資金調達
目安はいくら?資金調達額を方法別に解説
資金調達

事業には、起業や事業拡大などの重要な場面において、資金調達が必要となる時期があります。その際、事業者は「いくら調達すれば良いのか?」「相場はどのくらいなのか?」と悩むこともあるのではないでしょうか。
当記事では、資金調達の方法別に調達できる金額の目安を解説します。また、スタートアップやベンチャー企業向けに、事業ステージに応じた資金調達や金額の相場も紹介するので、資金調達を検討している人は参考にしてみてください。
資金調達方法別に調達額の相場を確認する
資金調達には、融資をはじめとした複数の方法があり、それぞれ調達できる金額の相場が異なります。自社の状況や資金調達の目的を加味しつつ、希望している金額をどの方法で調達できるのかを確認しましょう。
<資金調達方法と調達金額の目安>
資金調達方法 | 調達金額の目安 |
融資(日本政策金融公庫、銀行など) |
数百万円~数億円 |
出資(エンジェル投資家、ベンチャーキャピタルなど) |
数百万円~数十億円 |
資産の売却(不動産、機械設備、売掛債権など) |
数百万円~数億円 |
補助金、助成金 |
数十万円~数千万円 |
クラウドファンディング |
数十万円~数千万円 |
融資は、数百万円〜数億円規模の資金調達に適した方法です。融資額の目安は自己資金の3倍程度と言われているため、自己資金が200万円であれば600万円程度が調達可能と考えられます。
出資は、数百万円から数十億円規模の資金調達が可能です。急成長が見込まれるスタートアップやベンチャー企業であれば、エンジェル投資家やベンチャーキャピタルからの出資が有効な手段のひとつです。事業の成長フェーズによって数百万円〜数千万円規模の出資を受け、設備投資や開発費に充当できます。
資金調達方法によって調達可能な金額の相場は異なります。また、自己資金額や事業実績の有無など事業者の状況によっても変動するため、各方法の特徴や条件を踏まえて適切な手段を選択しましょう。
融資
融資とは、金融機関から資金を借り入れ契約期間内に元金と利子を返済する方法です。事業者向けの融資サービスの内容は多岐にわたり、それぞれに限度額が設定されていますが、利用者の状況によって実際に受けられる融資金額は異なります。
<融資の特徴と資金調達額の相場>
融資の種類<条件別> | 特徴 | 相場(目安) |
無担保融資 |
担保なしで借りられるが、金利が高く審査が厳しい傾向にある |
数百万円~3,000万円程度 |
有担保融資 |
不動産や資産を担保にして低金利で借りられる |
500万円~数億円 |
固定金利融資 |
金利が一定で、返済額が変わらない |
500万円~数億円 |
変動金利型融資 |
市場金利に応じて金利が変動し、返済額が変わる |
500万円~数億円 |
短期融資(1年以内) |
1年以内の短期間の資金調達に適している |
100万円~5,000万円 |
中期融資(1年~5年) |
1年~55年の設備投資や新規事業向けの資金 |
500万円~数億円 |
長期融資(5年以上) |
5年以上の長期返済が可能な事業拡大向け融資 |
1,000万円~10億円 |
融資の種類<用途別> | 特徴 | 相場(目安) |
運転資金融資 |
仕入れ費、人件費、広告費などの事業運営資金 |
100万円~1億円 |
設備資金融資 |
店舗・機械設備・ITシステムなどの資金 |
数百万円~数億円 |
事業承継融資 |
事業承継の際の資金確保を支援 |
数百万円~数億円 |
災害緊急時融資 |
災害や経済危機時に提供される緊急融資 |
100万円~1億円 |
たとえば、日本政策金融公庫総合研究所の「新規開業実態調査」によると、2014年〜2024年における「金融機関等からの借り入れ」の平均は約800万円程度でした。過去10年間のデータを見ると融資額は700万円台から900万円台の範囲で推移していますが、あくまでも平均値であり、実際の融資額は300万円から1,000万円程度と幅があります。
