ファクタリングは、会社で保有している売掛債権を、ファクタリング会社に売却(譲渡)して現金化を行う資金調達方法です。資金繰りの改善を図る金融サービスとして利用が広まっていますが、利用手数料の高さや違法取引による被害が多く見られるため違法性が疑われています。
当記事では、ファクタリングの違法性について解説します。ファクタリングが違法取引になる場合や安全に利用するためのポイントについても解説しているため、ファクタリングの利用を検討している人は参考にしてみてください。
ファクタリング自体は違法ではない
ファクタリングが違法ではない根拠として、売掛債権の売買(譲渡)行為は法律で認められていること、資金の借入を行う取引ではないことが挙げられます。
ファクタリングは、民法の第466条にある債権譲渡に基づいた取引です。民法において債権譲渡は「債権の性質が譲渡を許す限り、自由に債権を譲渡することができる」と明記されているため、売掛債権をファクタリング会社などの第三者へ売却(譲渡)する行為は違法ではありません。
また、ファクタリングは資金の借入ではないため、取引に貸金業法や利息制限法、出資法などは適用されません。ファクタリング会社が利息制限法や出資法の上限金利を超える手数料の利率を設定したとしても、適用外であることから違法にはあたりません。
このような根拠から、ファクタリングは合法な取引であり、万が一に利用時の手数料が高い利率であったとしても違法ではないことがいえます。
ファクタリングが違法取引になる場合
ファクタリングは法的根拠などから合法な取引であることがいえますが、あくまでも法に則った適切な取引が行われている場合が該当します。行われた取引が貸付けと同様の機能を有する場合、サービスを提供する事業者の状況によっては違法取引と判断される可能性があります。
法に則ったファクタリング取引であれば、契約に貸付の機能を有することはありません。そのため、サービスを提供するファクタリング会社が貸金業登録をする必要はなく、登録なく事業を運営していても違法に問われることはありません。
しかし、ファクタリング取引においても貸付と同様の機能を有する場合には、貸金業登録を受ける必要があります。金銭の貸付契約は貸金業でなければ取り扱うことが認められていないため、登録なく取引を行った場合は刑事罰の対象となり違法取引であると判断されることとなります。
過去の判例から知る違法なファクタリング取引の特徴
過去の裁判では、ファクタリングとして行われた取引が賃金業に該当すると判断された事案があります。判例を知ることで、違法なファクタリング取引の特徴を把握することが可能になります。
たとえば、大阪地裁の平成29年3月3日の判例によると、ファクタリング会社が譲渡対象債権に係る債務者の不払いリスクをほとんど負担しないような取引は、金銭消費貸借契約に準じるものであり、賃金業に該当すると判断されました。
また、名古屋地裁の令和3年7月16日の判例によると、債権の買戻しを行わざるを得ない取引をファクタリング会社も認識の上で行われていたことは、事実上の譲渡債権を担保とする金銭消費貸借に近い取引であり、賃金業に該当すると判断されました。
法に則ったファクタリング取引であれば、債務の不払いリスクは新たな債権者であるファクタリング会社が負う必要があります。また、債権売買(譲渡)契約であるため、原則として債権の買戻しや貸倒れの際の弁済義務を利用者が負うことはありません。
よって、違法なファクタリング取引は、金銭の貸付契約に近い契約内容を強いるという特徴があります。このような取引を貸金業登録なしで行うファクタリング会社は違法であり、ファクタリングと偽って貸付を行う闇金融業者の可能性があるため、利用する際の参考にしてみてください。
賃金業無登録者による給与ファクタリング
給与ファクタリングとは、労働者が将来受け取る予定である給与を、債権としてファクタリング会社に売却し給与支払日前に現金化するファクタリング取引のことをいいます。
金融庁 ファクタリング利用に関する注意喚起によると、給与ファクタリングの仕組みは経済的に貸付の機能を有する取引であるため、貸金業に該当すると位置付けています。そのため、貸金業の無登録業者が行った給与ファクタリングの取引は違法取引に該当します。
貸金業登録をせずに給与ファクタリングの取引を扱う闇金融業者が存在していることから、金融庁や警察庁などが注意喚起を行っています。高額な手数料を請求されたり悪質な取立てや恐喝などを受ける危険性があるため、給与ファクタリングの利用は慎重に行いましょう。
ファクタリングを安全に利用するためのポイント
ファクタリングを安全に利用するためには、利用を検討しているファクタリング会社の実態や取引実績が確かなことを確認しましょう。その上で利用申込を行い、契約手続きを進めていく中で以下のようなポイントに注目してみてください。
<安全に利用するためのポイント>
・契約が債権売買あるいは譲渡契約となっているか
・契約時の手数料が相場相当となっているか
