銀行系ファクタリングは、銀行やその子会社が提供する売掛金の買取サービスのことであり、金融機関に該当しない民間企業が提供しているファクタリングよりも信頼性が担保されているという特徴があります。自社や売掛先企業の信用力が評価されている場合は、銀行系ファクタリングを利用するとこで、ヤミ金融や悪徳業者に引っ掛かるリスクの回避につなげられます。
当記事では、銀行系ファクタリングの特徴を解説します。銀行系ファクタリングの利用に向いている人物についても触れているため、銀行系ファクタリングの利用に興味を持っている人は参考にしてみてください。
銀行系ファクタリングの特徴は信頼性がある3社間ファクタリングであること
そのほかのファクタリング会社と比べて、銀行系ファクタリングにはいくつかの特徴があります。銀行系ファクタリングの利用を検討している人は、特徴を押さえておくことで利用するかどうかの判断材料とできます。
【銀行系ファクタリングの特徴】
- 銀行系ファクタリングは信頼性がある
- 銀行系ファクタリングで扱えるのは3社間ファクタリングのみ
銀行系ファクタリングの特徴は、信頼性がある3社間ファクタリングであることが挙げられます。これらの特徴はあくまで一例ですが、銀行系ファクタリングの利用を検討している人はそれぞれの特徴を確認しておきましょう。
銀行系ファクタリングは信頼性がある
銀行系ファクタリングの特徴の1つは、そのほかのファクタリングに比べて信頼性があることが挙げられます。銀行系ファクタリングは、銀行や銀行の子会社が運営しているため信頼性が担保されているからです。
銀行系ファクタリングには、三菱UFJ銀行グループが運営する三菱UFJファクターやみずほ銀行が100%出資するみずほファクターなどがあります。全国展開している銀行のほかにも、横浜銀行が出資する横銀ファイナンスや北海道の地方銀行である北洋銀行など、地方銀行もファクタリングサービスを提供している場合があります。
ファクタリングを提供している会社は、銀行系ファクタリングのほかに消費者金融が行うノンバンク系やファクタリングを専門的に扱う独立系などもあります。なかには、これらのファクタリング会社を装って違法な貸付や金利を徴収する偽装ファクタリング業者も存在しており、利用してしまうと多重債務に陥って会社の資金繰りが厳しくなってしまうおそれがあります。
銀行は、銀行法や日本銀行法といった法律に基づいて業務を行うことが求められ、金融庁や日本銀行のような監督機関からの監視を受けています。そのため、銀行や銀行の子会社が運営する銀行系ファクタリングは、そのほかのファクタリングに比べて信頼性が担保されている傾向にあるため、ヤミ金融や悪徳業者に引っ掛かってしまうことに不安を覚えている人は銀行系ファクタリングの利用を検討してもよいでしょう。
銀行系ファクタリングで扱えるのは3社間ファクタリングのみ
銀行系ファクタリングの特徴の1つは、3社間ファクタリング以外利用できないということです。銀行系ファクタリングでは、売掛先企業への債権譲渡の通知が必須とされる傾向にあるため、3社間ファクタリング以外の契約形態は原則として選択できません。
銀行は取引業務を行う際に透明性の確保やコンプライアンスの確保を重視する傾向にあります。そのため、売掛先企業を介さない2社間ファクタリングよりも、売掛先企業にファクタリングの利用を通知する3社間ファクタリングでの契約形態を原則としています。
また、売掛先企業を介さない2社間ファクタリングは3社間ファクタリングに比べて貸倒リスクがあるとみなされるため、そのほかのファクタリング会社では手数料を割高に設定することでリスクを許容できるように調整を行っています。銀行はファクタリング業務であったとしても貸金業として利息制限法の定めを受け、そのほかのファクタリング会社のように自由な手数料の設定ができないため、貸倒リスクがある2社間ファクタリングを避ける傾向があります。
