ファクタリングは提供された書類をもとに利用についての審査が行われます。審査に必要な書類の種類はファクタリング会社によって異なります。
ただし、審査の精度をより高めるため5種類以上の書類の提出を求めるファクタリング会社や、AIによる独自審査を実施しているため、必要書類は請求書と通帳コピーのみというファクタリング会社もあります。
今回の記事では、ファクタリング利用時に求められる可能性の高い必要な書類について紹介します。書類の取得方法についても解説しますので、書類の準備を際には参考にしてください。
ファクタリング利用時に求められる必要書類
ファクタリング利用時に求められる書類は、売掛金の回収リスクを判断するために必要となる書類です。
<ファクタリング利用時に求められる書類>
- 売掛金の発生を証明できる書類(請求書等)
- 売掛先からの入金を確認できる書類(通帳コピー等)
- 売掛先企業との取引が確認できる書類(基本契約書等)
- 利用者の本人確認ができる書類(身分証明書や印鑑証明書等)
- 利用者の信用力が証明できる書類(謄本や決算書等)
売掛金の発生を証明出来る資料
ファクタリングは売掛の売買を目的とした取引であるため、売掛金の発生を証明できる書類が必要です。売掛の発生を証明できる書類として請求書の提出が求められます。
請求書は商品やサービスの対価を請求するために発行する書類であるため、取引先企業との間で売掛が発生したことを証明することができます。
【請求書から確認できること】
・売掛先企業と取引内容
・売掛の金額
・売掛金の支払期日
売掛先企業との取引内容や売掛金の金額、売掛金の支払日から売掛の現状を把握し回収のリスクを検討することで、ファクタリング利用の可否を判断しています。
納品書や発注書の場合は添付書類が求められることがある
売掛の発生を証明できる書類として、納品書や発注書でも利用可能とするファクタリング会社もあります。
ただし、納品書や発注書に支払期日が記載されていないなど、取引内容、金額、支払期日の情報を確認することができない場合は、売掛先企業との頚本契約書や個別契約書などの追加書類が必要です。
請求書を提出できない場合は、納品書や発注書で利用できるかどうかを確認し、その際に必要となる追加書類も合わせて確認するようにしましょう。
売掛先からの入金を確認するための書類
売掛先企業からの入金実態を確認するため、直近3ヶ月~6ヵ月の入金履歴を確認できる書類の提出が求められます。
入金履歴の確認は通帳から確認することができるため、売掛先企業からの入金が確認できるページをコピーして提出します。加えて、通帳の表紙のコピーも提出します。
インターネットバンキングを利用している場合には、通帳コピーの代わりに入出金画面を出力したものを提出します。出力できない場合はスクリーンショットで画像化したデータでも可能な場合がありますが、画質が悪く不鮮明なものになると再提出を求められる可能性があります。
利用するファクタリング会社にどのページが必要かを確認してから、準備をすすめるようにしましょう。
なお、通帳等入金を確認できる書類の提出が出来ない場合はファクタリングの利用を断れる可能性もあります。
売掛先企業との取引が確認できる書類
売掛先企業との取引を確認するために、売掛先企業との基本契約書や通帳のコピーの提出が
求められます。
売掛先企業の基本契約書等には、売掛先企業と取り決めた取引における条件や支払に関する情報が記載されています。ファクタリング会社は基本契約書等から取引内容と継続的な取引の有無などを確認します。
基本契約書に譲渡禁止特約についての記載がある場合
譲渡禁止特約とは、債務者の権利保護のため売掛債権の支払い先を固定し、第三者への債権譲渡を禁止する約束のことです。
ファクタリングは、売掛債権を事業者から第三者であるファクタリング会社に売却(譲渡)する取引です。譲渡禁止特約が付与された売掛債権である場合、契約上はファクタリングを利用することができません。
もし、譲渡禁止特約のある売掛債権を売却する場合には、譲渡禁止特約を解除するために取引先へ譲渡禁止特約の解除について交渉を行う必要があります。
利用者の本人確認ができる書類
第三者によるなりすましがないかを確認するために利用者の本人確認ができる書類の提出が求められます。
提出する本人確認書類はファクタリング会社によって異なりますが、顔写真のある証明書の場合は1点のみ、顔写真のない証明書の場合は2点以上の提出が求められます。
<本人確認書類に該当するもの>
顔写真のある証明書類 |
・運転免許証 |
顔写真のない証明書類 |
・健康保険証 |
運転免許証やパスポートを本人確認書類として提出する場合には、期限を確認しておきましょう。期限切れのものは本人確認書類としての効果がなく、ファクタリング契約が実施できないおそれがあります。
