会社経営を行っていれば、資金繰りが苦しくなることもあるでしょう。なかには、会社の存続自体が危うくなってしまうこともあるかもしれません。
資金繰りが苦しいときに、融資を受けるなどの適切な経営改善施策を打てなければ、会社が倒産してしまう可能性があります。また、手形の支払いなど資金繰りが苦しくてもやらなくてはいけないこともあるので、資金繰りを改善するときには、やるべきこととやらなくていいことを見極めましょう。
この記事では資金繰りが苦しい会社が取れる経営改善方法について解説します。
資金繰りが苦しい会社が経営改善をするには現金を用意する
資金繰りが苦しい会社が経営改善をするには、会社運営に使える現金を用意することが大前提になります。会社経営に使える現金がなくなってしまうと、仕入れ代金の支払いや借入金の返済などができなくなり、倒産してしまうからです。
資金繰りが苦しくなると、経営悪化の原因を探ろうとする人もいますが、経営改善の分析は現金の用意に目途が立ってからでも遅くありません。原因がわかっても会社が無くなってしまえば意味がないからです。
まずは、会社を存続させられるだけの現金を用意することに注力しましょう。資金繰りが苦しい会社が実行できる資金調達方法としては次の5つがあります。
-
金融機関から融資を受ける
- 手持ちの資産を売却して資金に換える
- 株式を発行する
- 手形割引を利用する
- ファクタリングを利用する
資金調達は、金融機関から融資を受けるときのように、審査などで時間を取られることもあるので、手続きを行えばすぐに現金を手に入れられるとは限りません。そのため、できるだけ早め早めで資金調達の準備を進めておくようにしましょう。
金融機関から融資を受ける
資金繰りが苦しいときの資金調達方法の1つは、金融機関から融資を受けることです。日本政策金融公庫や商工組合中央金庫などの公的金融機関の融資制度を利用すれば、資金繰りが苦しいときでも融資を受けられる可能性があります。
資金繰りが苦しいときに利用できる可能性がある融資制度としては、次の通りです。
【資金繰りが苦しいときに使える融資制度】
制度融資は、地方自治体と金融機関、信用保証協会が連携して事業者を支援してくれます。現状で経営状態が悪化していても、将来的に回復の見込みがあれば利用できることがあり、利用できる融資の種類は地方自治体によって違いがあります。 | |
企業再建資金は、日本政策金融公庫が行っている融資制度です。経営を立て直そうとしている経営者で、中小企業の再生支援を行っている公的機関の支援を受けているなどの条件を満たせば、利用できます。 | |
セーフティネット貸付も日本政策金融公庫が行っている融資制度です。取引先の倒産や物価の高騰など外的要因で資金繰りが悪化した経営者が対象で、資金繰りが厳しくなった要因などによって、対象となる制度の種類が異なります。 |
資金繰りが苦しいときに金融機関から融資を受けるには、将来的に経営が回復する見込みを示す必要があります。急場をしのぐためだけに上記の融資制度に申し込んでも、将来性がなければ審査に通過できない可能性があるからです。
金融機関に融資を申し込むときは、融資を受ければ経営が上向く見通しがある状態に経営環境を改善しておかなくてはいけません。中小企業再生支援協議会や認定支援機関などに相談すると、経営再生のための支援やアドバイスを受けられるので、活用してみてください。
手持ちの資産を売却して資金に換える
手持ちの資産を売却して資金に換えるのも、資金繰りが苦しいときの資金調達方法です。資産を売却すれば、返済不要な資金を手に入れられるので、融資のように返済に追われる必要もありません。
売却する資産として向いているのは、会社所有の不動産や社用車、建物や売上になる見込みがない在庫などの固定資産です。営業権や意匠権、特許など形のない無形固定資産は価格の評価が難しいため、資金には換えにくいからです。
売却する資産を選ぶときは、会社経営に必要な資産と不要な資産を分ける必要があります。貸借対照表などを使うと、固定資産や流動資産の状況をチェックすることができるので、利益を生まない資産を発見することができます。
会社の経営に役立たなかったり、利益を生まなかったりする資産のなかには、購入時よりも価値が下がって売却しても損をしてしまうケースもあります。しかし、保有していればそれだけで維持費がかかることもあるので、損であっても資金に変換する方が良いケースもあります。
資産を資金に換える行為は、資金調達のほかに資産の維持にかかっていた出費を抑えるという側面もあるので、資金繰りの改善に有効です。換金には時間がかかることもあるので、資金繰りが苦しくなったときは早めに売却する資産を選別するようにしましょう。
