日本政策金融公庫の融資を初めて受ける際、すでに事業を行っており1期以上決算を終えている場合は「企業概要書」を作成し提出します。
企業概要書は会社の履歴書のようなもので、融資の可否を判断する材料のひとつになります。
個人事業主として事業を行っている方も法人を設立している方も提出が必要になりますので、企業概要書の記入例と書き方のポイントを押さえて作成していきましょう。
1.企業概要書の記入例
企業概要書のフォーマットは、日本政策金融公庫のホームページで手に入ります。
ExcelとPDFのファイルがありますので、印刷して手書きで作成しても良いですし、パソコンで入力しても構いません。
日本政策金融公庫 企業概要書(Excel/PDF)※こちらのリンクからダウンロード可能です
では、企業概要書に記載する項目をひとつずつ確認していきましょう。
(1)企業の沿革・経営者の略歴等
①企業の沿革
H27年4月 株式会社○○ 設立
企業の沿革は会社のプロフィールです。
個人事業主として創業した年月、法人を設立していれば法人設立年月を時系列に沿って記載します。
会社を移転したり、2店舗目や支店を開設したりした場合もこちらに記載しましょう。
②経営者の略歴
H19年3月 ○○大学 ○○学部 卒業
H19年4月 株式会社○○
新規開拓営業で3年勤務 売上月500万円を達成し、エリアトップの成績で表彰を受けた
H22年4月 ○○株式会社
2年間、人事部の管理職で新入社員の教育・マネジメントに携わる
経営者の略歴は、融資を申し込む方の最終学歴からこれまでの職務経歴を記載します。
ただ過去の勤務先を羅列するのではなく、どのような仕事に携わり、どのような業務経験やスキルを身につけてきたのか、示すことが重要です。
現在行っている事業にも繋がる技能はしっかりと記載してアピールしましょう。
職務経歴が多く、枠に収まらない場合は、現在の事業に関係する仕事だけを企業概要書に記載すればOKです。その場合は、職務経歴のすべてを記載した別紙を用意しましょう。
また、融資を申し込む方と実際の経営者が違う場合には、念のため実際の経営者の経歴も別紙で作成しておくことをおすすめします。
③過去の事業経験
事業経験の有無を記載します。該当する箇所にチェックを入れましょう。
企業概要書は決算を終えている場合に作成する書類ですので、基本的には「事業を経営していたことがあり、現在もその事業を続けている。」または「事業を経営していたことがあるが、既にその事業をやめている。」に該当するでしょう。
ただし、雇われオーナーなどであなた自身が経営に携わっていない場合などは、「事業を経営していたことはない。」の欄にチェックを入れます。
④取得資格
事業に関わる資格を保有している場合には、資格の名前を記載します。
例えば、調理師や柔道整復師、建築施工管理技士などの資格です。
事業を行う上で必ず取得が必要な資格以外にも、飲食店であれば栄養士やソムリエなど+αで付加価値をつけられる資格を保有している場合には記載しておきましょう。
⑤実際経営者
基本的には「融資の申込者=実際の経営者」であることが望ましいです。
しかし、代表者がご高齢などで後任の方に委任されているケースなどは、融資を申し込む方と実際の経営者が別の場合がありますので、「その他」の欄にチェックし、実際の経営者の名前を記載します。
⑥後継(予定)者
後継者がいる場合は、後継者の方の名前と経営者との関係を記載します。
⑦許認可等
許認可が必要な事業の場合は、取得している許認可名を記載しましょう。
主な許認可は次のとおりです。
業種 | 許認可の種類 | 申請先 |
飲食業 | 飲食店営業許可 | 保健所 |
深夜酒類提供飲食店営業許可 | 警察署 | |
建設業 | 建設業許可 | 国土交通省または都道府県 |
不動産業 | 宅地建物取引業の免許 | 国土交通省または都道府県 |
物販業 | 古物商許可 | 警察署 |
派遣業 | 労働者派遣事業許可 | 厚生労働省 |
⑧知的財産権等
例えば、製造業などで特許を取得している商品や特許申請中の商品などがある場合には、「有」にチェックを入れて記載してください。
(2)従業員
現在雇用している従業員の人数を記載します。雇用したばかりの従業員でも3か月以上継続して雇用する予定であれば、従業員数に含めます。
(3)関連企業
融資を申し込む方が別法人を経営している場合や配偶者が経営している法人がある場合などは、関連企業として記載が必要です。関連企業がある場合にはその企業の決算書も求められることがあります。
(4)お借入の状況
金融機関やカードローンでの借入がある場合には漏れなく記載しましょう。
住宅ローンや車のローン、教育ローンなどを組んでいても、毎月遅延なく返済をしていれば融資への影響はあまりありません。
ただし、消費者金融やカードローンでの借入はマイナス要素になり得ますので、融資を受ける直近に借入するのはやめておきましょう。すでに借入がある場合は融資を受けるまでに完済しておくよう努力が必要です。
日本政策金融公庫での融資が不利になるからと借入状況を記載しなかったとしても、融資を審査する際に個人情報を確認しますので、いずれ発覚します。