書面による契約を行う場合は印鑑証明書が必要
書面による契約を行う場合は、契約書に署名と押印が必要となり、使用された印鑑が本人のものであることを証明するための印鑑証明書が必要です。
個人事業主の場合は代表者の実印と印鑑証明書、法人の場合は代表者の実印と法人印、それぞれの印鑑証明書を提出します。
なお、オンライン上で電子署名を利用した電子契約の場合は、印鑑証明書の提出が不要となる場合があります。ファクタリング利用時には、契約方法の確認もしておきましょう。
利用者の信用力が証明できる書類
ファクタリングを利用する会社の実態や財務状況から利用者の信用力を確認するため、商業登記簿謄本や決算書などの書類を求められる場合があります。
商業登記簿謄および開業届
商業登記簿謄や開業届には、事業名や本店所在地、事業目的、法人・個人番号などの会社の基本的な情報が記載されています。
ファクタリング会社は、記載情報から利用者の実態を把握します。
商業登記簿謄本や開業届の提出が求められるかどうかはファクタリング会社によって異なりますが、行政機関での取得が必要な書類となりますので、必要な場合は早めに取得しておきましょう。
決算書および確定申告書
決算書や確定申告書は、利用者の売上規模の確認や資金繰りの状況など財政状況を確認するために求められる場合があります。
たとえば、利用者の売上規模に対して売却する売掛債権の金額が大きすぎないかを確認します。売上規模に対して大きい場合、架空債権や不良債権などが含まれている可能性もあるからです。
また、資金繰りが著しく悪化している状況などがないかという点を確認します。資金繰りが逼迫している場合、回収した売掛金を送金せずに使い込まれてしまう可能性も考えられるからです。
決算書や確定申告書はファクタリング会社にとってリスクとなる要因がないかという点を確認し、契約しても問題の無い事業者かどうかを判断するために提出が求められます。
利用時に求められる書類を把握した人は取得方法もおさえておく
ファクタリング利用時に提出が求められる書類の中には、利用を検討した際に手元にはなく市区町村役場や行政機関などでの取得が必要となる以下の書類があります。
<取得が必要な書類>
・代表者印の印鑑証明書
・法人印の印鑑証明書および商業登記簿謄本
・開業届
入手先と取得方法は書類によって異なります。自身に適した取得方法であるとスムーズに書類を揃えられるようになるため、ファクタリング利用時に求められる書類を把握した人は、取得方法も事前に押さえておきましょう。
代表者印の印鑑証明書
代表者印の印鑑証明書は、印鑑登録をした市区町村役場で取得する方法、コンビニで取得する方法、オンラインで申請し取得する方法があります。
なお、印鑑証明書を取得するには印鑑登録がされている必要があります。居住地の市区町村役場において、印鑑登録を事前に済ませてから取得手続きを行いましょう。
市区町村役場で取得
申請場所 |
取得時に必要なもの |
取得にかかる料金 |
取得可能日数 |
---|---|---|---|
窓口 |
・印鑑登録証 |
300~350円 |
即日 |
市区町村役場での取得は、役場窓口で申請を行います。申請を行うには印鑑登録を行った際に交付された印鑑登録証が必要となり、印鑑登録証がない場合には印鑑証明書の交付を受けることができません。
また、身分証明書としてマイナンバーカードや運転免許証、健康保険証などが利用できますが、マイナンバーカードの場合は暗証番号の入力が必要になります。そのため、自身で控えている暗証番号の確認を行ってから申請を行いましょう。
市区町村によって取得にかかる費用は異なりますが、300~350円ほどの取得費用がかかります。発行は即日で完了しますが、市区町村役場へ向かうまでの時間と手段が必要となります。
コンビニで取得
申請場所 |
取得時に必要なもの |
取得にかかる料金 |
取得可能日数 |
---|---|---|---|
店内設置のマルチコピー機 |
以下のいずれか |
200~300円 |
即日 |
コンビニでの取得は、コンビニ店内に設置してあるマルチコピー機から申請を行い、取得時に必要として挙げたものの中から1つを使用します。利用する際には暗証番号の入力が必要となるため、カード作成時の暗証番号の確認を事前に行っておきましょう。
窓口取得と同様、市区町村によって取得にかかる費用が異なります。また、コンビニによっては証明書の交付サービスを行っていない場合やスマートフォンによる申請は不可の場合があるため、取扱い可のコンビニの検索が必要となります。
オンライン申請で取得
申請場所 |
取得時に必要なもの |
取得にかかる料金 |
取得可能日数 |
