起業前後に金融機関からお金を借りる創業融資を受ける際、本人確認書類や通帳とあわせて提出するのが「創業計画書」です。
その時、書き方に悩むのは、セールスポイントの欄ではないでしょうか。
事業の強み、他者との差別化要因などを書く欄ですが、コンパクトかつインパクトを残すよう表現することは至難の技です。
ここでは、創業計画書のセールスポイント欄の重要性についてと、その書き方のポイントをご紹介していきます。
1.創業計画書で「セールスポイント」が重要になる理由
創業時はまとまったお金が必要になりますので、資金調達のために創業融資を受けようと検討する方も多いでしょう。
金融機関で融資の審査を受ける際は「創業計画書」の提出が必要です。
創業計画書には創業の動機や経営者の略歴、取扱う商品やサービス、取引先・取引関係、借入状況や事業の見通しなどを記載します。
創業計画書の中に「セールスポイント」を書く欄があります。
イメージしやすいよう、日本政策金融公庫の創業計画書のテンプレートを参照ください。
この場合、セールスポイント欄は「3 取扱商品・サービス」の部分です。
この「セールスポイント」欄は、取扱う商品やサービス、事業の強み、他者との差別化要因を書くことで、事業の将来性をアピールすることが求められています。
事業の将来性を、テンプレートを記入するにあたり、たった3行で表現することになります。
セールスポイントをコンパクトかつインパクトのある表現するために、まず、よいところを箇条書きにして洗い出してみましょう。
3分の時間制限を設け、ふせんなどに単語をどんどん書き殴るようにアウトプットするブレインストーミング手法で取り組んでもよいかもしれません。
洗い出した後、こういう理由でここが他とは違うというように加筆します。
例えば、レストラン経営の場合で考えてみましょう。
ふせんに書きなぐります。
「無農薬野菜」「新鮮で安い魚」「お得意様がいる」「パティシエとシェフ」「場所代がかからない」「近くに駅ができる」…
それらを分類し、もう少し詳しく文章化します。
・商品の強み
「無農薬野菜」:提携している農家から新鮮な無農薬野菜が届く
「新鮮で安い魚」:シェフ経験から、新鮮な鮮魚を仕入れるルートがある
「パティシエとシェフ」:自身はシェフ、妻はパティシエで業界経験が長い
・サービスの強み
「パティシエとシェフ」:飲食業界にずっといて、店舗運営のノウハウあり
・取引関係の強み
「無農薬野菜」:提携している農家から新鮮な無農薬野菜が届く
「新鮮で安い魚」:シェフ経験から、鮮魚を格安で仕入れるルートがある
・コストの強み
「場所代がかからない」:妻と二人で自宅を改良し、店を開くので人件費や場所代が抑えられる
・立地の強み
「近くに駅ができる」:自宅の近くに新駅ができ、地域の発展が見込める
「お得意様がいる」:顧客リストにまとめており、すでにお得意様がいる
このように詳細にして、長所をまとめていきましょう。
まとめる時に「あれ?あまり他店とそんなに変わらないかも…」と気づくこともあるかもしれません。
その場合、他店との差別化できる要素を考えましょう。
例えば、「無農薬野菜で保存性の高いジャムや焼き菓子を作り、それらの店頭販売もあわせて行う」といったような内容を加筆してもよいでしょう。
他にも、新規性やオリジナリティ、優位性がある要素を検討していきます。
紙面は限られています。
CMのキャッチコピーを考えるライターつもりになって、コンパクトかつインパクトのある文章を作りましょう。
創業計画書には書いてなくても、融資面談の時に伝えられればいい!なんて甘い考えは捨てましょう。
人は多くの場合、聴覚よりも視覚情報を優先すると言われています。
創業計画書がすべてという気持ちで、表現するようにしましょう。
もちろん、3行で伝えるのにも限界はあります。
特に写真や図、グラフなどのデータを見せた方が、より正確にイメージが伝わるため、別紙にそれらを載せた資料を用意しましょう。
ですが、あくまで別紙は別紙です。
規定のテンプレートの方に書いた文章で伝えられなければ、見てもらえないこともあります。
2.「セールスポイント」欄を書くときのポイント
「セールスポイント」と書かれた欄は3行しかありませんが、強みを伝えられるのはそこしかないという訳ではありません。
経歴や創業の動機、市場動向などの部分で書けるものもあります。
例えば、先ほどのレストラン経営の例では、立地の強みは市場動向に反映させ、取引関係の強みは取引先等の仕入れ先に反映することができます。
(1)創業の動機
創業の動機では、事業の全体像を伝えましょう。
新規性やオリジナリティ、他者との差別化、優位性がある要素と関連して表現できれば、インパクトのあるセールスポイントになります。
(2)経営者の略歴
起業する業界に長く携わっているのであれば、これまでの職務経験は実績となります。
あなた自身の経歴やキャリア、資格などを詳しく記載してください。
未経験の世界に飛び込むなら、その専門知識をどのように取得したか、どんな支援を受けているかなどを書きます。
(3)取扱商品・サービス
商品やサービスについては、得意分野ですので、特に問題なく書けるかと思いますが、ターゲットや現在の市場動向については、どういう戦略を持って臨むのかが伝わるよう、別表に客観的な数値のデータを用意して、書けると望ましいです。
肝心の「セールスポイント」の欄は、ここでしか書けない一番の強みを書くようにしましょう。
(4)取引先・取引関係等
創業計画書の書面ではアピールできませんが、別表でどういう取引先なのかを説明できる資料をつけると、セールスポイントとして有効でしょう。
(5)従業員
書くこと内容が定型かつ限定的ですので、アピールなどは気にせずに必要事項を記入しましょう。
(6)お借入の状況
前述した従業員に関する記載と同様、必要事項を漏れなく記入してください。
(7)必要な資金と調達方法
内訳の部分で、新規性やオリジナリティ、他者との差別化、優位性がある要素と関連して表現できれば、インパクトのあるセールスポイントになります。
(8)事業の見通し(月平均)
経費の根拠の部分で、新規性やオリジナリティ、他者との差別化、優位性がある要素と関連して表現できれば、インパクトのあるセールスポイントになります。
まとめ
創業計画書の記入ができたなら、そのまま金融機関に融資の申し込みをするのも良いですが、融資の専門家である認定支援機関に相談し、客観的な意見をもらうことをおすすめします。
おそらく経営を始めるのは、さほど難しいことではありません。
しかし、経営を継続していくのは、かなり難しいことだと言えるでしょう。
市場は目まぐるしく変化します。
それにあわせて常にセールスポイントは何なのかを考え、追求し続けることが、経営なのでしょう。
セールスポイントという事業経営の核を見極める、その審美眼こそが、あなたの事業を成功に導きます。