会社を設立するには、法務局で登記申請が必要です。登記申請を行い、法人として認められることで会社設立が完了となるためです。
そのため、会社設立における必要書類は、登記申請で提出する書類を準備する必要があります。会社設立を考えている人は、登記申請の際に必要な書類が何か事前に把握しておきましょう。
当記事では、株式会社を設立する場合の登記申請の必要書類を解説します。
会社設立の登記申請で提出する必要書類
会社設立で必要な書類には、登記申請書以外にも定款や資本金の払込証明書など記載内容が決まっているものがあります。事前に記載内容や形式を確認しておきましょう。
【登記申請で提出する必要書類一式】
- 登記申請書
- 登記すべき事項を記した書類
- 定款
- 登録免許税の収入印紙を貼った台紙
- 資本金の払込証明書
- 取締役の就任承諾書
- 代表者印の印鑑届出書
- 印鑑証明書
なお、会社設立の際に代表者個人として必要なものは、市役所に登録している印鑑の証明書のみです。代表者個人の住民票は必要ありませんが、提出書類に住所や名前の記載が必要です。
登記申請書
登記申請書には、商号や連絡先、住所などの基本情報を記載します。また、登記申請書とともに提出する書類の一覧なども記載が必要です。
【登記申請書に記載する内容】
- 商号
- 本店の所在地
- 登記の事由(令和〇年〇月〇日発起設立の手続終了)
- 登記すべき事項(別途書類またはCD-R似て提出可能)
- 課税標準金額
- 登録免許税
- 添付書類一覧
- 申請者情報
- 押印(登記所に提出した印鑑)
課税標準の金額は、資本金額を記載します。記載内容に抜け漏れある場合、再提出となるため事前に法務局の「株式会社設立登記申請書」を参考にして不備のないよう記載しましょう。
【登録申請書の例】
参考:株式会社設立登記申請書の記載例「株式会社設立登記申請書」|法務局公式サイト
2ページ目以降は契印が必要です。契印は、ホチキス止めした後、見開き部分に両ページにまたがって押印します。
なお、申請はオンラインでも可能です。オンライン申請の場合、申請者情報の登録や申請ソフトのインストールなどの準備が必要であるため、オンライン申請を希望する人は法務局の公式サイトにある「商業・法人登記のオンライン申請について」で申請方法を確認しておきましょう。
【オンライン申請の手順】
- 事前準備
- 申請書情報の作成
- 添付書面情報への電子署名の付与
- 添付書面情報の添付
- 申請書情報への電子署名の付与
- 申請書情報の送信
- 登録免許税の納付
- 添付書面,印鑑届書の提出
登記すべき事項を記した書類
登記すべき事項は記載内容が多いため、別の書類またはCD-Rにて作成します。
【登記すべき事項の内容】
- 商号
- 本店の所在地
- 公告をする方法
- 事業の目的
- 発行可能株式の総数
- 発行する株式の内容
- 発行済株式の総数
- 資本金の額
- 株式の譲渡制限に関する規定
- 役員情報(資格、氏名、住所)
- 代表取締役の氏名及び住所 など
参考:登記事項の作成例一覧 0001株式・設立.txt|法務省
CD-Rの場合、作成手順は法務省にある「登記事項の作成例一覧」のテキストデータから、PCのメモ帳などに張り付けて作成していきます。テキストデータは「〇〇〇〇.txt」の形式で全角64文字以内の名前をつけ、CD-Rに書き込みます。文字コードはシフトJIS形式ですべて全角で記載しましょう。
その他にも記載する際のルールがあるため、CD-Rで提出する際は法務省の「商業・法人登記申請における登記すべき事項を記録した電磁的記録媒体の提出について」を参考にしてみてください。
なお、書類で提出する場合にはフォーマットの指定はありません。記載すべき事項を確認して、記入漏れがないようにしましょう。
定款
定款とは、会社の規則を定めた書類を指します。会社の憲法とも呼ばれる書類で、定款がなければ会社を設立できません。
定款には「絶対的記載事項」「相対的記載事項」「任意的記載事項」の3種類の記載事項があります。それぞれどのような内容で、どのような項目が該当するのかを確認してみましょう。
【定款に記載する内容】
項目 |
内容 |
絶対的記載事項 |
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相対的記載事項 |
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任意的記載事項 |
|
「絶対的記載事項」は必ず記載すべき項目です。記載がなければ定款として認められないため、提出前に必ず確認しましょう。
「相対的記載事項」は、定款に記載していないと会社の規則として効力を持たない事項です。記載がなくても定款として成立しますが、記載していないと規則として効力と発揮できず後でトラブルになる可能性があります。
「任意的記載事項」は、法に反していなければ会社で決めた事項を規則とできる事項です。定款に記載していなくても定款は成立し、規則自体もが無効になるわけではありません。
ただし、定款は書き方に決まりがあるため専門の知識が必要です。時間に余裕がない人や一から作成するのに自信のない人は、司法書士や行政書士などの専門家を頼ることも検討しましょう。
登録免許税の収入印紙を貼った台紙
登録免許税の収入印紙を貼る台紙は、特に決まったフォーマットはありません。収入印紙を購入し、登記申請の際に他の必要書類とともに提出します。
【収入印紙を貼った台紙の例】
収入印紙の額面と枚数は、設立する会社の資本金額によって異なります。登録免許税の計算方法は、株式会社の場合「資本金×0.7%」または「15万円」どちらか高い額を支払います。合同会社であれば「資本金×0.7%」または「6万円」どちらか高い額を支払います。
なお、収入印紙は法務局や郵便局、コンビニエンスストアで購入できます。登記申請の際は、必要書類の準備とあわせて収入印紙も購入しておきましょう。
資本金の払込証明書
資本金の払込証明書には、入金した資本金額だけでなく株式発行数や会社の住所なども記載します。
