将来の起業を目指して、今はサラリーマンとして実力をつけ人脈を培っているという方や、個人事業主としてフリーランスで活動していて将来は会社の社長を目指している方は、きっと沢山いることでしょう。多くの方は起業する際に、株式会社設立を視野に入れているのではないでしょうか?
そこで今回は、初めての起業でも1週間で行える株式会社設立の方法をご紹介します。
初めての方でも出来る限り迷わず、スムーズに作業を進められるように、必要な書類の雛形や事前に用意すべきもの、手続きの手順などを具体的に説明していますので、ぜひ参考にしてみてください。
はじめに:本当に株式会社の設立をするべきなのか?
株式会社設立をするメリットとデメリットは?
もしあなたが「独立するなら、まずは株式会社設立をしなければ始まらない」とお考えだとしたら、より深く株式会社設立について知る必要があります。
まず、株式会社設立には、次の表のようなメリットとデメリットがあります。
株式会社設立のメリット |
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株式会社設立のデメリット |
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まだ売上げや利益計画に確実な見込みがない場合は個人事業主から始めるのも良い選択肢です。または、株式会社より設立費用の安い合同会社という選択肢もあります。
※合同会社のメリットは、『急増中!起業を考えているなら知っておきたい合同会社のメリット6つ』をご覧下さい。
一方で、例えば、合同会社や個人事業主では取引が難しい企業がメインのターゲットの場合は、株式会社を選択するのが現実的でしょう。
また、個人事業主として開業しビジネスが軌道に乗り、収入が1千万円を超え、そのビジネスに一生を捧げるぐらいにやり甲斐を感じているなら、事業拡大のために株式会社化(法人なり)するというのも良い流れです。
独立・起業の際に取れる選択肢は何も株式会社の一つだけではありません。どの事業形態で始めるのが最もあなたに適しているのかをしっかりと判断するようにしましょう。
株式会社設立に最低限必要な費用
株式会社設立には、資本金とは別に登記手数料等の費用が合計で24万円ほど必要になります。最低限必要な金額の内訳は以下の通りです。
◆株式会社設立に最低限必要な費用
定款に貼る収入印紙代:4万円(※注1:電子定款の場合は不要)
定款の認証時に公証人に払う手数料:5万円 登記手続きに必要な定款の謄本手数料:約2,000円(250円/1ページ) 登記手続きの際の登録免許税: 最低15万円(※注2:厳密には資本金の額×0.7%) 合計:約24万円 |
定款をPDFなどの電子定款にした場合、定款の収入印紙代は不要になるので、4万円を節約することができます。しかし自分で電子定款を作るには特別な機器が必要となるので、結果的に割高になる場合が非常に多いです。
参考:会社設立に必要な電子定款を作るための5つのステップと必要な機器
また、会社設立やその準備にかかった費用は、設立する会社の経費として計上することができます。領収書などは全て保管しておきましょう。
株式会社設立の手続きを自分でやるべきか任せるべきか?
