銀行融資で設備資金を借り入れるときのポイントを解説

カテゴリー 資金調達

設備資金として銀行融資を検討しているものの「どんな費用が対象になるのか」や「準備は何から始めたら良いのか」と悩む人もいるのではないでしょうか?設備資金を銀行から借りるには、対象となる費用項目や審査に必要な書類を事前に把握しておくことが大切です。

当記事では、設備資金として認められる費用項目や対象外となる費用項目に加え、審査を円滑に進めるための準備のポイントを解説します。自己資金に応じた融資額の目安も紹介するので、自己資金の不足分を銀行融資で補いたいと考えている人は参考にしてみてください。

ポイントは設備資金として認められる費用を確認しておくこと

銀行融資で設備資金を申し込む際のポイントは、対象となる費用の項目を正しく理解しておくことです。申請した費用が設備資金の対象外と判断された場合、融資が認められない可能性があるためです。

<設備資金として認められる費用項目と具体例>

費用項目 具体例 備考
機械装置の購入費 製造機械、厨房機器、美容機器など 長期的に使用される設備であることが前提
事業用車両の購入費 配送車両、営業用バン、トラックなど 事業用途に限定され、私的利用がないことが条件
店舗や事務所の内装工事費 壁紙、照明、空調、電気工事など 事業所の機能向上や業務効率化を目的とした工事が対象
土地、建物の購入費(事業用) 工場用地、店舗物件など 事業目的での使用が明確であり、登記内容や名義が事業者名であることが求められる
ソフトウェア導入費 POSレジ、会計ソフト、業務管理システムなど 業務効率化や生産性向上を目的としたソフトウェアが対象
敷金、保証金、権利金 店舗や事務所の賃借に伴う支払い 賃貸契約に基づく支払いであり、事業運営に必要な場合に限られる
備品購入費 パソコン、コピー機、事務机、椅子など 長期的に使用される備品であり、事業活動に直接関連するものが対象
無形資産の取得費 自社ホームページ制作費、ECサイト構築費用など 事業の販路拡大やブランド構築を目的とした無形資産の取得が対象

設備資金とは、事業の基盤を整えるために必要な資産の取得や改修に充てる資金を指します。たとえば、製造業における機械装置の導入や更新、飲食業における厨房設備の導入、美容業における施術環境改善のための内装工事などに充てる費用が挙げられます。

設備投資には多額な費用が必要となり、自己資金のみでの対応が難しい場合もあるため、銀行融資は有力な資金調達方法のひとつです。ただし、事業性融資によって取得する設備は、必ず事業目的で使用されることが条件とされています。

なお、設備資金として認められるかどうかは、各銀行や融資制度によって判断が異なります。申請前に対象となる費用項目を確認し、不明点がある場合は事前に銀行担当者へ相談しておきましょう。

設備資金としてみなされない費用も把握しておく

設備資金の融資を申請する際には、対象外となる費用項目を事前に把握しておく必要があります。対象外の費用を含めて申請すると、融資審査に影響を及ぼす可能性があるためです。

<設備資金として認められない費用項目と理由>

費用項目 内容の例 対象外となる理由
在庫商品の仕入れ費用 販売用商品や原材料の購入費用 継続的な運転資金に該当し、設備投資とは異なるため
光熱費や人件費等の経費 電気代、ガス代、従業員の給与等 日常的な事業運営に必要な費用であり、設備の取得や改修には該当しないため
個人用途の支出 自家用車の購入、住宅の改装等 事業と直接関係のない支出は、事業資金として認められないため
決済みの経費 既に支払いが完了した設備の費用 融資申請前に支払いが完了している場合、資金使途としての正当性が認められないため

設備資金の融資申請において対象外の費用を含めると、審査の過程で申請内容の修正や再提出を求められる可能性があります。資金使途が適切でないと判断された場合、融資の承認が遅れることや申請が却下されることもあります。

また、融資実行後に資金使途が申請内容と異なることが判明した場合には、銀行から一括返済を求められることや、今後の融資が受けられなくなる可能性があります。たとえば、資金使途の変更や設備の未購入が確認された場合、借入金の全額または一部の返済を求められることがあります。

設備資金の融資申請を行う際は、設備資金として認められる費用項目と対象外となる費用項目を正確に把握しておくことがポイントです。設備資金に該当するかどうかの判断に迷う場合は、事前に銀行担当者に確認しておきましょう。

