資金調達
銀行融資を受けるときに通帳は見せる?提出時の注意点を解説
資金調達

銀行融資の申請時に必要書類のひとつである通帳の原本やコピーについて「通帳を見せるものなの?」と疑問に思う人もいるのではないでしょうか?融資審査では、通帳の内容から自己資金や資金管理の実態がチェックされるため、提出の仕方によっては評価を下げてしまうおそれもあります。
当記事では、銀行融資において通帳を提出する目的や見られるポイント、不利にならないための注意点を解説します。複数ある通帳をどの程度見せれば良いのかや、通帳レス口座を利用していて通帳を持っていない場合の提出方法も解説しているので参考にしてみてください。
通帳は自己資金や入出金履歴の正当性を示すために見せる必要がある
銀行融資を受ける際の必要書類として、通帳の原本またはコピーの提出が必要です。銀行が通帳の提出を求めるのは、申請者の自己資金の有無や資金管理の実態といった「お金の動きの正当性」を確認するためです。
融資審査では、単に残高の多さだけを見るのでなく、資金がどのように蓄積され、どのように使われているかという流れが重視されます。通帳の内容を通じて、自己資金の出所が正当であるかや、事業に必要な支出が適切に行われているかなどが判断されます。
たとえば、給与の振込や定期的な売上が入金されている履歴があれば、安定した収入の証明になります。継続的な入金が確認できることで、返済能力の裏付けとしても評価されやすくなります。
通帳は、銀行融資の審査において単なる残高の証明ではなく、資金の背景や信頼性を示す重要な資料です。複数の通帳を保有している場合は、自己資金の蓄積が確認できるものと、日常的な出入金が記録されたものの両方を準備しておきましょう。
なお、個人事業主の場合、毎月の公共料金や家賃の引き落としが確認できる通帳であれば、生活と事業の実態があると認識され信頼性が高まります。特に、通帳を事業用と分けている場合は経費の支出状況まで確認ができることで、審査担当者にも資金状況が正確に伝わります。
提出の目安は3か月~6か月分の記載内容
通帳を提出する際は、直近3か月〜6か月分の入出金履歴を用意しておきましょう。この期間は、自己資金の蓄積状況や日常的な資金管理の実態を把握するのに適しており、多くの金融機関で提出の目安とされています。
<通帳提出の目安>
融資の用途 | 提出を求められる期間の目安 | 確認される観点 |
運転資金 | 3ヶ月分程度 | 入出金の安定性や経費管理 |
設備資金 | 6ヶ月分程度 | 計画的な資金準備の履歴 |
創業資金 | 3ヶ月~6ヶ月分 | 自己資金の出所や準備状況の明確さ |
日常的な経費の支払いが中心となる運転資金の借入では、3か月分の通帳で足りる場合もあります。直近の売上や仕入れの動きなどが確認できれば、資金の流れを判断するには十分と判断されます。
設備資金のように高額な支出を伴う融資では、より長期の通帳履歴を求められる傾向にあります。審査担当者は、融資申請者がこれまでにまとまった資金をどのように準備してきたかを確認するため、6か月分の記録で資金計画や蓄積の過程を把握しようとします。
創業資金の申請では、3か月〜6ケ月分の通帳の提出を求められます。収入実績がない創業前の段階において、自己資金の出所や計画的な資金準備の有無を判断するために、各銀行が定める一定期間の蓄積履歴が重視されるためです。
通帳の提出は、3ヶ月〜6か月分の記録を目安に揃えておきましょう。ただし、資金の用途や申請内容によって銀行から求められる内容が異なる場合もあるため、あらかじめ担当者に確認しておくと安心です。
通帳の提出における注意点
通帳を提出する際は、記載内容によって融資審査の印象が大きく変わるため、事前に確認すべき注意点を押さえておきましょう。記帳内容から出所の不確定な資金や資金管理の実態が浮き彫りになることで、内容次第では「見せ金」や「管理のずさんさ」などを疑われるおそれがあります。
<通帳提出時に注意すべき項目>
項目 | 想定されるリスク |
直前の大口入金 | 見せ金と判断され、自己資金と認められない可能性がある |
用途不明の出金履歴 | 資金管理がずさんだと見なされる |
家族名義の通帳を提出 | 原則として本人の資金と見なされず評価対象外になることがある |
