個人事業主として事業を行っていると、事業資金などの融資を受けようと考えるタイミングがあるでしょう。
日々お金のやりとりが発生したら仕訳をする必要があるように、銀行や日本政策金融公庫などの融資先からお金を借りたときにもきちんと仕訳をしなくてはいけません。
また、借入金は毎月返済していくので、その都度仕訳を記帳する必要があります。
そこで今回は金融機関から融資を受けたときの借入金の仕訳方法と月々の返済の仕訳方法を解説します。個人事業主の方におすすめする事業資金の調達方法もあわせてご紹介しますので、参考にしてください。
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1.個人事業主が融資を受け借入したときの仕訳方法 借入金の勘定科目は何?
金融機関から事業用資金の融資を受けた場合、借入時と毎月の返済時で仕訳方法が変わります。
なお、親族や友人など個人から受けた借入金も、金融機関から融資を受けた時と同様に勘定科目の仕訳をします。
(1)借入時の仕訳
例)取引先の銀行から1,000,000円の融資を受けた。印紙代200円、銀行への手数料20,000円が差し引かれ、差額の979,800円が事業用通帳に振り込まれた。
借方勘定科目 | 金額 | 貸方勘定科目 | 金額 | 概要 |
普通預金 | 979,800 |
借入金 |
1,000,000 |
事業用資金借入 |
租税公課 | 200 | 印紙代 | ||
支払手数料 | 20,000 | 銀行手数料 |
(2)借入返済時の仕訳
例)事業用通帳から借入金の返済として毎月11,000円引き落とされている。
この時の内訳は返済額が10,000円で、支払利息が1,000円です。
借方勘定科目 | 金額 | 貸方勘定科目 | 金額 | 概要 |
借入金 | 10,000 |
普通預金 |
11,000 |
借入金返済 |
支払利息 | 1,000 | 利息の支払い |
金融機関から借入を行った場合、支払利息のみ経費となります。この場合では1,000円です。借入金の元本を返済しても経費にはなりません。
(3)前払費用の仕訳
デジタルツールのサブスクリプションなど、継続的に費用が発生する契約は、前払費用として仕訳をします。
前払費用は、「費用総額×使用期間(月)/契約期間(月)」で計算します。
たとえば、5年間契約のツールの総額が30万円で、今年度の利用期間が6か月の場合、「300,000円×6/72=25,000円」となり、仕訳は以下のように行います。
借方勘定科目 | 金額 | 貸方勘定科目 | 金額 | 概要 |
前払費用償却 | 25,000 |
前払費用 |
25,000 |
デジタルツールの経費計上 |
2.個人事業主の借入金はなぜ経費にならないのか
金融機関から事業用資金の借入を行い、返済をしても経費にはなりません。
その理由を具体的に個人事業主で経費になるものがどういったものなのか確認しつつ、整理してみましょう。
(1)経費として計上できるもの
個人事業主で経費になるものは、売上を生むために生じた経費に限ります。
「売上を生む経費」には「売上原価」と「販売費及び一般管理費」があります。
売上原価は商品の製造や仕入れにかかった費用などです。販売費及び一般管理費は電話代やオフィス・店舗代、水道代やガス代、通信費など事業を維持するのにかかる費用のことを言います。
(2)経費として計上できないもの
反対に個人事業主で経費にならないものは、売上を生まない支出です。
所得税や生命保険料、スポーツクラブなどの会費、健康診断の費用などです。これらは売上には関わらない支出ですので、経費にはなりません。
そして事業用の借入金の返済も経費にはならずこちらに該当します。
借入金は、借りた先である銀行や日本政策金融公庫などに毎月返済していきます。これは借りたお金をそのまま返すということですから、売上を生んでいるわけではありません。ただし返済に際して掛かる支払利息は経費になります。
中には借入を行って利益が上がったと思われる場合があります(例えば設備を一新して生産効率が上がったなど)。ですがそれは借入金から支出した設備投資などの費用が経費として計上されるのです。
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3.個人事業主におすすめする事業資金の3つの調達方法
個人事業主が借入を行った際の仕訳の方法について見て来ましたが、実際に事業用資金の借入を考えるとどのようなところから借入を行うことが出来るのでしょうか。
代表的な資金調達方法は以下の3つがあります。
(1)日本政策金融公庫
日本政策金融公庫とは政府が100%出資する政府系金融機関です。主に個人事業主や中小企業を対象に融資を行っています。
利用する制度や利用する人の状況によって金利は異なりますが、最も高い金利の新創業融資制度の基準金利であっても2.41%~2.80%(令和2年10月1日現在)です。
民間の金融機関が平均3%ほどの金利であることから考えても、日本政策金融公庫のほうが低い金利で借入できます。返済期間も5年以上からと借入期間が長く設定されています。
あなたがしっかりと余裕をもって事業を運営するために必要な「自己資金」を確保して、あなたの事業の実績などをきちんと説明できるように準備を行い、これまでにカードローンなどの返済が滞りなく行われているという信用情報と融資後事業の計画を提示出来るのならば、融資を受けられる可能性は高くなります。
また、日本政策金融公庫から融資を受けることが出来れば、その実績から他の金融機関の評価も上がり、融資を受けやすくなります。
一方で日本政策金融公庫から融資を受けるためには、借入申込書や創業計画書、企業概要書など必要な書類が多いということもあります。
さらに申し込みをしても厳しい審査をクリアしなくてはなりません。もしあなたが初めて融資を受けよう考えていて返済実績のない場合、「自己資金」が評価の基準になってしまいますから、「自己資金」が低いと融資を受けることが厳しくなります。
日本政策金融公庫のメリット・デメリットとは?創業時でも融資が受けやすいってホント?
(2)信用金庫
地域の人々が会員・利用者となる協同組織です。そのため相互扶助を目的としており、小規模な会社などにも積極的に融資を行っています。
日本政策金融公庫と比べると金利が高く、貸し出せる金額も銀行などと比べる少なくなっています(信用金庫の資金量自体が銀行などと比べる少ないのです)。
また、日本政策金融公庫から借入れる場合は約1ヵ月から1ヵ月半で融資を受けられますが、信用公庫の場合は借入に信用保証協会の判断を要するため、約2ヵ月から3ヵ月と時間がかかってしまいます。それでも借入を行う際には有力な候補と言えるでしょう。
(3)助成金や補助金
個人事業主が事業資金を得ることが出来るのは融資だけではなく助成金や補助金という選択肢もあります。
これらは融資とは違い返済する必要がありません。
ですが助成金や補助金の仕組みとして理解しておかなければならないのは、あなたが事業に300万円の投資をしようと考えた場合、まず先にあなたが300万円を捻出し、支出しなければなりません。その後、支出した300万円の一部を助成金・補助金という形で受け取れるのです。
そのため、手元に資金が必要な場合には向きません。また、助成金・補助金を受けるには申請から取得するまでに1年から1年半ほどかかります。
助成金・補助金を受けるには一定の条件が設定されていることもあるので、自分が受けることが出来るのかどうか確認する必要があります。
個人事業主におすすめの融資についてもっと詳しく知りたい方はこちらをご覧ください。
まとめ
個人事業主が事業用資金を融資などで借入を行った場合、基本的に経費とはなりません。ですが毎月返済していく上での支払利息は経費として処理することが出来ます。
個人事業主が融資を受ける際は日本政策金融公庫や信用金庫、銀行などの方法があります。どこから借りればいいのか迷った場合、まずは金利が低く、返済期間も長い日本政策金融公庫からの融資を検討してみましょう。