株式会社の設立は登記をして終わりではありません。
登記完了後は、速やかに税務署や都道府県などに各種の届出を行う必要があります。しかし、そうは言われても、何をどこに届出すれば良いのか分からない方も多いのではないでしょうか?
そこで、当ページでは、株式会社の設立後に必ず届出をしなければいけない各種書類の内訳と、それらの作成法をご紹介します。
はじめに:会社設立後に必要な届出の種類と届出を行う場所
会社の設立後には、大きく分けて下記の4つの届出が必要となります。
- 税務に関して税務署に届出をする
- 地方税に関して都道府県/市区町村に届出をする
- 労働保険に関して労働基準監督署とハローワークに届出をする
- 社会保険に関して年金事務所に届出をする
これらの届出を行うことで初めて、社会的に通用する株式会社としての運営がスタートします。
そのため、これから会社を設立する方や、設立したばかりの方は、株式会社設立後に必要な届出に関して理解しておいた方が良いでしょう。ここでは、これから経営者になる方が最低限理解するべき、設立当初に届出が必要な各種書類の解説と届出の方法をご紹介します。しかし、これらの手続きを全て自分一人で行うのはオススメしません。
あくまでも、税理士や社労士と相談する上での必須知識を身につけるという感覚でご覧下さい。
1.税務署に税務上重要な6つの各種届出をしよう
会社を設立したら税務署や都道府県、市区町村などに各種の届出を提出することが必要です。その中で、税務署に提出すべき書類には以下のようなものがあります。
- 法人設立届出書
- 青色申告の承認申請書
- 給与支払事務所等の開設届出書
- 源泉所得税の納金の特例の承認に関する申請書
- 棚卸資産の評価方法の届出書(任意)
- 減価償却資産の償却方法の届出書(任意)
それぞれの書類には提出の期限が定められているものもあるので早めに提出しましょう。
書類は本店所在地を管轄する税務署に届出をしよう
これらの書類は、本店所在地を管轄する税務署に提出します。国税庁の「税務署を調べる」で確認しておきましょう。また提出する時は、各種申請書の原本と、それぞれのコピーを一緒に持って行く必要があります。1部は税務署提出用で、コピーの方は受付印を押して貰い持って帰るものになります。
受付印を押して貰った書類は税務対策上とても大切なものなので、しっかりと保管しておきましょう。また、これらの届出は郵送でも行うことができます。郵送の場合は、封筒の中に、原本とコピーと切手を貼った返信用封筒を同封するようにしましょう。
提出先は、都道府県税事務所の法人事業税課(又は法人住民税課)と、市町村の「法人住民税課」の両方です。
それでは、税務署に届出が必要なそれぞれの書類の解説と記入方法をご説明していきます。
1-1.法人設立届出書
法人設立届出書は、あなたが設立した会社の概要を税務署に知らせるための書類です。これを届け出ると税務署から税金関係の書類を送ってもらえます。また、法人設立届出書は、会社設立から2ヶ月以内に提出しなければいけません。期限を過ぎないように注意してください。
1-1-1.法人設立届出書に記入する
用紙は税務庁の「内国普通法人等の設立の届出」よりダウンロードすることができます。記入するときの主な注意点は下図の通りです。
税務署には、本店所在地の税務署の名前を書くこと。代表者氏名には会社印を押すこと。新規に会社設立の場合「設立の形態」に数字の(5)に○をつけて「金銭出資による新規設立」と記入すること。個人から法人成りした場合「設立の形態」は(1)に○をつけること。添付書類は、1に○を付けるのを忘れないこと。
1−1−2.添付書類:定款のコピーと登記事項証明書、設立時貸借対照表、株主名簿を用意する
法人設立届出書には、定款のコピーが添付書類として必要です。
株主名簿と設立時貸借対照表
1−1−3.法人設立届出書と添付書類を順番通りに並べておく
それぞれの書類は図のように、順番に並べておきましょう。提出時にこの順番で綴じて提出するためです。
- 法人設立届出書
- 定款のコピー
2.青色申告の承認申請書
青色申告の承認申請書は、設立した会社が青色申告で法人税を納めるために必要なものです。そして、青色申告申請書は、会社を設立してから3ヶ月以内、または最初の事業年度の末日の前日までに提出しなければいけませんので期限が過ぎないように注意します。
ちなみに、会社の法人税の申告方法には、青色申告と白色申告の2種類があり、法人の税金上のメリットがとても大きい申告方法が青色申告です。
青色申告の承認申請書は、国税庁の「青色申告書の承認申請書」からダウンロードすることができます。下記の画像を参考に記入してください。
1−3.給与支払事務所等の開設届出書
個人事業主の場合、売上から経費を差し引いた残りは自動的に個人の所得としてみなされますが、株式会社の場合は、代表取締役や取締役などの役員や、その他従業員の給与も会社の費用(損金)として扱います。これは、税金対策の上でも大きなメリットとなりますので、全ての会社が届出すべき書類です。
「給与支払事務所等の開設届出書」は、国税庁の「給与支払事務所等の開設・移転・廃止の届出」よりダウンロードすることができます。ダウンロードした後、以下の画像を参考に記入してください。