---|---|---|---|
マイナンバーカード読み取り対応のスマートフォン |
・マイナンバーカード |
300円+郵送方法に適した送料 |
1週間前後 |
オンライン申請での取得は、マイナンバーカード読み取り対応のスマートフォンから申請を行います。読み取り対応機種ではない場合は利用不可であるため、他の方法による取得を検討しましょう。
取得時の手続きにおいて電子署名を行うため、市区町村で指定している電子署名アプリのインストールが必要になります。加えて、オンラインで取得費用の支払いを行うためクレジットカードの用意が必要ですが、申請環境が整えば外出することなく取得が可能になります。
ただし、オンラインによって行えるのは申請手続きのみで、証明書の発行と取得は郵送対応となります。取得費用に加えて郵送料がかかる点と、取得までに1週間前後の日数がかかる点に注意しましょう。
法人印の印鑑証明書および商業登記簿謄本
法人印の印鑑証明書および商業登記簿謄本は、ともに法務局で取得できます。取得方法は窓口へ行き取得する方法、郵送で取得する方法、オンラインで申請し取得する方法があります。
法人印の印鑑証明書は、どの取得方法であっても印鑑登録カードが必要になります。印鑑登録カードは会社設立時の登記手続きにおいて取得するものですが、カードの交付申請を行っていない場合や紛失してしまった場合には、先に再交付手続きを行いましょう。
また、ファクタリング利用時に提出が求められる商業登記簿謄本は「履歴事項全部証明書」という種類です。商業登記簿謄本は4種類あるため、取得時には他の種類ではないことを確認して手続きを行うようにしましょう。
法務局窓口で取得
印鑑証明書 |
商業登記簿謄本 |
|
---|---|---|
申請場所 |
窓口/証明書発行請求機 |
|
取得時に必要なもの |
印鑑登録カード |
登記事項証明書交付申請書 |
取得にかかる費用 |
450円(手数料) |
600円(手数料) |
取得までの期間 |
即日 |
法務局での取得は、最寄りの法務局窓口または設置してある証明書発行請求機で申請を行います。窓口申請の場合は備え付けの交付申請書の記載、証明書発行請求機の場合は申請情報の入力が必要です。
取得にかかる手数料は金額相当の収入印紙を、交付申請書に貼付する形で支払います。法務局内に印紙売り場が設置してあるため、該当金額の収入印紙を購入してから手続きを行うと良いでしょう。
なお、法務局の窓口で申請が行える時間は平日の午前9時から午後5時まで、土日祝祭日は閉庁となります。また、昼休みの時間帯には窓口対応を行っていない法務局もあるため、法務局の各法務局のホームページを探すから検索し、利用する法務局の対応時間を確認しておきましょう。
郵送で取得
印鑑証明書 |
商業登記簿謄本 |
|
---|---|---|
申請場所 |
郵便 |
|
取得時に必要なもの |
印鑑登録カード |
登記事項証明書交付申請書 |
取得にかかる費用 |
450円(手数料) |
600円(手数料) |
取得までの期間 |
1週間前後 |
郵送での取得は、申請手続きおよび取得をすべて郵便によって行います。そのため、往復に使用する封筒と郵送費が必要になり、取得には1週間前後の日数がかかります。
送付する際に封筒に同封するものと、申請が受理され返送される印鑑証明書および商業登記簿謄本は会社の重要書類です。配送状況の追跡が可能になる簡易書留やレターパックでのやり取りを行うことで安全な取得が可能になるため、送付する封筒を選ぶ際の参考にしてください。
なお、それぞれの交付申請書は、法務局ホームページ登記事項証明書(商業・法人登記)・印鑑証明書等の交付請求書の様式から取得できます。手数料を納めるための収入印紙は郵便局で購入できるため、申請書に貼付してから発送しましょう。
オンライン申請で取得
印鑑証明書 |
商業登記簿謄本 |
|
---|---|---|
申請場所 |
オンライン |
|
取得時に必要なもの |
印鑑登録カード/申請用ソフトのダウンロード/電子証明書/場合によってはICカードリーダ |
セキュリティシステムのインストールまたは、申請用ソフトのダウンロード |
取得にかかる費用 |
手数料:390円(窓口)/410円(郵送) |
手数料:480円(窓口)/500円(郵送) |
取得までの期間 |
1週間前後 |
オンライン申請での取得は、申請環境が整っている必要があります。申請可能とするには、法務省が推奨する登記・供託オンライン申請システムへの登録が必要であり、印鑑証明書の取得には申請用ソフトのダウンロード、手続き上において本人であることを電子的に証明するには電子証明書の取得が必要です。
