個人事業主は「退職金」は経費とならない
個人事業主の場合は、経営の主体が本人ですので、給料や退職金を自分に支払い経費として計上することはできません。
また、家族従業員に対しても、「青色専従者給与」以上については、給料を支払えないため、退職金もその範囲を超えると、経費とすることができません。
仮に、退職時に多額の退職金を家族従業員に支払うと、それは個人事業主から家族への「贈与」とみなされて、多額の贈与税を支払う必要があります。
法人成りすると「退職金」を経費とすることができる
法人成りをすると、社長である自分に対して給料を支払うことが可能であるのと同様に、退職金を支払って、それを経費として計上することが可能となります。
また、家族従業員に対しても、退職金を支払って、経費として計上することが可能となります。
但し、当然、その働きや勤続年数に応じた金額でなければ、過大退職金として否認される可能性がありますので、注意が必要です。
「退職金」は受っとった側の税金も優遇されている
退職金は、一般的に、長年の働きに報いる功労金的な性格が強いため、税法上、課税される税金計算が非常に優遇されています。
退職所得の金額は、次のように計算します。
そして、退職所得控除額は以下のように定めれられています。
退職所得控除額
勤続年数(=A) | 退職所得控除額 |
---|---|
20年円以下 | 40万円×A (80万円に満たない場合には、80万円) |
20年超 | 800万円+70万円×(A-20年) |
例えば、法人成りして25年勤務し、自分や家族に退職金を支払った場合、
退職控除の金額は、800万円+70万円×(25年-20年)=1,150万円
となります。
退職所得は、
【収入金額(源泉徴収される前の金額)-退職所得控除額】×1/2
なので、1,150万円以下であれば、税金がかかりません。
このように法人成りした場合、「退職金」は法人の経費として計上することが可能であり、かつ受け取る側でも支払う税額を抑えながらお金を受け取ることが可能なのです。
「退職金」の原資は生命保険を活用すればお得です
生命保険の中には、支払時に支払額の1/2を経費として計上し、解約時に支払額の7~9割程度の解約返戻金が戻ってくる商品等があります。
役員や従業員が退職するタイミングで、戻ってくるお金が最大になるように設計された生命保険に、役員や従業員を被保険者として加入することで、「退職金」の原資をお得に確保することが可能です。
すなわち、
- 自分や従業員の死亡に備えるという生命保険本来の保障の機能に加え
- 支払保険金を会社の経費とすることで節税し
- 退職時に生命保険金を解約することで、「退職金」の原資を確保し
- 受け取る側も、税金が少なくて済む
ということが可能になってきます。
個人事業主ではこのようなことはできません。
まとめ
いかがでしょうか。
「退職金」の観点からは、個人事業主よりも法人の方が、圧倒的に有利なことが分かると思います。
引退後の資金を確保したい個人事業主の方や、家族従業員へ退職金を支払たいと思っている個人事業主の方などは、法人成りを利用することを検討してみてはいかがでしょうか。
最後まで読んでいただきありがとうございました。