起業した際、融資などの場面で求められる「創業計画書」。創業時の事業内容を説明する重要な書類です。似た書類に「事業計画書」があります。何が異なるか説明できるでしょうか。創業計画書と事業計画書の違い、それぞれの書類の違いによってわかる計画書作成の注意点についてご説明します。
1.創業計画書と事業計画書の違い
「創業計画書」は、事業を始めようとした際、どういう事業を始めたいかを説明するために作られる書類です。「事業計画書」は、事業を行なっている時、どういう事業をしているかを説明するために作られる書類です。創業計画書は事業計画書の一つですので、創業計画書を事業計画書と同じ意味として扱うこともあります。どちらも、融資で資金を調達する場合、金融機関独自の書式での書類提出を求められます。どこの金融機関にも出せる共通のテンプレートといったものはありません。
事業計画書は、すでに事業展開をして、軌道に乗っている時に作成するので、売上や経費などの数値的なデータを交えて、事業を取り巻く過去・現在・未来を、多角的に説明できます。一方、創業計画書は、事業を始める前か、始めて間もない時に作成するため、事業に関するデータがなく、それができません。そのため、事業計画書よりも、創業計画書の方が書くのは難しいと言えるでしょう。まだ形になっていない事業について、こちらの要求を飲んでもらうように融資担当を説得する材料として、創業計画書を作るからです。
逆に言えば、事業計画書の場合、過去の実績値との整合性をとる必要があります。現実を直視することができない経営者と判断されることのないよう、過去の損益、資金収支を踏まえて、実行可能な改善策を打ち出し、その改善策に基づき、事業計画は作成されなければなりません。事業計画は、計画通りに実行されて当然とされる一方、創業計画書にはそこまでのプレッシャーはないと言えるでしょう。
実際に、低金利な公的融資で人気の日本政策金融公庫のテンプレートを比較して見るとわかりやすいでしょう。
創業計画書と事業計画書の違いをまとめると、次の3つになるでしょう。これらの違いは、すなわち、融資担当者が融資の面談時に注目する点です。
①創業計画書では、経営者の経歴や事業の強みを書かせる。
創業時は業績も実績もないため、財務諸表を用意することはできません。融資担当は、創業者のこれまでの経歴や事業の強みなどのアピールで、事業の将来性を測ることになります。創業への動機をイメージさせるような事業経験を記入するようにしましょう。
なお、事業計画書では、経営者の債務状況を書かせることはあっても、人となりを詳しく問うことはまずありません。
②創業計画書では、お金の調達方法を書かせる。
創業時、自己資金はそのまま会社の資金です。自己資金が健全なプロセスで得られたものであると示す必要があります。それが調達の方法の部分です。少額でも、自己資金を健全にコツコツ貯蓄し、創業するために備えてきたという印象を与え、熱意をアピールするようにしましょう。
③事業計画書では、年度や期といったセグメントごとの明細を書かせる。
事業計画書の場合、各年度や期ごとに売上の明細や人員計画と設備投資の内訳を示す必要があります。事業や製品、サービスが複数あって区分できる場合、そのセグメントごとに売上などの明細をまとめた資料を、別途用意しておくとよいでしょう。
創業計画書の場合、基本的には単一事業であり、細かな区分での計画を立てられるほどのデータがないため、事業の見通しとして、ざっくりと月平均や一年後の展望を示せればよい程度のものです。
まとめ
創業しようとした時に書くのが、創業計画書です。融資を受けたい場合は創業計画書がほぼ必須になりますが、そうでない場合も、事業の見通しを確かめる自身のポートフォリオとして、適切な経営戦略を立てるための手段として、計画書を書く場合もあるでしょう。創業し、事業が軌道に乗れば、新たに資金を調達する必要が出てきます。よい条件で資金調達したければ、きちんとした事業計画書を作成することになるはずです。
創業計画書も、事業計画書も、金融機関との交渉や面談の場では、必須のコミュニケーションツールです。経営者のあなたが何をしたいか、なぜ融資を受けたいのか、事業の将来は明るいのか、といったことは、とても口頭で伝えきれるものではありません。予め準備・計画をすることの大切さを説く「段取り八分、仕上げ二分」という言葉もあるように、入念に計画書を作って臨みましょう。融資交渉は、計画書を作るところから始まっているのです。
創業計画書の書き方を詳しく知りたい方は「融資を受ける際に提出する創業計画書。その作成方法をチェック!!」をご覧ください。
事業計画書の書き方を詳しく知りたい方は「事業計画書作成の具体的な13のポイント」をご覧ください。