クラウドファンディングによる資金調達の仕組みと事例を解説

カテゴリー 資金調達

インターネット上でプロジェクトを公開し、共感を得た人から資金を集めるクラウドファンディングは、個人や企業を問わずに活用されている資金調達方法のひとつです。しかし、成功するためには適切な準備や事業計画が必要であり、失敗するリスクも伴います。

当記事では、クラウドファンディングの仕組みや種類を解説します。また、成功事例や失敗事例も紹介するので、これからクラウドファンディングを資金調達の手段として検討している人は参考にしてみてください。

クラウドファンディングはプロジェクトの賛同者から資金提供を募る仕組み

クラウドファンディングとは、インターネット上で起案者がプロジェクトを公開し、不特定多数の賛同者から少額ずつ資金を調達する仕組みです。起案者の新しいアイデアの実現や社会課題の解決など、目的の達成に向けてクラウドファンディングが行われます。

クラウドファンディングは2000年代にアメリカで始まり、日本では2011年の東日本大震災をきっかけに復興支援の手段として広まりました。その後、企業や自治体も活用を始め、今日ではさまざまなプロジェクトが展開されています。

クラウドファンディングは、支援者にとって少額から参加でき、負担が少ないことに加え、プロジェクトによっては商品やサービスといった「リターン」を得られる点で支持を集めています。一方で、起案者には支援者の共感を得るために、プロジェクトの魅力や実現性を明確に伝えるための事業計画が必要です。

プロジェクトの準備から達成までの流れ

クラウドファンディングにおけるプロジェクトの準備から達成までの流れを押さえておきましょう。起案者はプロジェクトを立ち上げる際に目標金額を設定し、原則として支援金が目標額に達した場合にプロジェクトが成立する流れとなります。

<プロジェクトの準備から達成までの流れ>

項目 内容

①事業計画の作成

  • プロジェクトの目的や目標金額、資金の使途を明確にする
  • 事業の将来性や社会的意義を整理しておく

②掲載サイトの選定

  • プロジェクトの内容に合ったクラウドファンディングサイトを選ぶ
  • プラットフォームの利用手数料や支援者層などを確認する

③掲載ページ作成

  • プロジェクトの詳細、目標、リターン内容をわかりやすくまとめる
  • 画像や動画を活用し、プロジェクトの魅力を伝える

④宣伝活動

  • SNSやメール、イベントなどを通じてプロジェクトを広く周知し、支援者を増やす
  • 友人、家族など周りの人にも協力を依頼する

⑤事業実施

  • 資金調達が成功した場合、計画通りにプロジェクトを実行する
  • 定期的に進捗状況を支援者へ報告する

⑥リターン準備

  • 支援者へのリターン(製品、サービスなど)を準備し、適切に提供する
  • 支援者への感謝を伝える

クラウドファンディングを始めるには、まず事業計画の作成が必要です。目標金額や資金の使途を具体的に示し、プロジェクトの社会的意義や将来性をわかりやすく説明することで、支援者の共感を得られる可能性が高まります。

プロジェクト公開後は、SNSやメール、イベントなどを活用して宣伝活動を行い、初期段階では知人や家族など身近な人々の協力を得ることも大切です。さらに、支援額に応じてリターンを工夫することで支援者の満足度を高め、幅広い層の支援を集めることが可能になります。

目標金額を達成し、プロジェクトが成功した場合は計画通りに事業を実施します。進捗状況を定期的に支援者に報告することで信頼関係を深め、協力への感謝の気持ちと共にリターンを提供しましょう。

クラウドファンディングには2種類の募集方式がある

クラウドファンディングで集まった支援金を受け取る仕組みには「All-or-Nothing方式」と「All-in方式」という2種類の募集方式があります。それぞれの方式は、目標金額の達成状況やリターンの履行義務に違いがあり、プロジェクトの内容や目的に応じて適切に選択する必要があります。

