資金調達にかかる期間に違いがある
ファクタリングと融資は、審査にかかる時間の長さが異なるため資金調達にかかる期間に違いがあります。
<資金調達にかかる期間>
ファクタリング | 融資 |
---|---|
手続きがスムーズなら数日で入金 | 利用状況によっては入金までに1ヶ月以上 |
売掛債権の売買であるファクタリングは、売掛債権の回収に関する審査が軸となるため、審査にかかる時間が短い傾向にあります。売却する売掛債権の内容にもよりますが、手続きがスムーズに進めば数日で資金調達が可能になります。
一方で資金の貸付である融資は、利用者の信用情報や決算状況などの審査が軸となるため、審査に2週間前後の期間を要します。融資制度や融資のタイプにもよりますが、返済能力に加え利用目的なども問われるため、利用時の会社の状況によっては入金までに1ヶ月以上かかる場合があります。
なお、ファクタリングと融資どちらにおいても、審査の際に書類不備などがあった場合には審査にかかる時間が長引くおそれがある点に留意しましょう。
調達できる金額に違いがある
ファクタリングと融資は、提供するサービスが異なるため調達できる金額に違いがあります。
【調達できる金額】
ファクタリング | 融資 |
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売却する売掛債権の金額が上限 | 融資制度ごとに設けられた限度額が上限 |
ファクタリングで売却する売掛債権は、取引先との間で金額が確定しているものであるため、対象となる売掛債権の金額が調達できる上限です。そのため、金額の大きい売掛債権がない限りは大きな資金を得ることはできません。
一方で融資は、利用する金融機関のサービスや融資制度などによって限度額が異なるため、申込を行うサービスや融資制度の限度額が調達できる上限です。ただし、審査状況などによっては、借りられる金額の上限が限度額よりも低くなる可能性があります。
したがって、調達したい資金が保有する売掛債権の金額相当であれば、ファクタリングを利用することで早期資金化が可能になりますが、多額の資金を必要とする場合には限度額が幅広い融資を検討するとよいでしょう。
利用時に発生するコストに違いがある
ファクタリングを利用する際は手数料が、融資を利用する際は利息が発生します。
【利用時に発生するコスト】
ファクタリング | 融資 |
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買取手数料や事務手数料など | 利息や事務手数料など |
ファクタリングの買取手数料は、売掛債権を買い取ることへの対価として発生し、売掛債権の金額に手数料率を乗じて求められます。手数料率には、債権の信用調査料や回収リスクなどが考慮され、契約の際に売掛債権の額面から差し引かれる形で徴収されます。
一方で、融資の利息は、資金を借り入れることへの対価として発生し、支払う利息額は、借入金額の残高に金利や借入期間を乗じて求められます。金利は金融機関や借入期間、融資を受ける企業の信用力によって異なりますが、返済をする際に返済額に上乗せをする形で支払います。
なお、買取手数料と利息では、買取手数料の相場の方が割高傾向にあります。ファクタリング事業推進協会によると、手数料相場は2~15%となっており、銀行融資の貸出平均金利0.5~1.6%に比べ高い傾向にあるため、一時的な利用に留めることで手数料負担を抑えることが可能となるでしょう。
利用時の審査対象に違いがある
ファクタリング利用時の審査対象は、売掛債権と債権の支払い者である売掛先企業です。一方で融資は、融資を利用する企業が審査の対象になります。
【利用時の審査対象】
ファクタリング | 融資 |
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売掛債権や売掛先企業 | 融資を利用する企業 |
ファクタリングの審査では、買い取る売掛債権が支払期日にきちんと回収できるかを重要視します。売掛債権の支払い者に返済能力があるか、売掛債権が回収不可能な債権ではないかなどが審査されるため、審査の対象は売掛先企業や売掛債権となります。
一方で融資の審査では、貸し付けた資金が貸し倒れや延滞なく返済されるかを重要視します。貸付先企業の財務状況や経営実績、担保の有無などから返済能力があるか、融資を利用する目的が適切であるかなどが審査されるため、審査の対象は融資を利用する企業となります。
したがって、会社の経営状況に応じて利用しやすい調達手段を検討すると良いでしょう。ただし、ファクタリングと融資のどちらにおいても審査対象の返済能力を確認されるため、審査対象が債務超過に陥っている、税金などの滞納や未納がある場合は利用できない可能性が高くなる点に留意しましょう。
契約の結び方に違いがある
ファクタリングは売掛債権の譲渡契約を結びますが、融資は金銭の貸借契約を結びます。契約の結び方が異なるため、返済の有無や担保、保証人の有無に違いが生じます。
【契約名称】
ファクタリング | 融資 |
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債権譲渡契約または債権売買契約 | 金銭貸借契約 |
ファクタリングでは、売掛債権の売買によって債権の権利が売却先に譲渡され移転することから、契約時には債権譲渡契約または債権売買契約を結びます。売却先から金銭の貸付を受けるわけではないため、契約時に担保や保証人を設けることや現金化した資金を返済する必要はありません。
一方融資では、金銭の貸し借りを行うことから、契約時には金銭貸借契約を結びます。融資先から金銭の貸付を受けるため、必要に応じて会社の信用力を補うための担保や保証人を設けることもあり、借り入れた資金は返済をする必要があります。
なお、売掛債権を担保にして金銭の貸付を受ける売掛債権担保融資というものがあります。ABLと呼ばれるもので、売掛債権を活用して資金調達を行うことはファクタリングと同じですが、性質は融資のように借入であるためファクタリングと混同しないように注意をしましょう。
ファクタリングと融資の違いまとめ
【ファクタリングと融資の違い 一覧】
- 資金調達にかかる期間
ファクタリング | 融資 |
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数日で調達が可能になる | 利用状況によっては調達に1ヶ月以上かかる |
- 調達できる金額
ファクタリング | 融資 |
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売却する売掛債権の金額が上限 | 申込を行う融資制度の限度額が上限 |
- 利用時に発生するコスト
ファクタリング | 融資 |
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買取り手数料 契約の際に売掛債権の額面から差し引かれる形で徴収される | 利息 返済をする際に返済額に上乗せする形で支払う |
- 利用時の審査対象
ファクタリング | 融資 |
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売掛債権や売掛先企業 | 融資を利用する企業 |
- 契約の結び方
ファクタリング | 融資 |
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債権譲渡契約または債権売買契約 | 金銭貸借契約 |
- 担保や保証人の必要性
ファクタリング | 融資 |
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なし | 必要な場合がある |
- 調達した資金の返済義務
ファクタリング | 融資 |
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なし | あり |
売掛債権の売買であるファクタリングは、売却する売掛債権の金額が調達可能額となり、金銭の貸付でないことから担保や保証人、返済の必要はありません。また、売掛先企業や売掛債権そのものの信用度が高く、手続きがスムーズに進むことで早期に資金を受け取ることが可能です。
一方で、資金の貸付である融資は、利用する融資制度等の限度額が調達可能額となり、融資制度や利用者の状況などによっては担保や保証人が必要となり、借りた資金の返済も発生します。また、融資利用者の信用力を確認するための審査が実施されることから、入金までにかかる時間はファクタリングよりも長くなります。
ファクタリングは、突発的な支出に対する対応としての利用には向いていますが、継続的に利用することで資金繰りが悪化する可能性があります。長期的な資金繰りの改善や事業投資などを目的とする場合は融資の利用を検討しましょう。