ファクタリングは、売掛債権の早期資金化を行うことが可能ですが、利用にあたってはリスクも伴います。場合によっては、リスクが発生し損失や被害を被る可能性があるため、存在するリスクと対応策を事前に把握しておく必要があります。
当記事では、ファクタリングに存在するリスクと対応策を解説します。ファクタリングの利用を、リスクに影響されずに効果的なものにしたいという人は参考にしてみてください。
ファクタリングに存在するリスク
ファクタリングは、売掛債権の売却によって早期に資金調達を行うことができます。突発的な支出への対処や季節的な需要変動など、一時的な資金繰りの改善に効果的です。
一方で、ファクタリングには以下のようなリスクが伴います。
<ファクタリングに存在するリスク 具体例>
- 手数料の発生により得られる資金が減少する
- 売掛債権の弁済を求められる可能性がある
- 売掛先企業との取引関係が悪化するおそれがある
- 違法なファクタリング取引を行う悪徳業者が存在する
手数料の発生により得られる資金が減少する
ファクタリングには、手数料の発生により得られる資金が減少するリスクが存在します。ファクタリング利用時に発生する手数料が、売却する売掛債権の額面金額から差し引かれる形で徴収されるからです。
たとえば、100万円の売掛債権に対して手数料率が10%と見積もられた場合には、10万円の手数料が売掛債権の金額から差し引かれます。手数料の徴収により、ファクタリングで調達できる資金は90万円となります。
そのため、支払期日に売掛先企業から債権を回収する場合と比べると、会社の得られる資金は減少してしまいます。高額な手数料を徴収された場合には、かえって資金繰りを圧迫することになるため注意が必要です。
手数料率を抑えられるよう売却する債権や業者の選び方を工夫する
手数料により得られる資金が減少するリスクに対しては、手数料率を抑える工夫を行います。ファクタリング手数料は、売掛債権の額面金額に手数料率を乗じて求められるため、手数料率を抑えられれば差し引かれる金額を少なくすることが可能です。
たとえば、手数料率を抑える工夫として、回収リスクの低い売掛債権を売却対象に選択します。売掛債権に対する審査基準はファクタリング会社によって異なりますが、回収リスクの高い売掛債権であるほど手数料率が高まる傾向にあるためです。
また、複数のファクタリング会社に見積もりを依頼し、手数料率の比較を行って利用する会社を選びます。ファクタリング会社によって手数料率の相場設定が異なり、手数料率を一律としているところもあれば、相場の範囲を広く設けているところもあるためです。
ファクタリング利用時の手数料は必ず発生することから、徴収自体を回避することはできません。しかし、手数料率をなるべく低くすることができれば、得られる資金の減少を最小限にできる可能性があります。
売掛債権の弁済を求められる可能性がある
ファクタリングには、売掛債権の弁済を求められるリスクが存在します。ファクタリングサービスの提供元によっては、償還請求権を契約に設けることができるからです。
償還請求権とは、債務の未払いを元の債権者にさかのぼって請求することができる権利のことです。ファクタリングは債権譲渡取引であるため、原則として償還請求権のない契約となりますが、賃金業の許可を受けている事業者であれば償還請求権を契約に設ける事が可能です。
そのため、銀行や賃金業の許可を得ているノンバンクのファクタリングサービスを利用する際には、償還請求権が契約に設けられる可能性があります。償還請求権がある契約を交わし万が一に売掛債権が回収不能となった場合には、弁済請求に応じなければならなくなるため注意が必要です。
弁済を請求されないよう償還請求権のない契約であることを確認する
売掛債権の弁済を求められる可能性に対しては、償還請求権のない契約(ノンリコース契約)であることを確認してから利用することで、リスクを未然に防ぐことが可能になります。
償還請求権のない契約であることは、利用を検討するファクタリング会社のHPから確認することが可能です。HPの「サービスについて」や「よくある質問」などのページで、償還請求権の有無について明記しているファクタリング会社があります。
また、ファクタリング契約を交わす際に交付される契約書でも確認することが可能です。契約書には、償還請求権の有無について記載されている項目があるため、内容に注視し分かりづらい記載には説明を求めるように心がけましょう。
ファクタリングの契約方法や契約書の詳細については「ファクタリング契約とは?契約書の種類と確認すべき項目についても解説」で紹介しているので、参考にしてみてください。
売掛先企業との取引関係が悪化するおそれがある
ファクタリングには、売掛先企業との取引関係が悪化するリスクが存在します。おもに売掛先企業が契約に関与する3社間ファクタリングに伴うリスクで、売掛先企業への債権譲渡通知が行われることが要因です。