1−4.源泉所得税の納金の特例の承認に関する申請書
従業員がいる事業者の場合、年間の所得にかかる所得税を、事業者が月の給与から差し引く「源泉徴収」を行う必要があります。 事業者が源泉徴収を毎月納めるのは大変なものです。特例として、給与を支払う人数が常時10名未満の小さな会社は、源泉徴収の納付を、7月10日までと、1月20日までの年2回にまとめてできる、という制度が設けられています。この特例制度の適用のためには、「源泉所得税の納期の特例の承認に関する申請書」の届出をする必要があります。創業後に負担となる作業を大きく減らすことができるので、会社設立時に手続きをおすすめする書類です。
国税庁の「源泉所得税の納期の特例に関する申請書」から申請書をダウンロードして以下のように記入しましょう。
1−5.棚卸資産の評価方法の届出書(任意)
「棚卸資産の評価方法の届出書」は、任意提出書類ではありますが、会社のお金の流れに大きく影響する書類です。
「棚卸」とは、お店の在庫商品や材料を一つ一つ個数を数えて、その合計の金額を出すこと。棚卸資産の評価方法には、先入先出法や後入先出法など、全部で12種類あります。
提出しない場合、自動的に棚卸資産は「最終仕入原価法による原価法」という評価方法を取ることになります。
棚卸資産は、決算書に反映されるため、税務上、重要です。あなたの会社にとってどれが最も節税になる棚卸資産の評価方法かは、ケースバイケースですので、優秀な税理士を雇って、相談するのが一番です。
「棚卸資産の評価方法の届出書」は、最初の確定申告の提出期限までに提出する必要があります。決算直前になって急いで税理士を探しても、手続きが完了できないと手遅れになってしまいますので気をつけましょう。
届出書は、国税庁の「棚卸資産の評価方法の届出」からダウンロードすることができます。下図を参考にして記入しましょう。
1−6.減価償却資産の償却方法の届出書(任意)
事業を行う上で必要なパソコンやコピー機、自動車など、会社で購入した資産は、購入した年から年ごとに、どんどん価値が目減りしていきます。この減った価値を「減価」といい、この減価を費用計上することを「減価償却」といいます。つまり、会社は、減価を経費として扱うことができるのです。
減価の計算方法は、主に「定額法」や「定率法」の2つがあります。会社でよく買う物品と照らし合わせて、どの計算方法が最も節税になるかを税理士と相談して決めましょう。また、届出しなければ、自動的に「定率法」を適用されます。逆に言うと、定率法を選択する場合、手続きする必要はありません。
届出書は、国税庁の「減価償却資産の償却方法の届出」からダウンロードすることができます。下図を参考にして記入しましょう。
2.都道府県や市町村に開業の届出(法人設立届出)をしよう
今までの申請書類は、おもに国税に関するものであり、税務署に提出するものでした。そして、株式会社を設立したら、国税以外にも地方税を支払うことになります。そして地方税は、都道府県や市町村に納めるため、それぞれに事業開始の届出(法人設立届出)が必要となります。
書類の形式は都道府県や市町村によって異なるため、法人設立届出書を都道府県事務所と、市区町村の役所へ行って取得しましょう。また、ほとんどの都道府県、市区町村ではホームページからも申請書をダウンロードできるようになっています。
該当する都道府県、市区町村のホームページをしっかりと確認しておきましょう。
また、どちらにも、
- 定款のコピー
- 登記事項証明書
の添付が必要です。
提出先は各都道府県の税事務所の「法人事業税課(住民税課)」と、市町村役場の法人住民税課の両方です。
届出は、窓口や郵送のほか、オンライン手続き(地方税ポータルシステム「eTAX」またはマイナポータル「法人設立ワンストップサービス」)でも行うことができます。
窓口で届出するときは、書類の形式は都道府県や市町村によって異なるため、法人設立届出書を都道府県事務所と、市区町村の役所へ行って取得します。都道府県、市区町村ではホームページからも申請書をダウンロードできます。該当のホームページをしっかりと確認しましょう。
申請書の原本と、それぞれのコピーを一緒に持って行きます。原本は提出用、コピーは受付印を押してもらい、持って帰る保管用です。保管用のコピーは、税務上とても大切なものなので、しっかりと保管しておきましょう。
郵送の場合は、封筒の中に、原本とコピーと一緒に、保管用の返却用に、切手を貼った返信用封筒を同封します。保管用のコピーが戻ってきたら、しっかりと保管しておきましょう。重要書類なので、ポストにそのまま投函するよりは、郵便局で簡易書留や特定記録郵便など、郵便物の追跡が可能なサービスを利用すると安全です。
オンライン手続きは、地方公共団体によっては対応しています。画面案内に従って入力すれば、届出できますが、IT機器の操作に自信のある方にのみ、おすすめします。法人代表者のマイナンバーカードが必要だったり、マイナンバーカード対応のスマートフォンまたはパソコン、ICカードリーダライタが必要だったり、添付書類をデータで用意する必要があったり、と事前準備が大変なため、ITに不慣れな方には難しいでしょう。
3.労働基準監督署とハローワークに労働保険の加入手続きの届出をしよう