<クラウドファンディングの募集方式>

All-or-Nothing方式:目標金額を達成した場合にのみ支援金を受け取れる方式
  • 目標金額達成時のみプロジェクトを実施できる
  • 目標金額に達した場合のみリターンの履行義務が発生する
  • 未達成の場合、支援金はすべて支援者に返金される
All-in方式:目標金額に達しなくても集まった支援金を受け取れる方式
  • 集まった支援金額にかかわらずプロジェクトを実施する必要がある
  • 目標未達でもリターンの履行義務が発生する

たとえば、All-or-Nothing方式では、目標金額100万円に対し支援額が98万円だった場合には支援金を受け取れません。しかし、目標額に達した場合は、計画通りにプロジェクトを進めるための十分な資金を確保できます。

一方、All-in方式は目標金額100万円に対して支援額が50万円だった場合でも支援金を受け取ることができます。ただし、計画の実施に必要な資金が不足するリスクがあり、資金不足であっても手数料やリターン履行の負担が生じます。

クラウドファンディングには、資金が集まらないことや手数料が支援金を圧迫する可能性があります。手数料負担を避けるのであればAll-or-Nothing方式を選び、目標未達でも資金を活用したいのであればAll-in方式を検討してください。ただし、All-in方式では目標未達時もリターンを提供できる計画が必要です。

なお、All-in方式は主に「購入型」のクラウドファンディングで採用されています。プロジェクトを成功させるためには、クラウドファンディングの種類や特徴を正しく理解しておきましょう。

クラウドファンディングの種類

クラウドファンディングには、プロジェクトの目的や資金調達の仕組みによって異なる6つの種類があります。「購入型」「寄付型」「融資型」「株式型」「ファンド型」「ふるさと納税型」それぞれの種類における特徴を確認してみましょう。

<クラウドファンディングの種類と特徴>

種類 特徴

購入型

  • 起案者が設定した商品やサービスを購入してもらうことで支援を集める仕組み
  • 支援者側はモノやサービスをリターンとして受け取る

寄付型

  • 共感をもとに支援者から募金の形態で支援を募る仕組み
  • 支援者はリターンを求めないが、税制の優遇が適用される場合がある

金融型

融資型

  • 起案者が貸し付けを受け、一定期間後に元金と利息を返済する仕組み
  • 支援者は金銭的リターンを得られる

株式型

  • 未公開株式を提供することで資金調達する仕組み
  • 支援者は企業の成長に伴う利益を期待できる

ファンド型

  • 起案者の特定の事業への出資を募る仕組み
  • 支援者は配当や商品、サービスなどのリターンを期待できる

ふるさと納税型

  • 地域課題解決のために寄付を募る仕組み
  • 支援者は税制優遇とともに返礼品を受け取れる

6種類のクラウドファンディングの中で、最も多く利用されている形式は購入型です。支援者がリターンとして商品やサービスを受け取れるため、支援する目的が明確であり、多くの層から支持を得ています。

購入型クラウドファンディングのメリットは、商品やサービスを事前販売することで、開発や生産に必要な資金を確保できる点です。しかし、リターンの準備や配送にかかるコスト、時間が負担となるため、計画的な運営が求められます。

また、金融型(融資型、株式型、ファンド型)のクラウドファンディングは、大規模な資金調達を必要とする企業で活用されています。たとえば、融資型では起案者の返済能力よりもプロジェクト内容が重視されるため、金融機関の審査に通りにくいスタートアップや新規事業でも資金調達しやすいのが特徴です。

クラウドファンディングには6つの種類があり、目的や支援の形態に合わせて選ぶことで、より効果的に資金調達ができます。自分のプロジェクトに合った種類とプロジェクトの実施に最適なプラットフォームを選びましょう。

購入型

購入型クラウドファンディングは、起案者のプロジェクトに対して支援者がお金を支援し、モノやサービスをリターンとして受け取れる仕組みとなっています。そのため、支援者は起案者の商品やサービスを購入するという感覚でプロジェクトを応援できる点が特徴です。

