法人や個人事業主として会社を経営している人の中には、経営状況の向上を図っている人もいますよね。その際、会社経営を好転させる具体的な施策がわからずに悩んでいる人もいるでしょう。
会社の経営を好転させるには、自社の経営改善を行いましょう。経営改善は、悪化している経営状況の悪化を防ぐためだけでなく、持続的な成長を目指すためにも行わなくてはなりません。
当記事では、経営改善を行う意義と会社経営を好転させる施策を解説します。経営改善を行うにあたって利用できる公的支援制度も紹介しているため、会社の経営を好転させたい経営者は参考にしてみてください。
経営改善は会社の持続的な成長を目指すもの
経営改善は、会社の持続的な成長を目指すものであるため、会社にとって常に必要な取り組みです。会社経営の中で常に経営改善を行うことで、悪化した経営の立て直しだけでなく、恒常的な経営の向上を図ることができます。
経営改善とは、会社の経営状況を改善するための施策や方針のことを指します。経営状態が悪化しているか、あるいは今後悪化する見込みがある場合に実施される傾向があります。
一方で経営改善は、現状で経営が軌道に乗って安定している経営者も実施すべきものとされています。経営改善を一時的な経営の立て直しのために実施するのではく、常に社内で実施することで、会社を持続的に成長させることを目指せるようになります。
経営改善を行うには、会社が抱える課題を抽出してひとつひとつ解決していく必要があります。一時的な経営の立て直しだけではなく、持続的な会社の成長を図りたい会社経営者は、効果的な経営改善方法を押さえておきましょう。
会社の経営を好転させるために行える経営改善施策
会社の経営を好転させるために行える経営改善施策はいくつかあります。会社経営者は、それぞれの施策を押さえておきましょう。
【経営改善で行える施策】
- 経営の方向性を再検討する
- 市場分析を行う
- 競合分析を行う
- 組織風土改革を行う
- 販管費の管理を行う
これらは、会社経営者が行える経営改善施策の一例ですが、経営を好転させることにつなげられます。経営改善を検討している会社経営者は、それぞれの施策を確認し、自社の経営改善に適した施策を検討してみてください。
経営の方向性を再検討する
会社経営者が経営改善を行うときの施策の1つは、経営の方向性を再検討することです。経営の方向性を再検討することで、限りある経営資源を有効に活用して持続的な競争優位を確立したり、従業員や社外関係者の意思統一をしたりしやすくなります。
会社を経営していく上で利用できる「ヒト」「モノ」「カネ」といった経営資源には限りがあります。経営資源を有効に活用できれば、競合との差別化や自社の独自性強化ができたり、新たなビジネスチャンスやイノベーションの創出につなげられたりする可能性があります。
経営資源を有効活用するには、会社の経営方針として「なにに投資して、なにに投資しないか」という選択と集中を行わなくてはいけません。経営の方向性を明確にすることで、会社の将来像に合った事業を行うための選択と集中を実施できます。
なお、会社の方向性は市場ニーズや競合状況の変化によって再検討を迫られる場合があります。経営の方向性を再検討するときは、展開している事業のなかで自社が持続的に成長できる事業を中心に、会社のあり方を捉えなおさなければならないため、会社経営者は過去の業績や中長期的に描いている会社の将来像をもとに、会社の方向性を検討してみてください。
市場分析を行う
会社経営者が経営改善を行うときの施策の1つは、市場分析を行うことです。市場分析を行うことで消費者のニーズの再確認や市場の将来性を把握でき、その市場に経営資源を投入するべきかどうかの判断要因の1つとできます。
市場分析を行うと、消費者の購買動機や課題、満足度などの把握できます。消費者の購買動機や課題に感じている事柄など理解できれば、消費者のニーズに合わせた商品やサービスを提供しやくすくなり、会社の競争力や付加価値を向上させられるようになります。
また、市場分析を通して、市場の将来性を把握することもできます。市場動向は「政治的要因」「経済的要因」「社会的要因」「技術的要因」など様々ありますが、これらを把握することで市場が将来的にどのように成長や縮小するのか判断できます。
