資金調達手段としてファクタリングを検討している人の中には、どのような流れで契約を行うのか知りたい人もいますよね。また、失敗のないファクタリング契約を行うにはどんな点に注意すべきか把握しておきたい人もいるでしょう。
ファクタリング契約の流れは、一般的に「6つのステップ」に分けられ、ステップを踏み進めていくことで保有する「売掛債権の現金化」が可能になります。契約を行う際には「3つの注意点」に留意することで、失敗しにくく希望に近い資金調達が可能になるでしょう。
当記事では「ファクタリング契約の流れ」について解説します。「契約形態ごとの流れ」や「契約時の注意点」も含めて解説しているので、希望に沿ったファクタリング契約を行いたいという人は参考にしてみてください。
ファクタリング契約の流れは6つのステップに分けられる
ファクタリング契約の流れは一般的に6つのステップに分けられます。申込や審査、契約締結などの「6つのステップ」を踏み進めることで、保有する売掛債権の売却と「現金化」が可能になります。
【ファクタリング契約 一般的な流れ】
- ファクタリング会社へ事前相談をする
- 契約の申込をする
- 必要書類を提出する
- 審査を受ける
- ファクタリング契約を締結する
- 契約完了後、売掛債権の額面から手数料を差し引いた金額が利用企業に支払われる
ファクタリング契約では「売掛債権の売買取引」が行われますが、法律上は「債権譲渡契約」にあたります。譲渡によって債権の権利や回収リスクなどもファクタリング会社へ移転するため、債権が未回収となるリスクがあるかなどの「審査」を経て契約の可否が決定します。
審査において「契約可能」となれば、契約内容や条件を双方で確認、同意を行い契約の締結となります。契約締結後、早い場合には数日後に入金が行われることもあるため、ファクタリングの資金調達にかかる期間は比較的短く「早期資金化」が可能であると言えます。
なお、ファクタリング契約には「2社間ファクタリング」と「3社間ファクタリング」という2通りの契約形態があります。契約形態ごとに「流れ」や「特徴」も異なるため、希望に沿ったファクタリング契約を行いたい人は、2通りの契約形態の流れについても押さえておきましょう。
2社間ファクタリングは債権譲渡登記が必要となる場合がある
2社間ファクタリングは、一般的な流れに加え「債権譲渡登記」が必要となる場合があるため、「7ステップ」に分けられます。「債権譲渡登記」とは、債権譲渡契約によって移転した権利の所有を、当事者以外の第三者に主張する「対抗要件」を備えるために行う「登記申請手続き」のことです。
ファクタリング会社と「2社間」でファクタリング契約を行う契約形態を「2社間ファクタリング」といいます。契約時に、売掛先企業へ「債権譲渡通知」を行わず、債権譲渡への「同意」も得ないことから、ファクタリングの利用を知られずに資金調達が可能という利点があります。
しかし、売掛先企業への債権譲渡通知や同意がない「2社間ファクタリング」契約は、債権の所在が不明確になります。利用者が「二重譲渡」を行っていた場合、ファクタリング会社は譲渡された債権の所有を主張することが難しくなることから、契約時には「債権譲渡登記」を求められることがあります。
なお、2社間ファクタリング契約での債権譲渡登記は「必須ではない」ため、ファクタリング会社によって対応が異なります。債権譲渡登記は、手続きに多少の期間がかかり登記申請費用も発生するため、コストを抑え早期現金化をしたい人は「登記不要」や「留保登記」という対応が可能なファクタリング会社を選ぶと良いでしょう。
「2社間ファクタリング契約」の特徴について詳しく知りたい人は「2社間ファクタリングを利用する際のメリットとデメリットを解説」を参考にしてみてください。
3社間ファクタリングを利用するには売掛先企業の関わりが必要
3社間ファクタリングを利用するには、売掛先企業の関わりが必要です。3社間ファクタリングとは、ファクタリング会社と売掛先企業との「3社間」でファクタリング契約を行う契約形態のことです。
「3社間ファクタリング契約」は、売掛先企業に対し「債権譲渡の通知」を行い、債権譲渡への「同意」を得られることで利用できます。その際に、支払先の変更手続きなどの負担が売掛先企業にあることから、3社間ファクタリングは「売掛先企業の関わりが必要」という特徴があります。
「3社間ファクタリング契約」の流れは「8ステップ」に分けられます。ファクタリング契約の締結後、売掛先企業への「債権譲渡の通知」が行われ、売掛先企業による「同意」と「支払先変更」が加わることから、資金調達にかかる期間は長くなる傾向です。
なお、「3社間ファクタリング契約」は売掛先企業への「債権譲渡通知」を行うため、ファクタリングの利用を必然的に知られることになります。利用の際には、不信感を抱かせることや契約不成立とならないよう、事前に相談が行い理解を得られそうな売掛先企業との契約を行うと良いでしょう。
3社間ファクタリングの利点や注意点について把握したい人は「3社間ファクタリングとは?利点と注意点を解説」を参考にしてみてください。
ファクタリング契約を行う際の注意点は3つある
ファクタリング契約を行う際の注意点は3つあります。資金調達手段の中で「早期資金化」が可能になるファクタリングですが、契約を締結する際に内容を注視することなく進めてしまうと「失敗」や「トラブル」を招いてしまうおそれがあります。
【ファクタリング契約で留意すべき3つの注意点】
- 契約時の手数料が明確で相場相当であるか
- 契約形態が希望する形であるか
- 「貸付」のような契約となっていないか
ファクタリング契約を行う際に3つの注意点に留意することで、希望に沿った資金調達が可能になります。資金調達がうまくいかず、かえって資金繰りの悪化を招くことが無いよう、契約内容で留意すべき3つの注意点について押さえておきましょう。