株式を発行する
株式会社の場合は、株式を発行して投資家に購入してもらうことで、資金調達をすることができます。
株式は発行するまでに様々な手続きを踏まなければいけないので、すぐに資金を手に入れることはできません。資金調達のために株式を発行すると決めたら、できるだけ早く次の決定事項を定め、発行手続きを行えるように準備をしましょう。
【株式発行の決定事項】
株式発行する相手を募集するために、募集要項を決定します。会社の機関設計にもよりますが、通常は株主総会の特別決議で決定されます。 | |
株式の発行方法は、申込割当方式と総数引受方式と呼ばれるものがあり、ぞれぞれで手続きが異なります。手続きは会社法で定められているので、会社法も確認しましょう。 |
投資家が株式を購入するときは、持ち株の価値が上がったときに購入時よりも高い値段で売却することも視野に含まれているので、会社に今後成長の可能性が無ければ、株主を募集しても買ってくれる投資家は現れない可能性があります。株式を発行するときは、経営改善を行って、事業計画で経営が上向くと現実味がある予測が立てられたタイミングがいいでしょう。
手形割引を利用する
手形割引を利用するのも資金調達の方法として有効です。
手形割引とは、取立銀行や手形割引業者に一定の手数料を支払って、期日よりも前に手形の代金を受け取ることを言います。本来、手形に記載された期日までお金を受け取ることができない為替手形や約束手形を早期に回収したいときに有効です。
手形割引は、期日に受け取れるはずだった額から手数料を差し引いた金額を受け取ることになるので、手形割引を依頼する取立銀行や手形割引業者は手数料が低いところを選びましょう。手数料は手形型割引率によって左右されるので、複数の銀行や業者の手形割引率を調査するようにしてください。
手形割引率は、都市銀行や地方銀行、信用金庫などであれば1.5~4%程度ですが、手形割引業者のなかには20%以上の金利が発生するケースもあります。銀行は手形割引を申し込む際の審査が厳しいこともありますが、できるだけ信頼できる金融機関を利用した方がいいでしょう。
ファクタリングを利用する
資金繰りが苦しいときは、ファクタリングを利用しても資金調達をすることができます。
ファクタリングは、手形割引と同じように売掛債権を現金化する仕組みですが、実際に現金が手元に来るまでのスピードはファクタリングの方が早く、最短即日で現金を手に入れられるケースもあります。そのため、早急に現金を用意したい人が利用する傾向が強いです。
しかし、ファクタリングの手数料は売掛債権の30%程度ほどもとられることもあります。高額な手数料がかかると、その分回収できる現金が減少してしまうので、現金を得た後の長期的な資金繰りを考えてできるだけ利用しない方がいいでしょう。
ファクタリングは、資金繰りが苦しいときに現金を要する最終手段として考えましょう。まずは、金融機関からの融資や資産の売却などで現金を用意できないか検討してみてください。
資金繰りが苦しいときは現金以外の改善策の検討も必要
会社の資金繰りが苦しいときは、現金を用意することがなによりも求められますが、合わせて現金以外の改善策も検討しましょう。会社の資金繰り周りの環境を改善できなければ、現金を用意できても会社経営を改善することができないからです。
資金繰りを改善するときは、会社の出費をコントロールしましょう。出費をできるだけ抑えて現金の流れを把握することで、調達した現金を経営の立て直しのために有効活用できるからです。現金以外の改善策として、次の5つが挙げられます。
- 経費の削減をする
- 支払いに優先順位をつける
- 事業の縮小を行う
- M&Aを行う
- 資金繰り表を作る
資金繰りが苦しいときに現金を調達して満足してしまうと、経営状態は向上しません。資金繰りが悪化している根本的な理由を改善できるように、上記の改善策を参考にしてみてください。
経費の削減をする
資金繰りが苦しい会社が改善するべきこととして、経費の削減が挙げられます。支出を抑えて、お金を減らさないようにすれば事業や投資に使えるお金が増えるため、資金調達と似た効果を得られるからです。
しかし、削減する経費の選び方を間違えると、経営が悪化してしまう可能性があります。たとえば、飲食店で原材料費を削減したり、1商品の内容量を減らしたりすると品質の低下につながり売上を落としてしまうリスクがあります。
経費を削減するときは、削減しても経営に悪影響を与えない経費を見極めましょう。業務のペーパーレス化や消耗品、オフィスの賃料の削減は、経費削減の筆頭に挙げられ、今すぐにでも実行に移しやすいものです。