<購入型クラウドファンディングの概要>

項目 内容

形式

支援者がリターンとしてモノやサービスを受け取る形式

特徴

商品やサービスの開発資金を確保でき、市場調査としての役割も果たす

プロジェクト例

  • 新商品の開発
  • イベントの開催
  • サービスの試験運用
  • 社会課題解決を目指すプロジェクト

募集方式

  • All-or-Nothing方式:目標金額達成時のみ成立
  • All-In方式:目標未達成でも成立

メリット

  • 需要の確認ができる
  • 事前販売として資金を確保できる

デメリット

  • リターンの準備や配送にかかるコストと時間が必要
  • All-In方式では資金額に関わらずプロジェクトの実施しなければならない

起案者にとっては、商品やサービスを事前販売する形で開発資金を確保できるほか、市場の需要を事前に把握するためのマーケットリサーチにも役立ちます。

たとえば、新商品の製造資金を調達する場合、支援者は完成品をリターンとして受け取ることができます。また、地域イベントの開催資金を集めるプロジェクトでは、イベントチケットや限定グッズがリターンとして提供されることもあります。

また、購入型クラウドファンディングでは、目標金額を達成しなかった場合でもプロジェクトが成立し、集まった分の支援金を受け取れるAll-in方式を選択できます。しかし、その際は集まった資金の中で手数料やリターンの準備費用を賄う必要があります。

購入型は、最も利用者数の多いクラウドファンディング形式であり、商品やサービスを試験的に市場投入する際にも有効です。集まった支援金を活用して、商品開発やプロジェクト運営を進めていきましょう。

寄付型

寄付型クラウドファンディングは、支援者がリターンを求めず、起案者の立ち上げたプロジェクトへの共感をもとに支援する仕組みです。そのため、社会課題の解決や地域貢献、非営利活動など、公共性や社会的意義の高いプロジェクトに適しています。

<寄付型クラウドファンディングの概要>

項目 内容

形式

支援者がリターンを求めず、共感を基に資金を提供する形式

特徴

  • 公益性や社会的意義の高いプロジェクトが多い
  • 支援者には税制優遇が適用される場合がある

プロジェクト例

  • 災害復興支援
  • 福祉活動
  • 環境保護
  • 地域活性化など

募集方式

  • All-or-Nothing方式:目標金額達成時のみ成立

メリット

  • リターンの準備コストがかからない
  • 共感を得やすく、公共性の高いプロジェクトに適している

デメリット

  • 共感を得られない場合は支援が集まりにくい

たとえば、災害復興支援プロジェクトでは、被災地の復興活動を支えるための資金が寄付されます。また、子どもや高齢者を対象とした福祉プロジェクトでは、施設整備やプログラム運営のための支援が寄せられます。

商品や金銭的なリターンは発生しませんが、プロジェクトによってはお礼として手紙や写真を送るなど、支援者とのつながりを大切にする取り組みが行われています。

寄付型クラウドファンディングを成功させるためには、プロジェクトの公益性や社会的意義を明確に伝えることが重要です。「支援によって何を成し遂げたいか」「成し遂げた後にどのような変化をもたらすのか」を具体的に示し、支援者の共感を集める工夫をしましょう。

融資型

融資型クラウドファンディングは「融資型」という名前でありながらも、金融機関を通さずに大規模な資金調達を実現できる手段のひとつです。

この形式では、クラウドファンディング事業者を通じて投資家から資金を集め、それを借り受ける形でプロジェクトを進めます。起案者は集めた資金を一定期間運用した後で、元金と利息を返済する仕組みです。

<融資型クラウドファンディングの概要>

項目 内容

形式

  • 投資家から集めた資金で企業や事業者に貸し付ける形式
  • 起案者は一定期間後に元金と利息を返済する

特徴

  • 審査基準が柔軟審査基準が柔軟
  • プロジェクトの内容や事業計画が重視される

プロジェクト例

  • 新店舗開発
  • 商業施設のリノベーション
  • 再生可能エネルギー推進
  • 設備投資など

募集方式

  • All-or-Nothing方式:目標金額達成時のみ成立

メリット

  • 大規模な資金調達が可能
  • 事業の収益性や成長性を投資家に直接アピールできる

デメリット

  • 元金と利息の返済が必要
  • 計画が不十分だと返済リスクが高まる

たとえば、新店舗の開業資金のように多額の資金が必要な場合には、融資型クラウドファンディングを活用することで、店舗の内装や運転資金を確保できる可能性があります。また、生産性向上や業務効率化に向けた大規模な機械装置やシステム導入費用にも適しています。

