資本金の増資には①返済不要で資金調達できる②会社の信用度が高くなるという2つのメリットがあります。
資本金を増資した際は、正しく仕訳することが大切です。
今回は、資本金を増資する際の仕訳を例を出して会計処理のやり方を解説します。
1.資本金の増資は有償増資と無償増資に分けられる
資本金の増資は、有償増資と無償増資に分けられ、増資の方法により仕訳をする際の勘定科目が異なります。
あなたの会社で実施する増資はどちらの増資に当てはまるのか、以下の表を使って確認してみましょう。
有償増資=株主などから出資を受けて増資する方法 | 無償増資=剰余金などを資本金に組み入れる方法 |
既存の株主に対し、保有する株式の率にあわせて均等に出資してもらい増資する方法。
株主以外に株式を与える代わりに出資してもらう方法。
公募増資は全く新しい株主を広く告知することにより集めて増資する方法。 |
資本金の1/2を超えない額で積み立てておく資本準備金で増資する方法。
資本取引から発生した剰余金で増資する方法。
利益が社外へ流出しすぎることを防ぐための利益準備金で増資する方法。
会社の利益の剰余分で増資する方法。 |
なお、具体的に資本金を増資する方法については、当サイトの既存記事で詳しく解説していますので、あわせてご覧ください。
2.資本金を増資したときの仕訳
(1)有償増資(株主割当増資~公募増資)の場合
新株を株主などに発行することにより出資してもらい、出資してもらったお金を資本金に組み入れるパターンです。この場合、株主などから出資してもらう際には払込期日を定めてお金を振り込んでもらいますが、仕訳では払込期日前と払込期日とで仕訳の記載が異なります。
<例>Aという会社の元々の資本金は1,000万円で、新たに株主Bへ新株を1,000万円分発行し、Bから1,000万円の出資を受ける場合
- 仕訳【新株申込時~払込期日前】(単位:万円)
(借方) | (貸方) | ||
科目 | 金額 | 科目 | 金額 |
現金預金(別段預金) |
1,000 |
新株式申込証拠金 |
1,000 |
借方の勘定科目は「現金預金」または「別段預金」(会社が未整理中の保管金)です。
新株予約で株主などから出資を受け、まだ払込期日前の段階では借方に「1,000」と記入します。貸方は勘定科目を「新株式申込証拠金」として「1,000」を記入します。
- 仕訳【払込期日】(単位:万円)
(借方) | (貸方) | ||
科目 |
金額 |
科目 |
金額 |
新株式申込証拠金 |
1,000 |
資本金 |
500 |
資本準備金 |
500 |
払込期日に、貸方にあった新株式申込証拠金が借方へ移動します。
出資金の半分までは資本金に組み入れないことができますので、この場合は貸方には出資金の半額を「資本金」、半額を「資本準備金」として記載します。
(2)無償増資の場合
無償増資の場合、新たな出資が不要なので、仕訳はよりシンプルです。
①会社の資本準備金の資本金へ組み入れの場合
会社の資本剰余金は資本準備金とその他資本剰余金で構成されています。
資本剰余金=資本準備金+その他資本剰余金 |
会社の資本準備金を資本金へ組み入れる場合、株主総会の決議が必要です。決議がされた場合、借方は「資本準備金」と記載し、貸方には「資本金」として記載します。
<例>株主総会の決議により、資本準備金1,000万円を資本に組み入れた場合
- 仕訳単位:万円)
(借方) | (貸方) | ||
科目 | 金額 | 科目 | 金額 |
資本準備金 |
1,000 |
資本金 |
1,000 |
②会社のその他資本剰余金の資本金へ組み入れの場合
その他資本剰余金とは、資本剰余金のうち資本準備金以外のものをいい、資本金の減資差益や自己株式を処分した場合に生じる自己株式処分差益などがあります。
<例>その他資本剰余金1,000万円を資本に組み入れた場合
- 仕訳(単位:万円)
(借方) | (貸方) | ||
科目 | 金額 | 科目 | 金額 |
その他資本剰余金 |
1,000 |
資本金 |
1,000 |
③会社の利益準備金の資本金へ組み入れの場合
会社の利益剰余金は利益準備金とその他利益剰余金で構成されています。
利益剰余金=利益準備金+その他利益剰余金 |
会社の利益準備金を資本金へ組み入れる場合、株主総会の決議が必要です。決議がされた場合、借方は「利益準備金」と記載し、貸方には「資本金」として記載します
<例>株主総会の決議により、利益準備金1,000万円を資本に組み入れた場合
- 仕訳(単位:万円)
(借方) | (貸方) | ||
科目 | 金額 | 科目 | 金額 |
利益準備金 |
1,000 |
資本金 |
1,000 |
④会社のその他利益剰余金の資本金へ組み入れの場合
会社のその他利益剰余金は任意積立金と繰越利益剰余金で構成されています。
その他利益剰余金=任意積立金+繰越利益剰余金 |
<例>その他利益剰余金1,000万円を資本に組み入れた場合
- 仕訳(単位:万円)
(借方) | (貸方) | ||
科目 | 金額 | 科目 | 金額 |
その他利益剰余金 |
1,000 |
資本金 |
1,000 |
まとめ
資本金の増資の方法には有償増資と無償増資があります。
仕訳の際は、「新株式申込証拠金」や「その他資本剰余金」などの増資にあわせた勘定科目を使いましょう。
ご自身で仕訳するのが不安な方は、税理士などの専門家に相談するのも選択肢の1つです。弊社SoLaboでは税理士の紹介もしていますので、仕訳にお悩みの方やこれから税理士を探そうと検討中の方はお問い合わせください。ご相談は無料です。