なお、設備資金と運転資金の違いを詳しく確認しておきたい人は、別記事「銀行融資で運転資金を借りられる?条件や借入可能額の目安を解説」も参考にしてみてください。

ポイントを押さえた人は審査に向けた準備を進める

設備資金を銀行から借り入れるには、まず融資審査に通過する必要があります。スムーズな審査のためには、事前に必要な準備を整えておくことが重要です。

<融資審査に向けて準備しておきたい項目>

準備項目 内容
自己資金の割合を踏まえて借入希望額を設定する 設備投資額の20〜30%程度の自己資金を用意し、適切な借入希望額を設定する
返済期間の目安を理解する 設備の耐用年数や事業計画に基づき、無理のない返済期間を設定する
金利の目安を把握する 金融機関や融資制度ごとの金利水準を調査し、返済計画に反映させる
必要書類を不備なく準備する 事業計画書、見積書、資金繰り表、決算書などを正確に揃える
面談に備えた説明事項を整理する 事業の概要、資金使途、返済計画などを明確に説明できるよう準備する

たとえば、見積書や事業計画書などの内容が不十分な場合や設備資金として使途があいまいな場合は、銀行から追加の説明や資料の提出を求められることがあります。不備への対応に時間がかかると審査が長引き、融資実行が遅れる原因となります。

審査に向けた準備を丁寧に行うことで、手続きがスムーズに進み、希望するタイミングでの資金確保に繋がります。特に、自己資金の割合や返済計画の明確さは、銀行から信頼を得るための重要なポイントになります。

なお、融資制度や銀行によって、求められる条件や必要書類が異なる場合があります。申請前には、利用予定の制度や銀行が定める要件を確認しておきましょう。

自己資金の割合を踏まえて借入希望額を設定する 

設備資金を借り入れる際は、自己資金の割合が重視されます。設備は高額で長期的に使用する資産であるため、事業者の準備している自己資金額によって投資への本気度や資金計画の堅実さが見られているからです。

<自己資金の割合と借入希望額の目安>

設備投資額 自己資金の目安 借入希望額の目安
500万円 100万〜150万円 350万〜400万円
1,000万円 200万〜300万円 700万〜800万円
1,500万円 300万〜450万円 1,050万〜1,200万円

目安としては、設備投資額の20〜30%を自己資金で用意するのが望ましいとされています。特に、事業開始時や大規模な設備更新を伴う申請では、審査の信頼性を高める根拠として評価されやすい傾向にあります。

設備資金への投資は、今後の売り上げに直結する投資であると同時に、固定資産として返済期間も長くなる傾向にあります。だからこそ、借入希望額は返済計画に無理が出ない範囲で慎重に設定することが求められます。

たとえば、設備投資額の全額を借入に頼ると、資金計画の甘さや返済能力の不安を指摘されることがあります。一方で、一定割合の自己資金を投じている場合は、事業者自身がリスクを負担している姿勢として評価されやすくなります。

自己資金の割合は、融資審査における判断基準のひとつとして重視されます。自己資金について詳しく知りたい人は「銀行融資に必要な自己資金はいくら?足りない場合の対策も解説」の記事も参考にしてみてください。

返済期間の目安を確認する

設備資金の融資を受けた場合に何年で返済すれば良いのかが気になる人は、返済期間の目安を確認しておきましょう。返済期間の目安は、導入する設備の耐用年数や事業の収益見込みに応じて設定されます。

銀行における設備資金の返済期間は、5年から10年程度に設定されている傾向にあります。利用者が希望を出すことは可能ですが、最終的な決定は銀行側が設備の内容や事業計画をもとに判断します。

返済期間が長くなるほど月々の返済負担を抑えることができますが、利息の支払い期間が延びることで総返済額が増えることになります。総返済額とのバランスを踏まえ、無理のない返済期間を申請前に見極めておくことが大切です。

また、元金返済を猶予する「据え置き期間」を設けることで、設備導入後の収益が安定するまでの資金繰りにゆとりを持たせることができます。据置期間は1年から2年程度に設定される傾向にあるものの、銀行や融資制度によって条件は異なります。

適切な返済期間と据置期間を事前に検討して融資担当者に希望を伝えることで、無理のない返済計画と、事業の安定に繋がります。希望内容に説得力を持たせるためにも、収益見込みや資金繰りの根拠を明確に伝えられるように準備しておきましょう。

設備資金に適用される金利の目安を押さえる

設備資金の融資を受ける際は、適用される金利の水準を事前に把握しておく必要があります。金利は返済総額に直接影響するため、慎重に検討すべき条件のひとつです。

銀行の設備資金の融資では、金利が年1.0%〜2.5%程度に設定されている傾向にあり、申込先の方針や返済条件によっても差が生じます。提示された金利が妥当かどうかを見極めるには、複数の銀行に見積もりを取り、条件を比較しておくことがポイントです。