都合の良い記載履歴のみの通帳を提出 | 不都合な内容を隠していると疑われ、信用を損なう恐れがある |
記帳せずに保有している現金 | 通帳に履歴がないお金では自己資金として認められにくい |
たとえば、親族から一時的に借りた資金を面談直前に入金した場合、それが「見せ金」と受け取られた場合は審査で不利になることがあります。借入金は原則として自己資金と認められないため、こうした入金は資金の信頼性を損なう要因になりかねません。
また、支出の使途が不明な記載が目立つ通帳は、資金管理の甘さを印象づけてしまいます。その結果、融資後の返済能力にも不安があると判断される可能性があります。
通帳に記載された内容次第で、審査の印象や評価は大きく左右されます。提出前には最新の記帳を済ませたうえで、入出金の使途が分かるかどうかや不自然な大口入金などがないかを確認し、必要に応じて補足資料を準備しておきましょう。
直前の大口入金は見せ金と判断される
融資の直前にまとまった金額を通帳へ入金すると、「見せ金」と判断されるリスクがあります。銀行は資金の出所や蓄積の過程を重視するため、直前の不自然な入金は自己資金として評価されにくくなるためです。
たとえば、普段ほとんど使っていない口座に、面談直前になって急に大きな金額を入金した通帳を提出すると、意図的な調整を疑われる可能性があります。継続的な入金履歴が確認できない場合、資金が本当に自社の収益で蓄積されたものかどうかが判断しづらくなります。
融資審査では、提出された通帳に記載された資金のタイミングや継続性が重視されます。資金が急に増加したように見える通帳では、たとえ正当な理由があっても、審査担当者の警戒心を強めてしまう可能性があるため注意しなければなりません。
資金はできるだけ早い段階から通帳に積み立てておき、直前の入金は避けるように心がけましょう。やむを得ず直前の入金となった場合は、入金の理由を説明したメモや補足資料を添えるなど、意図を明確に伝える工夫が必要です。
用途不明な出金履歴は資金管理のずさんさを疑われる
通帳の中で使途の分からない出金が繰り返されていると、資金管理がずさんであると判断される可能性があります。銀行は融資後の返済能力を判断する際、日頃の資金の使い方にも注目しているためです。
たとえば、毎月何万円もの金額がATMから現金で引き出されているにもかかわらず、その使途が明らかでない場合、支出管理の甘さを疑われる可能性があります。支出の内容に一貫性がな場合や、明確に説明できない記載が多い通帳は、信用評価にマイナスの影響を与える恐れがあります。
融資審査では、収入だけでなく出金の記録も審査対象となります。仮に支出に正当な理由があったとしても、通帳の記載だけでは伝わらない場合、資金の扱い方に疑問を持たれてしまうことがあります。
支出の記帳内容に不安がある場合は、補足メモや出金リストなどで用途を可視化しておきましょう。面談の際に提出資料として用意しておくことで、口頭のみの説明よりも審査対応がスムーズになります。
家族名義の通帳では本人の資金と見なされない
親や兄弟など家族名義の通帳に入った資金は、たとえ申請者本人が管理していても自己資金とは認められません。融資審査では、通帳の名義と資金の所有者が一致していることが原則とされているためです。
たとえば、本人の開業準備費用を父親名義の口座に預けていた場合、銀行からは贈与や一時的な預け入れを疑われ、評価対象から外される可能性があります。資金の出所や管理権限が明確でないと、自己資金としての信頼性を欠いてしまいます。
ただし、配偶者名義の通帳に限っては、例外的に自己資金として認められる場合があります。夫婦は家計を共にしていると見なされやすいため、同意書や資金の使途を示す資料を添えることで、自己資金として評価される可能性があります。
本人以外の名義の通帳を提出する場合は、所有関係を明確にできる資料の準備が不可欠です。原則として本人名義の通帳を優先しますが、やむを得ず配偶者名義を提出する場合は、家計の一体性を説明できる体制を整えておきましょう。
都合の良い記載のみの通帳だけを出すと不信感を持たれる
銀行融資では、通帳の内容を通じて資金の流れや管理状況がチェックされます。複数の通帳を持っている場合に、見栄えの良い通帳だけを提出すると「他に都合の悪い情報があるのでは」と疑われる可能性があります。
