外部から資金を調達する必要が生じて、金融機関からの融資を考え始めたら、同時に生命保険に入る準備も開始しましょう。
「生命保険は万が一のときの備えだから、融資が決定してから保険加入を決めれば良いのでは?」
確かに融資が下りなければリスクは発生せず、リスクがなければ備えも必要ありません。
しかし、融資を申し込んだ時点で、生命保険に入っている。
この状態にしておくことで、実は融資交渉が有利になるのです。
生命保険は融資の保険でもある
銀行が企業にお金を貸すということ──。
それは企業にとって、必要な資金が手に入ると同時に、毎月必ず返済しなければならないというリスクを背負うことです。
同時に、銀行もリスクを背負います。
企業が利益を出せなくなったり、経営がうまくいかずに倒産してしまえば、貸したお金が返ってこなくなります。
信用保証協会の保証があれば80%は戻ってきますが、残りの20%が損害になります。
このため銀行は融資を行う際、担保を求めます。
担保とは、融資を受けた企業が返済できない状態に陥ってしまった場合に備えて、あらかじめ企業から銀行に差し出すものです。
担保の種類はいくつかあり、昔は不動産担保がメインでした。
その当時は「土地の価格は決して下がらない」と信じられていたからです。
しかしバブルが弾けて以来、株式などの有価証券担保、定期預金などの預金担保等、不動産以外の担保が増えてきました。
生命保険担保も、そのうちの1つです。
住宅ローンを組んだことがある人は、借入の際に「団体信用生命保険(団信)」の加入を求められたことがあると思います。
団信は住宅ローン専用の生命保険であり、融資先の銀行が保険契約者および保険金受取人になります。
保険料は金利に含まれることが多く、保険料の支払いは別途発生しません。
住宅ローンの債務者が死亡したときや、高度障害状態になったとき、住宅ローンの残金分が保険金として金融機関に支払われ、住宅ローンを清算するという仕組みです。
住宅ローンは個人で借入する金額としては多額であり、返済期間が長く設定されているため、最近は民間金融機関の多くが団信の加入を住宅ローン借り入れの条件としています。
リスクが高いローンの担保に、銀行が生命保険を選ぶ理由は、何でしょう。
保険金が、現金で支払われるからです。
生命保険の高い節税効果
銀行は融資審査の際、担保の評価を行います。
不動産や株式は、常に価格が変動します。
そのため時価の50~70%程度にしか評価されません。
一方、現金・預金は、ほぼ額面通りの金額で評価されます。
そして生命保険の場合、死亡時に支払われる金額はあらかじめ決まっており、これも額面通りの評価となります。
企業が倒産したときには保険を解約して解約返戻金で借入残高を清算することになりますが、解約返戻金は損失が少ないため、やはり評価が高くなります。
さらに生命保険は、節税効果もあります。
通常は利益が大きければ大きいほど、納めるべき税金が増えてしまいます。
しかし会社として生命保険に入り、毎月保険料を支払って損金を作れば、その分税金を抑えることができます。
さらに生命保険の種類によっては、退職金を積み立てていくことができます。
しっかりと利益を出しながら、現金を残す。
そのお金の流れを作れば、さらに評価が上がります。
銀行融資と生命保険は、必ずセットで考えましょう。
では、どのような生命保険に入ったら良いのか?
利益が少ないときは、掛け捨ての保険で十分ですが、利益が増えて余裕が出てきたら、次のような保険を検討すると良いでしょう。
逓増(ていぞう)定期保険
保険料の半分を損金として算入でき、社長の年齢によっては、短期間で解約返戻金が保険料とほぼ同じになってきます。
年間保険料は100万~2,000万円程度まで幅広く設定可能であり、非常に高い解約返戻率を設定できる生命保険です。
長期平準定期保険
中~長期的に高い解約返戻率を設定しながら、退職金の積み立てを行うことができます。
保険料の半分を損金に算入でき、中長期的にプランを組むことで、払込保険料を上回る解約返戻率を設定することも可能です。
「最適な生命保険商品」は、社長の年齢や会社の年商、借入金の額などによって変わるため、生命保険会社の営業マンから提案してもらうことが一番です。
「資金調達が得意な税理士または社労士」なら、信頼できる営業マンを紹介してくれるはずです。ぜひ相談してみましょう。