日本政策金融公庫から融資を受ける場合、書類提出だけではなく、公庫の担当者との面談も必要です。この面談を「苦手」とコワがる方もいらっしゃいます。確かに、面談は事業資金を借りられるかの一種の「試験」のようなものかもしれません。
しかしながら、日本政策金融公庫の面談は「厳しくない」と言っても過言ではありません。
今回の記事では、日本政策金融公庫の面談が厳しくないと言い切れるその根拠と、審査落ちを防ぐためのテクニックについてご説明したいと思います。
1.日本政策金融公庫の面談が厳しくないと言える、3つの理由
当サイトを運営している株式会社SoLaboは、月間で融資に関するサポートを80件以上実施しています。(問い合わせのみを除く)そして、日常的に日本政策金融公庫の融資担当者の方と連絡を取り合っています。その上で、以下の理由から「日本政策金融公庫の面談は、一般のイメージのように厳しいものではない」と感じています。
①融資担当者は「落とそうとしていない」から
まず知っていただきたいのは、日本政策金融公庫は日本政策金融公庫は政府が100%出資している政策金融機関(政府系金融機関)だということです。日本政策金融公庫は株式が発行されている会社ではありますが、その株の100%は常に日本政府が保有している特殊会社です。
と言うことは、民間企業のように「自社の利益が第一優先」ではないということです。そもそも日本政策金融公庫が発足した理由のひとつは、「民間金融機関からお金を借りられない日本の中小企業を救済する=融資する」ことです。
ですので、日本政策金融公庫の融資担当者は融資を積極的に通そうとしています。
②いわゆる圧迫面接ではないから
今は消えたかもしれませんが、その昔、就職時の面接で「圧迫面接」なる言葉がよく聞かれました。新卒の就職希望者に対して「キミ、まだ内定もらってないの?」「うちの会社、向いてないんじゃないの?」などの意地悪な質問を浴びせる人事担当者がいたようです。
日本政策金融公庫の面談では、そのような質問はされません。主に、事業内容についての説明と資金繰りがうまくいくかの説明を求められます。「ラーメン屋を開業されるんですね?ラーメン屋としてのご経験はどれぐらいありますか?」「〇〇年に開業された際の資金は、どこから調達されたのですか?」などなど。あくまで融資担当者として「当たり前」の質問はしますが、意地悪な質問はまずありません。但し、事業内容や資金繰りに自信のない方は、意地悪な質問に感じるのかもしれません。
③日本政策金融公庫の面談を受けて「厳しい」と感じた人が、知恵袋で拡散しているだけだから
日本最大のポータルサイトが提供している「知恵袋」は、生活上のさまざまな疑問を投稿できる便利なツールです。しかし、時には閲覧することで不安になってしまう側面もあります。
例えば、「国金(日本政策金融公庫のこと)の面談で、厳しいかも、、と言われ面談終了、、」というタイトルの投稿や「今日、面談があったんですが、終わり際に今日聞いた内容では厳しいかもしれない、、と言われました。」などの投稿が見受けられます。
ネット上では、マイナスの要素を持つ投稿はたちまち拡散されてしまいます。面談の内容はひとによって異なります。日本政策金融公庫の面談を厳しいと感じる方もいますが、逆に「思ったよりも簡単な質問しかされなかった」と感じる方もいるのです。他人の投稿をみて不安になるより、今できることをして最善を尽くしましょう。
2.日本政策金融公庫の面談で審査落ちを防ぐコツとは
では、ここからは日本政策金融公庫の審査で落とされないためのコツをご紹介いたします。
①書類に記入する数字の根拠書類を持参する
一番重要なポイントですが、日本政策金融公庫の融資の審査に通りたいのであれば、きちんと事業で利益を上げていけること、きちんと返済できるという根拠を書類で証明することです。創業計画書や事業計画書では、今後の見通し(毎月の利益)の数字を記入する欄があり、融資担当者はここを必ずチェックします。
契約書、見積書や発注書が売上の根拠として証明できる書類となりますので、取引先と交渉し、準備しておきましょう。
書類として準備するのが難しい場合があります。例えば、飲食店の場合、売上の根拠となる書類を出すのは難しいと言えます。そこで、平均顧客単価×席数×回転率で1日の売上を算出することができますが、メニュー表を準備した上で「今までの飲食店での店長経験により算出した数値で作成しています」と金融機関の担当者に伝えることで、十分な売上根拠として納得してもらえるでしょう。
②遅刻は厳禁/土日祝は面談ができません
事業資金を借入できるかの大切な面談です。当日の遅刻は絶対にしないようにしましょう。面談自体は1~2時間で終わります。原則、面談の前後には他のアポは入れず、面談に集中できるようにしましょう。
【日本政策金融公庫の面談で遅刻しないために】
- 当日までに、日本政策金融公庫の支店への道のりを実際に歩いて所要時間を確認する
