「2社間ファクタリング」の利用を検討している事業経営者の中には、「3社間ファクタリング」と比較した際にどのような違いが生じるのか知りたい人もいますよね。また、利用するにあたり、どんなメリットやデメリットがあるのか把握しておきたい人もいるでしょう。
2社間ファクタリングは「売掛先に債権売買の同意を得ない」という特徴があります。3社間ファクタリングの特徴と異なるため、契約内容にも違いが生じるため、得られるメリットや生じるデメリットも異なります。
当記事は、「2社間ファクタリングを利用する際のメリットとデメリット」を解説します。2社間ファクタリングの違法性やどのような場合に利用すべきかについても説明しているので、利用を検討する際の参考にしてみてください。
2社間ファクタリングは売掛先に債権売買の同意を得ないところが特徴
2社間ファクタリングは「売掛先に債権売買の同意を得ない」という特徴があります。そのため、「売掛先の同意がなくともファクタリングが利用できる」という点が3社間ファクタリングと異なる点であると言えます。
【2社間ファクタリングと3社間ファクタリング 契約内容の比較】
相違点 | 2社間ファクタリング | 3社間ファクタリング |
---|---|---|
売掛先企業への通知 | 通知されない | 通知される |
資金化までの期間 | 短期間で利用しやすい傾向にある | 長引きやすい傾向がある |
買取り手数料 | 割高になりやすい傾向にある | 抑えやすい傾向にある |
売掛金の回収方法 | 利用企業が代行 | ファクタリング会社が行う |
民法改正において「債権譲渡登記制度」が創設されたことにより、債務者である売掛先の同意を得ずとも債権譲渡契約が行えるようになりました。そのため、売掛先への「債権譲渡の通知」がされなくなり、ファクタリングの利用を知られることなく資金調達が可能になりました。
一方、売掛先の同意や関与がないことはファクタリング業者にとって「売掛先の存在」や「返済能力」を正確に確認できない要因となり、売掛金が未回収となる可能性が高くなります。未回収時のリスクは「買取り手数料」に反映されるため、2社間ファクタリングの買取り手数料は3社間ファクタリングに比べて割高になる傾向があります。
なお、契約内容が違うため2社間ファクタリングで得られるメリットや生じるデメリットは、3社間ファクタリングとは異なります。2社間ファクタリングの利用を検討している人は、どのようなメリットやデメリットが生じるのか押さえておきましょう。
メリットは、売掛先へ債権譲渡の通知がされないところ
2社間ファクタリングのメリットは、売掛先へ債権譲渡の通知がされないところです。売掛先にファクタリングの利用を知られることがないため、以下の2つの利点が得られます。
- 売掛先との関係が悪化することを防げる
- 資金化までの期間を短縮することが可能になる
2社間ファクタリングは「債権譲渡の通知」がされないため、売掛先に会社の経営状況が伝わることはありません。「経営が悪化しているのでは」と売掛先に不信感や不安を抱かせるおそれがなく、売掛先との関係悪化を防ぐことが可能になります。
また、2社間ファクタリングは売掛先への通知と「利用の同意」が不要なため、資金化までの期間を短縮することが可能になります。3社間ファクタリングの場合、売掛先の同意に加え「売掛金の入金先変更」をしてもらう必要があるため、資金を調達出来るまでに期間を要するからです。
2社間ファクタリングは売掛先への通知がされないため、売掛先にファクタリングの利用を知られることなく資金調達が可能になります。売掛先との関係を気にすることなく早期に資金化したい人は、2社間ファクタリングの利用を検討すると良いでしょう。
デメリットは、契約時のコストや手間が増えるおそれがある
2社間ファクタリングのデメリットは、契約時のコストや手間が増えるおそれがあることです。増えるおそれがあるコストや手間に、以下の2つが挙げられます。
- 買取り手数料が上がりやすくなる
