フランチャイズに加盟してコンビニエンスストアを運営するオーナーが抱えている経営課題の一例としては「人手不足」「フランチャイズ本部による経営判断の制限」「食品の廃棄ロス」などが挙げられます。これらの課題を改善する場合、コンビニオーナーはフランチャイズ本部の方針を確認しながら行わなくてはならないため、独自に経営改善を行うのが難しい場合もあります。
当記事では、コンビニオーナーが直面しやすい経営課題を解説します。フランチャイズフランチャイズ本部との間で必要になる交渉についても紹介しているため、経営改善を行いたいコンビニオーナーは参考にしてみてください。
コンビニの経営が難しくなる経営課題
コンビニの経営が難しくなる経営課題としては、いくつか挙げられます。経営改善を検討しているコンビニオーナーはそれぞれの項目を押さえておきましょう。
【コンビニの経営課題】
- 人手不足
- フランチャイズ本部による経営判断の制限
- 食品の廃棄ロス
コンビニエンスストア統計調査月報によると、2022年時点で全国のコンビニの店舗数は約5万7,000件とされています。10年前の2012年時点でコンビニの店舗数は約5万店舗とされていたため、コンビニの店舗数は年々増加しています。
一方で、近年はコンビニの国内市場が飽和状態になりつつあります。そのため、他店舗との競争の激化によって集客や売上の確保が難しくなってきている傾向にあります。
コンビニオーナーが抱える経営課題は、集客や売上の確保が難しい店舗の経営をさらに悪化させるおそれがあります。コンビニオーナーは経営改善に向けて、それぞれの経営課題を確認しておきましょう。
人手不足
コンビニの経営課題の1つとして挙げられるのは、人手不足です。コンビニ業務の複雑化や少子高齢化による働き手の減少などが要因として考えられます。
技術の進歩により、コンビニで提供される業務は「宅配便やチケットの発券」「デリバリーサービスの提供」など多岐に渡っており、対応する業務が増えると対応するスタッフの人手の負担になります。さらに、季節や地域に応じて商品の入れ替えが頻繁に行われる場合は、在庫や売上の管理や発注などの業務も人手不足の要因となります。
また、人手不足の要因としては近年の少子高齢化も一因として考えられます。少子高齢化によってコンビニでの働き手の中心となる傾向がある10代から30代の働き手の求人が集まりにくくなりつつあります。
コンビニの人手不足を改善するためには、人手を短縮できるような業務効率の改善が必要です。人手不足を改善したいコンビニオーナーは、時短営業やセルフレジの導入の導入を検討してみてください。
フランチャイズ本部による経営判断の制限
コンビニの経営課題の1つとして挙げられるのは、フランチャイズフランチャイズ本部による経営判断の制限です。コンビニ経営では、経営方針や実施する施策について、フランチャイズ本部による制限を受ける場合があり、オーナーの自由な経営判断ができない可能性があります。
コンビニ経営におけるフランチャイズ本部による経営判断の制限とは、フランチャイズ本部の指示によって「仕入れる商品や個数を決められる」「商品の価格設定を強制される」「店舗改装の要求」などがあります。これらはフランチャイズ本部の方針によって、コンビニオーナーの意思に関係なく実施を求められる場合があります。
一方で、フランチャイズ本部の方針が全国各地のコンビニの経営状態に即していると言えない場合もあります。そのため、地域の特性や顧客のニーズに答えたいというコンビニオーナーの経営方針と食い違ってしまい、思い通りの経営が行えずに売上や収益が減少してしまうおそれもあります。
公正取引委員会は2020年9月に、コンビニエンスストアフランチャイズ本部が優越的地位の濫用や不公正な取引方法で加盟店と取引を行っていると指摘しています。その中で、加盟店に対しても、自らの経営判断を積極的に行うことやフランチャイズ本部との交渉や協議を通じて問題解決を図ることが促されているため、コンビニオーナーは常にフランチャイズ本部と交渉や協議を行える姿勢を示せるようにしましょう。
食品の廃棄ロス
コンビニの経営課題の1つとして挙げられるのは、食品の廃棄ロスです。コンビニ経営においては、食品の廃棄ロスはなかったこととして計算されるため、食品の廃棄ロスが増えるほど、フランチャイズ本部へ支払わなくてはならないロイヤリティが増加してしまいます。
