資金調達
銀行融資に必要な自己資金はいくら?足りない場合の対策も解説
資金調達

銀行融資を受けたいけれど、自己資金がどれだけ必要かわからない人や、自己資金が少ないために申請できるかどうか不安な人もいるのではないでしょうか。
しかし、銀行融資を受けるために必要な自己資金にはある程度の目安があり、目安を知ることで「次にするべきこと」が見えてきてきやすくなります。
当記事では、銀行融資に必要な自己資金の目安を解説します。また、自己資金として認められるお金と認められないお金の違いや、資金が足りない場合の対策も解説するので、銀行融資に必要な自己資金を調べている人は参考にしてみてください。
自己資金の目安は融資総額の2割から3割程度
銀行からの融資を受けるには、自己資金が融資希望額の2割から3割程度あるのが理想とされています。2割から3割という目安は、多くの金融機関が「事業主の本気度」と「返済能力」を測るうえで判断する基準だからです。
<融資希望額に対する自己資金額の目安>
融資希望額 | 自己資金の目安(2~3割) |
500万円 | 100万円~150万円 |
1,000万円 | 200万円~300万円 |
1,500万円 | 300万円~450万円 |
2,000万円 | 400万円~600万円 |
たとえば、1,000万円の融資を希望する場合に必要な自己資金の目安は200万円から300万円となります。これだけの資金を事前に準備していることで、銀行側も安心して融資に応じやすくなります。
一方、自己資金が1割以下という場合は、資金繰りに余裕がないことを懸念され、融資審査の通貨が難しくなる傾向にあります。また、仮に融資が通ったとしても、希望額よりも少ない金額しか借りられない場合もあります。
ただし、地域や業種によっては自己資金が融資総額の1割でも審査に通る場合や「創業融資制度」を活用すれば自己資金に関する要件が緩和される場合もあります。まずは自社の事業計画に対してどれくらいの自己資金が必要かを試算してみましょう。
業種や事業計画の規模によって必要な自己資金額は変わる
自己資金額の目安は、融資額の2割から3割とされますが、実際には業種や事業計画の内容などによって必要な金額は変わってきます。事業によって初期投資や運転資金のコスト構造が異なることから、銀行側のリスク評価や融資の目的によって求められる自己資金比率が変動するためです。
<業種や目的によって異なる自己資金額の目安>
業種と目的の具体例 |
必要資金の目安 | 自己資金の目安 |
飲食店の開業資金 | 1000万円程度 | 融資希望額の3割以上 |
美容室の設備更新、増席投資 | 500万円~1,000万円程度 | 融資希望額の2割~3割 |
IT・コンサル業の事業拡大、人材採用 | 200万円~500万円程度 | 融資希望額の1割~2割 |
小売業の商品仕入れ、運転資金 | 400万円~800万円程度 | 融資希望額の2割~3割 |
製造業の設備投資 | 1,000万円~2,000万円程度 | 融資希望額の2割~3割 |
運送業の車両購入、拠点拡大 | 1,000万円~2,500万円程度 | 融資希望額の3割以上 |
たとえば、飲食店や運送業のように初期投資が大きく、売上が安定するまでに時間がかかる業種では、自己資金の比率が高いほど審査で評価されやすくなります。あらかじめまとまった自己資金を準備していることで、事業への本気度や資金繰りの余力が示され、銀行からの信頼につながります。
一方で、ITやコンサル業のように小規模から始められる事業や、すでに売上実績のある企業が行う運転資金の融資では、自己資金が1割台でも柔軟に対応してもらえる場合があります。事業の成長性や安定性が確認できれば、自己資金の比率よりも事業内容や返済能力が重視される傾向にあります。
自己資金の目安は一律ではなく、業種や事業のフェーズ、融資目的によって適切な水準が異なります。自社の状況や事業計画、立地条件を踏まえて、どの程度の自己資金を確保すべきかを見積もっておくことで、スムーズに融資準備を進めることができます。
なお、物件取得費や工事費、人件費などは地域によっても異なるため、自社の事業地域におけるそれぞれの費用相場を確認しておきましょう。
自己資金として認められる資金の種類を押さえる
銀行融資における自己資金とは、単に手元にあるお金ではなく、資金の出所や性質が確認できるお金を指します。預金残高が多く見えても、内容によっては自己資金として認められない可能性もあるため留意しておく必要があります。
<自己資金として認められる資金>
資金の項目 | 内容 |
給与や事業収入 |