なお、3社間ファクタリングでは売掛先企業へファクタリングの利用が通知されるため、資金繰りに問題があるという印象を売掛先企業へ与えてしまう可能性があります。売掛先企業がファクタリングの利用に理解がある場合は、銀行系ファクタリングの利用を検討してみてもよいでしょう。
銀行系ファクタリングの利用に向いている人の特徴
銀行系ファクタリングの利用に向いている人の特徴はいくつかあります。銀行系ファクタリングの利用に興味がある人は、それぞれの特徴に該当するかどうか確認してみましょう。
【銀行系ファクタリングの利用に向いている人】
- 売掛先企業に信用度がある
- 債権譲渡通知を行っても問題ない
- 資金調達に時間的な余裕がある
これらはあくまで一例ですが、銀行系ファクタリングの利用に向いている人の特徴として挙げられます。これらの特徴に当てはまる会社経営者は、銀行系ファクタリングの利用を検討してみてください。
売掛先企業に信用力がある
銀行系ファクタリングの利用に向いている人の特徴として挙げられるのは、売掛先企業に信用度があることです。売掛先の信用に問題がある場合は、利用できないこともあるためです。
銀行系ファクタリングは3社間ファクタリングのため、売掛金の回収は銀行が売掛先企業から直接行います。売掛先企業が貸倒や倒産に陥った場合は、売掛金の回収を行えなくなってしまうため、銀行は売掛先企業の信用力を審査します。
売掛先企業の信用力がない場合、自社の信用力に問題がなくても銀行系ファクタリングの審査に通らない可能性があります。銀行によって売掛先企業の信用力の評価は異なるため、1つの銀行の審査に落ちたとしても、ほかの銀行では3社間ファクタリングを利用できる場合もあります。
ただし、3社間ファクタリングでは、債権の回収が不可能になってしまった際にファクタリング利用会社が返済を求められるおそれがあります。売掛先企業が信用力の審査に引っ掛かってしまった経歴がある場合は、別の売掛先企業の売掛債権で銀行系ファクタリングの利用を検討してみましょう。
債権譲渡通知を行っても問題ない
銀行系ファクタリングの利用に向いている人の特徴として挙げられるのは、債権譲渡通知を行っても問題ないということです。債権譲渡通知を行うと、売掛先企業との関係が悪化してしまうおそれがあります。
3社間ファクタリングでは、債権譲渡通知書を売掛先企業へ送付することで、債権者が持つ債権を第三者に譲渡したことを債務者に知らせることができます。そのため、3社間ファクタリングを行う際は、債権譲渡通知書の送付が必須となります。
一方で、売掛先企業によっては債権の持ち主が変わってしまうことに抵抗を持っている場合があります。売掛先企業が債権の譲渡を認めてくれなかった場合、売掛先企業との関係が悪化したり、3社間ファクタリングの契約締結自体が難しくなったりするおそれがあります。
銀行系ファクタリングを利用する際は、債権の譲渡に抵抗のない売掛先企業の売掛債権を保有している場合に向いています。債権譲渡を受け入れてもらいやすいかどうかは、売掛先企業との契約書の中に譲渡禁止条項が設けられていないかどうかを1つの判断材料とできるため参考にしてみてください。
資金調達に時間的な余裕がある
銀行系ファクタリングの利用に向いている人の特徴として挙げられるのは、資金調達に時間的な余裕があることです。銀行系ファクタリングでは、そのほかのファクタリングに比べて契約締結までの審査に時間がかかるからです。
銀行系ファクタリングを利用する際は、銀行とファクタリング利用会社との間で債権譲渡契約や保証契約などの契約書類を作成する必要があります。これらの契約書は、銀行の法務部門や監査部門などの確認を受けなくてはならない傾向にあり、契約締結までに時間がかかります。
また、売掛債権の譲渡通知書の送付にも時間がかかります。とくに、売掛先企業から譲渡通知書に関して同意を得るのに時間がかかってしまうと、更にファクタリング契約の締結まで時間を要します。
銀行系ファクタリングは、そのほかのファクタリング会社と比べると現金の入金までに時間がかかる傾向があります。そのため、資金調達を急いでいる会社経営者の場合は、銀行系ファクタリング以外のファクタリングや資金調達方法を検討してみてもよいでしょう。