経費を削減するときは、最初に経費管理表などを作成して現状の経費の状況を把握して、削減するべき経費を見えやすくしておきましょう。具体的にどのくらいの金額削減するのかの目標値を設定することもできるようになるので、経費削減のために有効な行動を起こしやすくなります。
支払いに優先順位をつける
原材料の仕入れ代金や借入金や税金など、支払わなければならないお金があるときは、どの支払いを優先するべきか優先順位を付けるのも、苦しい資金繰りを改善する1つの手です。支払いの優先順位を決めることで、現金の出入りに合わせた支払い計画を立てることができるからです。
最終的にはすべての支払を行わなくてはいけませんが、優先するべきは約束手形など期日を守らなくてはいけない支払いです。約束手形のような取引先企業に支払うお金は、遅れると会社の信用が低下して、今後取引を続けてくれなくなる可能性があるからです。
反対に、期日を遅らせられる支払は、期日を守らなければいけないものよりも優先度が下がります。たとえば、借入金の返済は銀行に相談することで計画を見直して、期日を延長したり、1回の返済額を減額してもらえたりします。のちに経営を立て直せれば、銀行からの信用も損なわれません。
また、税金などの支払いも、地方自治体の市役所の窓口に相談することで、分納に応じてもらえるケースもあります。無断で支払いを遅らせてしまうと督促状が届く事態になるので、支払い計画を立てる際は、税金を分納に出来るのか市役所に相談をするようにしてください。
事業の縮小を行う
資金繰りが苦しいときは、事業の縮小も検討してください。連続で赤字となっている事業や部門、利益率が悪い商品などを縮小することで、これまでそこに掛けていた経費を経営安定のために使うことができるようになるからです。
事業の中には、現在は利益が出ていなくても将来的に利益が見込める事業もあるかもしれません。しかし、利益が出る前に会社が倒産してしまうリスクを考えれば、資金繰りが苦しいときは、会社を維持するために将来の利益をあきらめる判断も必要になります。
1つの事業を縮小するだけでも、そこに掛けていた経費や人材をほかに回せるため、経営を立て直せる事例は珍しくありません。経営を立て直せて、新たに事業を拡大できるだけの資金力を蓄えられてから縮小した事業に再チャレンジしてもいいでしょう。
事業を縮小するときは、会社の利益がプラスになるように縮小しましょう。たとえば、事業の中で経費が掛かっていても一番利益を上げている事業を縮小してしまうと、会社は利益を落とし、さらに資金繰りが苦しくなりかねません。
縮小する事業は、経費を落とし、利益を落としても、総体として会社の利益がプラスになる事業を選ぶようにしましょう。
M&Aを行う
資金繰りが苦しいときは、M&Aを行うのも有効です。M&Aは本来、会社や事業を譲渡することで、後継者問題の解決や経営基盤の強化などを目的に行われますが、自社にとって不採算となっている事業を譲渡することで、資金繰りを改善することもできるからです。
自社では維持するだけでも出費がかさんでしまう事業であっても、他社から見れば利益を上げられる事業であることはあります。自社では専門としていなくてうまく売上を上げられない事業でも、その事業を専門にしている会社などです。
たとえば、ビジネスアプリを開発している会社が、利益の出ないゲーム事業を抱えていたとします。しかし、ビジネスアプリの会社では活かせなかったゲームも、ゲーム開発を専門にしている企業であれば、利益を上げられる可能性があります。
自社の中で不採算になっている事業を活用して資金化したいときは、M&Aを検討してみてください。
資金繰り表を作る
資金繰りが苦しいときは、資金繰り表を作ることでも経営を改善することができます。資金繰り表自体は資金を生む施策ではありませんが、経営を圧迫している無駄な経費を発見することができるので、どこの経費を削減すればいいのか発見できるからです。
金融機関からの融資や資産の資金化で現金の用意ができても、抜本的な経営改善がなされなければ資金繰りは改善しません。資金繰り表には1か月ごとの営業収支や財務収支といった情報が記されているので、経営改善に必要な情報を得ることができます。
資金繰り表を作るには、貸借対照表や損益計算書といった会計帳簿や販売計画、設備投資予算などの書類が必要になります。資金繰り表の作り方は「資金繰り表とは 役割と作り方の基本について解説」で詳しく解説しているので、参考にしてみてください。
資金繰りが苦しいときでもしなければいけない3つの支払い
会社経営では、資金繰りが苦しくなったときでも滞りなく実行しなければならない3つの支払いがあります。
- 手形の支払い
- 従業員への給料の支払い