また、運転資金の借入れ額においては、月商の3ヶ月分が目安とされています。たとえば、月商が125万円の事業者であれば375万円程度の借り入れが適正な範囲と考えられます。ただし、事業の成長フェーズや信用力によって借入可能額には差が生じるため、具体的な資金計画に基づいた融資額の検討が必要です。
中小企業や個人事業主が金融機関から実際に借り入れできる金額は、事業の内容や自己資金額、金融機関の審査基準などによって変動します。融資の審査を有利に進めるためには、借入れ額の3割程度の自己資金を準備しておきましょう。
なお、表で紹介した相場はあくまで目安であり、実際の借入可能額は事業者の財務状況や金融機関の審査基準などによって大きく異なります。融資を検討する際は、詳細な条件や自分がいくら借りれるのかを金融機関に確認してください。
出資
出資とは、投資家や企業から資金を提供してもらい、株式を譲渡する資金調達方法です。返済義務のない資金を調達できる一方で、出資者の意向によって経営の自由度が制約される可能性もあります。
<出資の特徴と資金調達額の相場>
出資の種類 | 概要 | 相場(目安) |
エンジェル投資家 |
個人投資家が将来的なリターンを期待して成長性の高い企業に出資する |
約500万円 |
ベンチャーキャピタル(VC) |
投資会社が上場や事業売買による利益を目的に成長企業に出資する |
数千万円~数億円 |
コーポレートベンチャーキャピタル(CVC) |
事業会社が事業シナジーの創出を目的にスタートアップやベンチャー企業に出資する |
数億円~数十億円 |
投資型クラウドファンディング |
個人投資家が投資リターンと企業成長支援を目的にオンラインプラットフォームを通じて企業に出資する |
数百万円~数千万円 |
RIETI独立行政法人経済産業研究所の資料「日本の起業家と起業支援投資家およびその潜在性に関する実態調査」によると、日本のエンジェル投資家による1件当たりの平均投資額は約508万円とされています。
また、財務省の資料「我が国スタートアップ企業の 資金調達動向について 」によると、2023年度のベンチャーキャピタル等による年間投資金額は2,669億円となり、1社あたりの投資額も年々増加する傾向にあります。
投資型クラウドファンディングは、個人投資家からの小口出資を募る手法として注目されており、1件あたりの調達額は数百万円〜数千万円程度です。スタートアップや中小企業が事業の初期段階の資金を集める際に活用される事例が増えています。
出資による資金調達は、投資家の種類や事業の成長フェーズによって調達額が異なります。また、投資家によっては単に資金だけでなく経営のアドバイスや支援を受けられる場合もあるため、支援の内容や関与の度合いを考慮し自社に適した投資家や出資企業を選びましょう。
資産の売却
資産の売却とは、企業が保有する資産を現金化して資金調達を行う方法です。不動産や設備などの固定資産を売却する方法に加え、売掛債権をファクタリングで早期に資金化する手段もあります。
<資産売却の特徴と資金調達額の相場>
資産売却の手段 | 概要 | 相場(目安) |
ファクタリング |
企業が保有する売掛債権をファクタリング業者に売却し、早期に現金化する方法 |
数百万円~数千万円 |
固定資産の売却 |
不動産や設備、車両などの固定資産を売却して資金を調達する方法 |
数百万円~数億円 |
ファクタリングは、企業が取引先からの未回収の売掛金を売却し、通常の支払いサイトを待たずに資金を得ることができる方法です。取引先の信用力や債券の種類、契約の方式によって売却できる金額や手数料が異なるため、利用前には十分な比較検討が必要です。
たとえば、企業間取引で1,000万円の売掛金をファクタリングによって調達した場合、手数料が10%ならば900万円、手数料が20%ならば800万円を調達できることになります。
