売掛債権の買取や保証を依頼できるファクタリングサービスは、銀行でも取り扱いがあります。銀行のファクタリングサービスには、民間のファクタリング会社とは異なるサービス内容や利用時のメリットとデメリットがあります。
当記事では、銀行のファクタリングサービスについて解説します。他の金融機関や民間のファクタリング会社が提供するサービスと比較検討をする際の参考にしてみてください。
銀行のファクタリングとは
銀行のファクタリングとは、メガバンク傘下のファクタリング会社や地域銀行が提供しているファクタリングサービスのことをいいます。ファクタリングサービスを提供する会社を事業分野ごとに分類した時、銀行のファクタリングサービスは銀行系ファクタリングと呼ばれることがあります。
銀行は、幅広く金融業務を行ってきたノウハウやネットワークがあることから、数種類のファクタリングサービスの提供を可能にしています。ファクタリングといえば、資金調達を目的とした買取ファクタリングが代表的ですが、銀行では以下のサービスの取り扱いがあります。
<銀行がおもに取り扱っているファクタリングサービス>
- 保証ファクタリング
- 国際ファクタリング
- 一括ファクタリング
なお、銀行での買取ファクタリングサービスは、売却できる債権の種類や利用方法が限定される場合があります。銀行が実施する買取ファクタリングではなく、銀行の業務提携先会社が実施する買取ファクタリングの利用となる場合があるため、事前に銀行のWebサイトや窓口などで確認をしましょう。
保証ファクタリング
保証ファクタリングは、売掛債権の支払いを銀行が保証してくれるファクタリングサービスです。
【保証ファクタリングの仕組み】
売掛債権の保証契約を銀行と交わしておき、万が一に売掛先が倒産や破産などを起こした場合には、保証限度額内の保証金が銀行から支払われます。保証ファクタリングによって、売掛債権の全額未回収を防ぐことができ、貸倒による損失額を抑えることが可能になります。
保証ファクタリングは、ファクタリングを利用する会社と銀行の2社間で行うサービスです。利用する際に売掛先へ通知が行われることはないため、今まで通りの取引を継続しながら貸倒れリスクへの対策を図ることができます。
なお、保証ファクタリングの特徴やサービスを取り扱っている銀行については、「保証ファクタリングとは?サービスを提供している保証会社も解説」を参考にしてみてください。
国際ファクタリング
国際ファクタリングは、輸出債権の回収管理と支払い保証を銀行に依頼できるファクタリングサービスです。
【国際ファクタリングの仕組み】
銀行は、海外の金融機関やファクタリング会社とともにFCIという国際ネットワークに加盟しており、貿易信用状を用いない海外取引でも安全で確実な債権回収を可能にしています。
また、海外の取引先である輸入企業が倒産や不払いなどの未回収リスクを発生させた場合には、銀行が100%の支払保証をしてくれます。輸出債権の保全を図ることができるため、取引拡大や新規取引先の開拓につなげることが可能になります。
国際ファクタリングは、ファクタリングを利用する会社(輸出企業)と海外の取引先(輸入企業)、銀行の3社間で行うサービスです。国際ファクタリングサービスは、みずほ銀行や三菱UFJ銀行、三井住友銀行などメガバンク傘下のファクタリング会社が取り扱っています。
一括ファクタリング
一括ファクタリングは、買掛債務の管理や決済手続きを銀行に依頼できるファクタリングサービスです。
【一括ファクタリングの仕組み】
一括ファクタリングにおいて、商取引による買掛債務を支払う側の企業(支払企業)は、保有する債務を銀行に一括譲渡することで手形取引における発行や決済手続きなどの事務負担やコスト負担を削減できます。加えて、手形の紛失や盗難などの管理リスクを軽減することが可能になります。
一方で、債務の支払いを受ける側の企業(納入企業)は、一括ファクタリングのシステムを利用することで、買取ファクタリングのように売掛債権を期日前に資金化することが可能になります。
一括ファクタリングは、買掛債務を支払う会社(支払企業)と支払を受ける会社(納入企業)、銀行の3社間で行うサービスです。一括ファクタリングサービスは、北洋銀行や百十四銀行、静岡銀行などおもに地方銀行が取り扱っています。
銀行のファクタリングを利用する際のメリット
銀行のファクタリングには、以下のようなメリットがあります。
<銀行のファクタリングを利用する際のメリット>
- 安全性の高い取引を行える