たとえば、同じ借入額、返済期間であっても、金融機関ごとの審査基準や優遇条件によって金利が異なる場合があります。金利や返済期間は原則として契約後の変更ができないため、申請前に納得のいく水準かどうかをよく確認しておきましょう。

金利のわずかな違いが、設備導入後の将来的な返済負担に大きな差を生むこともあります。利用する融資を選択する場合は、月々の返済額だけでなく、総返済額でも比較してみてください。

必要書類を不備なく準備する

銀行から設備資金の融資を受けるには、必要書類を正しく揃えることが必須です。書類の不足や整合性の不備があると、審査の遅れや差戻しの原因となるためです。

<設備資金の融資に必要な書類>

書類 役割 対象
見積書 購入予定の設備や工事の内容、金額を示す 共通
事業計画書 設備投資の目的や将来の収益見通しを示す 共通
資金繰り表 資金の流れと返済能力を示す 共通
納税証明書 税上の未納がないことを証明する 共通
確定申告書 収益状況や納税状況を示す 個人事業主のみ
本人確認書類 代表者の本人確認を確認する 個人事業主のみ
決算書 事業の安定性や利益状況を示す 法人のみ
履歴事項全部証明書 法人の登記情報を確認する 法人のみ

設備投資に関する融資審査では、見積書や事業計画書、資金繰り表などの資金使途や返済能力を示す書類が求められます。個人事業主と法人によって一部の提出書類が異なる点も把握しておく必要があります。

書類はすべて揃っていても、記載漏れや矛盾があれば、審査の信頼性を損なう恐れがあります。たとえば、見積書の金額と事業計画書の支出予定に差異がある場合、資金計画全体の整合性が疑われることがあります。

また、すべての書類で整合性を保つように、金額や日付、名称などの情報が一致しているかを丁寧に確認しておくことも必要です。履歴事項全部証明書や納税証明書などは、発行からの有効期限がおおむね3か月以内に設定されているため、取得時期にも注意しましょう。

書類の整合性と取得時期の管理は、審査をスムーズに進めるための基本です。確認漏れを防ぐために、チェックリストを活用しながら申請前にすべての書類を見直しておきましょう。

なお、銀行融資の必要書類についてさらに詳細を確認したい人は、別記事「銀行融資を受けるための必要書類とは?事業者向けに解説」も参考にしてみてください。

面談に備えた説明事項を整理する

設備資金の融資を申し込む際は、書類審査に加えて銀行担当者との面談も審査の一環として行われます。融資面談では、設備投資の目的や資金使途、返済計画などを明確に説明できることが評価の対象となります。

たとえば「導入予定の設備がなぜ今必要なのか」「どのように売上や利益につながるのか」といった質問を想定し、具体的な答えを用意しておくと説明に一貫性が出ます。自己資金の準備状況や売上予測、コスト削減効果など、返済の根拠となる内容も論理的に説明できると高評価に繋がります。

口頭での説明と提出書類の内容に矛盾があると、面談での発言への信頼性を損なうおそれがあります。想定される質問を事前に洗い出し、簡潔かつ論理的に答えられるように準備しておきましょう。

面談は事業に対する本気度や資金管理能力を伝える場でもあります。伝えるべき内容を整理し、要点をまとめたメモを用意しておくと、落ち着いて受け答えしやすくなります。

なお、融資面談に関する準備のポイントは銀行融資の面談における7つの準備項目を解説の記事にて詳しく紹介しています。面談への備えを進めたい人は、あわせて参考にしてみてください。

まとめ

設備資金として銀行融資を利用するには、対象となる費用と対象外の費用を事前に整理しておくことが大切です。対象外の支出を含めて申請すると、審査が長引いたり、融資が認められないことがあります。

審査に向けては、自己資金の割合や返済期間、金利の水準を踏まえて、無理のない借入計画を立てる必要があります。必要書類を揃えたうえで、記載内容の整合性や取得時期にも注意を払うと、審査がスムーズに進みやすくなります。

また、融資面談では資金使途や返済見通しを論理的に説明できるよう準備しておくことが求められます。よく聞かれる質問を想定し、要点を整理して、落ち着いて説明できる状態を整えておきましょう。

この記事を書いたライター

ソラボ編集部

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8,000件の資金調達実績を持つSolaboの専門家が、融資や補助金など、事業課題に合わせた資金調達方法を提案します。

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