賃貸で部屋を借りる際、多くの物件では家賃以外に保証人が必要です。最近では「保証人になってくれる人がいない」「頼みづらい」という方のために、保証人が不要の賃貸物件に人気があるようです。
そこで今回の記事では、保証人が必要な賃貸物件や公営住宅の特徴、無職の方でも利用できるかなどについてお話したいと思います。
1.保証人とは
①債務者を保証する
保証人とは、ある人が長期かつ高額なサービス契約を終結する際、万が一支払いなどの債務を果たせない場合に代わりに保証する人物を言います。
以下の図では、左の「債権者」が部屋を貸す大家さんやお金を貸す銀行、右上の債務者は契約する人、右下の保証人は債務者が債務を履行できない場合に保証する人を表します。
賃貸で部屋を借りる時の保証人ですが、親や親の代わりになる方にお願いするのが一般的です。ただし、保証人は誰でもなれるのではなく、条件としては以下を満たす社会的に独立している方が望ましいとされています。
- 年齢は65歳以下である
- 借主本人よりも安定的な収入がある
保証人については、当サイトの以下の記事もぜひ併せてご覧ください。
②保証人と連帯保証人の違い
保証人にはいくつか種類があり、まず「連帯保証人」があります。連帯保証人とは、債務者と同等の立場になる保証人であり、通常の保証人の場合は借金の取り立てにあっても「わたしではなく、Aさん(債務者)の方にまず取り立てにいってください」と言うことができます。(催告の抗弁権)
しかし、連帯保証人の場合はそのように逃げられる権利はなく、連帯保証人=債務者と同じ立場として扱われます。
賃貸物件のWebサイトの記載では、連帯保証人のことを省略して「保証人」として書かれていることがあります。
③3つの保証~物的保証では借金返済や身元保証の義務はない
その他の種類としては、賃貸物件を借りる際の保証人、融資を受ける際の連帯保証人、大学へ入学する際の保証人などあります。そして、各保証人により保証の内容も変化します。
【保証人ごとの保証の種類】
人的保証 | 物的保証 | 身元保証 |
家賃支払いなどの債務を債務者が履行できなくなった際に保証する人のこと | 債務者のために不動産などの財産を担保として差し出して保証すること | 一定のブランド力ある組織へ入所する際、組織へ迷惑をかけた際に入所者の身元を保証すること |
【例】子供が賃貸物件を契約する際に親が保証人になる | 【例】子供が契約する住宅のために親が持つ不動産の抵当権を担保として提供する | 【例】子供が大学へ入学する際、子供に万一のことがあった際に身元引受人となる |
この3つの種類の保証で最も責任が重い保証は「人的保証」です。次いで「物的保証」→「身元保証」の順番で責任が重い立場となっています。
2.保証人なし賃貸物件のデメリット!なぜ保証人が必要ない?
さて、通常であれば保証人が必要な賃貸物件で、「保証人なし」で契約できる物件があるのはなぜでしょうか?一般的には、以下の理由から「保証人なし」となっていると言われています。
【保証人が不要の一般的な理由】
- 駅から遠い物件だから
- 日当たりが悪い物件だから
- 築年数が長く古い物件だから(取り壊しが決まっている物件)
とは言え、保証人が不要の賃貸物件の数は東京だけでも36万戸あるため、保証人不要で掲載されている物件がすべて「訳アリ」物件だとは考えづらいです。
では、保証人不要の真の狙いはなんでしょうか?一つ考えられるのは、国内での賃貸物件の供給が過剰という事実です。
以下の画像は、国土交通省による平成30年度「住宅経済関連データ」からのグラフを加工したものですが、赤い枠で囲った部分が1943年~2013年までの空き家率となっています。
1968年には4.0だった空き家率が2013年には13.4と3倍以上に膨れているのがわかります。
さらに、いまは新型コロナ感染症の影響で「引っ越しを控える方」が増えています。予定されていた契約がキャンセルとなり、空き室が増えて困っているオーナーも少なくないのではないでしょうか。
そのため、一概に保証人不要の物件=怪しいという訳ではありません。優良物件の場合でも、オーナーさんが早く空きを埋めたくて「保証人不要」としている場合もあります。
そんな物件は人気なので空き部屋が多い地域でも即、売れてしまいます。保証人なしの物件には、「保証人に一筆書いてもらう手間が省ける」というメリットがあります。
3.保証人不要の公営住宅!デメリットはある?