【払込証明書に記載する必要事項】
- 払込みがあった金額の総額:金○○万円
- 設立時発行株式数:○○株
- 日付
- 本店所在地
- 会社名(商号)
- 代表取締役の氏名(代表者印)
【払込証明書の例】
引用:株式会社設立登記申請書の記載例「払込みのあったことを証する書面の例」|法務局公式サイト
資本金の払込証明書を提出する際は、口座に入金した証拠として通帳のコピーも必要です。振込の明細や口座番号などが確認できるようにコピーしましょう。
なお、資本金の払込の手順や注意点を知りたい人は「会社設立における資本金の払込みはいつ?手順と注意点を解説」を参考にしてみてください。
設立時代表取締役選定決議書
設立時代表取締役を選定したことを証する書面として、設立時代表取締役選定決議書が必要です。この書類は、株主総会において、だれが取締役に選定されたかを記した書類です。
【設立時代表取締役選定決議書の例】
参考:株式会社設立登記申請書の記載例「就任承諾書の例設立時代表取締役を選定したことを証する書面の一例」|法務局公式サイト
決議書は株主総会などの会議による決定事項や意見などを記した書類です。上記のフォーマットは一例であるため、決議書は会社の実情に合わせて作成してください。
代表者印の印鑑届出書
代表者の印鑑届出書は、会社の実印として法務局に登録する際に必要です。会社で使われる印鑑には種類があり、法務局への登録手続きが必要なものと必要でないものに分けられます。
【会社で使われる印鑑の種類】
法務局の登録手続きが必要な印鑑 |
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代表者印 |
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銀行印 |
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法務局への登録手続きが不要な印鑑 |
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社印 |
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印鑑届出書には、登録する代表印の押印だけでなく登録者本人の押印も必要です。登記登録する人が代理人でない場合は、市区町村に登録してある個人の押印を行うことで、代表者と個人が一致していることを確認します。
登記簿上の個人の住所と氏名が代表者の情報と一致しない場合は、代表者の住所または氏名の変更登記をする必要があります。
印鑑証明書
就任承諾書に押印した印鑑の印鑑証明書を提出します。登記申請を就任承諾書に押印した本人が行う場合は、市区町村に登録した印鑑の印鑑証明書を発行しておきましょう。
【印鑑証明書】
場合によって必要になる書類
登記申請で必要な書類には、全員が提出する書類に加えて状況に応じて提出が求められる書類もあります。
【場合によって必要になる書類】
書類名 |
必要となる場合 |
発起人の同意書 |
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取締役の就任承諾書 |
(添付書類の一覧に「就任承諾書は、設立時代表取締役選定決議書の記載を援用する。」と記載する) |
設立時取締役の調査報告書 及びその附属書類査報告書 |
(定款の相対記載事項のうち「現物出資」「財産引受」「発起人の報酬」「設立費用」に当てはまる場合) |
別紙財産引継書 |
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本人確認証明書 |
(住民票記載事項証明書、運転免許証のコピーなど) |
資本金の額の計上に関する設立時代表取締役の証明書の例 |
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委任状 |
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参考:株式会社設立登記申請書の記載例「株式会社設立登記申請書」|法務局公式サイト
会社を設立する状況によって必要書類は異なります。登記申請する人は、自社に必要な書類を事前に洗い出しておきましょう。
必要書類を提出する際の確認事項
必要書類を提出する際は、いくつかの確認事項があります。確認事項を押さえて、提出内容に不備がないようにしましょう。
【必要書類を提出する際の確認事項】
- 登記の事由の日付が登記申請書の日付より前か確認する
- 正しい訂正方法で記載内容が訂正されているか確認する
- 連絡先の電話番号を記載しているか確認する
登記の事由の日付は、登記申請書の下記に記載した日付より前の日付であることを確認します。登記の事由が発生する前に、登記の申請をすることはできないためです。
また、提出するすべての書類は、訂正する際に訂正方法が正しいかを確認してください。訂正の際は、訂正したい文字や数字を二重線で削除し、その近くに正しい記載と書類に使用しているものと同じ押印をして完了となります。
そして、登記申請書には、登記申請した人または代理人の電話番号を記載する必要があります。提出された書類に不備がある場合は登記所から連絡があるため、連絡先は必ず記載しましょう。
なお、登記申請の際は他にも細かい確認事項があります。提出前に、必ず法務局の公式サイト「商業・法人登記の申請書様式」で書類の不備がないかを確認してください。
まとめ
会社設立で必要な書類には、登記申請書や定款、資本金の払込証明書などの記載内容が細かく決められている書類の準備が必要です。会社設立の状況によって提出する書類は異なるため、自社が登記申請の際に必要な書類は何か事前に洗い出しておきましょう。
なお、登記申請に必要な書類は枚数も多く、準備に手間や時間がかかります。登記申請の際の書類作成や提出は、司法書士や行政書士などの専門家にサポートしてもらえるため、時間短縮や主業務に集中したい人は専門家へ依頼することも検討してみてください。