決算書は企業にとって成績表のようなものです。単純に言えば、赤字より黒字の方が良いに決まっています。
しかし、わざと決算書を赤字にすることで、結果的に企業を存続させることができたという企業もあります。とくに資金繰りの厳しい中小企業では、わざと赤字決算をすることで法人税の支払いを抑えることができます。
今回は赤字決算にすることのメリットとデメリットを解説します。
1.赤字決算の3つのメリット わざと決算書を赤字にする理由とは?
決算書とは1枚の紙ではなく、以下の書類の総称です。財務諸表や財務三表とも言います。
- 貸借対照表
- 損益計算書
- キャッシュフロー計算書
赤字決算とは収入を支出が上回っており、利益が出ていない状態のことです。
日々、経営に精進していても赤字となる場合がありますが、赤字でも帳簿上で赤字をなくす方法はいくつかあります。
例えば、10万円以上のパソコンを購入した場合は消耗品費として計上せずに工具器具備品という勘定科目にすることで経費削減することが可能です。また、買掛金として計上しているけれどまだ先方に未払いのものがあるのであれば、取引先に連絡して伝票を削除してもらえることもあります。
しかし、このような帳簿上の調整を行わず、あえて決算書を赤字のままにしておく企業は意外に多いものです。
国税庁が公表した「国税庁統計法人税表」(2018年度)によると、赤字法人(欠損法人)は181万6,508社で、全体の66.1%を占めています。国内企業のおよそ7割が赤字経営であるということです。
赤字決算には次の3つのメリットがあります。
メリット①課税所得金額がマイナスで法人税がゼロになる
法人が赤字決算の場合は、その期間において法人税の支払いはなくなります。
法人税を計算する時の計算式は、以下の通りです。
課税所得金額×法人税率=法人税額 |
赤字決算の場合、課税所得金額がマイナスなので、マイナスの数値にどの法人税率をかけたとしても法人税額はゼロになります。
メリット②繰越欠損金控除が利用できる
繰越欠損金控除とは、赤字になった翌年度以降、繰越期限までの10年の間に黒字を出すことができた場合、そのプラスマイナスを相殺できるという制度です。
繰り越された赤字は課税所得から控除されるので、結果的に法人税が安くなります。
例えば、今年あなたの会社が10億円の赤字(欠損金)を出したとしましょう。
繰越欠損金の制度は最長10年まで繰り越せるので、その10億円を何回かに分けて翌年以降10年の間に出た黒字(課税所得金額)と相殺することができます。
つまり繰越欠損金があることで、翌年以降の法人税額が本来の税額より安くなり、税負担を減らすことができるのです。
メリット③中小企業なら法人税の還付金が受け取れる
中小企業が赤字を出した際、前の期に支払った法人税の還付請求をすることが可能です。
ただし、還付されるのは前の期に支払った法人税が上限で、前期より前に支払った法人税は還付されません。
この仕組み(法人税の繰り戻し還付)を利用するには、資本金1億円以下、なおかつ青色申告書で確定申告している企業でなければいけません。
2.赤字決算のデメリット
デメリット①融資が受けにくくなる
金融機関から融資を受ける際、すでに事業を行っている企業は必ず決算書を提出します。
利益が増え業績が伸びていれば会社の経営がうまくいっていることをアピールでき、金融機関の評価も上がり、融資が通りやすくなります。
一方、赤字決算の場合、融資をしても返済能力がないと判断される可能性が高く、融資が受けにくいです。
赤字では絶対に融資が受けられないというわけではありませんが、赤字の要因やどのように赤字を改善するのか金融機関を納得させられる根拠を示さなければなりません。
デメリット②最悪倒産してしまう可能性がある
赤字ということは利益が出ていない状態ということです。
このような状態が続けば、最悪倒産してしまうことも考えられます。
会社を大きくしていきたいのであれば、継続的に利益を出せる会社になっていくことが大切です。
個人事業主や中小企業の方は、経営改善のための費用のうち最大20万円までを国から補助してもらえます。 上記の補助を受けるには、早期経営改善計画という中小企業庁の補助制度を利用する必要があります。早期経営改善計画を利用するには税理士や認定支援機関などの専門家を通さなければなりません。 当サイトを運営するSoLaboは、早期経営改善計画の対応可能な認定支援機関です。現状の信用情報で融資を受けられそうかの無料相談も可能なので、融資と経営改善の双方からのご提案が可能です。 |
まとめ
赤字決算にすることで節税対策になりますが、やりすぎると資金調達がしづらくなり、会社の発展が望めなくなります。
戦略的に赤字決算にするのも選択肢のひとつですが、会社を存続するためには利益を出すための戦略も同時に考えていきましょう。