なお、市場動向を把握するための方法の1つにはPEST分析が挙げられます。PEST分析では「政治的要因」「経済的要因」「社会的要因」「技術的要因」の4つの視点で市場を分析することができるため、自社の経営改善に当たって市場分析を検討している会社経営者はPEST分析を活用してみてください。
競合分析を行う
会社経営者が経営改善を行うときの施策の1つは、競合分析を行うことです。競合分析を行うことで競争環境を把握したり、自社の強みと弱みを客観的に評価したりできます。
競合分析では、自社と似た商品やサービスを展開する特定の競合他社と自社を比較することで、自社が置かれている競争環境を把握できます。競合他社がどのような戦略や強みを持って、商品やサービスを展開しているのかといった競争環境を把握することで、自社の目標や方針を設定しやすくなります。
また、競合他社と自社を比較することで、自社の強みと弱みを客観的に評価することも可能です。自社の強みと弱みを把握できると、強みを活かして弱みを改善する会社経営を行えるようになり、自社の競争力や優位性を明確に打ち出すことができます。
なお、競合分析を行うと自社のブランドイメージやポジショニングの確立ができるため競合他社との差別化につなげられます。競合分析を行うためのフレームワークとしては3C分析や4C分析などもあるため、競合分析を行いたい会社経営者はこれらのフレームワークも参考にしてみてください。
組織風土改革を行う
会社経営者が経営改善を行うときの施策の1つは、組織風土の改革を行うことです。組織風土を改革すると、生産性の向上や社員の創造力の創出につなげられるようになります。
組織風土は、社員の「考え方」「行動」「業務」「意思決定」などに影響を与える心理的環境要因になります。職場の雰囲気が明るく活気があり、社員同士の協力関係が構築されている組織風土では、社員の仕事に対するモチベーションを向上させられ、仕事に対するやりがいがあれば新たなアイディアの提案や新しいチャレンジを社員に促せるようになります。
社員のモチベーションの向上や新しいアイディアの創造力の創出などは、会社の生産性の向上にもつながります。結果的に会社経営における業績を改善する効果もあります。
なお、よい組織風土は企業イメージの向上にもつながります。組織風土の改革を行うには、はじめに現状の組織風土の課題点を明らかにしなくてはならないため、組織風土の改革を目指す会社経営者は組織風土診断や社員アンケートなどの実施から始めてみましょう。
販管費の管理を行う
会社経営者が経営改善を行うときの施策の1つは、販管費の管理を行うことです。販管費が増加してしまうほど、会社の利益の低下につながってしまうからです。
販管費とは、商品やサービスを管理・販売するために必要な費用のことで、販売費と一般管理費で構成されています。販管費は、売上高から売上原価を引いたものからさらに差引くことで算出されるため、販管費が増加しているということは会社の利益が低下していることを示していると言えます。
販管費を適切な金額に収めるように管理することで、会社の利益の損失を防止することが期待できます。販管費の管理を行う際は、販管費の内訳から、削減できる項目や効果的な投資先を把握するために販管費と売上の関係性や変動要因を考慮しながら販管費の分析を行う必要があります。
なお、販管費は業界ごとに平均値が異なります。業界ごとの販管費は、経済産業省が公開している「中小企業実態基本調査」で示されているため、販管費を適切に管理したい会社経営者は、自社が該当する業界の平均値を参考にしてみてください。
経営改善を実施する際に利用できる公的支援制度
会社経営者が経営改善を実施する際には、公的支援制度を利用することが可能です。会社経営者は自社の経営改善にあたって利用できる公的支援制度を押さえておきましょう。
【経営改善で利用できる公的支援制度】
- 早期経営改善計画策定支援事業
- 経営強化法による支援
- 新事業創出支援
これらはあくまで一例ですが、会社経営者が経営改善を実施するにあたって利用できる公的支援制度です。経営改善を行いたい会社経営者は、それぞれの公的支援制度を確認しておきましょう。
早期経営改善計画策定支援事業