- 仕入れ先への支払い
上記3つの支払いは、滞ると会社の信用にかかわり、なかには経営を立て直せても倒産に追い込まれるケースもあります。それぞれの支払いの特徴を理解して、支払いに必要な現金を捻出するようにしてください。
手形の支払い
資金繰りが苦しいときでも支払いを続けなくてはいけないのが、手形です。手形は支払いが滞ってしまうと不渡りになり、その後6か月以内に再度不渡りを出してしまった場合、銀行取引の停止処分が発生し、倒産のリスクが高まるからです。
不渡りを1度出しただけでは、銀行との取引は停止しませんが、不渡りを出したという事実は不渡報告と呼ばれる書面に記載され、様々な金融機関に情報共有がなされます。不渡りを1度出した時点でその会社の信用力は低下し、仮に金融機関を変更しても融資を受けることは難しくなります。
資金繰りが苦しいときに、金融機関から融資を受ける選択肢が狭まるのは倒産に直結します。資金繰りが苦しいときでも、会社を存続させるために手形の支払いに必要な現金は捻出しましょう。
従業員への給料の支払い
会社の資金繰りが苦しいときでも、従業員への給料の支払いも滞らせてはいけません。給料を支払うことは労働基準法で定められている会社の義務で、給料が支払われなければ従業員は会社を離れてしまいかねないからです。
給料の未払いによる労働基準法違反では、30万円以下の罰金が科せられたり、遅延利息や追加金の支払いを求められたりします。会社の資金繰りへの負担はさらに増えることになり、経営の立て直しは難しくなるでしょう。
また、給料の支払いが滞ると従業員の生活も苦しくなり、新しい職場に移る人も出てくるはずです。従業員がいなくなれば、これまで回していた事業を維持することができなくなり、結果的に資金繰りを改善できたとしても会社を維持することができなくなってしまいます。
資金繰りが苦しく、どうしても全額給料を払えない時は、給料の10~30%の支払いを一時的に待ってもらえるようにお願いをするなどしましょう。現金が用意出来次第、速やかに残りの給料を支払えば、まったく支払わないときよりも人材の流出を防げる余地が生まれます。
仕入れ先への支払
商品を生産するための原材料などの仕入れ先への支払いは、資金繰りが苦しいときでも優先しましょう。急に支払いが滞った会社は信用できない会社として見られしまい、会社が回復してから仕入れを再開しようと思っても断られてしまう可能性があるからです。
仕入れ代金をいきなり全額先延ばしにするのではなく、まず半額だけ支払い、残りは後日の支払いにできないか交渉をして、支払う姿勢を見せましょう。また、先延ばしにする支払いの期日は厳守しなければいけないので、現金が用意できる見込みがあるタイミングを指定できるように、資金繰りの準備を進めておく必要があります。
仕入れ先との繋がりが無くなると、会社の事業は立ちいかなくなります。新しい仕入れ先を見つけられなければ、資金繰りを改善できても倒産してしまう可能性もあるので、仕入れ先への支払いは滞らせてはいけません。
資金繰りが苦しくなる原因は手持ちの現金が足りないため
資金繰りが苦しくなる原因は、すぐに使える現金が慢性的に足りていないからです。そのため、一時的に現金を用意できて資金繰りが楽になっても、会社が抱えている根本的な原因を解決できなければ、また資金繰りが苦しくなってしまう可能性があります。
手持ちの現金が慢性的に足りなくなってしまう主な要因としては、次の5つが挙げられます。
- 損益がマイナスになっている
- お金が出てから入るという順番になっている
- 先行投資をし過ぎて回収ができなくなっている
- 無駄な出費が多くなっている
- 取引先の倒産してしまっている
会社によって、資金繰りが苦しくなる問題は様々あり、一概には断定することができません。しかし、まずは自社の経営状態を見直し、上記の項目に該当していないかを確認してみるといいでしょう。
損益がマイナスになっている
資金繰りが苦しくなる要因として真っ先に挙げられるのが、損益がマイナスになっているということです。会社として利益を上げられずに毎月赤字であれば、資金はどんどん減っていくからです。
損益がマイナスになる原因は、仕入れや生産にかかっている金額と商品の販売価格が釣り合っていなかったり、在庫管理などのコストが高かったりなど、様々なものが考えられます。抱えている問題に適した対処をしましょう。
損益がマイナスになっているときは、現金を増やして損益のプラスを増やすのではなく、損益のマイナスを減らすことが重要です。損益計算書などを活用して、利益の立つ価格設定にしたり、在庫整理をしたりして利益に還元できない在庫を処分するなどの対策をしましょう。
