仕事をしていると登記簿謄本を調べなくてはいけない場面が出てきます。
しかし、会社の登記を調べる方法をきちんと知っている人はあまりいないかもしれません。
そこで今回は会社の登記を調べる方法についてご紹介します。
1.会社の登記を調べなくてはいけない場合
仕事をしていくうえで、登記を調べなくてはいけない状況として最も多いのは新規取引先が見つかった場合でしょう。
これまで関係のなかった新規のお客さんと取引をできるわけですから、これは喜んでいいことでしょう。
しかし喜ぶだけではいけません。相手方はこちらの情報を持っているかもしれませんが、こちらは取引先の会社が、どの様な会社でこれまでどのような軌跡を辿っているのかをなにも知らないからです。
新規の取引先を得るということは、事業の拡大を図れるチャンスであるのと同時に、相手の会社が倒産するというリスクや取引が円滑に進むとは限らないというリスクなどと隣り合わせであるということです。そのためリスクの可能性がないかなど、さまざまな情報を集めて確認しなければなりません。
そう言った情報収集を行う際に必ず確かめておかなければならないのが「商業登記」です。商業登記は会社の情報が載っているもので、代表者・住所・会社の目的などがコロコロ変わっている場合には、「取り込み詐欺」を疑ってかかる必要があります。
取り込み詐欺とは取引を装って商品を受け取り、その後商品代金を踏み倒し姿をくらますという手法の詐欺です。プロの詐欺師で、頻繁に取り込み詐欺を行っている場合、各地を転々としながらその都度会社を設立します。商業登記を調べれば、その会社がいつ設立されたのかが分かるのでこのようなリスクを回避することが可能です。
もし会社設立から間もない会社の場合は、通常の取引よりも一段階警戒レベルを引き上げて臨みましょう。
2.会社の登記を調べると何が分かるのか
(1)商業登記の種類
商業登記には以下の4つの種類があります。
取引先の会社の形態に合わせて該当する登記簿を調べるようにしましょう。
①株式会社登記簿
②合名会社登記簿 ③合資会社登記簿 ④合同会社登記簿 |
(2)会社の登記で調べられること
会社の登記を調べることで得られる情報は以下の通りです。
①会社の本店、支店の所在地
②商号 ③資本金の額 ④取締役の氏名 ⑤代表取締役の氏名および住所 ⑥発行済み株式の総数 |
3.会社の登記を調べる方法は全部で4つ
会社の登記は主に法務局に交付請求を行うことで取得することが出来ます。その方法は主に4つです。
①法務局の窓口へ赴く
②郵送で交付請求する ③オンラインで交付請求する ④オンラインで閲覧のみを行う |
(1)法務局へ行って交付請求する
登記簿謄本は、データ化され、全国の法務局のコンピュータで共有しているので、最寄りの法務局・出張所・支局で全国の登記簿謄本の取得ができるようになっていて、法務局の窓口へ行って交付請求すれば誰でも取得することが出来ます。
法務局の開庁時間は、平日の午前8時30分から午後5時15分までですから、法務局へ直接赴く際は時間をすぎないようにしましょう。
登記簿謄本の交付請求をするには「登記事項証明書交付申請書」に必要事項を記入しなければいけません。1通あたり600円分の収入印紙を貼り、窓口に提出しましょう。
管轄の法務局一覧はこちらから確認することが出来ます。
参考|法務局 管轄のご案内
(2)郵送で交付請求する
登記簿謄本の交付請求は郵送でも可能です。
「登記事項証明書交付申請書」に必要事項を記入して1通あたり600円分の収入印紙を貼り、返信用封筒を同封して最寄りの法務局または地方法務局へ郵送すれば登記簿謄本を郵送してもらえます。
申請書は法務局のホームページからダウンロードが可能です。
登記簿謄本は交付請求後、概ね1週間以内に返送されます。郵送は他の方法と比べ情報を得られるのに時間が掛かるので、あらかじめ時間に余裕をもって行うようにしましょう。
(3)オンラインで交付請求する
法務局の窓口へ赴いたり郵送したりなどの手間をかけることなく、インターネット上でオンライン請求することも可能です。
「オンラインって設定とか難しそう」と敬遠している人も安心してください。登記簿謄本を取得するだけならアプリケーションのダウンロードなど面倒なパソコンの設定は一切不要で、Webブラウザ上で必要事項を入力するだけでOKです。
また、法務局の窓口は午前8時30分から午後5時15分までですが、オンライン申請システムは午前8時30分から午後9時までと時間に余裕のない忙しい方でも申請しやすくなっています。
オンライン申請であれば、ほとんどの場合で翌日には登記簿謄本が郵送で届くので、郵送で行うよりも効率的でしょう。
加えて届け先も選べるので、自身の都合のいい場所を指定することが可能です。
届け先は以下の通りです。
・自宅