ここに挙げたポイントはあくまでも一例ですが、事前に押さえておくことで契約内容や契約書などの不審点に気付くことができます。違法取引を回避できる可能性があるため、ファクタリングの利用を検討している人は安全に利用するためのポイントを押さえておきましょう。
契約が債権売買あるいは譲渡契約となっているか
ファクタリングは債権売買(譲渡)であるため、契約書が債権売買契約書あるいは債権譲渡契約書となっている必要があります。
契約を締結する際に金銭消費貸借契約書を提示された場合は、借入の契約を求められていることとなるため違法取引である可能性が高いです。
また、表向きは債権売買(譲渡)契約書であっても、金銭の貸付に近い契約内容とされている場合があります。ファクタリングと称した違法取引である可能性が高いため、必ず契約書の全文に目を通し、買戻し請求や償還請求権がないこと、担保や保証人は不要であることを確認しましょう。
なお、ファクタリング取引において、買戻し請求や償還請求権のある契約がすべて違法というわけではありません。ファクタリング会社が貸金業登録をしていれば有効な契約であり、利用状況を考慮した上で付けている場合もあるため、賃金業登録の有無と経緯を確認した上で契約に同意するようにしましょう。
貸金業登録の有無は、金融庁の「登録貸金業者情報検索サービス」で確認することができるので参考にしてみてください。
契約時の手数料率が相場相当となっているか
ファクタリング事業推進協会によると、ファクタリング契約時の手数料率相場は2~15%であるとしています。売掛金額の30%など相場をはるかに上回る手数料率が設定された場合には、違法取引である可能性が高いです。
ファクタリング取引は貸金業に該当しないため、利息制限法や出資法で定めている上限金利を超えるものであったとしても違法とはなりません。ただし、高すぎる利率である場合には、実質的に担保を目的とした請求である可能性があるため注意が必要です。
ファクタリングを利用する際は、契約時に提示された手数料率が相場相当であるかを確認します。念のため複数のファクタリング会社へ見積りを取り、比較をしてから利用を判断するようにしましょう。
違法なファクタリング取引に関する相談先
違法なファクタリング取引を行う闇金融業者は、手口が巧妙であるため気を付けていても契約を行ってしまう可能性があります。違法取引による経営悪化や生活破綻を防ぐためにも、疑わしいと感じた場合には早期に以下の相談先の利用を検討してみてください。
公的機関の相談窓口
公的機関の相談窓口では、質問や相談の受付、相談内容に応じて他機関の紹介や論点の整理のアドバイスを行っています。しかし、他機関へのあっせんや仲介、調停の対応などは行っていません。
弁護士へ相談する前に違法性が高いかどうかを確認したい場合、被害内容について整理したい場合や今後の対応について確認したい場合に利用するとよいでしょう。
<公的機関の相談窓口 一覧>
相談先 | 相談申込方法 |
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弁護士
違法なファクタリング取引であるかの法的な判断とトラブルの解決については、法律の専門家である弁護士に相談します。法律に基づいた適切なアドバイスが受けられるとともに、悪質なファクタリング会社とのトラブルを解決する際の窓口となってくれます。
日頃より経営の相談を行っている顧問弁護士がいる場合には、その法律事務所へ相談すると良いでしょう。顧問弁護士がいない場合や弁護士に依頼したことのない場合には、日本弁護士連合会の法律相談センターを活用してみてください。
警察
違法なファクタリング取引によって悪質な取立てや恐喝を受けている場合には警察に相談します。過去の裁判では、行われた行為が恐喝罪または脅迫罪に該当すると判断された事例もあります。
また、違法なファクタリング取引を行っていた会社が、賃金業法違反や出資法違反に該当するとして逮捕された事例もあります。悪質な行為による被害が広がる前に、最寄りの警察署または警視庁 相談ホットラインを活用して相談しましょう。
まとめ
ファクタリングは、民法の債権譲渡に基づいた取引であり、第三者への債権譲渡は法律上で認められている行為であるため違法ではありません。加えて、貸金業ではないことから取引に利息制限法や出資法は適用されず、仮に上限金利を超える手数料率が設定された場合であっても違法にはあたりません。
ただし、ファクタリングとして行われた取引が貸付と同様の機能を有すると判断され、サービスの提供事業者が貸金業の無登録業者であった場合には違法取引になります。ファクタリングを安全に利用するためにも、契約は確かな債権売買(譲渡)契約か、契約時の手数料率が相場相当かを十分に確認して利用するようにしましょう。
なお、違法なファクタリング取引を契約したかもしれないと思った場合には、公的機関の相談窓口や弁護士、警察を利用して解決しましょう。早期に対応することで、違法取引による経営悪化や生活破綻、被害の拡大を防ぐことが可能になるため参考にしてみてください。