会社設立時に一人でも従業員を雇う場合、従業員が入社した日の翌日から10日以内に労働保険への加入手続きが必要となります。それぞれの概要や意図に関して理解するために、一度は、厚生労働省のサイト「労働保険の成立手続」や「労働保険の成立手続きはおすみですか?」に目を通しておくようにしましょう。
簡潔にお伝えすると、労働保険には
- 労災保険:従業員が業務上や通勤上で怪我や病気などの労働災害を受けた時に被災した従業員や家族を保護するために必要な保険給付を行うもの。労働基準監督署に届出をします。
- 雇用保険:従業員が失業したり休業したりした場合に、その労働者の雇用と生活を守るために給付を行うもの。ハローワークに届出をします。
の2種類があります。基本的に前者は労働保険監督署に、後者はハローワークに提出をします。
労災保険・雇用保険の加入は、窓口での手続き、郵送での手続き、総務省が運営する「e-Gov」での電子申請で行えます。
窓口で届出するときは、原本は提出用、コピーは受付印を押してもらい、持って帰る保管用です。保管用のコピーは、とても大切なものなので、しっかりと保管しておきましょう。
郵送の場合は、封筒の中に、原本とコピーと一緒に、保管用の返却用に、切手を貼った返信用封筒を同封します。保管用のコピーが戻ってきたら、しっかりと保管しておきましょう。
重要書類なので、ポストにそのまま投函するよりは、郵便局で簡易書留や特定記録郵便など、郵便物の追跡が可能なサービスを利用すると安全です。
オンライン手続きは、届出書類の種類によっては対応しています。画面案内に従って入力すれば、届出できますが、IT機器の操作に自信のある方にのみ、おすすめします。
3−1.労働基準監督署に提出する書類
労働基準監督署には次の書類の提出が必要です。
- 労働保険 保険関係成立届:保険関係が成立した日の翌日から10日以内。※登記事項証明書の添付が必要。
- 労働保険 概算保険料申告書:保険関係が成立した日の翌日から50日以内
※この他にも、雇用する社員数が10名以上になった時は、就業規則届が必要となります。詳しくは社労士にしっかり相談しましょう。。
労働基準監督署も全国各地にありますが、本店所在地を管轄する労働基準監督署が提出先です。
書類の様式や記入例は下記リンクで確認することができます。
3−2.ハローワーク(公共職業安定書)に提出する書類
次にハローワークに提出する書類です。必要なのは下記の2つです。
- 雇用保険 適用事業所設置届:設置の日の翌日から10日以内。労働保険 保険関係成立届と労働保険概算保険料申告書、登記事項証明書、事業所の賃貸借契約書、法人設立届、事業所宛に配達された郵便物(事業所が稼働していることを証明するため)などの添付書類が必要です。
- 雇用保険 被保険者資格取得届:資格取得の事実があった日の翌月10日まで。労働者名簿などの雇用したことを証明する書類の添付が必要です。
ハローワークも全国各地にありますが、事業所の所在地を管轄するハローワークが提出先です。
これらの届出書類は、ハローワークの窓口に出向いて、そこで用紙を記入して提出するのがおすすめです。
法人実印を持って行けば、その場で記入し、届出を完了させることができるでしょう。手続きが完了すると、従業員の被保険者証と適用事業所台帳が発行されます。
書類の様式や記入例は下記リンク で確認することができます。
4.年金事務所で社会保険加入の手続きをしよう
個人事業主の時は、従業員の社会保険料を負担する義務はありませんが、株式会社では、半分を会社負担としなければいけません。つまり、従業員を雇った時には、給料に加えて、これらの社会保険料の総額が一人の人件費となります。会社の雇用計画に大きく影響するため、社労士や税理士と相談し、しっかりと先のことを考えておきましょう。
社会保険の加入手続きは、年金事務所で行います。社会保険には、「健康保険」「介護保険」「厚生年金保険」の3つがあります。
会社設立のとき、社会保険加入の手続きをするためには、下記の3つの書類を提出する必要があります。会社を設立した日から5日以内に提出しましょう。
- 健康保険・厚生年金保険新規適用届:登記事項証明書や賃貸借契約書のコピー(事業所が存在することを証明するため)を添付します。
- 健康保険・厚生年金保険被保険者資格取得届:
- 健康保険被扶養者(異動)届:添付書類が求められることがあるため、あらかじめ年金事務所に確認する。
※この他にも添付書類が求められる可能性があるため、あらかじめ年金事務所に電話をして確認しておきましょう。
年金事務所も全国各地にありますが、事業所の所在地を管轄する年金事務所が提出先です。
これらの社会保険加入の手続きを急ぐ場合は、日本全国にある日本年金機構の相談・手続き窓口に、法人実印を持って相談に行けば、その場で書類を記入し手続きを完了させることができます。
しかし、手続きに関する相談はできても、雇用計画などの会社の事情に沿った相談が窓口でできるわけではないので、事前に税理士や社労士などの専門家に相談してから、届出手続きをするのがベストです。
書類の様式や記入例は下記リンクで確認することができます。
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