「経費で落とす」という言葉をよく聞くと思いますが、会社にとって「経費」と「税金」はとても密接な関係にあります。財務が健全な会社は、売上と経費のバランスを取るのが非常に上手です。
これから起業独立を目指しているなら、遅かれ早かれ必ず知っておかなければならない知識でもあります。
そこで今回は、会社を経営する上でおさえておきたい会社の経費の基礎知識と経費で落とすメリットデメリット、税金の関係を解説します。
1.会社の経費とは?経費で落とす仕組みと税金への影響
(1)「経費で落とす」とは?
経費とは、事業を行う上で利益を得るためにかかる費用のことを言います。
アルバイトに支払う給料や店舗の家賃、コピー用紙やボールペンなどの事務用品なども経費です。
よく「経費で落とす」という言葉を耳にする方もいらっしゃるかと思いますが、「経費で落とす」とは、会計処理上、経費として計上することを指します。
経費は利益から差し引くことができるので、経費を支払うことによって、会社として払う税金を少なくできます。
ざっくりとですが、以下のように理解しておくと良いでしょう。
- 経費になる = 税金が少なくて済む
- 経費にならない = 税金が少なくならない
2.経費で落とすメリット 納税額はどれぐらい少なくなるのか?
基本的に利益が増えれば、その分納める税金も増えますが、経費として計上する費用が増加することで利益が減少し、結果的に支払う納税額を減らすことが可能です。
例えば、1年間で売上が1,000万円、利益が100万円の会社があるとします。
この場合、経費として何もお金を使わなかったとすると、利益の100万円に対して税金がかかりますので、利益100万円 × 税率40% = 法人税40万円 となり、会社にキャッシュが60万円残ることになります。
一方、会社が決算の時までに5万円のパソコンを買ったとすると、その5万円を経費にすることができます。そうすると、残りの利益が95万円になり、法人税が95万円 × 40% = 38万円になります。
経費を使わなかった場合 | 経費5万円を使った場合 | |
売上 | 1,000万円 | 1,000万円 |
経費 | 900万円 | 905万円 |
利益 | 100万円 | 95万円 |
納税額 | 40万円 | 38万円 |
キャッシュフロー | 60万円 | 57万円 |
※法人税率を40%として仮定して算出しています。
このように経費を上手に使うことで、会社の納税額を下げることができるのです。
しかし、ただ経費を使うだけだと、賢い経費の使い方とは言えません。なぜなら、経費を使えば使うほど納税額は下がりますが、それと同時に会社にとって一番大事なキャッシュも少なくなるからです。(青字の部分)そのため、何でもかんでも経費になるものはすれば良いというのは間違いです。
実は、経費を「賢く」使うことが大切なのです。
(2)賢い経費の使い方とは
先ほどの例では、経費を何も使わなかった場合、60万円のキャッシュが手元に残ることになります。しかし、決算の時までに5万円のパソコンを買ったとすると、残りのキャッシュは57万円になりますが、5万円のパソコンを3万円で手に入れたのと同じことになります。つまり、会社の資産をお得に手に入れることができるのです。
言い換えると、経費をうまく使うことで、見かけ上のキャッシュは減っても、57万円のキャッシュ+5万円の資金で62万円の資産を得られるというように、会社全体で考えた時の財務状況をよりプラスにすることができるのです。下の図をご覧頂くと分かりやすいでしょう。
経費を使わなかった場合 | 経費5万円を使った場合 | |
売上 | 1,000万円 | 1,000万円 |
経費 | 900万円 | 905万円 |
利益 | 100万円 | 95万円 |
納税額 | 40万円 | 38万円 |
キャッシュフロー | 60万円 | 57万円 |
会社に残る資産 | 60万円 | 62万円(キャッシュ+PC) |
※厳密には10万円未満の備品は会計上資産計上はしませんが、実質的には会社の資産のため、このように表記しています。
これが「経費で“賢く”落とす」ということの本質です。このように経費を賢く使うと、会社の財務状況をどんどん改善していくことが可能です。
しかし、経費として認められるものと認められないものは厳密に線引きされています。そのため、何でもかんでも経費で買って、会社のキャッシュと資産のバランスを有利にしようとすると痛い目にあってしまいます。
自分自身で判断がつかない、上手に節税対策をしたい方は、税理士に依頼するなど専門家にお願いするのも選択肢のひとつです。
弊社ソラボでは、あなたの会社を成長させるための最適な税理士紹介を行っておりますので、お気軽にご相談ください。相談は無料です。
3.経費で落とすデメリット
節税対策になるなら経費を増やせばいいのでは?と考える方もなかにはいらっしゃるかもしれませんが、経費で落とすということは出費が増えるということです。
経費を増やしすぎて赤字になってしまうケースも考えられます。
また、経費として計上できない費用まで経費として処理してしまうと、脱税を疑われる可能性もありますので、十分注意しましょう。
(1)何でもかんでも経費にしようとすると痛い目に合う?!
例えば会社で2,000万円のフェラーリを購入したとします。会社の通勤や客先への訪問時に利用するので、会社の経費として計上しました。
しかし、数年後の税務調査で「これは経費としては認められませんよ」と言われるとどうなるでしょうか?
その場合、最悪のケースとして、法人税の追徴課税、加算税、延滞税を払う必要が出ます。
2,000万円のフェラーリの場合では、追加で払わなければいけない税額が1,000万円を越えてしまうような事態も起こりうるのです。場合によっては、それだけで会社のキャッシュが一気に落ち込み、経営の危機に陥ってしまいます。
そのため、会社の経営者や財務の責任者は何が経費になって何が経費にならないかをしっかりと把握しておく必要があるのです。
4.何が経費になって何が経費にならないの?おさえておきたい7つの事例
「経費になるかならないか?」はどのように判断すればよいのでしょうか?
