赤字決算でも資金調達はできる!成功のポイントを解説

カテゴリー 資金調達

企業は黒字を目指し事業を行いますが、さまざまな要因で赤字決算となってしまうことがあります。赤字決算でお金が必要になったとき、資金調達を行うことができるかどうか分からない人がいるのではないでしょうか。

当記事では、赤字決算の事業者が資金調達するときのポイントを解説します。赤字決算となってしまい、資金調達ができるかどうか不安を感じている人は当記事を参考にしてみてください。

ポイントは返済能力と業績回復の見込みを示すこと

赤字決算の事業者が資金調達をするときのポイントは「返済能力と業績回復の見込みを示すこと」です。資金調達においては事業者の返済能力や事業の将来性が重視されるため、資金調達先から資金の回収見込みがあると判断されれば、赤字決算であっても資金調達できる可能性があるためです。

<返済能力と業績回復の見込みを示す方法>

項目

内容

返済能力を示す方法

  • 一時的な赤字であることを証明する
  • 充分な資本金があることを証明する

業績回復の見込みを示す方法

  • 実現可能な事業計画や経営改善計画を策定する
  • 債務超過に陥っていないことを証明する

返済能力を示す方法には「一時的な赤字であることを証明すること」「充分な資本金があることを証明すること」が挙げられます。やむを得ない事情により一時的に赤字となっている場合や、充分な資本金を確保できている場合は、赤字決算の事業者でも資金調達が可能となる場合があります。

業績回復の見込みを示す方法には「実現可能な事業計画や経営改善計画を策定する」「債務超過に陥っていないことを証明する」が挙げられます。事業を継続することにより将来的に事業が黒字化し、返済が可能になると判断されれば、赤字決算の事業者でも資金調達が可能となる場合があります。

事業が赤字決算であっても、返済能力と業績回復の見込みを示すことができれば資金調達を行うことは可能です。資金調達の申請をする際には根拠となる数値や調査データを用いて、赤字決算となった原因と改善策を具体的に説明できるようにしておきましょう。

一時的な赤字であることを証明する

返済能力を示す方法のひとつとして「一時的な赤字であることを証明すること」が挙げられます。一時的な赤字とは、創業時に支出が増え安定した売上の確保が難しく赤字決算となった時や営業利益以外の理由による赤字決算となった時などが該当します。

<一時的な赤字の具体例>

  • 創業赤字である
  • 多額の設備投資をした
  • 災害により大きな被害を受けた 等

一時的な赤字であれば、赤字決算でも資金調達できる場合があります。創業計画書において黒字化することが見込まれる場合や、一時的に多額の支出が発生したものの今後の事業継続によって黒字化できると判断された場合は、赤字決算となった事業者でも資金調達を行える可能性があります。

一方で、慢性的な赤字である場合は資金調達が困難となる恐れがあります。赤字決算が2期や3期以上連続している場合、黒字化することが難しく資金の返済能力が低いと判断されやすくなるため、返済義務のある銀行融資や社債発行による資金調達は特に利用が困難となります。

一時的な赤字であることを証明できれば、事業を続ければ改善が見込まれる場合があるため、赤字決算の事業者であっても資金調達を行える可能性があります。赤字決算で資金調達を行う場合は、一時的に赤字決算になっている理由を明確にし、事業計画書において黒字化できる根拠を提示しましょう。

充分な資本金があることを証明する

返済能力を示す方法のひとつとして「充分な資本金があることを証明すること」が挙げられます。資本金は企業の規模や信用力を示す指標となるため、資本金額によっては赤字決算でも資金調達を利用できる可能性があります。

たとえば、融資の場合、利用には資金の返済能力が重視されるため赤字決算では審査に通過できない恐れがあります。しかし、資本金が十分にある企業であれば、金融機関にとっては貸倒れとなるリスクが低いことから赤字決算でも融資を受けられる場合があります。

一方で、資本金が少ない場合は、赤字決算の事業者が融資による資金調達を行うことが困難となる恐れがあります。赤字決算に加えて十分な資本金がない場合、返済に充てる資金である「返済原資」がなく、資金の回収が難しいと判断されることがあるためです。