融資型クラウドファンディングは、まだ実績が少ないスタートアップにとっても、製品開発や初期運転資金の調達する有効な手段です。この仕組みでは、起案者の信用情報や返済能力よりも事業計画の内容や可能性が重視されるため、金融機関の厳しい審査基準を通過しづらい人でも利用しやすい傾向にあります。

スタートアップや新規事業を立ち上げたい場合は融資型クラウドファンディングの活用を検討してみましょう。目標金額を達成するためには、プロジェクトの実施によってどのような効果と売上アップに繋がるのかを事業計画で示す必要があります。

株式型

株式型クラウドファンディングは、起案者が未公開株式を提供して資金を調達する仕組みです。株式型クラウドファンディングの起案者は法人である必要があり、スタートアップや中小企業が事業の成長に必要な資金を集める際に利用されます。

<株式型クラウドファンディングの概要>

項目 内容

形式

企業が未公開株を提供して資金を調達する仕組みで、投資家は企業の成長による利益を期待する

特徴

  • 上場せずに資本調達が可能
  • 投資家が多様な非上場企業に出資できる

プロジェクト例

  • 新技術の開発
  • 製品ラインの拡大
  • 地域の中小企業の資本調達
  • スポーツ関連プロジェクト

募集方式

  • All-or-Nothing方式:目標金額達成時のみ成立

メリット

  • 経営権を維持しつつ資金調達が可能
  • 金融機関の融資に頼らない柔軟な資金調達方法

デメリット

  • 調達可能金額は年間1億円未満に制限される
  • 小口株主の増加による事務作業が増える

たとえば、ITのスタートアップが新しいアプリを開発するための初期費用を株式型クラウドファンディングで調達するプロジェクトがあります。また、地域の製造業者が新製品の生産ラインを立ち上げるための資金や、スポーツ関連企業のイベント運営資金を調達する資金などにも活用されています。

支援者である投資家は、企業の成長や事業拡大に伴い、取得した未公開株式の価値が上昇することにより利益を得られます。投資した企業の株価上昇で購入時の株価と売却時の株価差額による利益を得られることや、配当金による定期的な利益を期待できます。

株式型クラウドファンディングでは、個々の投資家が出資できる金額に上限が設けられており、企業が経営権を失うリスクを軽減できます。一方、多くの小口株主を抱えることにより、株主対応や情報公開の事務処理に負担が増える場合があるため、プロジェクトの成功には計画的な運営が求められます。

株式型クラウドファンディングは、企業が未公開株を提供して資金を調達する仕組みで、事業の成長を目指すスタートアップや中小企業に有効な手段です。プロジェクトの成功には投資家の共感を得ることが求められるため、成長戦略や将来の利益計画を明確に示せるように準備しましょう。

ファンド型

ファンド型クラウドファンディングは、特定の事業に対して投資家から出資を募り、その実績に応じて金銭的な配当や返礼品を提供する仕組みです。出資者には事業の成果に基づく配当金のほか、企業の製品やサービスがリターンとして提供される場合があり、株主優待に似た特徴があります。