契約時の手数料が明確で相場相当であるか
契約内容で留意すべき1つめの注意点は「契約時の手数料が明確で相場相当であるか」です。ファクタリング契約では「手数料」が発生しますが、用途不明な諸経費の請求をされていた場合や手数料が高額な場合は、現金化できる金額が減ることになるためです。
【ファクタリング契約で発生する手数料 一例】
費用名 | 概要 |
---|---|
買取り手数料 | 債権が未回収となる「貸倒れリスク」などの補填や対価として徴収される費用のこと。 買取り手数料は、売掛債権額に「手数料率」を乗じて計算され、売掛債権の額面から差し引かれる。 「手数料率」は契約形態や売掛債権の金額などによって変動し、設定範囲はファクタリング会社ごとに異なる。 |
登記申請費用 | 「債権譲渡登記」を行う際に発生する法定費用や事務手数料のこと。 「登録免許税」や司法書士が代理で行うことへの「報酬料」などが含まれる。 契約形態が「2社間ファクタリング」であると発生する場合がある。 |
印紙税 | 契約内容が記載された「売掛債権譲渡契約書」に貼付する印紙代金のこと。 「売掛債権譲渡契約書」は印紙税法に該当する文書であるために、譲渡代金の額に応じて定められた「印紙税」を納める必要がある。 |
審査手数料やその他諸経費 | 審査時における事務手数料や出張依頼をした場合の交通費などのこと。ファクタリング会社によって請求の有無が異なる。 |
ファクタリング契約で必ず発生する「買取り手数料」は、売掛債権額に乗じる「手数料率」の高低が大きく影響します。ファクタリング事業推進協会によると、現在の手数料率相場は2~15%程度としていますが「手数料率が高いと現金化できる金額が減る」ため、著しく上回る場合は、利用自体を考慮する必要があります。
また、買取り手数料をはじめとしたファクタリング契約時の手数料は、契約形態やファクタリング会社によって発生の有無が異なります。事務手数料や諸経費と称して高額な金額を請求する業者も存在するため、詳しい内訳がない場合には使途用途を確認するようにしましょう。
なお、ファクタリング契約時に交付される「売掛債権譲渡契約書」が紙である場合は「印紙税」が発生し、印紙代金として200円かかります。オンラインでクラウドサインを利用した電子契約の場合は「課税対象外」となり不要であるため、契約方法を検討する際の参考にしてみてください。
契約形態が希望する形であるか
契約内容で留意すべき2つめの注意点は「契約形態が希望する形であるか」です。希望に沿ったファクタリング契約を行うには、契約形態の特徴を理解した上で選択を行わないと売掛先企業との関係に悪影響を及ぼす他、資金調達額が減額してしまうためです。
契約形態が「3社間ファクタリング」の場合、売掛先企業へ「債権譲渡の通知」が行われるため、ファクタリングの利用が知られます。早期現金化しなければならない経営状況にあるのかと不信感を抱かせるおそれもあり「今後の取引」に悪影響を及ぼす可能性があります。
また、契約形態が「2社間ファクタリング」の場合、契約時の費用負担が大きくなり資金調達額が減額する可能性があります。売掛先企業の関与がないため、懸念される未回収リスク増加から「買取り手数料」が上がりやすく、債権譲渡登記の「登記費用」も加わるためです。
なお、ファクタリング会社によって契約形態が限定されている場合があります。知らずに契約を行いトラブルとならないためにも、ファクタリング会社のHPや比較サイト、相談窓口にて「取り扱う契約形態」を事前に確認するようにし、契約申込を行うようにしましょう。
貸付のような契約となっていないか
契約内容で留意すべき3つめの注意点は「貸付のような契約となっていないか」です。ファクタリング契約を行う際に「償還請求の有る契約」や「保証人や担保を求める契約」は「貸付」行為であり「融資」に該当するため注意が必要となるからです。
ファクタリング契約は、法律上の「債権譲渡契約」にあたります。「融資」のように金銭の貸付を行う契約ではないため、原則として担保や保証人を設けることはなく、債権の買い戻し請求のない「償還請求権の無い」契約が行われます。
しかし、ファクタリング契約においても、担保を設けたり「償還請求権の有る」契約を行うこともあります。その際、ファクタリング会社が「貸金業登録」をしていれば問題ありませんが、貸金業登録なく「貸付」のような契約を行っている場合は違法契約の可能性があるため、契約の取り止めを検討する必要があります。
違法契約を行うファクタリング会社は、高額な手数料や買戻し請求を行うという特徴があり、実態は悪徳金融業者やヤミ金融です。ファクタリング契約を行う際は、違法契約による資金繰りの悪化を防ぐためにも、契約内容をよく注視し「貸付」となっていないか確認をするようにしましょう。
まとめ
ファクタリング契約の流れは、一般的に「6つのステップ」に分けられ、ステップを踏み進めていくことで保有する「売掛債権の現金化」が可能になります。早い場合には数日後に入金が行われることもあるため、ファクタリングの資金調達にかかる期間は比較的短いと言えるでしょう。
ファクタリング契約には「2社間ファクタリング」と「3社間ファクタリング」という2通りの契約形態があり、それぞれに流れが異なります。一般的な流れに、2社間ファクタリングは「債権譲渡登記」が、3社間ファクタリングは「売掛先企業の関わり」のステップが加わるため、現金化までの期間に差が生じます。
なお、ファクタリング契約を行う際は「3つの注意点」に留意します。希望に沿った資金調達を行うためにも「契約時の手数料が明確で相場相当であるか」「契約形態が希望する形であるか」「貸付のような契約となっていないか」に注意して、契約を行うようにしましょう。