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定期預金 |
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保有資産を換金した資金 |
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親族からの贈与 |
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配偶者名義の預金 |
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退職金 |
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たとえば、生活費とは分けて管理され、毎月一定額を積み立ててきた通帳の預金残高は、自己資金として評価されやすい資金のひとつです。銀行側も、計画的に資金を準備してきた姿勢を確認できるため、審査時にプラスの評価を得やすくなります。
一方で、直前に家族から借りたお金や出所が曖昧なタンス預金などは、たとえ口座に入金してあっても自己資金として認められない場合があります。資金の流れが不自然な点があると「見せ金」と判断され、マイナス評価となるリスクもあるため注意する必要があります。
自己資金として評価されるには、金額だけでなく、記録や証明の有無も重視されることを理解しておくことが大切です。通帳への入金履歴や資金の出所が明確であれば、銀行からの信頼も高まりやすくなります。
なお、資金の内容や通帳の入出金履歴に不安がある場合は、融資申請前に税理士や認定支援機関などの専門家に相談することや、銀行に事前確認しておくことも有効です。あらかじめ整理と準備をしておくことで、審査が円滑に進みやすくなります。
自己資金と見なされない資金も把握しておく
銀行融資の審査では、自己資金の金額だけでなく、資金の性質や入金の経緯も見られます。そのため、一見まとまったお金を用意できているように見えても、内容によっては自己資金として評価されない場合があります。
<自己資金とみなされない資金の例>
資金の項目 | 内容 |
タンス預金 |
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借りたお金 |
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申請直前の高額入金 |
|
一時的な収入 |
|
たとえば、タンス預金をそのまま現金で保有している場合、金額にかかわらず通帳に入金履歴がなければ出所を証明できないことから、自己資金として評価されません。その資金が事業者自身によって計画的に積み立てられたものかどうかを、銀行が判断できないためです。
また、申請直前に親族から支援目的で入金された資金も、注意して取り扱う必要があります。贈与金そのものは自己資金として認められる場合がありますが、証明書類がなく、入金時期や金額が不自然な場合は「見せ金」とみなされ、審査でマイナス評価となる可能性があります。
自己資金は金額の多寡ではなく、資金の性質や準備の過程が評価の対象となります。審査で評価されにくい資金が含まれていると、自己資金が少ないと見なされ融資に不利に働く恐れがあるため、事前に資金の内訳を確認し、必要に応じて証明書類を準備しておきしましょう。
なお、融資を申請する前に、通帳の記録や資金の出所を整理しておくことは、円滑な審査に繋がります。通帳は、融資審査で提出が求められる書類のひとつであるため「銀行融資を受けるときに通帳は見せる?提出時の注意点を解説」の記事もあわせて確認してみてください。
自己資金が足りない場合の対策
銀行融資を希望していても自己資金が不足している場合には、適切な対策をとることで融資実現の可能性が高まります。自己資金が十分でない場合は、事業計画や借入額の見直しに加え、銀行融資以外の資金調達手段を検討することが有効です。
<自己資金が足りない場合の対策>
対策 | 内容 |
自己資金にあった事業計画と借入額の見直し | 自己資金額にあわせて資金計画を実現的な範囲に修正し、融資審査の通過率を高める |
銀行融資以外の資金調達の検討 | 日本政策金融公庫や制度融資などの公的支援、補助金、クラウドファンディング、ノンバンクの利用を検討する |
たとえば、自己資金に対して借入希望額が大きすぎる場合には、事業規模の縮小や資金使途の見直しによって、現実的な資金計画へ修正することが求められます。無理のある資金計画では審査を通過することが難しく、資金調達に支障が生じる可能性があります。