<ファンド型クラウドファンディングの概要>

項目 内容

形式

特定の事業に対して出資を募り、事業実績に応じて配当金や返礼品を提供する仕組み

特徴

  • リターンが事業計画の達成度で変動する
  • 金銭的な配当のほか、返礼品が設定されていることがある

プロジェクト例

  • 新店舗の開業
  • 製品開発
  • 地域活性化プロジェクト
  • 観光産業の推進プロジェクト

募集方式

  • All-or-Nothing方式:目標金額達成時のみ成立

メリット

  • 商品やサービスを通じてブランドを広げられる
  • 計画達成に応じた配当金で資金の調整が可能

デメリット

  • 事業計画が未達の場合、リターンが減少し信頼を損なう可能性がある
  • 利用可能なプラットフォームが少ない

ファンド型クラウドファンディングは、投資家に具体的な収益見込みを提示できるプロジェクトに適しています。特に、新規店舗の開業や革新的な製品の開発、観光事業の拡大などのプロジェクトでファンド型クラウドファンディングの強みを活かすことができます。

たとえば、宿泊施設の開業資金を募り、宿泊券や地域限定アクティビティをリターンに設定することで、事業の収益と地域活性化を同時に実現することができます。一方で、金銭的リターンを伴うため、収益予測や事業計画の透明性が重要です。

ファンド型クラウドファンディングは、計画的な運営と具体的なリターンの設定により、資金調達と事業成長の両方を目指せる手段です。投資家へのリターンとともに、事業の価値を明確に伝え、プロジェクトの成功につなげましょう。

ふるさと納税型

ふるさと納税型クラウドファンディングは、自治体や自治体から支援された団体・個人が特定の地域課題やプロジェクトの実現を目的に寄付を募る仕組みです。通常のふるさと納税の制度と異なり、寄付金の使い道が具体的なプロジェクトに限定されている点が特徴です。

<ふるさと納税型クラウドファンディングの概要>

項目 内容

形式

自治体や団体が地域課題を解決するために寄付を募り、支援者には税制優遇や返礼品が提供される仕組み

特徴

  • 購入型と寄付型を融合させたような形式
  • ふるさと納税制度を活用して支援者のメリットを高める

プロジェクト例

  • 観光施設の建設
  • 環境保護活動
  • 地域イベントの運営

募集方式

  • All-or-Nothing方式:目標金額達成時のみ成立
  • All-In方式:目標未達成でも成立(一部の団体のみ可)

メリット

  • 目的を提示できるため、支援者から共感を得やすい
  • 返礼品を通じて地域の特産品やサービスをアピールできる

デメリット

  • 自治体が主導となりプロジェクトの自由度が低くなる可能性がある
  • 返礼品のコストが全体の予算に影響を与える可能性がある

たとえば、通常のふるさと納税では、寄付金は自治体の裁量でインフラ整備や福祉、教育など幅広い目的に使われます。一方で、ふるさと納税型クラウドファンディングは、観光施設の建設や災害復興、地域イベントの開催といった具体的なプロジェクトを対象に寄付を受け取る仕組みです。

募集方式はAll-or-Nothing方式が多く採用されている傾向にありますが、一部ではAll-In方式を採用するプロジェクトもあります。たとえば、プロサッカーチームのトレーニンググラウンドの土壌改良を目指すプロジェクトでは、目標金額を8,000万円のAll-In方式で実施した事例もありました。

ふるさと納税型クラウドファンディングは、支援者にとっては寄付の目的が明確で共感を得やすく、自治体にとっては地域課題の解決と同時に地域のPRにもつながる効果的な手段です。プロジェクトの成功には、具体的な目標設定とともに積極的な宣伝活動が欠かせません。

クラウドファンディングよる資金調達の成功事例

クラウドファンディングへの理解を深めるために、実際の事例を確認してみましょう。事例を参考にすることで、自分の計画しているプロジェクトを具体的にイメージしやすくなり、成功に近づけるヒントが見つかります。

たとえば、購入型や寄付型、金融型などクラウドファンディングの種類ごとに成功の要因は異なります。リターンの設定やプロジェクトの伝え方がどのように支援を集めたのかを理解することがポイントです。

クラウドファンディングの事例は、ウェブ検索や専門サイトを活用するだけで多くの情報を確認できます。購入型や金融型などの種類ごとに調べたり、成功例と失敗例を比較したりして、自身のプロジェクトに活かす工夫をしてみてください。