- 人身事故があることも想定し、迂回路の場合の所要時間も計算して早めに家を出る
- 日本政策金融公庫との面談時間の30分前には到着し、近くの喫茶店で心を落ち着かせて、トイレも済ます
また、仕事でどうしても平日に面談を受けられない!という方もいらっしゃるかもしれません。
しかし、日本政策金融公庫の面談は平日の9時~17時(16時スタートが最終受付)の間でしか行われません。事前に仕事仲間に相談するなどして、面談に行けるようなスケジュールを組みましょう。また、面談を直前ですっぽかしたりリスケジュールしたりすると、悪い印象を与えてしまいますので、指定された日に行けないのであれば、早めに担当者まで連絡をしましょう。
③持参物を忘れないこと
日本政策金融公庫への申込みは、まず最寄りの支店か事業資金相談ダイヤル(0120-154-505:平日9時~17時)に電話をすることからスタートします。
電話相談をして、そのあとに「借入申込書」などの書類一式を提出して受理されると、日本政策金融公庫から「お持ちいただく資料」という内容を含む郵送物が届きます。
この持参物は、申し込む人によって異なります。例えば、以下のような書類があります。
【日本政策金融公庫の面談で持参する書類(例)】
創業計画書(創業2期以内の方)
または企業概要書 |
実印 | 運転免許証などの本人確認書類 |
源泉徴収票
または決算書 または確定申告書 |
事業に必要な許認可・資格を証明する書類(許認可・資格が必要な事業の場合) | 自己資金を証明できる通帳などの書類 |
住宅ローンの支払い残高が分かる書類(住宅ローンを組んでいる方の場合) | 店舗を借りる方の場合、契約予定の不動産賃貸の仮契約書など | 店を開く場合は、出店予定場所の地図をプリントアウトしたもの(GoogleMapでOK) |
面談の当日に忘れ物があると、ルーズな印象を与えてしまうだけでなく審査のスケジュールもずれ、着金にも影響を与えます。面談当日に準備できない書類に関しては後日提出でも問題ありませんが、なるべくは面談日までに準備するようにしましょう。
ちなみに、持参する必要書類の中で最も大切なのは「創業計画書」(または事業計画書)と「通帳」だと言われています。なぜかと言うと、事業の計画書がしっかりしたものであれば借りたお金を返済できますし、通帳でコツコツと自己資金を貯めてきた人物であれば、借りたお金を返せる人物とアピールできるからです。
当サイトでも創業計画書と通帳に関する多くの記事を公開していますので、ぜひ併せてご参照ください。
創業計画書を作ろう!運転資金欄の書き方と調達金額を決めるポイント
④面談のイメージトレーニングをしておく
緊張すると、普段ではスラスラ言えることが、つい言えなくなってしまうこともよくあります。
日本政策金融公庫の面談では以下のような質問をされますので、事前にご家族や友人に融資担当者になってもらい、イメージトレーニングをしておきましょう。
【日本政策金融公庫の面談で聞かれる質問集】
(簡単レベル)
- 創業動機は?
- 事業経験をご説明ください
- 自己資金はどのようにして貯めてきましたか?
(少し難易度の高いレベル)
- もっと低い金額で開業できませんか?
- 売上が出ない場合は、どうやって事業を継続していきますか?
面談時に聞かれる質問に関しては、以下の記事をぜひご参照ください。
⑤服装はスーツがあればスーツで。なければ清潔感のある服装で
社会人同士がビジネスの話をする場ですので、面談に行く際の服装はできればスーツがベストです。
けれども、美容師や整骨院などの事業をされていて、「日常的にスーツを着ないので持っていない」という方もたくさんいらっしゃいます。
そんな方は、普段お仕事をしている際の服装でも特に問題ありません。シワや汚れがなく、清潔感があればOKです。
⑥通帳に貯めてある自己資金は、「自分」が「半年~1年以上」「コツコツ」貯めたお金であること
(1)なぜ自己資金が必要なのか
日本政策金融公庫の創業融資(新創業融資制度)の場合、自己資金要件というものがあります。
自己資金要件
「新たに事業を始める方、または事業開始後税務申告を1期終えていない方は、創業時において創業資金総額の10分の1以上の自己資金(事業に使用される予定の資金をいいます。)を確認できる方」
なぜ自己資金要件があるのでしょうか。
日本政策金融公庫の融資では、事業に必要な資金を100%公庫から借りることは原則NGです。どういうことかと言うと、ピザ屋さんを開く資金が1,000万円必要だとして、1,000万円まるまるを日本政策金融公庫から借りるのではなく、せめて100~300万円以上の自己資金を用意してからピザ屋さんを開いてね、というのが日本政策金融公庫のスタンスです。そのため、申し込む人には一定以上の自己資金の準備を求めています。
また、この要件はあくまで最低このくらいの自己資金は準備してくださいというものであり、実際の審査においてはより多くの自己資金がないと難しいというのが現状です。つまり、どれだけ自己資金を準備しているのかが審査においてかなり重要になります。