食品の廃棄ロスは、店舗によって異なりますが、コンビニでは1店舗あたり1日に10~15キロ程度の食品の廃棄ロスが出ているとされています。累計すると年間では約20~30万トンの食品ロスが発生しています。
コンビニがフランチャイズ本部へ支払うロイヤリティの計算方法であるコンビニ会計では、売上原価に食品の廃棄ロスは含まれていません。そのため、会計上は実際に売れた額よりも粗利率が増加し、コンビニはフランチャイズ本部に対してよりロイヤリティを支払わなくてはなりません。
食品の廃棄ロスは仕入れ原価の負担やロイヤリティの増加などをもたらし、コンビニ経営を圧迫する要因になります。食品の廃棄ロスを防ぐためには、必要以上の商品の発注を避けたり、見切り販売を行ったりなどの対策を行いましょう。
コンビニの経営改善を行うときはフランチャイズ本部との交渉が必要
コンビニが経営改善を行うときは、フランチャイズ本部との交渉が必要です。フランチャイズ本部との契約内容によっては、勝手に経営改善施策を実施してしまうと損害賠償請求や契約解除といった罰則を受ける可能性があります。
コンビニを運営する際は、ブランドイメージやサービスの品質を維持するためにフランチャイズ本部との間で交わされたフランチャイズ契約に基づいて経営を行ことが求められます。フランチャイズ本部からブランドイメージが損なわれたり、サービスの品質が低下したりすると指導を受けるほか、損害賠償請求や契約解除といった罰則を受けるおそれがあります。
フランチャイズ契約に基づいた経営は、コンビニの経営改善を行う際にも求められます。人手不足を改善するための時短営業やセルフレジの導入、あるいは食品の廃棄ロスを削減するために発注量を抑えたり見切り販売をおこなったりといった施策がフランチャイズ本部によって行えない場合もあります。
コンビニの経営改善に当たって実施したい施策をフランチャイズ本部へ交渉する場合は、コンビニ加盟店のオーナー同士で連携を取ってみましょう。他店のコンビニオーナーと情報交換を通じて、実際に成功した交渉事例やノウハウを得られる場合もあるので参考にしてみてください。
チェーン転換も検討する
コンビニオーナーが経営改善に当たって実施したい施策について、フランチャイズ本部の理解が得られない場合はチェーン転換も検討しましょう。チェーン転換も行うことで、現在加盟しているフランチャイズ本部では行えない経営も認められる場合があります。
チェーン転換とは、オーナーが他のコンビニチェーンに加盟することを指します。フランチャイズ本部の経営方針は、ブランドごとに異なるため現在加盟しているブランドでは行えない経営も、ほかのコンビニエンスストアのフランチャイズに加盟することで、行えるようになる可能性があります。
一方で、チェーン転換を行うと既存の顧客との関係を失うおそれもあります。具体的には、セブンイレブンからファミリーマートに転換した店舗では、セブンプレミアムやセブンカフェなどの人気商品やサービスが提供されなくなるため、顧客のニーズとズレてしまい顧客の満足度が低下してしまう場合もあります。
経営改善のために、コンビニオーナーがチェーン転換を検討する際は、顧客のニーズやコンビニの経営状況を総合的に判断しなければなりません。コンビニオーナーがチェーン転換を考慮している場合は、現在加盟しているフランチャイズフランチャイズ本部とチェーン転換先のフランチャイズフランチャイズ本部の契約内容を比較し、チェーン転換を行う必要性を検討してみましょう。
まとめ
コンビニの経営が難しくなる経営課題としては「人手不足」「フランチャイズ本部による経営判断の制限」「食品の廃棄ロス」などが挙げられます。これらはあくまで一例ですが、集客や売上の確保が難しい店舗の経営をさらに悪化させる要因となります。
とくに、フランチャイズフランチャイズ本部による経営判断の制限はコンビニの経営改善のための施策も自由に行えない可能性があります。どこまで自由な経営が認められているかは、フランチャイズフランチャイズ本部との契約内容によって異なりますが、経営改善を行う際はフランチャイズフランチャイズ本部との交渉や協議を要する場合があります。
コンビニオーナーが経営改善に当たって実施したい施策について、フランチャイズ本部の理解が得られない場合はチェーン転換という選択肢もあります。チェーン転換を行う場合は、複数のフランチャイズフランチャイズ本部の経営方針や契約内容を比較検討してみましょう。