なお、総務省・経済産業省が公表している「令和3年経済センサス‐活動調査速報集計企業等に関する集計」によると、企業の資本金額は300万〜500万円が最も多い割合を占めるとされています。資本金の基準額に決まりはありませんが、資金調達を行う際のひとつの目安としてみてください。

実現可能な事業計画や経営改善計画を策定する

業績回復の見込みを示す方法のひとつとして「実現可能な事業計画や経営改善計画を策定すること」が挙げられます。事業計画や経営改善計画によって、事業を継続することで黒字化できる可能性が高いと判断されれば、赤字決算の事業者でも資金調達できる場合があります。

事業計画は、事業の目標や達成方法、財務計画など主に将来の展望を示すものです。事業計画では市場の成長性、競合との差別化戦略、具体的な売上目標といった事業の将来性を客観的なデータに基づいて示し、資金調達先に対して事業の成長可能性をアピールします。

経営改善計画は、現状分析や赤字決算の原因、信用情報の回復方法など主に現状の課題とその対応策を示すものです。経営改善計画では赤字決算となった原因を明確にしたうえで、企業の現状を分析して経営の改善を図るための具体的な計画を策定し、資金調達の妥当性を証明します。

事業計画や経営改善計画を提出し、赤字からの回復が見込めることを証明できれば資金調達の成功につながる可能性が高まります。金融機関や投資家など資金調達先からの理解を得られるよう、具体的な数値やデータを用いて計画を実現できる根拠を示しましょう。

債務超過に陥っていないことを証明する

業績回復の見込みを示す方法のひとつとして「債務超過の状態に陥っていないことを証明すること」が挙げられます。「債務超過」とは企業が保有している資産よりも負債が多い状態のことであり、赤字に加えて債務超過の状態に陥っている場合には、資金調達できない可能性が高くなるためです。

債務超過の状態に陥っていなければ、赤字決算でも資金調達できる場合があります。企業が保有している資産が多く総資産に占める自己資本の割合である「自己資本比率」が高ければ、返済しなければならない負債が少なく、企業の財務安全性があると判断され資金調達を行える可能性があります。

一方で、債務超過の状態となってしまうと、資金調達が困難となる可能性が高まります。企業の全資産を返済に充てても負債を完済できない状態となってしまえば、債務超過を解消できる見込みがなく事業の将来性がないと判断され、資金調達を行うことができない恐れがあります。

債務超過に陥っていないことを証明するためには、貸借対照表(バランスシート) や資金繰り表を提出して、事業の財務状況を明確に示すことが有効です。また、税理士や公認会計士などの専門家による意見書や評価書などがあれば財務状況の信頼性を高められるため、必要に応じて専門家に相談することも検討しましょう。

なお、債務超過の状態の場合、負債を返済するために別の金融機関から借金を繰り返す状態である「自転車操業」に陥る恐れがあります。自転車操業に陥ると利息の負担が増加し、経営を立て直すことが困難となるため、 債務超過に陥る前に赤字決算を改善する策を立てることが望ましいです。

財務状況が影響しにくい資金調達方法を検討してみる

資金調達方法によっては、事業者の財務状況が利用可否に影響しにくく、赤字決算であっても利用しやすい方法があります。慢性的な赤字となってしまった場合や、赤字決算を改善できる見込みを証明することが難しい場合には、事業者の財務状況が影響しにくい資金調達方法を利用することも検討してみましょう。

<財務状況が利用可否に影響しにくい資金調達方法>

資金調達方法

概要

補助金/ 助成金

  • 制度の目的に沿った事業にかかる費用の一部を補助するための支援金
  • 企業の信用情報は審査に影響せず、事業の取り組み内容が重視されるため赤字決算でも利用可能
  • 後払い制のため自己資金が必要

クラウドファンディング

  • インターネットで不特定多数の人から出資を募る方法
  • 支援者に返礼品などを返すことが基本
  • 原則、企業の信用力を確認する審査がないため赤字決算でも利用可能

ファクタリング

  • 売掛債権(売上代金の未回収分を請求できる権利)をファクタリング事業者へ売却し現金化する方法
  • 売掛先の信用力が重要視されるため赤字決算でも利用可能

資産売却

  • 会社が保有している土地や建物などの資産を専門業者に売却する方法
  • 企業が保有している資産の価値が重要視されるため赤字決算でも利用可能

一部の融資制度

  • 業績が悪化している事業者の支援を目的とする制度など、赤字決算であっても利用しやすい融資制度がある
  • 審査にて赤字決算の原因を明確にし改善できる見込みがあれば利用可能