銀行系ファクタリングを利用する前は複数社で比較検討してみる
銀行系ファクタリングを利用する前は、複数社で比較検討をしてみましょう。銀行によって利用条件や提供しているファクタリングサービスが異なるためです。
【比較検討する項目】
- 買取可能額と手数料を比較する
- サービス内容を比較検討する
これらの項目はあくまで一例ですが、銀行系ファクタリングを利用する際に比較検討する項目として挙げられます。銀行系ファクタリングの利用を検討している会社経営者は、複数の銀行を比較する際の参考にしてみてください。
買取可能額と手数料を比較する
銀行系ファクタリングを利用する前に比較検討する項目としては、買取可能額と手数料が挙げられます。買取可能額や手数料は会社によって異なるので、自社の売掛金の規模や調達したい金額を考慮して比較する必要があります。
ファクタリングを利用して得られる金額は、売却する売掛金の金額をもとに決定されます。買取可能額は売掛金の8割や7割といった割合で算出されますが、どのくらいの割合で買い取ってもらえるかどうかは銀行によって異なります。
また、ファクタリングを利用する際の手数料も銀行ごとに異なります。銀行系ファクタリングを利用する際の手数料は「売掛金の額面」「回収期間」「信用力」などの要因によって異なり、銀行の公式サイトにも手数料は明記されていないため、売却する売掛金をもとに複数社で見積もりを取ることで手数料を比較できるようになります。
買取可能額と手数料を複数社で比較することで、自身で納得できる銀行を見つけられます。すでに取引がある銀行では買取可能額や手数料を優遇してもらえる可能性もあるため、すでに取引がある銀行でファクタリング業務を行っている場合は、取引銀行と他銀行の比較を行ってみましょう。
サービス内容を比較検討する
銀行系ファクタリングを利用する前に比較検討する項目としては、サービス内容が挙げられます。銀行によってはファクタリングに関わる提供サービスが異なる場合があるからです。
銀行系ファクタリングでは、買取型ファクタリング以外にも保証型ファクタリングや国際ファクタリングなどの複数のファクタリングサービスを提供しています。一度取引を行った銀行系ファクタリングでは、のちのファクタリング利用時に取引を行いやすくなる場合もあるため、買取型ファクタリング以外のファクタリングの契約形態が充実している銀行を利用すると、契約形態の異なるファクタリングの利用がしやすくなります。
また、銀行によってファクタリングの利用環境に関する提供サービスも異なる場合があります。ファクタリングの利用に関する手続きの円滑化につなげられる売掛金管理システムや電子債権決済システムといった、オンラインサービスを提供している銀行もあります。
ファクタリングの契約形態や提供サービスは銀行ごとに異なるため、複数の銀行と比較することで自身が利用しやすい銀行を選びやすくなります。自身が重視したいサービス内容をもとに、銀行系ファクタリングを利用する前はサービス内容の比較を行ってみましょう。
まとめ
銀行系ファクタリングは、銀行やそのグループ会社が提供する売掛金の買取サービスのことです。銀行や銀行の子会社が運営しているため信頼性が担保されやすい一方で、3社間ファクタリングの契約形態が原則となる特徴があります。
銀行系ファクタリングの利用に向いている人は「売掛先企業に信用度がある」「債権譲渡通知を行っても問題ない」「資金調達に時間的な余裕がある」といった特徴に該当する人が考えられます。そのため、売掛先企業にファクタリングの利用を知られたくなかったり、早期に現金化を行いたい場合はそのほかのファクタリング会社の利用を検討してみましょう。
なお、銀行によって、提供しているファクタリングの契約形態やオンラインサービスの提供の有無などが異なります。自身が利用しやすい銀行を選択するためにも、銀行系ファクタリングを利用する前は複数の銀行を比較検討してみましょう。