①収入や貯蓄額が高額でないと契約できないUR賃貸
UR賃貸住宅は独立行政法人「都市再生機構」が管理している公的な賃貸住宅です。UR賃貸住宅の最大のウリは保証人・敷礼金がないことで、初期費用を安く抑えて契約することができます。
「保証人なしで敷金・礼金もなし?!いいじゃん!」と契約したがる方も多いのですが、契約時には以下の条件をクリアしてなくてはいけません。
- 契約者本人の月収が家賃の4倍以上または基準値(33万円または40万円)以上あること
(例.家賃8万円の場合、月収は32万円以上)
- 月収が基準値に満たない場合、家賃の100倍の貯金があること
(例.家賃8万円の場合、貯金800万円が必要)
保証人なし、というハードルの低さがありながら、収入や貯蓄額では20代前半ではとても支払えない条件となっています。
②公営住宅なのに保証人が必要!!廃止の動きが強まる
公営住宅は、自治体が運営する代わりに格安の家賃で入居できるという魅力があります。しかし、公営住宅の実に8割以上で「保証人が必要」であり、入居者自身が高齢者の場合は入居者の親が高齢者の場合に入れない、という問題が顕著になっています。
以下の画像は、国土交通省による平成30年度「住宅経済関連データ」からのグラフを加工したものですが、赤い枠で囲った部分が1943年~2013年までの空き家率となっています。
【参照:公営住宅に保証人廃止の動き 背景に身寄りない高齢者ら】
上記は、全国の公営住宅で保証人の廃止を決定・検討中する自治体と保証人存続を検討している自治体の図です。(2020年1月現在)全国で福島、埼玉、千葉、東京、神奈川、愛知、岡山、福岡の8都県で公営住宅の保証人を廃止する条例を決定しました。その一方、保証人制度を存続する意向を示している自治体もいまだ多く見受けられます。
公営住宅に住みたいけれど、保証人が立てられない。そんな方は保証会社を利用する、民間の保証人なしの物件を探してみる、保証人制度を廃止する自治体での入居を検討してみる、という打開策があります。
4.無職でも保証人不要の賃貸物件を借りられるのか
結論から言えば、きちんと家賃を毎月支払える能力があると証明できれば、無職の方でも賃貸住宅を借りることは可能です。
どのように支払い能力を示すのかと言うと、手っ取り早いところでは銀行口座の貯蓄額がわかる通帳のページコピーなどを提出することです。また、学校や会社にこれから所属する方は、そのことがわかす証明書(入学証明書など)も用意するとよいでしょう。
5.保証会社を利用するメリットとデメリット
保証人をつける代わりに保証会社を利用すれば、親に頭を下げずに賃貸物件を契約できます。保証会社についてみていきましょう。
①保証会社を利用するメリットとは
保証会社は審査に通ればだれでも保証人をつけることなく賃貸物件を契約できます。そのため、親がいない(亡くなってしまった)、親とケンカしている、などで保証人を立てづらい方には頼もしい制度です。
保証会社は自分で探す場合と不動産会社より「保証会社を使いますか?」と紹介される場合があります。最初から保証会社を使って物件を借りたい場合は、「賃貸 保証会社あり」などの検索ワードで物件を探すとよいでしょう。
②保証会社を利用するデメリットとは
保証会社を利用する際には収入や借金歴などをみる審査があります。審査に通ることで保証会社の保証を受けることができます。
また、無事に保証の審査に通過した場合でも、保証料を毎年支払わなければいけません。保証料の目安ですが、家賃の50~100%/1年が相場です。
6.保証人不要の代行とは?
保証会社とは別に、賃貸契約の保証人を代行してくれる「保証人代行サービス」という制度も近年では増えました。
基本的な考え方は保証会社を利用する場合と同様で、気になる物件で保証人をたてられない場合に保証人代行サービスを利用します。
保証人代行サービスは一般的な保証会社ではなく空き室率を改善する目的で不動産会社が直接サービスを提供しています。そのため、保証人代行サービスを提供している不動産会社自体が限定されており、保証会社よりはまだ制度的に普及率が高くありません。
まとめ
保証人不要の賃貸物件は昔は「訳アリ」物件を売るためのひとつのツールでしたが、今や公営住宅でも保証人の有無について論議されています。
日本では少子高齢化が進んでおり、保証人を立てられない方が増えているため、保証人代行サービスという新たな取り組みも注目されています。