- 売掛金の回収業務を代行しなければならない
ファクタリングで徴収される買取り手数料には、売掛金が未回収となるリスクの程度が反映されます。売掛先の関与がなく「存在」や「返済能力」を正確に把握できない2社間ファクタリングは、「債権の二重譲渡」などのリスクが増えることから、買取り手数料が上がりやすい傾向にあります。
また、売掛先の関与がないため、ファクタリング業者へ支払う売掛金の回収業務は利用企業が代行しなければなりません。しかし、あくまで回収業務を代行するだけなので、万が一売掛先から売掛金の回収が出来なくても、費用の返還を求められることはありません。
なお、買取り手数料には売掛先の信用度や債権金額、回収予定日までの期間なども影響します。「上場企業や公的機関の債権」「回収予定日が近い債権」を売却することで、手数料を抑えられる可能性があるので、売却する債権を選ぶ際の参考にしてみてください。
2社間ファクタリングに違法性はない
2社間ファクタリングは売掛先の同意を得ずに債権譲渡をすることや、利用手数料の価格設定から違法性を疑われやすい傾向にあります。しかし、2社間ファクタリングは利用しても違法に問われることはありません。
売掛先の同意を得なくても債権譲渡することは違法ではありません。法改正により創設された「債権譲渡登記制度のご案内」によると、債権譲渡の際に債権者は「債務者の同意なくして自由に譲渡することができる」と明記されているからです。
また、売掛先の同意を得ないことから相場よりも割高な手数料価格になったとしても、ファクタリングは貸金業のように手数料に上限が定められていないため違法にはあたりません。債権譲渡を行うファクタリング事業は賃金業に該当せず「利息制限法」などの適用外となるからです。
なお、相場をはるかに上回り債権額が著しく低額になる場合は、違法契約を行う悪徳業者の可能性があるため注意が必要です。ファクタリング事業推進協会の「手数料に関するQ&A」によると現在の手数料相場は2~15%程度としているので、2社間ファクタリングを利用する際の参考にしてみてください。
売掛先を気にせずに資金化をしたい場合は2社間ファクタリングの利用を検討する
売掛先を気にせずに資金化をしたい場合は、2社間ファクタリングの利用を検討すると良いでしょう。2社間ファクタリングは利用を知られることがない契約方法であるため、売掛先との関係悪化に不安を抱くことなく資金調達が可能になります。
売掛先との取引を変わらずに継続していきたい場合には、2社間ファクタリングの利用を検討すると良いでしょう。売掛先へ「債権譲渡の通知」がされないため、経営状態への不信などから及ぼされる取引への悪影響を防ぐことが可能になるからです。
また、なるべく早く資金化を行いたいという場合にも、2社間ファクタリングの利用を検討すると良いでしょう。売掛先に同意を得ることや入金先の変更を依頼する必要がないため、手続き期間を短縮することが可能になるからです。
なお、2社間ファクタリングは売掛金の未回収リスクが増えることから、買取り手数料が上がりやすい傾向にあります。そのため、3社間ファクタリングに比べ資金化できる金額が減ってしまう点に留意した上で利用を検討しましょう。
まとめ
2社間ファクタリングは「売掛先の同意がなくともファクタリングが利用できる」ため「売掛先へ債権譲渡の通知がされない」というメリットがあります。通知がされないことで「売掛先との関係悪化を防ぐこと」や「資金化までの期間を短縮すること」が可能になります。
一方、「契約時のコストや手間が増える」というデメリットがあります。具体的には「買取り手数料が上がりやすくなる」ことや「売掛金の回収業務を代行する」ことが考えられるため、増えるコストや手間をよく考慮した上で利用を検討します。
なお、売掛先との取引を変わらずに継続していきたい場合などには、2社間ファクタリングを利用すると良いでしょう。売掛先に対して、債権譲渡の通知や同意を得る必要がないため、売掛先との関係悪化に不安を抱くことなく資金調達が可能になります。