お金が出てから入るという順番になっている
お金が出てから入るという順番になっているのも、資金繰りが苦しくなる原因の1つです。売掛金のように商品を提供してから売上を回収するまでに一定期間間が開く取引では、間で仕入れ代金などの出費が発生しているので、現金が出てから入るというサイクルになりやすく、慢性的な資金不足に陥りやすいからです。
お金が出てから入るという順番になってしまうのは、売掛金回収の期間が長く設定されているからです。売掛金回収の期間が長ければ長いほど、会社に現金がない時間が増えることになります。
資金繰りの改善で現金を増やしたいときは、現金の出入りをコントロールしましょう。売掛金の支払い期日をできるだけ早い時期に設定したり、入金を得てからサービスを提供する受注生産にしたりなどの対策をしてみてください。
先行投資をし過ぎて回収ができなくなっている
会社を経営する上で、事業を行うのに必要な設備投資などへの先行投資は必要ですが、先行投資をし過ぎると、資金繰りが苦しくなります。先行投資の金額が大きくなると、投資金額の回収が難しくなり、結果的に資金不足に陥るからです。
先行投資をする際は、自己資金や借入金をもとに行います。しかし、借入金を使った先行投資が増えて、かつ設備投資による利益があまり出なかったとき、先行投資に使った借入金の返済が会社の資金繰りを圧迫する可能性があります。
先行投資をした設備などが、想定していた利益を上げられなかったときは、資金繰り全体を見直す必要があります。先行投資をした設備を資産として売却し、現金に換えることで、資金繰りが改善されることもあります。
無駄な出費が多くなっている
無駄な出費が多くなっているのも、資金繰りが苦しくなる理由の1つです。無駄な出費があることで、損益がプラスであっても資金不足につながるリスクがあるからです。
無駄な出費として挙げられるのは、維持費がかかるのに生産性の低い設備や利益を生まない在庫の保管費などです。また、従業員が数名の小規模な会社の場合は、代表者の個人的支出として仮払金や貸付金、立替金になっているケースもあり、それらも無駄な出費に含まれます。
会社の資金繰りが苦しいときは、会社の現金を減らさないことが原則となるので、無駄な出費はできるかぎり削減していく必要があります。会社の利益になるかならないかの観点で会社がどんなことにお金を使っているのかを調べ、無駄な出費を発見するようにしてください。
取引先が倒産してしまっている
これまで取引をしていた相手企業が倒産してしまったというケースも、資金繰りが苦しくなる一因です。商品を販売していた相手企業が、売上を回収する前に倒産してしまうと売ったのに入金がない状態になるからです。
取引先の倒産は、自社ではどうすることもできない事柄です。しかし、事前に情報収集をして取引先が倒産しそうであることを把握できれば、適切な対処をして取引先倒産の余波に巻き込まれることなく、安定した経営を行うことができます。
倒産の兆候としては、経営陣や社員の離職や支払期日の変更などが挙げられます。とくに、手形払いが減って現金払いが増えているときは、手形が期日に支払えずに不渡りにしてしまう恐れがあって現金払いにしている可能性もあります。
取引先が倒産しそうなときに出来る対処としては、担保権を使っての債権回収や取引から撤退するなどが挙げられます。取引先が倒産しそうなときは、回収し損ねる資金を最小限に収められるようにしましょう。
資金繰りが苦しくて改善の見込みがないときは法的整理を検討する
資金繰りが苦しくて改善の見込みもなくなってしまったときは、法的整理を検討してください。法的整理を行うことで、裁判所の関与や監督を受けて、会社の債務整理を実施し経営の再建を目指せるからです。
法的整理は、取引先や金融機関との間の債権が不良債権となるので、倒産近しい捉えられ方をされやすいです。しかし、放置しておくと本当に倒産しかねないので、早急に弁護士や税理士などの専門家に相談しましょう。
法的整理の方法としては次の2つの方法があります。
【法的整理の種類】
民事再生法は、経済的に困窮している事業者を立て直すことを目的としたもので、再生会社の監督のもと、経営を再建します。個人事業主や法人のどちらでも申し立てることができます。 | |
会社更生法は、裁判所によって選出された更生管財人に会社経営が委ねられ、経営が再建されます。会社更生法は株式会社のみが申し立て可能で、申し立てした会社の経営陣はすべて交代させられるのが原則となります。 |
法的整理を行うと、経営を立て直すために、これまで通り自由な会社経営を行うことは難しくなります。しかし、会社を存続させるという目的が明確になっているのであれば、法的整理を検討してください。