株式会社設立にかかる約24万円の費用は、自分で株式会社設立をした時にかかる費用です。しかし、株式会社設立のためには、初めての方には耳慣れない書類を用意したり、役員の配置を決める機関設計や株主の構成など、注意して決めておきたい事項もあります。
機関設計や株主構成を決める際に最低限抑えておいて頂きたい注意点は、当サイト内でご説明させて頂いております。しかし、不安な場合は、別途10万円程度の費用がかかりますが、司法書士や会社設立の代行会社に依頼するのも良い選択でしょう。
ただし、会社設立の代行業者や司法書士に頼む場合でも、一通りの流れを知っておくのは大事なことですので、ぜひ参考にして下さい。
1.初めての人でも1週間で会社設立し、起業するための全手順
株式会社設立のステップを大まかに分けると以下の6つのステップになります。
株式会社設立の作業を、実質1週間程度で終わらせられるように1つずつステップ・バイ・ステップで解説します。
それぞれに必要な書類の雛形や記入方法、そして会社設立の手続きにおける注意事項などを細かく解説させて頂いていますので、一つ一つの作業を集中して終わらせれば、合計で1週間ほどで終わらせることができるでしょう。
(注)ここでは一般的な株式会社設立である「発起設立」「資本金の中に現物出資なし」「許認可の申請なし」の場合の株式会社設立方法を説明しています。
もし、許認可が必要な事業を行う場合は、会社設立代行会社などの専門家にご相談下さい。
また、1週間というのは、あくまでも実作業の時間です。実際には登記が受領されるまでに、プラス1週間ほどかかります。
2.ステップ1 会社設立項目の決定
株式会社設立の手続きを始める前に、やっておかなければならないのが「設立項目の決定」です。設立項目が決まっていなければ、次の定款の作成にスムーズに移行することができませんので、あらかじめ余裕を持って決めておきましょう。
(1)会社設立の手続きを始める前に用意しておくべき10の項目
以下の会社設立項目は、次項で説明する定款を作る時までに決めておく必要があるものです。
①商号(会社名)
一目見ただけで取引先から覚えられるぐらいのインパクトがあり、会社法上の決まり事が守られた商号を考えておきましょう。
②事業目的
事業目的とは、あなたの会社が「どのような事業を行って利益を生み出すのか」を明文化することです。
③本店所在地
定款を作る時までに、会社の本社住所を決めておく必要があります。自宅にするのか、新たに事務所を借りるのか、レンタルオフィスにするか、コワーキングスペースにするかなど、いくつかの選択肢があります。
④資本金
資本金は、あなたが始める株式会社の元手となる資金です。
資本金を使ってパソコンや業用車など会社の運営に必要なヒト・モノを確保した上で、最低半年の運転資金をまかなえる額を用意するのが一般的です。
⑤資本金を出す株主の構成
言い換えると、上記の資本金を誰から調達するかです。
資本金を誰が出すかによって、次の機関設計をどうすべきかも変わってきます。
⑥機関設計
資本金を全て発起人(創業メンバー)の自己資金でまかなう場合はあまり頭を悩ませる必要はありません。一方、最初の株主の中に、経営判断に介入してきそうな者がいる場合は、取締役会の設置の可否を考えたりする必要が出てきます。
⑦事業年度はどうするか?
事業年度は会社を運営する上で大切な要素です。
税理士からのアドバイスを受けやすい時期にしたり、免税期間を長く取ったり、住民税の均等割の支払額を少なくしたりなど、決定する上で様々な要素を考慮しておく必要があります。
⑧会社の印鑑を4種類用意
株式会社の設立登記の書類や定款に早速、会社印が必要になる箇所があります。
また、会社運営を始めてから頻繁に使うようになるものもあるため、最初に「代表者印(法人実印)」「銀行印」「社印(角印)」「ゴム印」の4種類の印鑑を用意しておきましょう。
⑨印鑑証明書
印鑑証明書は、次項で解説する定款の認証時と登記時に必要になります。あらかじめ取得しておきましょう。
⑩設立費用
『株式会社の設立に最低限必要な項目』でご説明した設立費用もこの段階で用意しておく必要があります。
会社設立の各種項目に関しての具体的な説明は、『株式会社を設立する前に用意しておくべき10の項目』で詳しく記載しています。次項に移る前に必ず確認するようにしておきましょう。
(2)会社用のホームページも用意しておこう
この段階から、レンタルサーバーと契約し、ドメインを取得して、会社のホームページを用意しておくことをおすすめします。