原則として、「売上を上げるために直接的に必要なもの」は経費として認められます。従って、まずはこの大原則をしっかりと頭に入れておきましょう。
大原則
経費 = 売上を上げるために直接的に必要なもの |
それでは、次に、具体的に何が経費になって、何が経費にならないのかを、起業して会社を設立したばかりの社長が知っておきたいものを特にピックアップしてご説明します。
(1)具体例1.スーツ代、鞄代、靴代、腕時計代、メガネ代
結論からお伝えすると、これらは全て経費になりません。
ビジネス上身なりを整えるのは受注を大きく左右する要素ですので、納得いかない方もいるかもしれません。しかし、実はこれらの費用は「給与所得控除」と言って、自動的に個人個人の年収に応じて控除されているのです。年収500万円であれば、給与所得控除は144万円、年収1,000万円であれば、給与所得控除は195万円になります。この控除の中に入っているので会社の経費にはなりません。
(2)具体例2.備品などの少額資産
応接用のテーブルとソファ、パソコンなどの資産は、原則10万円未満であれば、一括して経費に落とすことができます。
また、資本金1億円以下、従業員数500人以下の中小企業の場合は、30万円未満の備品までは一括して経費にすることができます。この額を超えると、一度資産に計上して、例えば、パソコンであれば4年間かけて費用に計上(減価償却)する必要があります。
少額資産に関しては、適用するために決まり事もいくつかありますので、しっかりと抑えておきましょう。
(3)具体例3.旅行代金
旅行代金は、「社員も含めた全員で行く」ものであれば、福利厚生費の一環として経費になります。しかし、役員だけで行く社員旅行だと経費にはなりません。そのため、会社を設立した直後で、まだ社員がいない会社では旅費を経費にすることはできません。
ただし、旅行ではなく出張の場合は別です。旅行と出張の違いは、それが「仕事を目的として行っているものかどうか?」で決まります。例えば、「研修会があった」「見本市が開かれる」「買い付けに行く」のような、売上に直接貢献するものの場合は出張になります。その場合は、現地での写真やパンフレットなど、後から税務署に疑われたときに対抗できるような資料を残しておくようにしてください。
ちなみに、名目だけの現地視察の場合は経費にはなりませんので、ご注意ください。
(4)具体例4.借入金の返済
銀行から借り入れた資金の返済や、友人から借りたお金の返済は経費にはなりません。
厳密に言うと、返済のうち利息にあたる部分は経費になりますが、元本の部分は経費にはなりません。お金の貸し借りについては、借入金は収益にならないので、直接売上にかかるものではありません。そのため、その返済も経費として認められません。
(5)具体例5.領収書が残らない電車代など
電車代などは切符を買っても領収書が残りません。しかし、取引先や仕入先に打ち合わせに行くための費用は、直接的に売上に関わるものなので経費ですよね。
それでは、どうすれば良いのでしょうか?答えは出金伝票を作れば良いのです。
出金伝票は、コクヨなどの文具メーカーが販売している会計帳票で、この用紙に、「日付、金額、乗車区間」を記入していれば領収書代わりになります。出金伝票の代わりにエクセルで用紙を作成して記録しておいてもOKです。最近ではプリベイドカードやクレジット機能のついたICカードの明細を残しておくだけでも経費にすることができます。
(6)具体例6.タクシー代
タクシー代は、もちろん私的なものの場合には経費になりません。しかし、得意先や仕入先を接待の際の送迎費など、直接的に仕事に関わる場合の支出は会社の経費とすることができます。
(7)具体例7.飲食代
取引先との打ち合わせの時に使った飲食代金や、社員との打ち合わせで使った飲食代金は限度はありますが、会社の経費とすることができます。
一人当たりの金額が5,000円以下であれば、会議費として全額を経費にすることができます。また、一人当たりの金額が5,000円を超える場合は交際費として扱うことができます。その際は、飲食店から貰った領収書をしっかりと保管しておきましょう。そして、領収書の隅に、参加した人の会社名と名前を記載しておきましょう。
なお、社員との打ち合わせに使った飲食代は、一定の条件を満たせば、会議費または福利厚生費として全額経費にすることができます。
参考:交際費の使い方:新米社長が節税のために抑えておきたい基礎知識
補助金の活用で特定の経費の補助を受けられる
売上を上げるために、広告宣伝費や、外注費を払えばもちろん経費となります。なお、これらの経費は補助金の申請ができるので、後から払った経費の一部分の補填が可能です。
たとえば、持続化補助金を上手に活用すれば、ホームページ制作費や、チラシ、パンフレット制作、WEB広告費用、動画制作、コンサルティング費用などの一部を補助してもらうことが可能です。 140万円の経費に対して、100万円補助を受けることもできます。
まとめ:経費は“賢く”使うことが会社経営の鉄則
繰り返しになりますが、「経費を使うと納税額が安くなるから」と考えもなしに何でもかんでも経費として使っていると、会社のキャッシュフローに響きますし、最悪の場合では税務調査の時に、経費として認められず、追徴課税がかかってしまいます。
大切なのは「経費を“賢く”使う」ということです。
そうすると、納税額を抑えながら、会社の財務や資産状況も改善させることができます。もし、今まで「経費を“賢く”使う」という概念がなかった方は、ぜひ一度見直してみてください。より経営状況を効率化させることができるでしょう。
経費の仕訳に悩む場合は、税理士に依頼するか、どの科目に振り分けたらよいかヘルプが出てくる便利なクラウド会計ソフトがありますので、そのようなソフトを活用するのもよいでしょう。
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