ファクタリングは、個人事業主も利用することが可能です。しかし、ファクタリングの利用にあたっては一定の条件が設けられていることが多いため、ファクタリングの利用条件に該当していることを確認しておく必要があります。
当記事では、ファクタリングを利用する個人事業主が押さえておくべき条件を解説します。個人事業主がファクタリングを利用する際に求められる必要書類も紹介しているので、個人事業主としてファクタリングの利用を検討している人は参考にしてみてください。
ファクタリングを利用する個人事業主が押さえておくべき条件
ファクタリング会社の多くは、サービスの利用にあたって一定の条件を設けています。個人事業主としてファクタリングの利用を検討する場合は、どのような条件が設けられているかを押さえておくことでファクタリングの利用対象者となり得るかを判断することが可能になります。
ファクタリングの利用を検討する個人事業主が、利用対象者となり得るかを判断するために押さえておくべき条件として以下が挙げられます。
<ファクタリングの利用を検討する個人事業主が押さえておくべき条件>
- 売掛債権の売掛先
- 売掛債権の状態
- 売掛債権の金額
ファクタリングの利用を検討する個人事業主が押さえておくべき条件は、売掛債権に関する条件です。ファクタリング会社はすべての売掛債権の買取に応じているわけではないため、どのような売掛債権が買取対象かを把握しておく必要があります。
売掛債権に関する条件において、とくに押さえておきたいのは売掛債権の「売掛先」「状態」「金額」に関する内容です。個人事業主は法人と比べて取引規模が小さく取引関係が限られる傾向にあることから、保有する売掛債権の内容が買取対象になり得るかを確認しておく必要があります。
なお、ファクタリング会社の中には、個人事業主の利用自体をサービスの対象外としているところがあります。個人事業主としてファクタリングの利用を検討する人はその前提を踏まえつつ、押さえておくべき売掛債権に関する条件を確認しておきましょう。
売掛債権の売掛先に関する条件
個人事業主としてファクタリングの利用を検討する人が押さえておくべき条件は、売掛債権の売掛先に関する条件です。ファクタリングの利用にあたっては、売掛債権の支払者である売掛先に一定の条件を設けているファクタリング会社が存在するためです。
たとえば、売掛債権の売掛先に関する条件のひとつとして、法人であることが挙げられます。売掛先が法人に限定されている場合、ファクタリングの利用対象者に該当するためには法人との取引によって発生した売掛債権の保有が必要です。
個人事業主の取引環境は事業規模や事業内容などによって異なることから、法人と取引関係にない人もいます。個人事業主としてファクタリングの利用を検討したときに、売掛先が法人である売掛債権を保有していない人はファクタリングを利用できない可能性があることに留意しておきましょう。
なお、個人事業主向けにサービスを展開している一部のファクタリング会社では、個人間取引で発生した売掛債権の買取も行っています。個人間取引による売掛債権を売却したい人でもファクタリングを利用できる可能性があるため、利用会社の候補に挙げることを検討してみてください。
売掛債権の状態に関する条件
個人事業主としてファクタリングの利用を検討する人が押さえておくべき条件は、売掛債権の状態に関する条件です。ファクタリングの利用にあたっては、売掛先との間に発生した売掛債権の状態に対して一定の条件を設けているファクタリング会社が存在するためです。
たとえば、売掛債権の状態に関する条件のひとつとして、下請法等の法令に接触していない状態であることが挙げられます。この条件の場合、ファクタリングの利用対象者に該当するためには下請法に反する契約条件下で発生していない売掛債権の保有が必要です。
個人事業主の中には、大手企業や中小企業からの業務請負により売掛債権を保有する人もいます。業務請負契約への下請法の適用は事業者の規模や取引内容などによって異なりますが、売掛債権が下請法に反する契約条件下で発生している場合には利用を断られる可能性があることに留意しておきましょう。
売掛債権の金額に関する条件
個人事業主としてファクタリングの利用を検討する人が押さえておくべき条件は、売掛債権の金額に関する条件です。ファクタリングの利用にあたっては、買取に応じる売掛債権の金額に一定の条件を設けているファクタリング会社が存在するためです。