法人の印鑑証明書および商業登記簿謄本の取得手続きの流れは、法務省のオンラインによる登記事項証明書及び印鑑証明書の交付請求について(商業・法人関係)を参考にしてみてください。
なお、オンラインで行えるのは申請手続きのみであり、証明書の発行と取得は窓口もしくは郵送対応となります。オンライン申請の場合は窓口や郵送での方法に比べ、取得にかかる手数料を抑えることが可能になるため、準備にかかる手間や時間などを考慮して利用を検討すると良いでしょう。
開業届
個人事業主の開業届は、開業時に受け取った控えをコピーして提出します。しかし、控えを紛失してしまった場合や開業申請の手続きをオンラインで行ったため、控えの発行がないとういう場合には再発行手続きを行う必要があります。
開業届の再発行は税務署で行いますが、窓口で取得する方法または郵送で取得する方法があります。
税務署窓口で取得
申請場所 |
取得時に必要なもの |
取得にかかる料金 |
取得可能日数 |
---|---|---|---|
窓口 |
マイナンバーカードや運転免許証などの身分証明書 |
300円(手数料) |
2週間~1ヶ月 |
税務署窓口での取得は、納税地を管轄する最寄りの税務署で申請手続きを行います。取得時に必要な保有個人情報開示請求書は窓口で取得できますが、税務署ホームページからダウンロードが可能なため、事前に取得し持参してもかまいません。
取得には開示請求手数料がかかり、窓口にて現金納付する方法と事前に費用相当の収入印紙を購入し貼付して納付する方法があります。収入印紙の販売は税務署では行っていないため、収入印紙で納付する場合には最寄りの郵便局などでの購入が必要です。
なお、開業届の控えは申請手続きを終えたその場で取得することはできません。申請後、税務署から開示、不開示の決定通知が届いた後に、窓口にて発行あるいは送付によって取得となるため、2週間から1ヶ月ほどの取得日数がかかる点に留意しましょう。
郵送で取得
申請場所 |
取得時に必要なもの |
取得にかかる料金 |
取得可能日数 |
---|---|---|---|
郵便 |
マイナンバーカードや運転免許証などの身分証明書のコピー/保有個人情報開示請求書/住民票/往復で使用する封筒 |
300円(手数料)/住民票取得費200~300円/往復の郵送費 |
2週間~1ヶ月 |
郵送での取得の場合、身分証明書のコピーと保有個人情報開示請求書に加え、住民票の送付が義務付けられています。そのため、市区町村役場あるいはコンビニでの住民票の取得と、取得費用200~300円が別途必要です。
また、住民票は個人番号の記載がないものとしているため、取得時には「個人番号の記載なし」で取得するようにします。万が一記載があるものを取得してしまった場合には、個人番号の部分を黒塗りにするなどマスキングを行ってから送付をしましょう。
なお、開業届の控えは特定個人情報に該当するため、税務署から返送する際は簡易書留によって行うとしています。そのため、返送用の封筒には簡易書留サービスの料金を加えた切手を貼付するようにしましょう。
まとめ
ファクタリング利用時の必要書類は、ファクタリング会社によって異なりますが、
売掛の発生、取引内容、入金状況などが確認できる書類や、利用者の本人確認、信用力を証明するための書類が求められます。
<ファクタリング利用時に求められる書類>
目的 |
書類名 |
取得場所 |
取得に係る日数 |
---|---|---|---|
売掛金の発生確認 |
請求書等 |
自分 |
1日~ |
売掛金の入金確認 |
通帳コピー |
自分 |
1日~ |
売掛先との取引確認 |
基本契約書等 |
自分 |
1日~ |
本人確認書類 |
身分証明書 |
自分 |
1日~ |
印鑑証明書 |
市区町村役場・法務局 |
1日~1週間前後 |
|
利用者の信用確認 |
決算書や確定申告書 |
自分 |
1日~ |
商業登記簿謄本 |
法務局 |
1日~1週間前後 |
|
開業届 |
税務署(再発行) |
2週間~1ヶ月ほど |
書類の中には市区町村役場や行政機関などで取得が必要なものがあり、取得に2週間以上かかる書類もあります。取得にかかる日数を参考に優先順位を決めて準備を行いましょう。
ファクタリングは売掛債権の売買を実施するための契約であるため、請求書だけでの利用や
通帳コピーなどの入金が確認できる書類が提出できないという場合には利用できない可能性があります。
ファクタリングを利用する際は、利用するファクタリング会社の情報を確認し必要な書類を
準備してから申し込みを行うようにしましょう。
また、一時的な資金調達としての利用には適していますが、手数料なども発生するため継続的に利用することで資金繰りが悪化する可能性もあります。
ファクタリングを利用する前に、融資や補助金など他の資金調達方法も合わせて検討しましょう。