ファクタリングは、売掛債権を売却して売掛金の早期現金化を図る方法です。そのため、売却可能な売掛債権を保有していれば、個人事業主であったとしてもファクタリングの利用は可能です。
ただし、個人事業主は法人に比べてファクタリング会社の選び方に制限があります。当記事では、個人事業主がファクタリング会社を選ぶときのポイントを解説しているため、ファクタリング会社を選ぶ際はこれらのポイントを押さえておきましょう。
利用対象者を限定していないファクタリング会社を選ぶ
ファクタリン会社は買取を行う売掛債権を回収することで、手数料分の利益を確保しています。利用者の透明性や信頼性といった観点から、回収不能リスクを避けるために経営方針として個人事業主との取引を行わないファクタリング会社も存在します。
たとえば、三菱UFJ銀行やみずほ銀行などの金融機関の子会社やほかの民間企業と合同設立によるファクタリング会社など、銀行系のファクタリング会社は利用規約で法人格を持った事業者に限ると対象利用者を限定している傾向にあります。
銀行系のファクタリング会社以外でも、法人との取引のみを対象としているところもあります。ファクタリング会社を選ぶ際は、利用規約等を確認し個人事業主でも利用可能かどうかを確認しましょう。
少額の売掛債権を買い取ってもらえるファクタリング会社を選ぶ
ファクタリング会社に売掛債権を売却するには、最低買取額を満たしておく必要があります。個人事業主が保有している売掛債権は少額になりやすい傾向があり、ファクタリング会社が定める最低買取額を満たせない可能性があります。
【最低買取額の比較】
会社 | 最低買取額 |
---|---|
A社 | 数万円~ |
B社 | 30万円以上~ |
C社 | 買取可能額無制限 |
たとえば、売却しようとしている売掛債権の金額が20万円で、利用を検討しているファクタリング会社の最低買取額が30万円であった場合、そのファクタリング会社を利用することはできません。最低買取可能額の制限はファクタリング会社によって異なるため、いくらの売掛債権から取り扱ってもらえるかはファクタリング会社によります。
ファクタリング会社が少額債権の買取に対応しているかどうかは、公式サイトや広告などに記載されている申し込み要件を確認します。公式サイトや広告などに明記されていない場合は、実際に問い合わせを行って自身が申し込み要件を満たせているかどうかを確認してみましょう。
売掛先企業へのファクタリングの通達の有無
個人事業主がファクタリングを利用するときは、売掛先企業へファクタリング利用の通達がなされるかどうかを確認しましょう。ファクタリングの利用を知られたくないかどうかで契約方式が変わるからです。
ファクタリングには、2社間ファクタリングと3社間ファクタリングの2種類があります。2社間ファクタリングは、ファクタリング会社とファクタリング利用会社の2社間で契約を交わすため、売掛先企業へファクタリングの利用を知られずに売掛債権の売却ができます。
一方、3社間ファクタリングでは、ファクタリング会社とファクタリング利用会社に加えて、売掛先企業を含めた3社間で契約を交わします。3社間ファクタリングでは、売掛先企業に売掛債権の譲渡を承認してもらわなくてはならないため、売掛先企業にファクタリングの利用が通達されます。
ファクタリングの利用が売掛先企業に通達されると、売掛債権の支払期日まで待てないほど資金繰りが悪化していると捉えられる可能性があります。結果的に売掛先企業との関係が悪化するおそれもあるため、ファクタリングの利用を検討している個人事業主は売掛先企業との関係を考慮して契約形態を決めましょう。
3社間ファクタリングが可能なファクタリング会社を選ぶ
ファクタリングには、2社間ファクタリングと3社間ファクタリングがあります。2社間ファクタリングでは、ファクタリング会社と利用者で取引が行われ、3社間ファクタリングでは、ファクタリング会社と利用者に売掛先企業を加えて取引が行われます。
2社間ファクタリングを利用するためには、債権譲渡登記を行って債権の譲渡内容を債権譲渡登記所に記録しなければなりません。民法では、債権譲渡登記を実施することができるのは法人に限られているため、個人事業主は2社間ファクタリングの利用ができず、3社間ファクタリングのみの利用に限られます。
3社間ファクタリングは売掛先企業を含めた取引となるため、ファクタリングの利用が売掛先企業に伝わります。3社間ファクタリングを利用するに当たっては、ファクタリング利用に対して理解を得られるよう、事前に説明をしておくなどの対応が必要になります。
なお、ファクタリング会社のなかには、2社間ファクタリングのみを扱っている場合もあります。ファクタリング会社を選ぶ際は、3社間ファクタリングに対応しているか確認しましょう。
ポイントを抑えたら必要書類を準備しておく
ファクタリングを利用する際には、ファクタリング会社が指定する必要書類の提出が求められます。必要書類はファクタリング会社ごとに異なるため、利用する際はどのような書類の準備が必要なのか確認が必要です。
【必要書類の一例】
会社 | 必要書類 |
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A社の場合 |
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B社の場合 |
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C社の場合 |
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ファクタリングを利用する際に用意する必要書類の一例としては、利用者の身元を確認できる書類や事業実態、取引実態を確認できる書類などが挙げられます。請求書や取引実態を証明する書類としては、取引先からの過去の入金履歴や契約書、発注書などがあります。
なお、「請求書」「契約書」「発注書」といった書類は、提出できる数が増えるほどファクタリング会社の審査の通過率が上がる傾向にあります。ファクタリングを利用する際は、複数の会社の実態や取引実態を示せる書類を用意しておくようにしましょう。
ファクタリングを利用する際の必要書類は「ファクタリング契約に必要な書類とは?必要書類が少ないときの注意点を含めて解説」で詳しく解説しています。ファクタリングの利用に当たって、必要書類についてさらに詳しく知りたい人は参考にしてみてください。
タイトル
ファクタリングは、売却可能な売掛債権を保有していれば、原則として個人事業主でも利用が可能です。一方で、最低買取額を設けている場合もあるため、自身が保有している売掛債権の金額に見合ったファクタリング会社を利用しなければいけません。
また、現行の民法では、個人事業主の場合は2社間ファクタリングの利用ができません。個人事業主でありながら、2社間ファクタリングが行えるとなっているファクタリング会社の場合は違法性があるため注意が必要です。
なお、ファクタリングを利用する際は、ファクタリング会社が定める必要書類の提出が必要です。事業実態や取引実態を示す「請求書」「契約書」「発注書」といった書類は、提出できる数が増えるほどファクタリング会社の審査に通過しやすくなる可能性があるため、ファクタリングを申し込む際はできるかぎり書類を用意するようにしましょう。