ホームページはWeb上での会社の玄関となるものなので、無料ブログサービスや無料ホームページサービスではなく、独自のWebサイトを構築するようにしましょう。
SEOにも強く運用が簡単なWordPressで構築することをおすすめします。(当サイトもWordPressで構築しています。)
3.ステップ2 会社設立に必要な定款の作成と認証
定款とは、あなたの会社の基本ルールを書面にまとめたものです。
会社設立時に作成が義務づけられており、設立登記の際に必要となります。
(1)4万円お得?!電子定款の作り方
定款を紙ではなくPDFの電子定款にすると、定款に貼らなければいけない収入印紙代の4万円を節約することができます。しかし、実際には専用の機器を用意したり、特殊なソフトウェアを使用する必要があるため、紙の定款の方が結局安くおさまる場合が少なくありません。
電子定款を作成すべきか否かの判断基準と、実際の作成方法に関しては、以下のページで解説していますのでご参考にして下さい。
> 『会社設立に必要な電子定款を半日で完成させるための5つのステップ』
(2)定款を作成したら定款の認証へ
定款を作成したら、次にその定款が正しく作られたものであることを第三者に証明してもらうために公証役場で「定款の認証」というステップが必要になります。
認証に先立って、用意するべき書類や持って行くべきもの、そして、定款認証の流れは下記のページで詳しくご説明しています。
> 『定款認証の手続きを初めての方でもスムーズに行うための5つの手順』
注1:定款の電子認証
電子定款の場合は、定款の認証もWeb上で行うことができます。電子定款の場合は、実際に公証役場へ行くよりも短時間で終えることができるでしょう。定款の電子認証の方法は下記ページでご確認下さい。(※全てをWeb上で行えるというわけではなく定款認証後には、公証役場へ足を運んで、認証を受けた定款を取りに行く必要があります。) |
4.ステップ3 株式会社設立登記書類の作成
定款を作成したら、いよいよ株式会社設立登記に移りますが、その前に必要な書類を用意しておく必要があります。
※会社の形態や機関設計によって必要な書類や、用意すべき枚数は変わってきます。また、これらを全て用意するのは大変だと思われるかもしれませんが、一つ一つの書類の作成はとても簡単ですのでご安心下さい。(※詳しくは後述のリンク先ページにて)
①定款
②資本金の払込証明書 定款で記載している資本金額が実際に入金されていることを証明する書面 ③発起人の決定書 本店所在地が発起人の同意をもって決定されたことを証明する書面 ④会社設立時役員の就任承諾書 会社の役員になるメンバーの承諾書 ⑤印鑑証明書 会社登記の際は、役員全員の印鑑証明書が必要となります。 ⑥株式会社設立登記申請書 法務局に設立登記の申請をする際の申請書です。 ⑦登録免許税貼付用台紙 法務局に納める登録免許税を貼る紙のことです。 ⑧登記すべき事項を保存したCD-R又はフロッピーディスク あなたの会社の登記事項をまとめたものです。紙で用意しても良いのですが、CD-Rかフロッピーディスクで用意した方が早いでしょう。 ⑨印鑑届出書 会社の印鑑証明書のようなもので、会社設立をすると取得できるようになります。厳密には、設立登記の後に取得するもので、銀行口座の開設や税務署への届出の際に使うことができます。登記完了後の重要な書類ですので、こちらに含んでいます。 |
これらの書類を用意する手順はとても簡単なので、それほど時間はかからないでしょう。詳しくは、下記ページで解説しています。それぞれの書類の雛形もダウンロードすることができますので、ご活用ください。
> 『会社設立登記に必要な書類のリストとそれぞれの書類を作成する手順』
5.ステップ4 株式会社設立登記
株式会社設立登記に必要な各種申請書を用意したら、いよいよ法務局で登記を行います。登記のために、法務局で申請をした日が会社設立日となりますので、とても大事なステップです。
手順は非常に簡単で、書類や手続きに不備がない場合は、提出後1週間ほどすると登記が受領されます。
登記の方法は以下の3つです。
- 実際に法務局へ行って行う
- 郵送で行う
- オンラインで行う
それぞれの具体的な手順と注意点に関しては、下記ページで説明しています。
> 『会社登記の具体的な手順と必ず抑えておくべき6つの注意事項』
6.ステップ5 開業の届出
株式会社設立は登記をして終わりではありません。登記後に、税務署や労働基準監督署、都道府県などに各種届出を行う必要があります。