- 利用者が抱くさまざまなニーズを満たせる
安全性の高い取引を行える
銀行は金融機関として事業運営を行う上で、金融庁から厳しい監督や規制を受けています。銀行法や金融商品取引法など、多くの法令を遵守して金融商品を提供していることから、違法なファクタリングサービスを提供する可能性は極めて低いと考えられます。
ファクタリング業者の中には、ファクタリングと偽って貸付や融資を行う悪徳業者が存在します。知らないうちに違法契約を行ってしまう危険性がありますが、銀行の提供するサービスであれば安全性の高いファクタリング取引が行えるといえるでしょう。
利用者が抱くさまざまなニーズを満たせる
銀行は複数の種類のファクタリングサービスを取り扱っているため、利用者が抱くさまざまなニーズを満たすことが可能です。
たとえば、売掛債権の貸倒を防ぎたい場合には保証ファクタリングが利用できます。契約状況によっては売掛債権の100%保証が可能になるなど、売掛債権の未回収リスク軽減や債権保全を図ることができます。
また、手形取引における手形振出の廃止や手形管理の負担などを軽減したい場合には、一括ファクタリングを利用できます。債務を支払う側の企業は決済効率化を図ることができ、債務を受け取る側の企業は手形の管理リスク軽減と新たな資金調達の手段を確保することが可能になります。
銀行のファクタリングを利用する際のデメリット
銀行は、取引においての未回収リスクへの評価や管理を徹底しています。そのため、サービスの利用にあたっては以下のようなデメリットがあります。
【銀行のファクタリングを利用する際のデメリット】
- 利用会社の経営状況も審査対象に含まれる
- 会社の信用情報に影響が出る可能性がある
利用会社の経営状況も審査対象に含まれる
銀行のファクタリングサービスでは、ファクタリング利用会社の経営状況も審査対象に含まれます。ファクタリングを利用するには審査基準を満たす必要がありますが、銀行は民間のファクタリング会社と比べて審査項目が多いため、審査が厳しい傾向にあります。
審査基準は銀行によって異なりますが、利用会社の状況が債務超過に陥っているような場合や、税金の滞納や未納などがある場合には利用を断られる可能性があります。
なお、民間のファクタリング会社では売掛先の経営状況が重視されるため、経営状況を理由に銀行のファクタリング会社を利用できなかった場合でも、売掛先や売掛債権の信用力が高く回収が見込めると判断されればファクタリングを利用できる可能性があります。自社の経営状況に不安がある人は、民間のファクタリング会社の利用を検討すると良いでしょう。
会社の信用情報に影響が出る可能性がある
ファクタリングは借入やローンではないため、利用したことが会社の信用情報に記載されることは原則としてありません。ただし、銀行傘下のファクタリング会社は親会社が銀行であるため、利用した際の情報が共有されることがあります。
利用情報が共有されると、会社の信用情報に影響が出る可能性があります。ファクタリングを継続的に利用していることが銀行に知られた場合、資金繰りが厳しく経営状態の悪い企業だという印象がつく可能性があるためです。
なお、信用情報に影響が出るのは、あくまでも買取ファクタリングを継続的に利用した場合です。保証ファクタリングや一括ファクタリングは、継続的な利用を前提としているサービスであるため、長期利用であっても信用情報に悪影響を与えることは少ないと言えるでしょう。
まとめ
銀行のファクタリングとは、メガバンク傘下のファクタリング会社や地域銀行が提供しているファクタリングサービスのことをいいます。おもに取り扱っているサービスは、保証ファクタリングや国際ファクタリング、一括ファクタリングです。
銀行は、多くの法令や規制を遵守して金融商品を提供していることから、安全なファクタリング取引が行えるというメリットがあります。加えて、数種類のファクタリングサービスを取り扱っているため、利用者が抱くさまざまなニーズを満たすことが可能です。
ただし、未回収リスクへの評価や管理が徹底されていることから、利用会社の経営状況も審査対象となります。また、利用情報は銀行グループ内で共有されるため、継続的な利用によって会社の信用情報に影響が出る可能性があります。
銀行のファクタリングサービスは、取り扱うサービス内容が自身の求めるものであり、利用時に生じるデメリットの影響が少ない場合に利用を検討すると良いでしょう。他の金融機関や民間のファクタリング会社と比較する際の参考にしてみてください。