固定資産の売却は、企業が保有する不動産や設備、車両などを現金化する方法です。事業縮小時や設備更新の際に有効な手段となりますが、売却価格は市場の需要や資産の状態に影響する点に留意する必要があります。
たとえば、飲食店の規模拡大に伴い厨房を一新する際、これまで使用していた厨房機器を売却するとします。手数料が10%の場合、厨房機器の資産価格が500万円であれば、手数料を差し引いた450万円の資金を調達できます。
資産の売却による資金調達では、企業の財務状況や資産の種類によって調達可能な金額が異なります。適正な査定やタイミングを見極めて、より有利な資金調達を目指しましょう。
補助金や助成金
補助金や助成金は、国や地方自治体などの公的機関が特定の事業活動を支援する目的で交付する支援金です。返済義務がないため企業の資金負担を軽減できますが、交付を受けるためには申請要件を満たして審査に通過する必要があります。
<補助金や助成金の特徴と資金調達額の相場>
補助金や助成金の種類 | 概要 | 相場(目安) |
設備投資支援 |
事業拡大や生産性向上のための設備購入や改修を支援 |
数百万円~数千万円 |
雇用・人材育成支援 |
人材採用や研修費、働き方改革を支援する制度 |
数十万円~数千万円 |
創業・新規事業支援 |
新規事業の立ち上げや創業費用を補助 |
数十万円~数百万円 |
IT導入支援 |
業務効率化のためのITツール導入費用を補助 |
数十万円~数百万円 |
研究・技術開発支援 |
技術開発、イノベーション創出のための研究費用を支援 |
数百万円~数億円 |
補助金や助成金を活用することで、事業拡大や設備投資にかかる費用を抑えながら成長戦略を推進することが可能です。たとえば、製造業が1,800万円で新しい生産ラインを導入する際に、総投資額の2/3にあたる1200万円の補助を受けると、自己負担は600万円に抑えられます。
ただし、補助金や助成金は原則として後払いのため、補助事業を実施するための資金は事前に用意しておく必要があります。申請の際には事業計画書や財務資料の提出が求められ、受給後も適正な用途で資金を使用したことを証明する報告義務があることを留意しておきましょう。
なお、補助金や助成金は公募が不定期の場合や公募期間が短い場合もあるため、国や地方自治体の公式サイトにて最新情報を確認してください。
クラウドファンディング
クラウドファンディングとは、インターネットを通じて不特定多数の支援者から資金調達する方法です。クラウドファンディングには資金調達の目的や事業内容に応じて「購入型」「寄付型」「投資型」などの種類があり、それぞれの仕組みや調達可能額も異なります。
<クラウドファンディングの種類と資金調達額の相場>
クラウドファンディングの種類 | 概要 | 相場(目安) |
購入型 |
支援者が商品やサービスのリターンを受ける代わりに資金を提供する |
数十万円~数千万円 |
寄付型 |
支援者が金銭的リターンを求めず、社会貢献目的で資金を提供する |
数万円~数千万円 |
投資型(株式型) |
支援者が企業の株式を取得し、将来的な成長に応じたリターンを得る |
数百万円~数億円 |
投資型(融資型) |
支援者が起業に資金を貸し付け、利息や元本の返済を受ける |
数百万円~数億円 |
たとえば、新商品の開発資金を調達する場合に購入型クラウドファンディングを活用し、製品の先行販売を通じて数百万円〜数千万円の資金を集めながら市場の反応を確認できます。
また、事業の成長資金を大規模に調達したい場合は、金融型クラウドファンディングを活用することで、数億円規模の資金調達を実現できる可能性もあります。
クラウドファンディングは、種類によって支援者の層や調達可能額が異なります。購入型や寄付型は一般消費者が支援者となるため比較的少額の調達が中心となりますが、金融型は投資家からの支援を受けるため大規模な資金調達が可能です。
クラウドファンディングの成功には、プロジェクトの魅力を適切に伝えることや、効果的なPR活動を行うことが不可欠です。事業の目的や資金調達額の目標に応じて適切なクラウドファンディングの種類を選択し、準備を進めましょう。