魅力的な商品開発と金額設定で成功した事例

購入型クラウドファンディングの「レンジで本格土鍋ご飯を炊ける商品の開発、製作プロジェクト」を紹介します。使いやすい日用品を開発したプロジェクトが話題になり、目標金額の10倍以上を集めた事例です。

<商品開発プロジェクトの成功事例

プロジェクト内容

レンジで本格土鍋ご飯を炊ける商品の開発、製作プロジェクト。

土鍋ご飯のプロと伊賀焼職人の共同開発で一人用でお手入れも簡単なレンジ炊き土鍋を制作、発売

目標金額

100万円

集まった支援金額

1,052万円(数回にわたるプロジェクト実施により支援総額は5,600万円)

支援者数

930人

成功に至ったポイント

  • 共同開発により本格的な製品政策を実現し、支援者が購入しやすい金額で提供した
  • 支援者の声を取り入れ、活動報告やSNSによる広報活動に注力した

購入型クラウドファンディングでは、支援者にとって身近な食生活を豊かにする製品として、専門家や職人と共同開発したレンジ用土鍋が大成功を収めました。1万円以下で購入できる手軽さから目標額を大幅に上回る資金調達に成功し、プロジェクト終了後もアンコール募集が行われ、多くの支援者を獲得しました。

ウェブサイトを確認してみると、商品自体の魅力だけでなく、支援者への信頼を高めるためにプロジェクトの進捗状況やリターン発送予定日を定期的に発信する姿勢が確認できます。購入型クラウドファンディングでは、商品やサービスの魅力を伝えるための画像や文章に工夫を凝らしてみましょう。

命を救うプロジェクトが幅広く共感を集めて成功した事例 

寄付型クラウドファンディングの「離島の急病患者を救うための医療用飛行機購入プロジェクト」を紹介します。地域の課題解決を目指したプロジェクトが多くの共感を呼び、目標金額を達成した事例です。

【医療用飛行機購入プロジェクトの成功事例】

プロジェクト内容

離島の急病患者を救うための医療用飛行機購入プロジェクト。

救急ヘリでは救助が難しい沖縄の離島住民を救うため、長距離飛行が可能な医療用飛行機を購入し、急病患者の搬送を実現

目標金額

3,500万円

集まった支援金額

3,629万円

支援者数

445人

成功に至ったポイント

  • 起案者が過去の850件以上の医療活動実績を提示し、プロジェクトの信頼性を高めた
  • 医療用飛行機の導入が救命活動にどのように役立つかを具体的に説明し、支援者の共感を得た
  • 寄付金の使い道や進捗状況を詳細に公開し、透明性を確保した

寄付型クラウドファンディングでは、社会的意義の高いプロジェクトが多くの支援を集める成功要因となります。このプロジェクトでは、医療用飛行機の購入が離島住民の命を救う直接的な手段であることを明確に示し、多くの支援者から共感を得ました。

また、寄付型のクラウドファンディングは、金銭や物品といった物理的なリターンを伴わない傾向にありますが、このプロジェクトでは支援の引換券としてWEBサイトや実際に購入した飛行機の機体に支援者の名前が掲載され、感謝の意が伝えられました。

寄付型クラウドファンディングを成功させるためには、社会的な意義や具体的な成果をわかりやすく伝えることが重要です。また、支援者がプロジェクトの進捗を確認できる仕組みを整えることで、さらなる支援を得られる可能性が高まります。

業務改善システムの導入が期待され成功した事例

株式型クラウドファンディングの「経理業務の効率化を目指すシステム導入プロジェクト」を紹介します。革新的な効率化とペーパーレス化を目指したシステム導入が注目を集め、目標金額を大きく上回る資金調達に成功した事例です。