会社経営者が経営改善を行う際に利用できる公的支援には、早期経営改善計画策定支援事業が挙げられます。早期経営改善計画策定支援事業を利用することで、専門家の支援を受けながら資金繰り管理や採算管理などの経営改善の取り組みを行えます。
早期経営改善計画策定支援事業は、中小企業庁が実施している制度です。資金繰り管理や採算管理などを行いたい中小企業の経営者が、税理士や公認会計士といった専門家の支援を受けながら「資金実績・計画表」「ビジネスモデル俯瞰図」といった経営改善計画の策定支援を受ける際に掛かる費用負担の2/3を補助してもらえます。
早期経営改善計画策定支援事業の利用に当たっては、国から認定経営革新等支援機関として認定を受けている専門家から支援を受けていることが要件として定められています。税理士や公認会計士などの専門家であったとしても、認定経営革新等支援機関に認定されていない場合は、早期経営改善計画策定支援事業の対象とはなりません。
なお、認定経営革新等支援機関は中小企業庁の「認定経営革新等支援機関検索システム」から探すことができます。早期経営改善計画策定支援事業を利用したい会社経営者は、自社に合った認定経営革新等支援機関を探すことから始めてみてください。
経営強化法による支援
会社経営者が経営改善を行う際に利用できる公的支援には、経営強化法による支援が挙げられます。経営強化法による支援では「人材育成」「財務管理」「設備投資」などの取り組みにおいて支援を受けることができます。
経営強化法による支援は、中小企業庁が実施しているものです。会社経営者が自身で経営力向上計画を策定し、事業所管大臣に申請を行って認定されることで「人材育成」「財務管理」「設備投資」などの取り組みを行う際に、税制や金融の面で支援を受けられます。
経営力向上計画の作成に当たっては、認定経営革新等支援機関の支援を受けられます。会社が抱えている経営課題や必要な経営改善施策などを、会社経営者とともに考慮しながら経営力向上計画の作成を進められます。
なお、経営力向上計画で策定されていない取り組みに関しては、税制や金融面での支援を受けることができません。経営強化法による支援の利用を検討している会社経営者が、経営力向上計画を策定する段階で自社に必要な取り組みを抽出しておきましょう。
新事業創出支援
会社経営者が経営改善を行う際に利用できる公的支援には、新事業創出支援が挙げられます。独自の技術や地域資源を活用した新事業の創出を行いたい会社経営者に対して、国や地方公共団体、独立行政法人などが支援を行っています。
新事業創出支援は、国や地方公共団体、独立行政法人などが行っている支援制度です。中小企業や小規模事業者が地域資源の活用や異分野の企業連携によって新たな商品やサービスを創出する場合に、その開発費用の一部を補助したり、専門家の派遣やマーケティング調査などを支援したりしています。
たとえば、中小企業基盤整備機構では新事業創出支援として、地域活性化パートナー企画や農商工等連携の支援などを行っています。これらの支援は、地域資源の活用や異なる事業分野の会社との連携を通じて新たな商品やサービスを創出、さらなる成長を目指す会社が利用できます。
なお、新事業創出支援の支援内容は実施している機関や地域によって異なります。地域によっては実施されていない可能性もあるため、新事業創出支援を利用したい会社経営者は、地域の商工会議所や商工会に相談することで、地域で実施されている新事業創出支援を紹介してもらえる場合はあるので参考にしてみてください。
まとめ
経営改善は、悪化している経営状況の悪化を防ぐためだけでなく、会社の持続的な成長を目指すものです。会社経営の中で常に経営改善を行うことで、経営の悪化の防止や会社の持続的な成長につなげられます。
経営改善を行うための施策には「経営の方向性の再検討」「市場分析」「競合分析」「組織風土改革」「販管費の管理」などが挙げられます。いくつかの種類があるため自社が抱えている経営課題に合わせて経営改善施策の検討が必要です。
なお、経営改善を行う際は、公的支援制度を利用することもできます。経営課題の抽出や経営を改善するための計画の策定など様々な支援を受けられるため、経営を好転させたい会社経営者は公的支援制度の利用も検討してみてください