債権譲渡通知とは、債権譲渡の実施を債務者に知らせる行為のことです。3社間ファクタリングは、売掛先企業を含めた3社の合意がないと契約が成立しないことから、売掛先企業に対して債権譲渡に対する承諾と契約への合意を得るために債権譲渡通知を送付します。
債権譲渡通知が送付されるとファクタリングの利用が売掛先企業に知られるため、会社の経営状況や今後の取引に対して不安を抱かれるおそれがあります。また、債務先が変わってしまうことに対して不信感を抱かれるおそれもあり、会社の信頼性に影響を及ぼしかねません。
信頼性の低下は、今後の取引条件や内容に変化を与える可能性があります。3社間ファクタリングの利用は、取引関係の悪化により会社経営を難しくさせてしまう可能性があるという点に注意が必要です。
取引関係に影響が出ないよう契約形態の選択を慎重に行う
売掛先企業との取引関係が悪化するおそれに対しては、契約形態の選択を慎重に行うことで、リスクを回避することが可能になります。
たとえば、3社間ファクタリングの利用は、売掛先企業から理解を得られそうな債権を売却する場合にのみとします。理解を得るのが難しい場合やファクタリングの利用を知られたくない場合には、売掛先企業が契約に関与しない2社間ファクタリングを選択します。
ただし、2社間ファクタリングで債権譲渡登記を行った場合には、売掛先企業にファクタリングの利用を知られる可能性が生じます。売掛先企業との取引関係への影響を最小限にしたい人は、債権譲渡登記を不要としているファクタリング会社を選択するとよいでしょう。
ファクタリングで行う債権譲渡登記の詳細については「ファクタリングの債権譲渡登記とは?求められる理由と注意点を解説」で紹介しているので、参考にしてみてください。
違法なファクタリング取引を行う悪徳業者が存在する
ファクタリングには、違法なファクタリング取引を行う悪徳業者が存在します。存在する理由として、現在ではファクタリング事業の運営に対する特別な法令や規制がないこと、事業を開業する際に法的な免許や届出を行う必要がないことなどが挙げられます。
金融庁のファクタリングの利用に関する注意喚起によると、違法なファクタリング取引は偽装ファクタリングと呼ばれています。ファクタリングと装って違法な貸付取引を行っており、利用した場合には高金利による貸付や悪質な取り立てにあう危険性が高いとされています。
違法なファクタリング取引を行う悪徳業者は手口が巧妙であるため、気を付けていても契約を行ってしまう可能性があります。違法取引に応じてしまった場合には、経営悪化と生活破綻を引き起こすおそれがあるため注意が必要です。
違法取引の被害にあわないよう悪徳業者の特徴を事前に把握する
違法なファクタリング取引を行う悪徳業者の存在に対しては、悪徳業者の特徴を事前に把握しておくことで、被害を未然に防げる可能性があります。
たとえば、悪徳業者には相場をはるかに上回る手数料を設定するという特徴があります。ファクタリング事業推進協会によると、ファクタリング手数料の相場は売掛債権額の2〜15%であるとしているため、提示された手数料率が相場相当であるかの確認が必要です。
また、契約に償還請求権や担保、保証人の設定を行うなど、金銭の貸付契約に近い契約内容を強いるという特徴があります。ファクタリングは借入ではないため、契約に担保や保証人は必要ありませんが、契約書に要求するような記載がある場合には契約を控えた方が賢明です。
なお、ファクタリング契約においての償還請求権は、貸金業の許可を受けている業者であれば設けることができ、違法には当たりません。そのため、取引に違法性があるかどうかは、利用するファクタリング会社の貸金業登録の有無を確認してから判断するとよいでしょう。
利用業者の貸金業登録の有無は、金融庁の「登録貸金業者情報検索サービス」で検索することが可能です。また、違法なファクタリング取引の詳細については「ファクタリングは違法?違法取引になる場合と安全に利用するためのポイントを解説」で紹介しているので、参考にしてみてください。
まとめ
ファクタリングには、手数料の発生により得られる資金が減少する、売掛債権の弁済を求められる可能性があるなどのリスクが存在します。ファクタリングの利用によって、不本意な損失や被害を被る可能性があるため、各リスクに対して適切な対策を行う必要があります。
たとえば、手数料により得られる資金が減少するというリスクには、手数料率を下げる工夫や手数料率の比較を行う対策を講じます。手数料率をなるべく低くすることができれば、得られる資金の減少を最小限にすることが可能です。
ファクタリングに存在するリスクは、利用するファクタリング会社や契約形態を適切に選択することで回避できる可能性が高まります。契約内容に対して不明点が見つかった場合には説明を求めるようにし、安易に契約を行わないように注意してください。