経理業務削減プロジェクトの成功事例>

プロジェクト内容

経理業務の負担削減を目指すプロジェクト。

WEB経理代行システムの導入により、今までにないペーパーレス化と経理業務の95%をなくす世界を目指す

目標金額

500万円

集まった支援金額

1,460万円

支援者数

87人

成功に至ったポイント

  • 従来の煩雑な経理業務を劇的に改善する具体的なソリューションを提示し、投資家の期待を集めた
  • 利用者の多いプラットフォームを活用することで、幅広い投資家層へのアプローチに成功した
  • 投資家に対してシステムの収益モデルと市場需要を明確に示し、プロジェクトの信頼性を高めた

株式型クラウドファンディングは、革新的で実現可能性の高いアイデアを持つプロジェクトに適しています。この事例では、経理業務の効率化という具体的な課題に対し、請求書処理の大幅な時間短縮など明確な成果を提示することで、多くの投資家から支持を得ました。

また、プロジェクトの透明性を高めるために進捗状況を定期的に発信し、投資家との信頼関係を築いた点も成功を後押ししました。適切なプラットフォームを活用して、ターゲット層に向けた情報発信を行うことも重要です。

株式型を活用する際は、プロジェクトの価値を分かりやすく伝え、具体的な収益モデルや成長の可能性を示すことが成功のポイントです。計画的な運営と共感を得られるメッセージで、資金調達と事業の発展を目指しましょう。

クラウドファンディングよる資金調達の失敗事例

クラウドファンディングの成功事例を確認した後は、失敗の事例にも目を向けてみましょう。失敗の原因を知ることで、自分の計画を見直し、改善点を見つけるきっかけになります。

たとえば、計画が不十分だったために目標金額を達成できなかったり、プロジェクト内容が支援者に伝わらず共感を得られなかったりと、失敗の理由はさまざまです。こうした事例を振り返ることで「どの部分を改善すべきか」「どのように工夫すれば支援を集められるか」といったヒントが得られます。

失敗事例はウェブ検索や専門サイトで見つけることができます。成功事例と併せて確認することで潜在的なリスクを事前に察知し、適切な対策を講じることが可能です。失敗例から学んだことを自身のプロジェクトに活かして、より良い計画を立てましょう。

目標額未達による失敗事例

購入型クラウドファンディングのプロジェクトで、目標金額を大幅に下回った失敗事例を紹介します。芸能人やユーチューバーのような影響力のある起案者でも、プロジェクトの内容やリターン設定が支援者に刺さらなければ、プロジェクトが失敗する可能性が高まります。

<目標金額未達による失敗事例>

プロジェクト内容

SNSで影響力を持つ起案者による番組制作プロジェクト。

SNSフォロワー数が60万人を超える影響力を持つグルメインフルエンサーが、テレビ番組制作のために資金を調達するクラウドファンディングを実施

目標金額

50万円

集まった支援金額

22,000円

支援者数

8人

失敗に至った原因

  • テレビ番組制作という内容がSNS世代の支援者にはあまり魅力的に映らなかった
  • お礼メッセージや手紙といったリターンが、支援者の興味や期待に応えられなかった
  • 具体的な番組内容や制作の意図、必要性を効果的にアピールできなかった

購入型クラウドファンディングでは、プロジェクト内容やリターンが支援者のニーズに合致していることが成功のポイントとなります。この事例は、たとえ影響力のあるインフルエンサーが起案者であっても、プロジェクトの魅力が伝わらなければ支援を集めるのは難しいことを示しています。

プロジェクトを成功させるには、支援者が共感しやすい背景や意義を丁寧に伝え、支援者にとって魅力的で価値のあるものを設定する必要があります。そのため、たとえ起案者が有名であっても、戦略を欠いたプロジェクトでは支援を得るのは困難です。

特に、知名度の低い製品やサービスを広める場合、プロジェクトの背景や課題、目指す未来を具体的に伝えることが求められます。そのうえで、SNSやメディアを活用した宣伝活動や周囲の協力を得ながら認知度を広げる努力も必要であることを留意しておいてください。

支援者への説明不足による失敗事例

購入型クラウドファンディングの「洗剤無しで洗濯物をキレイに洗える商品開発プロジェクト」の失敗例を紹介します。こちらはもともと、目標金額を達成したプロジェクトでしたが、起案者への説明不足や対応の不備が原因で信頼を失ったため、炎上やプロジェクトの中止となった内容の失敗事例です。