・勤務先 ・最寄りの法務局や法務局証明サービスセンター |
①オンラインで交付請求を行うための手順
ステップ1:法務省が運営している「登記・供託オンラインシステム」にアクセスする
ステップ2:申請者情報を登録
オンラインで交付請求を行う場合、登記・供託オンラインシステムに利用者の情報を登録しなければなりません。入力事項は住所・氏名・電話番号・メールアドレスなど基本的な事項であり、難しい操作などは一切ありません。
登録後、利用規約に同意すると登記・供託オンラインシステムが利用できるようになります。
ステップ3:ログインする
登記簿謄本を取得するには、トップページにある「かんたん証明書請求」を選択します。選択するとログイン画面が出てくるので、ステップ2で設定した申請者IDとパスワードを入力してログインします。
ステップ4:交付請求をする
ログインすると利用できる手続き一覧が表示されます。一覧の中から調べたい登記情報を選び、交付請求を選択すると交付請求書の画面に切り替わるので、必要事項を入力して手続きは終了です。
オンラインで交付請求を行う際に係る手数料は次の通りです。
オンライン請求・送付→500円
オンライン請求・窓口交付→480円 |
(4)オンラインで閲覧する
一般財団法人民事法務協会が運営する「登記情報提供サービス」を利用すれば正式に登記簿謄本を取り寄せるのではなく、閲覧だけをすることもできます。
ただし、閲覧をするだけですので、証明力はありません。
登記情報提供サービスの利用方法は次の通りです。
・個人利用の場合
①登記情報提供サービスのサイトを開き、「個人利用の申し込み方法」を選択する ②利用申し込みをすると、個人利用者登録の画面が開くので、そこで氏名や連絡先、クレジットカード情報などを入力して送信 ③民事法務協会からIDとパスワードが届いたら登記簿謄本のオンライン閲覧が可能になる ※利用者登録には300円が必要です。また、オンライン閲覧をする度に個別の利用料金がかかります。 |
・一時利用の場合
①登記情報提供サービスのサイトを開き、「一時利用の申し込み方法」を選択する ②利用申し込みをすると、一時利用者登録の画面が開くので、そこで氏名や連絡先、クレジットカード情報などを入力して送信 ③民事法務協会からIDとパスワードが届いたら登記簿謄本のオンライン閲覧が可能になる 一時利用の場合は登録費用はかかりませんが、毎回IDとパスワードを取得して、クレジットカード情報などもその都度入力する必要があるので、たびたび利用される方は個人利用にした方がいいでしょう。 |
登記情報提供サービスで登記情報を閲覧するには、取得したIDとパスワードでトップページからログインをします。マイページ画面が表示されるので、その中から「商業・法人請求」を選択することで登記情報を閲覧することが出来ます。
4.登記事項証明書の種類
登記事項証明書には主に4つの種類があります。これらを取得することで、相手会社の情報を知ることが出来ます。
①現在事項証明書
現在までに登記された内容のうち、今なお効力を有するもののみが記載されたもので、すでに抹消された担保権や以前の所有者に関する情報は記載されません。
会社成立の年月日、取締役、会計参与、監査役、代表取締役等の就任の年月日、会社の商号および本店の登記の変更に係る事項がまとめられています。
②履歴事項証明書
現在事項証明の記載事項に加えて、当該証明書の交付の請求があった日の3年前の日の属する1月1日から請求日までの間に抹消された事項で現在効力を有しないものを記載したものです。
③閉鎖事項証明書
閉鎖した登記記録に記録されている事項が記されたものです。他の法務局の管轄の地域に移転したり、清算結了や合併に伴う解散などによって登記簿自体が閉鎖されている場合に、他のどの登記事項証明書にも掲載されない内容が確認できます。
登記記録が閉鎖される場合には以下のような理由が考えられます。
・会社を解散し、清算結了した
・他の管轄の法務局へ本店移転した ・吸収合併された ・特例有限会社が株式会社へ商号変更した ・持分会社(合名・合資・合同)が株式会社へ組織変更した |
④代表者事項証明書
会社の代表者の代表権に関する登記事項で現に効力を有するものを記載されたものです。
記載される項目は以下の通りです。
・会社法人等番号
・商号 ・本店 ・代表者の住所 ・代表者の氏名 ・肩書き(代表取締役・清算人・代表社員等) |
まとめ
新規の取引先を獲得した際、相手会社の情報を調べることで、取り込み詐欺などのリスクを減らすことが出来ます。
特に情報を調べる際に必ず確認しなければならないのが商業登記。登記の交付請求には窓口へ直接赴くほかに郵送やオンラインで交付請求を行うことも可能です。
不要なリスクを抱えないためにも、商業登記をきちんと確認しましょう。