に保証を依頼できる。 |
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りそな決済サービス株式会社 |
少額の売掛債権も保証依頼の相談が可能。 |
|
三菱UFJファクター |
以下の3つのサービスを提供している 「根保証」 「下請債権保全事業」 「国際ファクタリング」 |
・クレジット会社やリース会社
サービス提供先名 |
サービス名 |
サービス内容 |
---|---|---|
出光クレジット株式会社 |
取引先1社から保証を依頼できる。 |
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リコーリース株式会社 |
取引先5社以上から保証を依頼できる。 |
保証の依頼先数や保証申込金額の最低金額、保証される期間などの条件はファクタリング会社によって異なります。
たとえば、みずほファクターの保証ファクタリングは、依頼先数が5社以上、保証金額が1社につき200万円以上であれば申込を行うことが可能です。申込時の保証最低金額が比較的大きいため、中小企業や大企業の利用に適しています。
一方で、出光クレジット株式会社の保証ファクタリングは1社から依頼でき、保証金額も10万円以上であれば申込を行うことが可能であるため、個人事業主も利用しやすいサービスであるといえます。
保証を必要とする売掛先数や保証希望金額などが利用条件に適しているかを考慮して、利用申込を行う保証会社を選択するようにしましょう。
まとめ
保証ファクタリングは売掛債権の貸倒れに備えた保証契約を保証会社と結び、万が一の場合には売掛債権の支払いを保証してもらえるサービスです。
一方で、保証を受けるには保証料を支払う必要があり、貸倒れの発生なく契約満了となっても返還されることはありません。
保証ファクタリングは保証希望先を任意に選べるため、信用状況に不安のある特定の売掛先へのリスク対策を効率的に行うことが可能です。また、保証を依頼した売掛先については信用情報の提供を受けることができるため、与信管理の強化と債権保全を図ることが可能になります。
ただし、保証ファクタリングを利用できるのは、保証会社の定める条件や申込時の審査基準を満たした場合のみです。保証依頼内容や売掛先の信用力によっては利用を断られる可能性がある点に留意して利用を検討しましょう。