たとえば、買取に応じる売掛債権の金額を、50万円から1億円の範囲内と設定しているファクタリング会社があります。買取可能金額に範囲が設定されている場合、ファクタリングの利用対象者に該当するためには買取可能金額の範囲内である売掛債権の保有が必要です。
個人事業主の中には小規模な取引を行っている関係上、保有している売掛債権が少額である人もいます。ファクタリングの利用を検討した際に保有している売掛債権が少額すぎる場合には、買取可能金額の下限金額に満たないとして利用を断られる可能性があることに留意しておきましょう。
なお、買取可能金額に範囲の設定がないファクタリング会社や、数万円から買取に応じているファクタリング会社もあります。売掛債権の金額に不安がある人は、買取可能金額の設定の有無や設定範囲の下限金額に注目してファクタリング会社を選びまょう。
利用条件を把握した個人事業主は必要書類もおさえておく
ファクタリングの利用条件を把握した個人事業主は、ファクタリングの必要書類もおさえておきましょう。ファクタリングを利用する際には審査に必要な書類の提出が求められますが、個人事業主の利用に対して特定の書類の提出を求めているファクタリング会社が存在するためです。
ファクタリングを利用する際には、以下の書類の提出が求められる傾向にあります。
<ファクタリング利用時に提出が求められる必要書類の例>
書類名 |
提出を求める目的 |
請求書または納品書や発注書 |
売掛金の発生を証明するため |
通帳や入出金明細のコピー |
売掛先からの入金履歴や取引の実態を確認するため |
基本契約書や個別契約書 |
売掛先との取引の実態を確認するため |
身分証明書や印鑑証明書 |
利用者の本人確認を行うため |
商業登記簿謄本や開業届 |
利用者の実態を確認するため |
決算書または確定申告書 |
利用者の財政状況を確認するため |
たとえば、個人事業主の利用に対して開業届の提出を求めているファクタリング会社があります。開業届を提出せずに個人事業を営んでいる場合、開業届を提出できないことにより利用を断られる可能性があります。
また、個人事業主の利用に対して確定申告書の提出を求めているファクタリング会社があります。開業して1年未満である個人事業主は、提出できる確定申告書がないことにより利用を断られる可能性があります。
なお、ファクタリング利用時の必要書類はファクタリング会社によって異なるため、個人事業主の利用に対して開業届や確定申告書の提出は必須ではありません。開業届や確定申告書の用意ができない個人事業主の人は、提出を必須としていないファクタリング会社を選びましょう。
原則として請求書のみではファクタリングを利用できない
原則として、ファクタリングは請求書のみでは利用できません。請求書は売掛債権の発生を証明できる書類ではありますが、請求書のみの情報ではファクタリング会社が買取可否を決定する審査を十分に行えないためです。
たとえば、請求書のみでは売掛債権や売掛先の実在性を把握できません。請求書には、売掛先との取引で発生した売掛の内容が記載されていますが、売掛債権が確かに発生していることや売掛先が実態のある会社であることを把握するには不十分です。
また、請求書のみでは売掛先の支払い能力を把握できません。請求書には売掛先の会社情報と売掛債権の支払期日が記載されていますが、売掛先が支払期日に遅延なく売掛債権の支払いを行うかどうかを把握するには不十分です。
そのため、ファクタリングの利用時には請求書に加え、売掛債権の発生と回収性を裏付けることができる書類の提出が必要です。同一のファクタリング会社を継続的に利用する場合には請求書のみで利用できる可能性もありますが、原則として請求書のみではファクタリングを利用できないということに留意しておきましょう。
まとめ
ファクタリングは個人事業主でも利用することが可能です。しかし、ファクタリング会社の多くはサービスの利用に一定の条件を設けているため、個人事業主としてファクタリングの利用を検討する人は、どのような条件が設けられているかを押さえておく必要があります。
ファクタリングの利用を検討する個人事業主が押さえておくべき条件は、売掛債権に関する条件です。個人事業主は法人と比べ、取引規模が小さく取引関係が限られる傾向にあることから、保有する売掛債権の「売掛先」「状態」「金額」が条件に適しているかを確認してみてください。
なお、個人事業主の利用にあたって、特定の書類の提出を求めるファクタリング会社があります。個人事業主は、開業届や確定申告書の提出が求められる場合があるため、自身がファクタリングを利用できるかどうかは必要書類の提出可否も含めて検討しましょう。