たとえば、給与の振込がある通帳と生活費の支出が集中している通帳を持っている人が、前者だけを提出すると、出金履歴を隠していると受け取られる可能性があります。審査担当者は、収支のバランスや日常の資金の動きを見て信頼性を判断しているため、全体像が見えない通帳の提出は、不信感を招く可能性があります。
すべての通帳を提出する義務はありませんが、資金の全体像が伝わるような組み合わせで提出することが大切です。特に自己資金の蓄積状況や日常的な支出が確認できる通帳は、審査において信頼性を高めるための根拠となります。
内容を精査し、必要に応じて補足資料を添えることで、情報の透明性を確保しましょう。見せ方を操作するのではなく、実態を正しく伝える姿勢が評価につながります。
現金で保有しているだけでは自己資金と判断されない
融資審査において「タンス預金」のような通帳に記録のない現金は、原則として自己資金として認められません。銀行は、資金の出所や蓄積の経緯を確認できる証拠として通帳の履歴を重視しています。
たとえば、長年にわたり自宅で保管してきた現金があったとしても、預金記録がなければ、本当に保有しているかを証明する手段がなく、自己資金とは見なされない可能性があります。さらに、融資直前にまとまった現金を入金すると「見せ金」と誤解されてしまうおそれもあります。
そのため、タンス預金をしている場合は、できるだけ早めに口座へ入金し、通帳に履歴を残しておくことが基本です。数回に分けて入金したり、給与と併せて積み立てたりすることで、計画的な貯蓄として評価されやすくなります。
現金は通帳に記録がない限り、自己資金としての信頼性が低くなります。融資を検討している人はできるだけ早く預金に切り替え、必要に応じて入金理由を説明できるメモや資料を準備しておくことで銀行からの信頼性を高めましょう。
ネットバンクや通帳レス口座の場合の提出方法
ネットバンクや通帳レス口座を利用していても、融資審査には問題なく対応できます。審査で求められているのは通帳そのものではなく「資金の流れが確認できる資料」であるためです。
一般的な方法は、各銀行のマイページから取引明細をPDFやCSV形式でダウンロードし、印刷して提出します。操作方法や対応形式は銀行によって異なるため、事前に確認しておくと安心です。
たとえば、住信SBIネット銀行、楽天銀行、PayPay銀行などでは、過去の取引履歴を出力でき、3か月〜6か月分の明細を必要な分だけ取得することが可能です。融資審査で求められる提出期間を指定して、入出金の履歴を整えておきましょう。
通帳がないこと自体が不利に働くことはありませんが、明細の提出が不十分の場合は審査の遅れや評価の低下につながるおそれがあります。ネットバンクや通帳レス口座を利用している人は、早めに履歴の取得方法を確認し、必要な情報を確実に準備しておきましょう。
まとめ
銀行融資を申し込む際には、自己資金や資金管理状況を確認する手段として、通帳の提出が大切な役割を果たします。提出する通帳は、3か月〜6か月分の記録が目安とされており、融資の種類によって求められる期間や内容が異なります。
通帳の記載内容に不自然な大口入金や用途不明の出金があると、信頼性を損なうおそれがあります。事前に記帳内容を見直し、必要に応じて入出金の補足資料を用意しておくと安心です。
家族名義の通帳や、タンス預金のような通帳に記録のない現金などは、原則として自己資金と認められません。また、すべての通帳を提出する必要はありませんが、資金の全体像が伝わるように選んで提出することが評価につながります。
ネットバンクや通帳レス口座を利用している場合でも、PDFやCSV形式で取引明細を出力すれば提出資料として活用できます。紙の通帳がないこと自体は不利にはならないため、提出形式よりも「資金の出所を明確に示せるかどうか」が審査のポイントになります。
この記事を書いたライター

ソラボ編集部
資金調達の可能性を無料で診断
8,000件の資金調達実績を持つSolaboの専門家が、融資や補助金など、事業課題に合わせた資金調達方法を提案します。
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