利用時の審査において事業者の財務状況が影響しにくい資金調達方法や、企業の実績よりも将来性が重要視される資金調達方法であれば、赤字決算でも利用できる場合があります。信用情報に不安がある場合や十分な事業実績がない場合には、補助金やクラウドファンディング、ファクタリングなどの資金調達方法や、経営が困難となっている事業者を支援するための融資制度などを検討する余地があります。

赤字決算でも利用可能な資金調達方法にはさまざまな選択肢があります。利用可能な資金調達方法は、財務状況や事業内容などによって異なるため、それぞれの特徴を確認したうえで企業に適した方法を選びましょう。

補助金/助成金

赤字決算でも利用可能な資金調達方法には「補助金・助成金」が挙げられます。補助金や助成金では、制度の目的に沿った事業に要する費用の一部が補助されます。

補助金や助成金には審査があり企業の信用情報は審査に影響せず、事業の取り組み内容が重要視されます。申請する制度の目的に沿った事業に取り組み、事業に関する経費を申請するのであれば、赤字決算でも資金調達を行える可能性があります。

ただし、後払い制の補助金や助成金を利用する場合には、自己資金の用意が必要です。事業者向けの補助金や助成金は後払いとなる傾向にあり、資金を受け取れるのは事業実施終了後となるため、事業の実施にかかる経費は事業者が自己資金によって立て替えなければなりません。

なお、補助金と助成金は審査にて受け取れる金額が決まるため、申請した経費の全額が受け取れるとは限りません。事業実施後に行う実績報告の内容によっては、申請した金額から減額され希望の金額を受け取れない可能性もある点に留意しましょう

クラウドファンディング

赤字決算でも利用可能な資金調達方法には「クラウドファンディング」が挙げられます。クラウドファンディングとはインターネットを通じて不特定多数の人から出資を募る資金調達方法です。

クラウドファンディングでは、原則として企業の信用情報は影響せずプロジェクトの内容が重要視されます。クラウドファンディングの種類によっては企業の信用情報を確認される場合もありますが、実現したいプロジェクトに対し賛同者から共感を得て資金提供を受ける方法のため、事業者が赤字決算でも利用できる傾向にあります。

クラウドファンディングでは、実現したいプロジェクトに対し資金提供を受ける方法のため、赤字決算であってもプロジェクトへの賛同を得ることができれば資金調達できる可能性があります。クラウドファンディングを行う場合は、賛同者からの共感を得られる事業計画を立てましょう。

ただし、クラウドファンディングには、目標金額を達成できずプロジェクトが失敗となる恐れもあります。クラウドファンディングでは事業者が自由に目標金額を設定できますが、根拠なく高額に設定すると賛同者から不信感を持たれ支援を得られなくなる可能性があるため、支援が見込める適切な金額を設定する必要があります。

ファクタリング

赤字決算でも利用可能な資金調達方法には「ファクタリング」が挙げられます。ファクタリングとは、ファクタリング会社に売上代金の未回収分を請求できる権利である「売掛債権」を譲渡し現金を得る資金調達方法です。

ファクタリングの審査で確認されるのは、売掛先企業の信用力や実績です。ファクタリングでは倒産による売掛債権の未回収リスクを低減するために、売掛先企業から資金を回収できるかどうかが審査で重要視されることから、事業者が赤字決算であっても利用できる場合があります。

また、ファクタリングの審査では原則として企業の信用情報は確認されません。ファクタリングの審査では売掛先の信用情報や売掛債権の回収可能性が重視されるため、ファクタリングの利用者が赤字決算でも利用が認められる場合があります。

なお、ファクタリングを利用する場合は手数料を支払わなければなりません。売掛債権の金額から手数料が差し引かれることになるため、ファクタリングによる資金調達可能額は実際の売掛金よりも少なくなることに留意しておきましょう。

資産売却

赤字決算でも利用可能な資金調達方法には「資産売却」が挙げられます。資産売却とは、会社が保有している土地や建物などの資産を専門業者に手数料を支払い売却することにより、資産を現金化する資金調達方法です。

