事業用建物・土地を会社で購入するのと、個人で購入して会社に貸すのとででは、どちらが得なのでしょうか?
結論からいうと、個人の年間所得が高額でなければ、個人が購入して会社へ貸すほうが、税金は安く済みます。
個人事業の節税は会社と同格
個人事業主の方であれば、会社を経営する場合、「いかに税金を安く抑えるか」という考えを常々お持ちだと思います。
会社の発展が最優先事項で、近未来に上場を目指すのであれば話は別ですが、個人と会社を一体とみなしての納税負担を考えれば、事業用建物・土地を購入する場合、個人で購入して会社が個人へ地代家賃を支払ったほうが、税金は安く済みます。
会社が賃借料を負担
事業用の土地や建物を会社で所有した場合、会社の経費となるものには、土地の税金、建物の減価償却費、あるいは借入金利息等の所有資産にかかる固定費が挙げられます。
しかし、個人で所有した場合には、これらの経費に利益分を上乗せした賃借料がそのまま会社の経費となります。
よって、会社は所有資産にかかる固定費以上の額を地代家賃として支払うことになり、会社が所有した場合よりも節税効果が高いといえるでしょう。
会社と個人の節税額を比較
一方、個人は収受した賃借料が個人の所得となり、課税対象所得が発生します。
個人が負担する税金と会社が節税できた金額との差額が、会社所有の場合に節税できた金額を下回るようですと、個人所有による節税効果はなくなってしまいます。
この現象は、個人の所得の税率が会社の税率を超えたときに発生します。
現在、会社の税率(実効税率)はだいたい35~40%です。
これに対して、住民税も含めた個人の最高税率(課税所得が1,800万円以上)は50%になります。
しかし、個人の税金は税引後に控除があるので、これを勘案した実効税率は35%になり、会社の税率と近い数字になります。
この「課税所得が1,800万円」あたりが目安になるものと思われます。
よって、課税所得が1,800万円を超える場合は、会社と個人のそれぞれの税金を実際に計算し、比較した上で、どちらが所有するかの判断を下すのがよいでしょう。
資産家は相続税の悩みがつきまとう
個人所有の資産が増えると、資産家の方にとって、相続税負担が相当大きくなります。
会社で所有した場合には、ある程度減額された額が相続財産に組み入れられることになります。
相続税対策を考えた場合は、会社所有のほうが有利になる場合があります。
いずれにせよ、個人所得が高額な方や、相当の資産をお持ちの方は、信頼できる税理士によく相談してみることをおすすめします。