<支援者からの信頼を失った失敗事例>

プロジェクト内容

画期的な洗濯商品の開発プロジェクト。

洗剤を使わずに洗濯物を清潔にする新商品の開発と販売

目標金額

2,000万円

集まった支援金額

2,500万円

支援者数

1,200人

失敗に至った原因

  • 発送遅延時の起案者からの説明不足
  • 商品説明に科学的根拠が不足し、支援者の不信感を招いた
  • 支援者への対応の遅れが信頼関係を損ない、炎上につながった

このプロジェクトでは、発送遅延が発生した際に情報共有が不十分だったため、支援者の不安を招きました。さらに、商品の効果を証明する科学的根拠が不足しており、支援者からの信頼を失う結果となりました。

購入型クラウドファンディングを成功させるには、透明性を保ちながら支援者と積極的にコミュニケーションを取ることが欠かせません。プロジェクトの進捗を正確に伝え、誠実に対応することで、支援者との信頼関係を築くことができます。

クラウドファンディングの失敗は、目標額未達だけに限りません。リターン品が適切に提供されなかったり、支援者への説明が不足していたりすることでトラブルが発生し、プロジェクトが中止に至る事例もあります。失敗事例を参考にし、支援者の期待に応える誠実な対応を目指しましょう。

クラウドファンディングに関するQ&A

クラウドファンディングに関するよくある疑問や悩みを解消するために、Q&Aの形式にまとめました。同じような疑問がある人は参考にしてみてください。

<クラウドファンディングに関するQ&A>

質問内容 回答

Q1.クラウドファンディングが成功した場合、支援者へお金を返す必要はありますか?

A1.原則として支援者への返金は不要です。
ただし、融資型の場合は元本と利息の返済が必要です。

Q2.目標資金調達額に届かなかった場合、集まった分の資金はどうなりますか?

A2.「All  or  Nothing方式」で募集した場合は全額支援者へ返金され「All  in方式」で募集した場合は金額が受け取れます。
詳細は利用するクラウドファンディングサイトのルールを確認してください。

Q3.クラウドファンディングの利用には連帯保証人や担保を提供する必要はありますか?

A3.借金ではないので、連帯保証人や担保の提供は必要はありません。

Q4.自己破産の経験がある人でもクラウドファンディングを利用できますか?

A4.利用できます。
クラウドファンディングでは申込者の信用情報は問われず、プロジェクトの事業計画や将来性が求められます。

Q5.クラウドファンディングで得た資金の仕分け項目は何になりますか?税金はかかりますか?

A5.「売上」または「雑収入」として処理します。
個人事業主であれば所得税及び消費税、法人であれば法人税および消費税の対象です。

クラウドファンディングの利用に際して疑問や悩みがある場合は、クラウドファンディングのQ&Aを紹介しているウェブサイトに目を通してみることで解決できる場合があります。また、利用するプラットフォーム内でもQ&Aコーナーが掲載されている場合があるため、内容を確認してみてください。

まとめ

クラウドファンディングは、プロジェクトを公開し、多くの賛同者から資金を集める仕組みです。成功には、事業計画の明確化、適切なリターン設定、SNSを活用した宣伝活動が欠かせません。資金調達の流れを理解し、計画的に進めることが重要です。

クラウドファンディングには、「購入型」「寄付型」「融資型」「株式型」「ファンド型」「ふるさと納税型」の6種類があります。それぞれの特徴やメリット・デメリットを把握し、目的や支援形態に適した方法を選ぶことで、プロジェクト成功の可能性を高めることができます。

また、過去のクラウドファンディングの成功事例や失敗事例を確認することで、支援者の共感を得る方法やリスク回避策を学べます。入念な準備と計画的な運営を心がけ、クラウドファンディングを資金調達や事業拡大の有効な手段として活用しましょう。

この記事を書いたライター

ソラボ編集部

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