事業ステージ別に調達額の相場を確認する
事業の成長ステージに応じて、適切な資金調達方法や調達額の相場は異なります。事業の立ち上げ段階から成長、拡大期へと進むにつれて資金ニーズも変化するため、それぞれのフェーズに適した投資家や金融機関を選ぶことが必要です。
<事業ステージごとの資金調達額の相場>
事業ステージ | 特徴 | 相場(目安) | 主な調達方法 |
シード期 |
事業アイデアの検証段階。市場調査や試作品開発を行う |
100万円~3,000万円 |
|
アーリー期 |
プロダクトの開発、市場開拓を本格化して事業の成長を加速させる段階 |
数千万円~数億円 |
|
ミドル期 |
売上拡大、マーケットシェア獲得を狙う段階 |
数億円~10億円 |
|
レイタ―期 |
上場、事業の安定化、新規市場開拓などを推進する段階 |
10億円~ |
|
たとえば、シード期のスタートアップでは、プロダクトの試作開発や市場検証のために数百万円〜数千万円の資金調達が必要です。この段階では、創業初期の事業者を支援するエンジェル投資家からの出資や補助金、クラウドファンディングなどが有効な資金調達手段となります。
アーリー期に入ると、プロダクトの開発が本格化し、事業の成長を加速させるために数千万円〜数億円程度の資金調達が必要になります。この段階では、ベンチャーキャピタル(VC)による出資や日本政策金融公庫の融資などを活用しつつ、マーケティングやオペレーション強化を進める傾向にあります。
ミドル期に移行すると、売上拡大やマーケットシェアの獲得などのため、数億円〜10億円規模の資金調達が求められます。この段階では、ベンチャーキャピタルからの追加投資に加え、事業の信用力を活かして銀行融資や社債発行といった資金調達手段も選択肢に入ります。
レイタ―期では、新規市場開拓やIPO(株式上場)を視野に入れた事業展開のために10億円以上の大規模な資金調達が必要となる傾向にあります。この段階では、メガバンクの大口融資のほかM&Aによる企業買収や統合なども活用しながら、さらなる事業拡大を目指します。
事業の成長ステージに応じて最適な方法を選ぶことで、資金調達を円滑に進められます。また、各事業ステージに合わせて紹介した方法は、他のステージでも継続したり併用したりできる場合もあるため、自社の状況に合わせて利用できる方法を検討してみてください。
まとめ
事業に必要な資金をいくら調達できるのか知りたい場合は、資金調達方法ごとの相場や事業ステージごとの相場を確認してみましょう。資金調達手段によって調達可能な金額や特徴が異なるため、自社の状況に適した方法を選ぶことが大切です。
たとえば、融資は金融機関からの借入であり、数百万円〜数億円の調達が可能ですが、信用力や事業実績によって融資可能額が異なります。出資は投資家や企業から資金提供してもらう方法であり、数百万円〜数十億円の調達が可能ですが、投資家による経営への介入を考慮する必要があります。
クラウドファンディングや補助金などで支援金を受け取る方法では、数十万円〜数千万円程度の資金調達が見込めますが、事業計画やプロジェクト作成などの事前準備が欠かせません。資産を売却して現金化する方法では、数百万円から数億円を得られる可能性がありますが、手数料を考慮する必要があります。
どの方法による資金調達でも、希望する金額を確保するためには事業計画の策定や審査基準の確認、必要書類の準備などが必要です。調達額の相場はあくまで目安であり、事業の状況や審査結果などにより変動するため、複数の選択肢を比較検討してみてください。
この記事を書いたライター

ソラボ編集部
資金調達の可能性を無料で診断
8,000件の資金調達実績を持つSolaboの専門家が、融資や補助金など、事業課題に合わせた資金調達方法を提案します。
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