資産売却では企業が保有する資産の価値が重要視されます。資産売却は資産を資金に換金する方法であり、保有資産の価値や決算書などが審査の対象となるため、企業の信用情報は審査に影響せず赤字決算であっても資金調達を行える可能性があります。

資産の価値は使用状況や市場価格の変動などにより決まります。売却可能な保有資産がある場合は、想定した金額を受け取るために最適なタイミングを見極めてから資金調達を行いましょう。

なお、資産売却は資産の維持管理費の削減にもつながります。活用していない資産を売却して新たな事業活動に資金を使うことができるほか、不要な資産が整理されるため固定資産税や維持管理費を整理することが可能です。

一部の融資制度

赤字決算でも利用可能な資金調達方法には「融資」が挙げられます。企業や個人事業主が金融機関からお金を借りる方法である「融資」の中には、赤字決算であっても要件を満たせば利用できる場合があります。

<赤字決算でも利用できる可能性がある融資制度>

融資

概要

経営環境変化対応資金(セーフティネット貸付)

  • 外的要因により一時的に赤字に陥っていても黒字化が見込める中小企業に対して融資を行う制度
  • 企業維持上緊急に必要な設備資金または経営基盤の強化を図るために必要な運転資金に利用できる

マル経融資(小規模事業者経営改善資金貸付制度)

  • 商工会または商工会議所に6カ月以上経営指導を受け推薦された小規模事業者が対象の制度
  • 無担保・無保証人で利用できる

ビジネスローン

  • 事業資金を借り入れるためのローン
  • 民間金融や消費者金融が提供する
  • 原則、無担保・無保証人で利用できる

不動産担保ローン

  • 土地や建物、マンションなどの不動産を担保にお金を借り入れるローン
  • 民間金融や消費者金融が提供する

赤字決算でも利用できる融資のひとつに「経営環境変化対応資金(セーフティネット貸付)」があります。日本政策金融公庫が提供する融資であり、社会的や経済的環境の変化などの外的要因により一時的な赤字に陥っても、中長期的に業績の回復が見込まれる企業が利用できます。

また、赤字決算でも利用できる融資のひとつに「マル経融資(小規模事業者経営改善資金貸付制度)」があります。日本政策金融公庫が提供する融資で、赤字を改善できる見込みがあり商工会または商工会議所の推薦を得た小規模事業者が利用できます。

さらに、ビジネスローンや不動産担保ローンは、通常の銀行融資よりも審査基準が厳しく設定されていない傾向にあります。銀行融資を断られてしまった場合でも、事業者の状況によってはビジネスローンや不動産担保ローンを利用できる可能性があります。

融資には企業の返済能力を確認する審査がありますが、赤字からの回復が見込める場合は融資を受けられる場合があります。赤字決算でも融資を受けたいと考えている人は、審査において赤字を回復できる見込みがあることや返済できる根拠があることを提示しましょう。

まとめ

赤字決算の事業者が資金調達を行うときのポイントは「返済能力と業績回復の見込みを示すこと」です。資金調達においては事業者の返済能力や事業の将来性が重視されるため、資金調達先から資金の回収見込みがあると判断されれば、赤字決算であっても資金調達できる可能性があるためです。

返済能力を示す方法には「一時的な赤字であることを証明すること」「充分な資本金があることを証明すること」が挙げられます。やむを得ない事情により一時的に赤字となっている場合や、充分な資本金を確保できている場合は、赤字決算の事業者でも資金調達が可能となる場合があります。

業績回復の見込みを示す方法には「実現可能な事業計画や経営改善計画を策定する」「債務超過に陥っていないことを証明する」が挙げられます。事業を継続することにより将来的に事業が黒字化し、返済が可能になると判断されれば、赤字決算の事業者でも資金調達が可能となる場合があります。

なお、「補助金/助成金」「クラウドファンディング」資金調達方法によっては、信用情報が利用可否に影響しにくく赤字決算であっても利用しやすい方法があります。慢性的な赤字となってしまった場合や、赤字決算を改善できる見込みを証明することが難しい場合には、信用情報の影響を受けにくい資金調達方法を利用することも検討してみましょう。

この記事を書いたライター

ソラボ編集部

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8,000件の資金調達実績を持つSolaboの専門家が、融資や補助金など、事業課題に合わせた資金調達方法を提案します。

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