借入があるのであれば、隠さず正直に記載しておきましょう。
(5)取扱商品・サービス
①取扱商品・サービスの内容
取り扱っている商品や提供しているサービスを記載します。
飲食店であれば別途メニュー表を用意して、補足説明をすると良いです。また、日本政策金融公庫の担当者がイメージしやすいように、料理の写真も一緒に提示しましょう。営業代行であれば営業用資料を準備すると良いです。
【飲食店の場合】
①ランチ・ディナー(売上シェア 60%)
②デリバリー(売上シェア 40%)
【美容室の場合】
①カット(売上シェア 55%)
②カラー(売上シェア 40%)
③パーマ(売上シェア 5%)
【建設業(内装工事)の場合】
①内装工事(売上シェア 70%)
②現場管理(売上シェア 20%)
③デザイン設計(売上シェア 10%)
②客単価(飲食・小売等・受注(販売)単価(建設・製造等)
飲食店や小売業の場合は平均客単価、建設業などの場合は、1案件の平均単価を記載します。
③売上の季節変動
季節や時期によって売上の変動がある場合は、「有」にチェックを入れます。
どのような業種であっても繁忙期と閑散期はあるかと思いますが、特に飲食店などは歓迎会シーズンや年末年始は売上が上がるなど傾向がありますので、売上のピークとボトムを記載しましょう。
④セールスポイント
取り扱っている商品やサービスの強み、お客様にどのような点で喜んでもらっているのかなど、しっかりとアピールしましょう。
雑誌やテレビ番組に取り上げられたことがある場合は、記事の切り抜きなども一緒に提出することで評価アップに繋がる可能性があります。
【洋菓子店の場合】
業界歴は10年以上、フランスに留学するなど洋菓子の技術や知識を培ってきました。国内外のコンクールでも受賞経験があり、技術力には自信があります。季節のフルーツを使用したタルトが得意で、見た目でも楽しめるスイーツを提供しています。
【パーソナルジムの場合】
一般の方からアスリートの方まで幅広くトレーニング指導を行っていた経験を活かし、お客様のライフスタイルや目標に合わせて最適なトレーニングプランを提供します。適切な食事指導や心のケアなど、包括的なサポートをしていくことでお客様との信頼関係も築けており、リピーターに繋がっています。
⑤販売ターゲット・販売戦略
商品やサービスを販売する顧客のターゲット層と、どのように売上を上げていくのか販売戦略を記載します。
【美容室の場合】
30代~40代の女性がメインターゲットです。ファミリー層が多いエリアなので、キッズスペースを用意して親子で髪のオシャレが楽しめるお店づくりをします。リピーターのお客様が多いですが、広告をかけて集客したり、ホームページやSNSでヘアスタイルやアレンジ方法などを発信したりすることで新規顧客の獲得にも注力していきます。
⑥競合・市場など企業を取り巻く状況
業界全体の状況、会社や店舗を構えている地域での競合はどうなのか記載します。
ただ競合の状況をまとめるだけでなく、これら競合他社と差別化を図るためにどのような取り組みを実施しているのか加えることがポイントです。
【整骨院の場合】
○○駅周辺には、整骨院・接骨院が多く存在しています。他の医院と差別化を図るために、治療に関しては患者1人1人に応じた治療プランを作成しインフォームドコンセントを徹底することで、安心して通院してもらえるよう運営します。
⑦悩みや苦労している点、欲しいアドバイス等
日本政策金融公庫の担当者は、数多くの経営者を見てきていますので、事業を経営していく上での悩みや課題などがあれば、記載しましょう。
こうした悩みを解決するために資金調達がしたい、と資金調達の目的に繋げられるとなお良いでしょう。
【エステサロンの場合】
1人で施術しているため、対応できる顧客数に限度があります。現在、数か月先まで予約が埋まっている状況です。新たに従業員を1名雇用することで対応できる顧客を増やし、売上の増加を図りたいと考えています。
(6)取引先・取引関係等
①販売先・仕入先・外注先・人件費の支払
販売先や仕入先、外注先のシェアが高い順に会社名や取引年数、回収・支払の条件などを記載します。
一般個人が顧客対象の場合は、一般個人と記載すればOKです。
固定の取引先が複数あったり、長く取引関係が続いていたり、取引先との関係から売上の見込みがあることをアピールできます。
また、売上と支払サイクルを確認することで、資金繰りが悪化しないかどうか、日本政策金融公庫の担当者はチェックしています。
まとめ
すでに事業を1期以上行っている方は、日本政策金融公庫の融資を受ける際、企業概要書を提出します。
取扱商品・サービスの項目以外は、自分自身や事業に関する事実を記載すれば良いので、項目を埋めるのはさほど難しくないでしょう。
融資面談では企業概要書を基に質問されます。融資の可否に関わりますので、細部までしっかりと作成しましょう。
この企業概要書で大丈夫だろうか、自分で作ってみたけれど不安、という方は認定支援機関などの融資のプロに相談してみることをおすすめします。
当サイトを運営しているSoLaboでは、認定支援機関として日本政策金融公庫の融資に必要な資料作成のサポートをしています。相談は無料ですので、是非お気軽にお問い合わせください。