年間収入を申告して納める所得税額を確定させる「確定申告」には「青色申告」と「白色申告」の2種類があります。
本記事では、個人事業主向けに青色申告の基本として、意味や白色申告との違い、青色申告のやり方について解説します。
青色申告とは?
青色申告とは、確定申告の一種で、年間収入について一定水準の記帳と正しい申告をする方向けに税制上の優遇を受けられるようにした申告方法を指します。
参照:No.2070 青色申告制度|国税庁
そもそも、確定申告とは、法令上で正確には「確定所得申告」と呼ばれ、1月1日から12月31日までの年間収入に対する所得税の額を計算し、翌年の3月15日までに税務署に申告して確定させる手続きを指します。
参照:所得税法 第百二十条(確定所得申告)|e-Gov
青色申告と関連する「確定申告」や「白色申告」の違いをまとめると、次のとおりです。
【青色申告と白色申告の違い】
確定申告 |
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青色申告 |
白色申告 |
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個人事業主が青色申告で確定申告するには、所轄の税務署に申告する年の3月15日までに「開業届」と「青色申告承認申請書」を提出する必要があります。
青色申告の承認を得られれば「55万円控除(最大65万円控除)」と「10万円控除」のどちらかの税制上の優遇措置を受けられるだけでなく、事業に関わる家族への給与を経費扱いにでき、事業の赤字を最大3年間、繰越すことができます。
ただし、青色申告する場合、白色申告をしていた時以上に、確定申告書などの提出書類だけでなく、簿記の方法、帳簿や書類の保存について一定の水準を満たすことが求められます。
青色申告のやり方
青色申告のやり方は次のとおりです。
1)「青色申告承認申請書」を提出し、事前に承認を得る
2)青色申告の申告要件を満たした帳簿付けをして書類を保存する
3)申告方法を選んで「確定申告書」と「青色申告決済書」を作成し、申告する
「青色申告承認申請書」を提出し、事前に承認を得る
所轄の税務署に、申告する年の3月15日までに「個人事業の開業届」と「青色申告承認申請書」を提出し、青色申告の承認を得ます。
参照:A1-5 個人事業の開業届出・廃業届出等手続|国税庁
A1-8 所得税の青色申告承認申請手続|国税庁
パソコンまたはスマートフォンによるe-Taxでの電子申請が推奨されているため、e-Taxを利用したことのない方はまず「e-Taxの開始(変更等)届出書」を提出し、e-Taxの利用者識別番号を取得しましょう。
参照:e-Taxの開始(変更等)届出書作成・提出コーナーについて|e-Tax 国税電子申告・納税システム
e-Taxは申請から利用できるようになるまで、時期によっては30日ほどかかる傾向があるため、早めの手続きが必要です。
青色申告の申告要件を満たした帳簿付けをして書類を保存する
青色申告の承認を得られれば「55万円控除(最大65万円控除)」と「10万円控除」のどちらかを選んで、税制優遇を受けられます。
青色申告の承認を受けた個人事業主が「55万円」の青色申告特別控除の適用される要件は「事業所得に係る取引を正規の簿記の原則(一般的には複式簿記)により記帳している」ことです。
参照:No.2072 青色申告特別控除|国税庁
さらに、55万円の青色申告特別控除を最大の65万円にするには、いずれかの要件を満たす必要があります。
- 仕訳帳および総勘定元帳の電子帳簿保存を行っている
- e-Tax(国税電子申告・納税システム)を使用して確定申告を行う
提出書類だけでなく、保存義務のある帳簿・書類の保存に不備があると、青色申告が認められなくなる可能性があるため、注意が必要です。
青色申告する個人事業主が保管しておくべき帳簿・書類は次のとおりです。
【青色申告で保存が必要な帳簿・書類】
保存が必要なもの |
保存期間 |
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帳簿 |
仕訳帳、総勘定元帳、現金出納帳、売掛帳、買掛帳、経費帳、固定資産台帳など |
7年間 |
書類 |
決算関係書類(損益計算書、貸借対照表、棚卸表など) |
7年間 |
現金預金取引等関係書類(領収書、小切手控、預金通帳、借用証など) |
7年間(条件を満たせば5年) |
|
その他、取引に関して作成・受領した上記以外の書類(請求書、見積書、契約書、納品書、送り状など) |
5年 |
*参照先の図を再構成:記帳や帳簿等保存・青色申告|国税庁
なお、電子データで保存する場合は「電子帳簿保存法」の遵守が求められます。
参照:電子帳簿等保存制度特設サイト|国税庁
「電子データで受け取った請求書類を印刷しての原本としての保存が認められない」など、あるため、注意が必要です。
また、融資予定や、子の保育所の入園予定のある個人事業主の場合、提出書類の「確定申告書の控え」を求められる可能性があるので、「確定申告書の控え」も保存しておきましょう。
確定申告書の控えの入手方法や再発行方法を含め、確定申告の必要書類について詳しく知りたい方は関連記事をご覧ください。
【関連記事リンク】個人事業主が確定申告する際の必要書類とは?確定申告書の控えも解説
申告方法を選んで「確定申告書」と「青色申告決済書」を作成し、申告する
青色申告の方法は主に「e-Tax」・「郵送」・「手渡し」3パターンあり、それによって提出書類の作成方法の選択肢が変わります。
【青色申告の申告方法と提出書類の作成方法のパターン】
申告方法 | 提出書類の作成から申告までのパターン |
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e-Tax | 事業用のパソコンで「国税庁 確定申告書等作成コーナー」で入力して自動計算された最終出力データ(提出書類)を、そのままe-Taxで電子申告する。 |
郵送 |
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手渡し |
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青色申告の必要書類の作成には、項目を入力すれば自動で計算されて「確定申告書」と「青色申告決済書」を作れるため、国税庁の「国税庁 確定申告書等作成コーナー」を活用するのが最もスムーズです。
確定申告に必要書類な様式のPDFデータは、国税庁のサイトからダウンロードもできるようになっています。
参照:【申告書用紙】Q11 所得税等の確定申告書や手引きはどこで入手できますか。|国税庁
確定申告ソフトや会計ソフトを活用している場合、ソフトの運営会社がe-Taxに読み込みやすいデータや、e-Taxに入力する際のマニュアルを用意しているので、その案内に従いましょう。
なお、本業以外で20万円以上の収入がある方は、副業の確定申告も必要です。
個人事業主の副業での確定申告について詳しく知りたい方は関連記事をご覧ください。
【関連記事リンク】個人事業主で副業している人が確定申告で注意すべきこととは?
青色申告のメリットとデメリット
個人事業主が青色申告のメリットとデメリットをまとめると次のとおりです。
【青色申告にするメリットとデメリット】
青色申告にするメリット | 青色申告にするデメリット |
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参照:No.2070 青色申告制度|国税庁