また、銀行融資だけに依存せず、公的支援や民間のサービスを組み合わせることで、資金調達の選択肢を広げることも有効です。複数の手段を並行して検討することで、必要な資金をより柔軟に確保できる可能性が高まります。
自己資金が不足していても、工夫次第で融資や資金調達を実現することは可能です。資金計画の見直しとあわせて、公的支援やさまざまな資金調達方法の活用も積極的に検討していきましょう。
自己資金額にあわせて資金計画と借入額を見直す
融資審査においては、資金繰り計画の現実性が厳しくチェックされます。自己資金に見合わない高額な借入希望額では、計画全体の信頼性が疑問視されるリスクがあるため、必要に応じて資金計画の見直しが不可欠です。
たとえば、自己資金200万円の事業者が開業資金1,000万円を借り入れようとする場合、自己資金比率は3割未満です。この場合、内装工事費や初期の広告宣伝費を抑えてコスト削減を図り、借入額を600万円に抑えられれば自己資金比率は3割以上となり、融資の可能性が高まります。
また、事務所や店舗の初期契約にかかるコストを見直し、シェアオフィスや居抜き物件などを活用することで、固定費や工事費用を抑える選択肢もあります。資金計画を立てる際は、理想だけでなく、自己資金との整合性を意識して進めることが大切です。
融資成功率を高めるためにも、早めに事業内容と資金計画を見直しておきましょう。その際、自己資金の2~3倍程度までに借入希望額を抑えると、銀行から無理のない計画と判断されやすくなります。
銀行融資以外の資金調達を検討する
自己資金が不足している場合には銀行融資だけに頼らず、他の資金調達手段を検討することで資金調達の可能性は広がります。複数の資金調達方法を組み合わせることで、自己資金の不足を補い、柔軟な資金計画を立てることができます。
<銀行融資以外の資金調達方法>
資金調達方法 | 概要 |
日本政策金融公庫の融資 |
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自治体の制度融資 |
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補助金、助成金制度 |
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クラウドファンディング |
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ノンバンクのビジネスローン |
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たとえば、日本政策金融公庫の融資サービスには、無担保・無保証で申請できる制度や、自己資金が少なくても利用できる創業者向けの制度があります。民間銀行に比べて金利や返済条件が優遇される傾向にあり、事業者の資金負担を軽減する助けになります。
また、補助金や助成金は、特定の目的に沿った設備投資や新規事業展開を後押しする制度です。補助金や助成金は原則として後払いとなるため、補助事業を行うための資金は事前に準備しておく必要がありますが、返済義務のない資金を受け取ることができます。
銀行融資以外の資金調達方法を取り入れることで、自己資金不足に柔軟に対応でき、資金調達の選択肢も広がります。自社の状況や資金使途に応じて、公的支援や民間サービスの活用も検討してみましょう。
なお、銀行融資以外のさまざまな資金調達方法を詳しく知りたい人は「資金調達の方法を事業者向けに解説」の記事もあわせてご参照ください。
まとめ
銀行融資を受けるためには、自己資金の有無だけでなく、その内容や準備過程も重要な評価ポイントとなります。融資希望額の2割から3割を目安に、計画的に資金を確保しておくことが求められます。
ただし、業種や事業規模によって求められる自己資金の比率は異なるため、画一的な基準だけでは判断できません。自己資金として認められる資金と認められない資金を理解し、入出金の記帳や資金の出所を証明できる資料などは早めに準備しておきましょう。
自己資金が不足している場合でも、資金調達方法を工夫することで資金繰りを改善し、事業を前進させることは可能です。公的機関の融資や補助金制度の活用など、複数の選択肢を視野に入れつつ、着実に資金準備を進めましょう。
この記事を書いたライター

ソラボ編集部
資金調達の可能性を無料で診断
8,000件の資金調達実績を持つSolaboの専門家が、融資や補助金など、事業課題に合わせた資金調達方法を提案します。
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