皆様は「経理の仕事」といわれて、どのような仕事内容を思い浮かべますか。
経理とは、会社に入ってきたり(入金)、会社から出て行くお金(出金)に対して、きっちりと伝票をつくり、それを総勘定元帳に記入して…というのが、一般的な答えかと思います。
経理部のイメージはどうでしょうか。
営業など花形の部署に対して、簿記の資格をもったまじめな人が、静かに細かいお金の計算をしている。
そのような様子を頭に浮かべるのではないでしょうか。
しかし、これは経理業務の一部であり、すべてではありません。
経理とは「経営管理」のことである
経理とは「経営管理」を略したものです。
経営管理とは、会社に出入りするお金の流れを明らかにして、そのデータを元に経営の方向性を決めていくことを指します。
具体的には「お金」「会計」「税金」のバランスをとるものすべてだ、と考えてください。
たとえば皆様の会社の商品がよく売れたとします。
「よし。たくさん仕入れて大儲けしよう」
と思っても、現金が底をついていたら商品を仕入れることすらできません。
また、たとえ現金があったとしても、予想以上に法人税が発生し、そちらにお金を回さなければいけないこともあるでしょう。
いま、そして将来、手持ちの現金がどのように増減していくのかを、できるだけ正確に予想し、その予想したデータを元に、会社の運転資金や設備投資に使う資金がどの程度必要なのか、目標としている売上、利益を達成すればどのぐらいの税金を納めることになるのか、これらをつねに把握して経営の舵取りをしていく、これが経営管理であり、略して、経理なのです。
すでにおわかりのように、経理の仕事とは「会社経営の基礎」といっても過言ではないのです。
会社経営に必須のもの
ある製造業の会社の例をご紹介しましょう。
近年のアベノミクスによるゆるやかな経済発展によって、家電製品をメインとするそのメーカーでは、製品をつくればつくるだけ売れ、儲かっている状況でした。
よく儲かったので、技術者あがりの人のよい社長さんは、その利益をすべて社員に賞与として還元していました。
ところが、しばらくしてその会社は経営難に陥ります。
なぜでしょうか。
理由は、設備投資の資金が尽きたから、です。
家電製品をつくるには、工場設備が必要です。
設備は5~10年たてば古くなり、新たな設備投資が必要になります。
それにもかかわらず、設備投資にかける資金をプールせず、ボーナスとして配っていたため、新たな工作機械を購入するお金がなかったのです。
結果、新たな家電製品の製造ラインを組むことができませんでした。
つくり話のように感じるかもしれませんが、こういったケースは散見されます。
こういった社長さんに欠落していること、それは「資金予測」という経理上の概念です。
このような会社に一人でも経理を理解している人がいれば「向こう5年間の資金予測を考えるには、設備投資計画を立てたほうがいいでしょう。
そうすると、将来必ず例年以上に出費する時期がくるため、利益をすべて賞与に回すのではなく、プールすべきでは?」という意見が出て、経営の方向性を間違うことはなかったでしょう。
設備投資ひとつとっても、経理に関連する仕事として、必要な設備投資額の算定、売上高の予想、導入した場合のランニングコストの予想、耐用年数の見積り、増加運転資本の見積り、資金調達方法の検討などが挙げられます。
経理の仕事をわかっていない社長は、会社を経営できないのです。
経理の最重要業務は「財務管理」
経理部門の業務というと、請求書を発行すると同時に、入金管理や経費の支払いといったものをイメージする人は多いでしょう。
それらは「経理事務」と呼ばれ、経理部門の大切な機能であることに間違いはありませんが、経理部門にはもうひとつ大切な機能があります。
それが「財務管理」です。
すなわち企業の経理部門は本来、次の二つの機能を有している必要があります。
・経理部門の機能①「経理事務」お金を循環させる仕事
・経理部門の機能②「財務管理」お金の流れを把握した上で、経営目標達成のための指針決定につながる経営数字・財務情報を経営層に伝達する仕事
成長期にある企業の社長の多くは、お金の管理よりも「どのような顧客に対してアプローチしていこうか」「優秀な人材をどのように確保しようか」「新商品の開発はどのように行おうか」といったことに時間と労力をとられがちです。
ですから、お金の管理という仕事は、どうしても後回しにされがちです。
さらに、経営管理という経理本来の仕事と機能を、社長はよく理解していませんから、なんとなく経理部員を雇って、記帳と伝票整理だけをさせているケースがほとんどだと思います。
繰り返しますが、会社を倒産させる社長は、「お金の流れ」に疎い社長です。
「お金の流れ」に疎いにもかかわらず、そこに積極的に関与しようとしないのですから、結果はおのずと明らかでしょう。
この結果を回避するには経理の仕事に関するイメージを大きく変える必要があります。
経理の最重要業務は、財務管理だと認識してください。
いかにしてお金の段取りをつけ、企業の継続、発展のために社長をサポートできるのかが問われるのです。
社長は財務管理をやってはいけない
じつは、社長である皆様は、無意識のうちに財務管理を行っています。
「1店舗目はようやく軌道にのった。次は2店舗目の出店だ。出店費用はどうしようか。半年後に大きな取引があるから、まずは、その売上の大半を出店費用としよう。
でもその時期に、商品の仕入費用500万円の支払いの必要があった気がする。それを差し引いて、考えておかねばならないな。足りない分は、もうA銀行は融資してくれないだろうから、地元のB信用金庫にお願いしてみようか」
入金と支払い、融資の可否など、「社長の頭のなか」は、つねにこのような状況だと思います。
そしてこれは、自分の仕事だと「思い込んで」います。
ここで、もう一度皆様に質問します。
これはほんとうに社長の仕事でしょうか。
社長にしかできない仕事でしょうか。
もし、このような財務管理を経理部門が引き受けてくれ、社長が意志決定するために必要な情報をくれるとしたら、どうでしょうか。
肩の荷がおりたような気分になりませんか。
経理の最重要業務は、社長がお金の使い方を決めるために必要な情報を提供することなのです。
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