下記のリストは、おおよそどの企業でも、提出しておくべき書類の一覧です。これらを提出して、初めて本格的に会社運営がスタートします。
一つ一つしっかりと用意して、届出を終えましょう。
①法人設立届出書
設立した会社の概要を税務署に知らせるための書類。都道府県や市町村にも地方税を納めるために開業届として必要。 ②青色申告の承認申請書 税制上、大きなメリットのある青色申告をするために提出しておくべき書類 ③給与支払事務所等の開設届出書 役員報酬や従業員の給料を支払うこととなった時に必ず出しておくべき書類 ④源泉所得税の納金の特例の承認に関する申請書 源泉所得税を毎月ではなく年2回の納付にして創業後の負担を軽くするために提出する書類 ⑤棚卸資産の評価方法の届出書 会社の在庫商品の計算方法を届け出る書類。必要ない場合も少なくないが、業種によっては節税のために非常に重要。 ⑥減価償却資産の償却方法の届出書 会社で所有する固定資産の減価償却の計算方法を届け出る書類。原則とは異なる方法で減価償却の計算をしたい場合に提出が必要。 ⑦労働保険 保険関係成立届 従業員を雇う上で必須。労働保険に関する届出。 ⑧労働保険 概算保険料申告書 従業員を雇う上で必須。労働保険に関する届出。 ⑨雇用保険 適用事業所設置届 従業員を雇う上で必須。労働保険に関する届出。 ⑩雇用保険 被保険者資格取得届 従業員を雇う上で必須。労働保険に関する届出。 ⑪健康保険・厚生年金保険新規適用届 従業員を雇う上で必須。社会保険に関する届出。 ⑫健康保険・厚生年金保険被保険者資格取得届 従業員を雇う上で必須。社会保険に関する届出 ⑬健康保険被扶養者(異動)届 従業員を雇う上で必須。社会保険に関する届出。 |
それぞれの書類の具体的な作成方法や提出に関する注意点、理解を深めるためのリンクなどを下記のページで詳しく説明しています。
とても大切なものなので、しっかりと確認しておきましょう。
> 『株式会社設立後に必ず届出しなければいけない書類とその作成法まとめ』
また、税理士などと顧問契約していれば、良いアドバイスをくれることでしょう。会社の運営上、税務面の整備は非常に大切ですので、信頼のできる税理士と契約して、相談できるような環境にしておくことも大切です。
弊社SoLaboでは、税理士を無料でご紹介しています。「経営のアドバイスをしてくれる人が良い」「この予算内で紹介してほしい」など、ご希望に合った税理士を紹介しておりますので、税理士をお探しの方はご相談ください。
融資による資金調達も視野に
会社の資金繰りに常にアンテナを張るのも経営者の役目です。時には大きな投資が必要になったり、運転資金の借り入れが必要になったりすることもあるでしょう。そんな時に金融機関から必要な額の融資を受けるためにも日頃から、良い関係性を築いておくことも大切です。
さらに、サラリーマン時代とは違って、正しい税金や労務・法務の知識を身につけておくことも経営者の大切な仕事の一つです。
また、伸びる会社には、ヒト・モノ・カネ・情報の4つの要素が大切だと言いますが、この中でも最も重要なのはヒトです。会社の内部にも外部にも、経営者の右腕となり、会社を伸ばす人材を確保していきましょう。内部に会社の利益を生み出すための根幹となる人物がいることはもちろん、外部には、税理士や社会保険労務士、弁護士、金融機関担当者など会社の運営をサポートするプロの集団を確保しておきましょう。
株式会社SoLabo(ソラボ)は日本政策金融公庫の融資サポートをする認定支援機関です。当社はこれまでに3,700件以上の公庫融資をサポートしてきました。相談は無料ですので、公庫融資をはじめとした資金調達に関してご不明な点や疑問点等ありましたら、まずはお気軽にご相談ください。
最後に:株式会社設立完了後に経営者がやるべきこと
株式会社設立をした後が、経営の本当のスタートです。
創業期の経営者は、経営計画の策定や資金調達、税金や労務/法務対策、内外部のネットワークの強化などやるべき仕事が山積みです。
会社の経営計画はしっかりと数字目標に落とし込んで、いつでもどこでもプレゼンテーションできるようにしておきましょう。
会社の運用上必要な、最低限の経費、家賃、給料、仕入れ、広告費をどのように使って、どれぐらいの売上げを生み出すのか?
その数字を達成するためには、どれぐらいの労働時間が必要で、どれぐらいの従業員に割り振るのかなど、行動スケジュールと利益スケジュールにしっかりと落とし込むことが大切です。