(2)通帳で自己資金の確認を行う
いくら口頭で「これだけの自己資金を準備しています」と金融機関の担当者に話しても、担当者は本当にあるのかどうか判断ができません。そこで、通帳で自己資金の確認を行います。
(3)担当者は通帳のどこを見ているのか
面談の際には普段生活で使用している通帳、自己資金が確認できる通帳の原本を持っていく必要があります。そして半年以上前の入出金の履歴を見られ、家賃・光熱費・クレジットカードの支払が期日通りされているか、借入があるかどうか(期日通り返済されているか)、創業計画書に記載されている自己資金以上の残高があるかどうかを確認します。
もし提出する通帳に関して不安や疑問がありましたら、SoLaboにご相談ください。SoLaboは日本政策金融公庫からの融資サポートをしておりますので、どのような通帳が融資を受けやすいかなど、事前に確認いたします。
3.これが理由?!日本政策金融公庫で審査落ちするケースとは
①こんな通帳はダメ
まず家賃などの諸支払が期日にできていないことが確認できる通帳です。担当者はきちんと返済をしてもらえる方に融資をしたいと考えています。そのため、家賃などの支払いができていないと、融資に関しても返済が遅れてしまう(返済してもらえない)のではないかという可能性が高いと判断します。
次に融資を申し込む直前に現金で入金されており、それを自己資金とする通帳です。担当者としては本人のものかどこか(誰か)から借りてきたお金かを判断できず、いわゆる見せ金という可能性も考えられるため、出所を証明できない限り自己資金として認めてもらうことはできず、審査落ちになる可能性があります。
②売上の根拠となる顧客リストが不十分
美容師・クリーニング屋・整骨院経営者・エステティシャンなど、多くの個人事業主が融資を利用しているのが、日本政策金融公庫です。基本的には、無担保・無保証人で2.5%程度(2020年9月現在)の金利で借入できますので、「絶対に返済できるよ」という根拠となる証拠書類を提出しなければいけません。例えば、美容師さんの場合はあなたを指名してくれる顧客リストが証拠書類となります。
いくら口頭で「これだけのお客様に指名してもらっています」と言っても、金融機関の担当者はそれが本当なのか判断することができません。顧客リストを準備することで十分売上の根拠として納得ができるため、顧客リストがあるかないかで評価は大きく変わります。
けれども、「お客さんの名前が書いているリストを、勝手に融資の証拠書類として提出しちゃっていいの?」と、中には顧客リストの提出に二の足を踏む方もいるようです。
けれども、日本政策金融公庫の公式ホームページでは「特定個人情報の保護方針」が掲載されており、個人情報を適正に収集して目的以外の利用をしないというポリシーが掲げられています。
【引用:日本政策金融公庫|特定個人情報等の安全管理に関する基本方針】
そのため、日本政策金融公庫があなたの提出する顧客リストを悪用するとは考えられません。万が一、悪用すればそれは大問題になります。
どうしても顧客リストの提出で気になる方は、「電話番号は省いてもいいですか?」などの質問を事前にし、お客様の個人情報をできるだけ最小限にする工夫をしましょう。
③弱気になりすぎたり、威張りすぎたり、キレてしまった
お金が借りられるかどうかを気にして、ついつい挙動不審になってしまう方も中にはいらっしゃいます。
しかし、日本政策金融公庫はあなたが安定して事業を継続できる方なのかを判断しようとしています。
そのため、できるだけ自然体で社会人として常識のある言動をすることが望ましいと言えます。
4.面談が終わったあとの流れとは
面談が終了し無事審査に通過したら、状況によりますが、2~3週間ほどで契約書類が入った封筒が郵送され、返送して日本政策金融公庫に到着後3営業日であなたの指定した銀行口座へ振り込まれます。そのため、早くお金を振り込んで欲しい場合は、あなたがなるべく早く書類を返送する必要があります。
詳細については、以下の記事もぜひご参照ください。
残念ながら審査に落ちてしまった方は、6か月間は日本政策金融公庫へ申し込むことは控えましょう。落ちた理由にもよりますが、理由が解消していない限り再度申し込んだとしても、「前回の審査に落ちた理由が、まだ改善できていませんよね」と、断られてしまうでしょう。落ちた理由が自分で分からなければ、当サイトのような融資サポート業務をしている専門家へ相談するのも、ひとつの方法です。
まとめ
日本政策金融公庫の審査自体は厳しいものではなく、やるべきこと・当たり前のことをしっかりやっていれば、審査に受かる可能性が十分あると言えます。
審査を「厳しい」と感じる方の多くは、事業計画がしっかりしていなかったり、そもそも日本政策金融公庫の融資に申し込むための条件を満たしていない方(自己資金がない・少ない、事業経験が不十分)なのです。